グロテスク・ブロブ・モンスターの略である。
海岸に忽然と現れることのある大きな謎の物体で、
異臭を放つ肉のような塊だ。
多くの目撃例において、空洞のある毛ようなものに
覆われているとされていることから、
未知の哺乳類の死骸ではないかと考えられてきた。
現在最も有力な説では、クジラの死体の中でも、
分解されにくい脂肪の回りに
バラバラになった筋繊維が繋がっているものだとする。
毛に見えるものは筋繊維だというのだ。
異臭は言うまでもなく腐敗臭である。
百二十五年ほど前に目撃された例では、
学者が詳しく調査を行っている。
記録によると、それは白に近いピンク色をしており、
ゴムのような弾力があったという。
生物学者ははじめそれを巨大なイカの死体だと考えた。
しかし、詳しく調べて後、巨大なタコであると結論付け、
オクトパス・ギガンテウスと名付けた。
だが、タコと断定してしまって良かったのだろうか。
このグロブスターには目やその他の器官が無かったのだ。
しかし、その後、五十年ほど前に調査された際にも、
やはりタコだと判断されている。
伝説にある海の怪物クラーケンではないかと
さかんに喧伝されたものである。
三十五年ほど前の調査でもタコという結論だった。
何をもってタコだと判断したのか
むしろ不思議に思える。
こんな状況に一石を投じたのが二十五年前の調査である。
この時には、クジラの皮膚に近い位置の脂肪だと判断された。
蛋白質の構造が同じであったらしい。
これでグロブスターの謎が解けたかというとそうでもない。
どうも、これまでに目撃されたものすべてが、
同じ性質を持っていたわけではないようなのだ。
いや、おそらくクジラで間違いないとは思うのだが、
中には未知の物体があった可能性もある。
何も、海に知られざる巨大生物がいると
主張したいわけではない。
ただ、世の中にある不思議がすべて解明されたと
思うのは早計で、まだまだ未知の領域が
あると信じたいだけだ。
ところで、ブロブといえば昔のホラー映画で
よく登場した粘液状の怪物である。
知性もなく、ただひたすら生き物を消化し、
巨大化していく怪物というのは
かなり恐ろしいイメージである。
ゲームの分野でも、スライムやウーズなどと名前を変えて、
このブロブの類いが登場してきた。
もっとも、恐怖の存在ではなく、
弱い序盤の敵であることが多いのだが。
序説
序説
かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...
2019年12月31日火曜日
2019年12月3日火曜日
余談8
私は今悩んでいる。
右下を見ればわかると思うが、
ここ数ヶ月このブログの更新が見事に滞っている。
理由は様々あるがそんな愚痴を
言いたいわけではない。
今考えるべきは更新頻度を上げることである。
もちろん、そんなものは、ただ書けばいいのだ。
物書きなのだからそれは自明だ。
しかし、モチベーションとインスピレーションと
コンディションというものがある。
コンディションは諦めるしかないのだが、
インスピレーションは未だ衰えていない。
ならばモチベーションを上げればいいのだ。
そして、その方策はある。
あるのだが、諸刃のやいばめいたものであり、
実行を躊躇している。
何かというとカテゴリーの追加だ。
どうぶつ、しょくぶつ、ちけい、ぶっしつ、まち。
ここに新たな分類を加えようというのだ。
がいねん。
つまり形而上の概念を
博物誌の項目に加えても良いのだろうか。
いや、私の趣味のブログなのだから
加えたければ加えれば良いのだが、
そうすると色々と後戻りできなくなる。
宗教学者くずれの私の言わんとする
概念カテゴリーなど、当然のことながら
宗教的なワードが多くなるに違いない。
すると色々と障りが出てくるのは明白だ。
一応、序文だけでなく予防線として必ず
私の個人的解釈であることは明記するし、
今まで通りホラも吹くが、どうしたものか。
悩んでいる暇があれば一記事でも書けばいいのだが、
そんな正論が常にまかり通るなら
締切に悩む作家などいないというものだ。
もう少しだけ悩もうと思う。
その間は過去記事を楽しんでいただければ幸いだ。
右下を見ればわかると思うが、
ここ数ヶ月このブログの更新が見事に滞っている。
理由は様々あるがそんな愚痴を
言いたいわけではない。
今考えるべきは更新頻度を上げることである。
もちろん、そんなものは、ただ書けばいいのだ。
物書きなのだからそれは自明だ。
しかし、モチベーションとインスピレーションと
コンディションというものがある。
コンディションは諦めるしかないのだが、
インスピレーションは未だ衰えていない。
ならばモチベーションを上げればいいのだ。
そして、その方策はある。
あるのだが、諸刃のやいばめいたものであり、
実行を躊躇している。
何かというとカテゴリーの追加だ。
どうぶつ、しょくぶつ、ちけい、ぶっしつ、まち。
ここに新たな分類を加えようというのだ。
がいねん。
つまり形而上の概念を
博物誌の項目に加えても良いのだろうか。
いや、私の趣味のブログなのだから
加えたければ加えれば良いのだが、
そうすると色々と後戻りできなくなる。
宗教学者くずれの私の言わんとする
概念カテゴリーなど、当然のことながら
宗教的なワードが多くなるに違いない。
すると色々と障りが出てくるのは明白だ。
一応、序文だけでなく予防線として必ず
私の個人的解釈であることは明記するし、
今まで通りホラも吹くが、どうしたものか。
悩んでいる暇があれば一記事でも書けばいいのだが、
そんな正論が常にまかり通るなら
締切に悩む作家などいないというものだ。
もう少しだけ悩もうと思う。
その間は過去記事を楽しんでいただければ幸いだ。
2019年11月30日土曜日
ビーバー
ダムを造ることで知られる動物である。
ダムとは川などの水をせき止め、
人工的に池や湖などを作る構造物だ。
そう、人工物なのだが、ビーバーは
ヒトではないにも関わらずこれを作ってのける。
本当に唯一かどうかは分からないが、
自分の生活のために環境を作り変える
ヒト以外の唯一の動物と呼ばれている。
これだけでも相当に特別な動物だということがわかる。
だが、ビーバーの特異性はそれだけではない。
ダムでせき止め出来上がった貯水池内に、
家を造る。
木の枝などの端材を集め、水中から頭を出した
かまくら状の巣を作り上げるのだが、
これがまた多機能なのである。
出入口は二か所、水中にある。
これは片方が何らかの理由で塞がっても、
もう一方から脱出できることを意味する。
そして、天井には空気を通す穴があり、
快適な空間を生み出している。
巣には草が敷き詰められており、
柔らかい寝床となっているのだ。
さて、ダムの造り方だが、
それはもうダイナミックなものだ。
水辺の木の下部を齧って削り、木こりのようにこれを倒す。
きちんと水の側に倒れるように削っているのがポイントだ。
こうして集めた木材を積み上げ、
川の流れをせき止めダムを造る。
ビーバーは普段から水中を泳いで生活している。
体毛を持つ哺乳類だが、基本的には陸に上がらない。
浮力の働く水中に慣れすぎ、
陸上では動きが鈍いほどだ。
そんなビーバーの毛皮はラッコのように高機能だ。
皮膚が水で濡れて体温を奪われぬよう、
非常に密度が濃く毛が生えている。
耐水性の高いこの毛は柔らかいのだが、
これがビーバーにとって災いとなった。
いわゆるシルクハットと呼ばれる特徴的な帽子は、
元々はビーバーの毛皮で作られていたのだ。
絵画で描かれ有名なナポレオン・ボナパルトの
バイコルヌもビーバーの毛皮で作られていた。
つまり、ヨーロッパ人のお洒落のために
乱獲されてしまったのだ。
なお、シルクハットは本来トップハットと呼ばれていたが、
ビーバーの毛皮が手に入りにくくなると絹で
作られるようになりシルクハットとなった。
最後に、ビーバーの食用についても触れよう。
キリスト教徒の中には一定期間
限定的な断食を行う人々もいる。
限定的、というのは動物の肉を食べない、
といったものだ。
その際、魚は食べても良かったりする。
そこでビーバーの出番だ。
ビーバーは水中で生活する。
尻尾は魚のヒレのようになっている。
つまり、ビーバーは尻尾だけ魚だと認識されていた。
欺瞞でしかないが、修道士たちはビーバーの尻尾を、
魚だということにして、肉禁止の時期に食べていた。
食感はモチモチとしており、
はっきり言ってかなり美味い類いの肉である。
これはもう、妙な理屈を付けずとも食べたいものだ。
毛皮が役に立ち、肉が美味い。
そして、天敵がいないとダムの造りすぎで
生態系を破壊してしまう。
減りすぎても大問題だが、
適度に狩猟して食べてやるのがいいのではないだろうか。
ダムとは川などの水をせき止め、
人工的に池や湖などを作る構造物だ。
そう、人工物なのだが、ビーバーは
ヒトではないにも関わらずこれを作ってのける。
本当に唯一かどうかは分からないが、
自分の生活のために環境を作り変える
ヒト以外の唯一の動物と呼ばれている。
これだけでも相当に特別な動物だということがわかる。
だが、ビーバーの特異性はそれだけではない。
ダムでせき止め出来上がった貯水池内に、
家を造る。
木の枝などの端材を集め、水中から頭を出した
かまくら状の巣を作り上げるのだが、
これがまた多機能なのである。
出入口は二か所、水中にある。
これは片方が何らかの理由で塞がっても、
もう一方から脱出できることを意味する。
そして、天井には空気を通す穴があり、
快適な空間を生み出している。
巣には草が敷き詰められており、
柔らかい寝床となっているのだ。
さて、ダムの造り方だが、
それはもうダイナミックなものだ。
水辺の木の下部を齧って削り、木こりのようにこれを倒す。
きちんと水の側に倒れるように削っているのがポイントだ。
こうして集めた木材を積み上げ、
川の流れをせき止めダムを造る。
ビーバーは普段から水中を泳いで生活している。
体毛を持つ哺乳類だが、基本的には陸に上がらない。
浮力の働く水中に慣れすぎ、
陸上では動きが鈍いほどだ。
そんなビーバーの毛皮はラッコのように高機能だ。
皮膚が水で濡れて体温を奪われぬよう、
非常に密度が濃く毛が生えている。
耐水性の高いこの毛は柔らかいのだが、
これがビーバーにとって災いとなった。
いわゆるシルクハットと呼ばれる特徴的な帽子は、
元々はビーバーの毛皮で作られていたのだ。
絵画で描かれ有名なナポレオン・ボナパルトの
バイコルヌもビーバーの毛皮で作られていた。
つまり、ヨーロッパ人のお洒落のために
乱獲されてしまったのだ。
なお、シルクハットは本来トップハットと呼ばれていたが、
ビーバーの毛皮が手に入りにくくなると絹で
作られるようになりシルクハットとなった。
最後に、ビーバーの食用についても触れよう。
キリスト教徒の中には一定期間
限定的な断食を行う人々もいる。
限定的、というのは動物の肉を食べない、
といったものだ。
その際、魚は食べても良かったりする。
そこでビーバーの出番だ。
ビーバーは水中で生活する。
尻尾は魚のヒレのようになっている。
つまり、ビーバーは尻尾だけ魚だと認識されていた。
欺瞞でしかないが、修道士たちはビーバーの尻尾を、
魚だということにして、肉禁止の時期に食べていた。
食感はモチモチとしており、
はっきり言ってかなり美味い類いの肉である。
これはもう、妙な理屈を付けずとも食べたいものだ。
毛皮が役に立ち、肉が美味い。
そして、天敵がいないとダムの造りすぎで
生態系を破壊してしまう。
減りすぎても大問題だが、
適度に狩猟して食べてやるのがいいのではないだろうか。
2019年10月15日火曜日
ヘクソカズラ
ひどい名前である。
果実が臭いためこの名が付けられた。
万葉集の時代からすでにクソカズラと呼ばれている。
カズラとは茎が蔓となり他の植物や
人工物に絡まる植物のことだ。
ラッパ状の花は名前とは裏腹に可愛らしく、
中央が濃い色をしているため、灸を据えたようだとして
灸花、ヤイトバナの別名もある。
この可愛らしい花と臭い果実を比較して、
屁糞葛も花盛りという言葉がある。
どういう意味かというと、残念な容姿の少女でも、
年頃になればそれなりに可愛らしくなるものだ
という失礼な物言いである。
さて、嫌なにおいのするヘクソカズラの果実だが、
実は薬効がある。
潰した時に出る汁が、しもやけ、ひび、あかぎれに
実際に効果があるのだ。
それだけではない。
肌に潤いを与える美容化粧水を作ることも可能だ。
もちろん、どちらも臭い。
化粧水にする場合は他の香料で誤魔化すらしい。
ちなみに漢語では鶏屎藤という。
鶏の糞の匂いのする蔓性の植物ということだ。
お隣でも事情は変わらないらしい。
なお、ヘクソカズラは匂いが不快なだけの植物ではない。
旺盛な繁殖力と巻き付く能力が高く、
放っておくと樹木まで覆ってしまうことがある。
鳥が実を食べ飛んでいき、その辺で糞をすることで
種が散布されるため、どこから生えるか分からない。
ガーデニングなど趣味の園芸を嗜んでいる者にとっては、
非常に厄介な植物なのだ。
万葉集には、クソカズラがしつこく絡みつくように、
いつまででも宮仕えをしたいという歌が載っている。
執念を感じる。
果実が臭いためこの名が付けられた。
万葉集の時代からすでにクソカズラと呼ばれている。
カズラとは茎が蔓となり他の植物や
人工物に絡まる植物のことだ。
ラッパ状の花は名前とは裏腹に可愛らしく、
中央が濃い色をしているため、灸を据えたようだとして
灸花、ヤイトバナの別名もある。
この可愛らしい花と臭い果実を比較して、
屁糞葛も花盛りという言葉がある。
どういう意味かというと、残念な容姿の少女でも、
年頃になればそれなりに可愛らしくなるものだ
という失礼な物言いである。
さて、嫌なにおいのするヘクソカズラの果実だが、
実は薬効がある。
潰した時に出る汁が、しもやけ、ひび、あかぎれに
実際に効果があるのだ。
それだけではない。
肌に潤いを与える美容化粧水を作ることも可能だ。
もちろん、どちらも臭い。
化粧水にする場合は他の香料で誤魔化すらしい。
ちなみに漢語では鶏屎藤という。
鶏の糞の匂いのする蔓性の植物ということだ。
お隣でも事情は変わらないらしい。
なお、ヘクソカズラは匂いが不快なだけの植物ではない。
旺盛な繁殖力と巻き付く能力が高く、
放っておくと樹木まで覆ってしまうことがある。
鳥が実を食べ飛んでいき、その辺で糞をすることで
種が散布されるため、どこから生えるか分からない。
ガーデニングなど趣味の園芸を嗜んでいる者にとっては、
非常に厄介な植物なのだ。
万葉集には、クソカズラがしつこく絡みつくように、
いつまででも宮仕えをしたいという歌が載っている。
執念を感じる。
2019年9月10日火曜日
栃
トチと読み、橡とも書かれる落葉広葉樹である。
落葉広葉樹とは、寒い季節に落ちる広い葉を持つ木、
という意味なので詳しく書く必要はないだろう。
本邦のトチの実は食用にできるが、
マロニエと呼ばれるヨーロッパのトチの実は
まずいうえに毒がある。
だが、石鹸の材料として古くから利用されており、
解熱剤を精製することも可能だという。
本邦のトチの実はアク抜きこそ非常に手間だが、
飢饉の際の食料として重宝され、
私有地に生えているものでも伐採を禁ずる
地域があったほどだ。
食料事情が良くなった近代以降は木材としての
利用が増えた。黄金色の芯材は美しく、
非常に人気が高い。
しかし、あちこちで伐採が進んだ結果、
大木と呼べるものはほとんどなくなってしまい、
現在は高級木材となっている。
木材としての需要が高く、品薄となったのは
ヨーロッパにおいても同様であり、
ウォールナット材と共に高価な木材である。
木目は非常に美しいのだが、
トチは松ほどではないが曲がりくねり、
乾燥時に割れ易いため扱いにくい木材でもある。
ところで、マロニエの名はマロン、つまり栗の
仲間だと思われていた名残である。
街路樹として人気があり、
パリのシャンゼリゼ通りのマロニエの並木は
とても有名な観光スポットだ。
エトワール凱旋門からまっすぐに長く続く
あの道をもう一度歩いてみたいものだ。
現在の状況は分からないが、私が訪れた当時は
シャンゼリゼには高級な店舗が並ぶため、
物乞いなどが少なく、快適だった覚えがある。
それはそうと、トチの木といえば、
児童文学で有名なモチモチの木である。
落葉広葉樹とは、寒い季節に落ちる広い葉を持つ木、
という意味なので詳しく書く必要はないだろう。
本邦のトチの実は食用にできるが、
マロニエと呼ばれるヨーロッパのトチの実は
まずいうえに毒がある。
だが、石鹸の材料として古くから利用されており、
解熱剤を精製することも可能だという。
本邦のトチの実はアク抜きこそ非常に手間だが、
飢饉の際の食料として重宝され、
私有地に生えているものでも伐採を禁ずる
地域があったほどだ。
食料事情が良くなった近代以降は木材としての
利用が増えた。黄金色の芯材は美しく、
非常に人気が高い。
しかし、あちこちで伐採が進んだ結果、
大木と呼べるものはほとんどなくなってしまい、
現在は高級木材となっている。
木材としての需要が高く、品薄となったのは
ヨーロッパにおいても同様であり、
ウォールナット材と共に高価な木材である。
木目は非常に美しいのだが、
トチは松ほどではないが曲がりくねり、
乾燥時に割れ易いため扱いにくい木材でもある。
ところで、マロニエの名はマロン、つまり栗の
仲間だと思われていた名残である。
街路樹として人気があり、
パリのシャンゼリゼ通りのマロニエの並木は
とても有名な観光スポットだ。
エトワール凱旋門からまっすぐに長く続く
あの道をもう一度歩いてみたいものだ。
現在の状況は分からないが、私が訪れた当時は
シャンゼリゼには高級な店舗が並ぶため、
物乞いなどが少なく、快適だった覚えがある。
それはそうと、トチの木といえば、
児童文学で有名なモチモチの木である。
2019年8月25日日曜日
ガゼル
インパラ同様に羚羊やアンテロープと呼ばれる
鹿のような見た目の牛の仲間である。
雌雄共に角を持つ点もインパラと同じで、
姿かたちもよく似ている。
見分け方としては、インパラは尻尾に黒い筋があり、
尻の両脇にもそれぞれ黒い筋があるため、
黒い縦線が三本あるが、ガゼルは尻尾には筋が無い。
また、インパラと違い砂漠地帯にも暮らしており、
ガゼルの仲間はアフリカ以外の
チベットなどにも生息している。
あとはインパラ特有の雄同士の熾烈な争いは無く、
直接傷つけ合うようなことはしない。
おそらく、環境が過酷なため死闘を避けているのだろう。
ライオンやハイエナに食われている印象の強いガゼルだが、
かなり足が速く、持久力にも優れているため、
肉食獣は基本的に彼らに追いつけない。
弱っている個体や子供が主な狩りの対象になる。
なので、ガゼル側も子供が襲われないよう
群れの中に注意深く隠して行動する。
さて、足の速いガゼルだが、さすがにチーターには負ける。
しかし、チーターは短距離型のスプリンターのため、
持久走で敗れ逃げられてしまう。
肉食動物の主食のようなイメージを持たれているガゼルだが、
このように狩るのは簡単ではないのだ。
逆に、どうすればガゼルを狩れるか、
と考えてみるのも面白い。
ライオンやハイエナはチームの連携によって、
ガゼルを追い込み逃げる先から回り込んで挟撃する。
チーターは隠れて近寄り、奇襲からの短期決戦を仕掛ける。
投石や投げ槍、投擲棍棒、弓矢に銃といった飛び道具を使い、
更にはチームによる連携まで行う人間という生き物が、
どれだけアドバンテージを持っているかも分かるというものだ。
鹿のような見た目の牛の仲間である。
雌雄共に角を持つ点もインパラと同じで、
姿かたちもよく似ている。
見分け方としては、インパラは尻尾に黒い筋があり、
尻の両脇にもそれぞれ黒い筋があるため、
黒い縦線が三本あるが、ガゼルは尻尾には筋が無い。
また、インパラと違い砂漠地帯にも暮らしており、
ガゼルの仲間はアフリカ以外の
チベットなどにも生息している。
あとはインパラ特有の雄同士の熾烈な争いは無く、
直接傷つけ合うようなことはしない。
おそらく、環境が過酷なため死闘を避けているのだろう。
ライオンやハイエナに食われている印象の強いガゼルだが、
かなり足が速く、持久力にも優れているため、
肉食獣は基本的に彼らに追いつけない。
弱っている個体や子供が主な狩りの対象になる。
なので、ガゼル側も子供が襲われないよう
群れの中に注意深く隠して行動する。
さて、足の速いガゼルだが、さすがにチーターには負ける。
しかし、チーターは短距離型のスプリンターのため、
持久走で敗れ逃げられてしまう。
肉食動物の主食のようなイメージを持たれているガゼルだが、
このように狩るのは簡単ではないのだ。
逆に、どうすればガゼルを狩れるか、
と考えてみるのも面白い。
ライオンやハイエナはチームの連携によって、
ガゼルを追い込み逃げる先から回り込んで挟撃する。
チーターは隠れて近寄り、奇襲からの短期決戦を仕掛ける。
投石や投げ槍、投擲棍棒、弓矢に銃といった飛び道具を使い、
更にはチームによる連携まで行う人間という生き物が、
どれだけアドバンテージを持っているかも分かるというものだ。
2019年8月24日土曜日
バルシオック
ナミブ砂漠に生息する小型の牛である。
牛よりも水牛に近い種類なのだが、
その大きさは山羊ていどしかない。
水牛の仲間の中で最小だ。
見た目もミニチュアの牛といった風情で、
水牛の仲間だが角は無い。
砂海を歩くのに適した毛の生えた足裏を持ち、
胃の中に飲んだ水を貯めておくことができる。
一般に、牛の仲間は複数の胃を持つが、
バルシオックの場合、そのうちのひとつが
貯水専門となっているのが興味深い。
必然的に腹が重くなるため、あまり機敏には動けないが、
天敵の少ない砂漠に生きるため、
ゆったりとした生活を営んでいる。
暑さを避けるため、日の沈む頃から夜中にかけてが
最も活発に動き回る時間帯で、
日中は砂をかぶって眠っている。
本来は草食であったが、食料が乏しい砂漠に適応した結果、
蟻などの昆虫も食べられる草食寄りの雑食である。
そのため、蟻を効率的に食べられるよう
舌が長くなっており、口も牛と比べると突き出している。
体内の熱を発散させるために耳は大きく、
これらの特徴のせいでなんとも間抜けな面構えだ。
群れは作らず、縄張りも持たずに放浪しているため、
恋の季節には同族の異性と出会うために
かなり大きな声で歌うように鳴く。
夕日の沈む砂漠に響き渡る長い鳴き声は、
ノスタルジックな想いを抱かせ、
旅人の心の奥底に深く記憶されることだろう。
牛よりも水牛に近い種類なのだが、
その大きさは山羊ていどしかない。
水牛の仲間の中で最小だ。
見た目もミニチュアの牛といった風情で、
水牛の仲間だが角は無い。
砂海を歩くのに適した毛の生えた足裏を持ち、
胃の中に飲んだ水を貯めておくことができる。
一般に、牛の仲間は複数の胃を持つが、
バルシオックの場合、そのうちのひとつが
貯水専門となっているのが興味深い。
必然的に腹が重くなるため、あまり機敏には動けないが、
天敵の少ない砂漠に生きるため、
ゆったりとした生活を営んでいる。
暑さを避けるため、日の沈む頃から夜中にかけてが
最も活発に動き回る時間帯で、
日中は砂をかぶって眠っている。
本来は草食であったが、食料が乏しい砂漠に適応した結果、
蟻などの昆虫も食べられる草食寄りの雑食である。
そのため、蟻を効率的に食べられるよう
舌が長くなっており、口も牛と比べると突き出している。
体内の熱を発散させるために耳は大きく、
これらの特徴のせいでなんとも間抜けな面構えだ。
群れは作らず、縄張りも持たずに放浪しているため、
恋の季節には同族の異性と出会うために
かなり大きな声で歌うように鳴く。
夕日の沈む砂漠に響き渡る長い鳴き声は、
ノスタルジックな想いを抱かせ、
旅人の心の奥底に深く記憶されることだろう。
2019年8月16日金曜日
錫
スズは柔らかい金属である。
よく延び、比較的低い温度で融解する。
潰すのではなく曲げるように力を加えると、
簡単に折れ、その際にスズ鳴きと呼ばれる
独特の金属音を発する。
さて、スズの利用方法だが、錆びにくく、
軽いため、食器としての利用が盛んだった。
若干ではあるが毒性があるため、より軽く、
無毒のアルミニウムに取って代わられたが、
現在でも使われることがある。
錫単体の食器よりも、アンチモンとの合金、
ピューターあるいは白鑞(しろめ)として
加工性を高めたものが好まれた。
錫は合金素材としての有用性が非常に高い。
特に銅との合金、青銅は人類史にとって
無くてはならない存在であった。
ただし、錫は銅や鉄と違い、
どこでも手に入る金属ではない。
産出地が非常に偏っており、
手に入らない地域では青銅器の発達が遅れた。
錫の入手が容易であった地域で
古代文明が発達したと言っても
過言ではないほどだ。
アルミニウムが大々的に使われるようになってからは
需要が減少した錫だが、鉛との合金である
はんだ は、金属同士を溶接する際に重要である。
また、錆びにくい性質を利用するために、
メッキ材としても広く使われている。
なお、銅に錫メッキを施したものは
ブリキと呼ばれている。
ところで、元素記号はスタンナムの略なのだが、
これは元々は銀と鉛の合金のことで、
時代と共に意味の変わった言葉である。
よく延び、比較的低い温度で融解する。
潰すのではなく曲げるように力を加えると、
簡単に折れ、その際にスズ鳴きと呼ばれる
独特の金属音を発する。
さて、スズの利用方法だが、錆びにくく、
軽いため、食器としての利用が盛んだった。
若干ではあるが毒性があるため、より軽く、
無毒のアルミニウムに取って代わられたが、
現在でも使われることがある。
錫単体の食器よりも、アンチモンとの合金、
ピューターあるいは白鑞(しろめ)として
加工性を高めたものが好まれた。
錫は合金素材としての有用性が非常に高い。
特に銅との合金、青銅は人類史にとって
無くてはならない存在であった。
ただし、錫は銅や鉄と違い、
どこでも手に入る金属ではない。
産出地が非常に偏っており、
手に入らない地域では青銅器の発達が遅れた。
錫の入手が容易であった地域で
古代文明が発達したと言っても
過言ではないほどだ。
アルミニウムが大々的に使われるようになってからは
需要が減少した錫だが、鉛との合金である
はんだ は、金属同士を溶接する際に重要である。
また、錆びにくい性質を利用するために、
メッキ材としても広く使われている。
なお、銅に錫メッキを施したものは
ブリキと呼ばれている。
ところで、元素記号はスタンナムの略なのだが、
これは元々は銀と鉛の合金のことで、
時代と共に意味の変わった言葉である。
2019年8月15日木曜日
亜鉛
鉛に似ていたからこの名前が付けられているが、
英語ではジンであり、西洋では錫、
すなわちティンとの混同が見られる。
様々な用途のある亜鉛だが、一番の利用法は
銅との合金、真鍮としてであろう。
真鍮以外にも洋白など多くの合金精製に使われており、
他の金属の性質を変える力が
亜鉛の真価なのかもしれない。
亜鉛単体でも、表面だけが錆びた状態になると、
非常に高い耐水性を示すため、
メッキとして活用される。
鉄などに亜鉛メッキを施したものをトタンと呼び、
雨に晒される屋根に多く使われていることは
知っていると思う。
なお、トタンの語源はポルトガル語の
ツタンナガであるという。
さて、亜鉛の利用の歴史は少々複雑だ。
真鍮の材料として使用されていたのだが、
真鍮がいつから使われているのか、
という問題にぶち当たることになる。
時代と地域によって真鍮の利用が異なり、
使われていたはずの地域でも、
その存在が忘れられた空白期間があったりする。
古代の真鍮が製造されるに当たり、
亜鉛が精錬されていたことは間違いないのだが、
地中海世界では暗黒時代に技術がおそらく失われた。
その後中世インドにおいて大量の亜鉛が製造され、
その製法はチャイナにも伝播した。
インド洋で取引されていた亜鉛は、
ポルトガル人によって発見されるが、
大航海時代初期のポルトガル人にとって、
亜鉛はあまり利用法を見出せない金属だった。
その後、ネーデルラント人がポルトガル船を襲い、
拿捕して亜鉛を手に入れたのだが、
彼らはその耐水性に気が付いた。
インド交易の輸入品の中に
亜鉛が加わるようになったのである。
ヨーロッパ人が自前で亜鉛を精錬できるように
なったのは近代に入ってからのことである。
イギリス人がチャイナからその技術を得たのだ。
こうして、ヨーロッパに真鍮が復活する。
ところで、おしろい に亜鉛が使われていたのは
知っているだろうか。化粧品のおしろいである。
おしろいは元々鉛や水銀から作られていたが、
当然、その毒性が様々な問題を生み出していた。
亜鉛が精錬されるようになると、
おしろいの原料は亜鉛へと置き換えられる。
もっとも、亜鉛とて無毒ではなく、
現在のファンデーションでは使用量が減らされ、
タルクや雲母などが基剤となっているようだ。
なお、亜鉛は人体に必要なミネラルでもある。
英語ではジンであり、西洋では錫、
すなわちティンとの混同が見られる。
様々な用途のある亜鉛だが、一番の利用法は
銅との合金、真鍮としてであろう。
真鍮以外にも洋白など多くの合金精製に使われており、
他の金属の性質を変える力が
亜鉛の真価なのかもしれない。
亜鉛単体でも、表面だけが錆びた状態になると、
非常に高い耐水性を示すため、
メッキとして活用される。
鉄などに亜鉛メッキを施したものをトタンと呼び、
雨に晒される屋根に多く使われていることは
知っていると思う。
なお、トタンの語源はポルトガル語の
ツタンナガであるという。
さて、亜鉛の利用の歴史は少々複雑だ。
真鍮の材料として使用されていたのだが、
真鍮がいつから使われているのか、
という問題にぶち当たることになる。
時代と地域によって真鍮の利用が異なり、
使われていたはずの地域でも、
その存在が忘れられた空白期間があったりする。
古代の真鍮が製造されるに当たり、
亜鉛が精錬されていたことは間違いないのだが、
地中海世界では暗黒時代に技術がおそらく失われた。
その後中世インドにおいて大量の亜鉛が製造され、
その製法はチャイナにも伝播した。
インド洋で取引されていた亜鉛は、
ポルトガル人によって発見されるが、
大航海時代初期のポルトガル人にとって、
亜鉛はあまり利用法を見出せない金属だった。
その後、ネーデルラント人がポルトガル船を襲い、
拿捕して亜鉛を手に入れたのだが、
彼らはその耐水性に気が付いた。
インド交易の輸入品の中に
亜鉛が加わるようになったのである。
ヨーロッパ人が自前で亜鉛を精錬できるように
なったのは近代に入ってからのことである。
イギリス人がチャイナからその技術を得たのだ。
こうして、ヨーロッパに真鍮が復活する。
ところで、おしろい に亜鉛が使われていたのは
知っているだろうか。化粧品のおしろいである。
おしろいは元々鉛や水銀から作られていたが、
当然、その毒性が様々な問題を生み出していた。
亜鉛が精錬されるようになると、
おしろいの原料は亜鉛へと置き換えられる。
もっとも、亜鉛とて無毒ではなく、
現在のファンデーションでは使用量が減らされ、
タルクや雲母などが基剤となっているようだ。
なお、亜鉛は人体に必要なミネラルでもある。
2019年8月14日水曜日
オリックス
アフリカやアラビアに住む牛の仲間である。
牛の仲間の中でも羚羊、レイヨウと呼ばれる種類の
ひとつだが、羚羊は一見すると鹿の仲間に見える。
例えば、本邦のカモシカも羚羊である。
オリックスはとても長い二本の角を持っている。
同じ羚羊のインパラと違い、
雄だけでなく雌にも角があるのが特徴だ。
単にオリックス、あるいはゲムズボックと呼ばれる種は
アフリカ南部に生息しており、
その角は槍の穂先として利用されていた。
シロオリックスはアフリカ北部に生息していたが絶滅。
現在は動物園などで飼育されていた個体を
チュニジアで繁殖させているそうだ。
アラビア半島に生息していたアラビアオリックスも
同じく絶滅しており、シロオリックス同様、
オマーンで繁殖が進められているらしい。
さて、オリックスは砂漠の生き物である。
砂漠に適応した哺乳類というとラクダが思い浮かぶが、
オリックスも負けてはいない。
オリックスは非常に多くの水を飲むが、
これを蓄える力が強い。
尿は非常に濃く、水分の排出が極力抑えられており、
糞は乾燥したものをひり出す。
水場が無くとも食べた植物から得られる水分だけで
長期間生き延びることができ、
体温が非常に高くなっても耐えることができる。
砂漠のプロフェッショナルなのだ。
ところで、オリックスといえば企業名、
もしくはその企業が所有する球団を思い浮かべるだろう。
調べてみたところ、オリックス社の名前の由来は
オリジナルのエックスらしい。
羚羊のオリックスとはあまり関係が無かった。
球団名はオリックス・バファローズだ。
オリックスもバッファローも牛の仲間であり、
なんだか妙な感じがしていたわけだが、
問題なかったようだ。
牛の仲間の中でも羚羊、レイヨウと呼ばれる種類の
ひとつだが、羚羊は一見すると鹿の仲間に見える。
例えば、本邦のカモシカも羚羊である。
オリックスはとても長い二本の角を持っている。
同じ羚羊のインパラと違い、
雄だけでなく雌にも角があるのが特徴だ。
単にオリックス、あるいはゲムズボックと呼ばれる種は
アフリカ南部に生息しており、
その角は槍の穂先として利用されていた。
シロオリックスはアフリカ北部に生息していたが絶滅。
現在は動物園などで飼育されていた個体を
チュニジアで繁殖させているそうだ。
アラビア半島に生息していたアラビアオリックスも
同じく絶滅しており、シロオリックス同様、
オマーンで繁殖が進められているらしい。
さて、オリックスは砂漠の生き物である。
砂漠に適応した哺乳類というとラクダが思い浮かぶが、
オリックスも負けてはいない。
オリックスは非常に多くの水を飲むが、
これを蓄える力が強い。
尿は非常に濃く、水分の排出が極力抑えられており、
糞は乾燥したものをひり出す。
水場が無くとも食べた植物から得られる水分だけで
長期間生き延びることができ、
体温が非常に高くなっても耐えることができる。
砂漠のプロフェッショナルなのだ。
ところで、オリックスといえば企業名、
もしくはその企業が所有する球団を思い浮かべるだろう。
調べてみたところ、オリックス社の名前の由来は
オリジナルのエックスらしい。
羚羊のオリックスとはあまり関係が無かった。
球団名はオリックス・バファローズだ。
オリックスもバッファローも牛の仲間であり、
なんだか妙な感じがしていたわけだが、
問題なかったようだ。
2019年8月13日火曜日
ハイエナ
犬に似た外見を持つアフリカのサバンナの動物である。
しかし、犬の仲間ではなく、猫に近い種族だ。
ただし、木は登れない。
ハイエナには四つの種類が存在する。
サブサハラに広く生息するブチハイエナは、
一般的にイメージされるハイエナだ。
北アフリカに生息するシマハイエナと、
アフリカ南部に生息するカッショクハイエナは
ブチハイエナよりもおとなしい性格をしている。
アードウルフと呼ばれる種類は他のハイエナとは
異なる点が多いため、今回は説明を省こうと思う。
さて、ハイエナといえば他者の獲物を横取りしたり、
弱った者を狙って食い物にする悪しき存在の
代名詞として知られている。
だが、実際のハイエナの生態は、
こうした一般的なイメージとは異なっている。
シマハイエナとカッショクハイエナは、
他の肉食獣の食べ残しを主な食料としている。
これは横取りをしているわけではなく、
放棄された普通の肉食獣が食べられない
残骸を食べているに過ぎない。
強力なあごと特殊な消化器を持つハイエナは、
骨を食べることができる。
骨は一見するとカルシウムの塊で、
食べられる部分は無いが、中心部には髄があり、
栄養が豊富だ。ハイエナはこれを食べる。
巣穴には非常食として骨が蓄えられている。
また、時間が経過し腐敗が始まった死体も、
多くの肉食獣は腹を壊さぬよう食べるのを避ける。
ハイエナはそれを問題なくたいらげる。
つまり、ハイエナはサバンナのゴミを
きれいに片付ける役割を担っているのだ。
奪い取るなどとんでもない誤解である。
それだけではない。
大型のブチハイエナは自分たちで狩りを行うのだが、
しばしばライオンに横取りされてしまう。
ハイエナは横取りされる側なのだ。
なぜ、こうした誤解が生まれたかというと、
キリスト教的価値観において、
骨や腐肉を貪欲に食らうハイエナが、
悪しき存在と見做された点が大きい。
死肉を漁ることから、
墓を荒らすとも信じられた。
人間の笑い声のような不気味な鳴き声も
マイナスイメージの元だろう。
そして、もうひとつ、キリスト教徒が
ハイエナを嫌った理由がある。
雄のハイエナには大きな肛門腺があるのだが、
これがしばしば雌の性器と見間違えられる。
そして、雌のハイエナは外性器が発達しており、
まるで雄の性器があるように見える。
簡単に言えば、両性具有に見える生き物なのだ。
これをキリスト教徒は悪魔的だと考えた。
天使も両性具有のはずだが、
いかんせん、悪印象が多すぎて
神聖な存在とは思ってもらえなかった。
もちろん、キリスト教が広まる以前も
性のはっきりしない動物として
特異な存在と考えられていた。
残念ながら我らが大プリニウスも
交尾をせずに子を産むことができる動物として
ハイエナを紹介してしまっている。
しかも、他の生き物の動きを止める
妖術のような能力があるとまで書いている。
まるで神話の怪物だ。
なお、アリストテレスは
ハイエナは両性具有ではないと
はっきり著書に記している。
プリニウスは古いアリストテレスの著書よりも、
自分と同時代の人々の語った話を信じたようだ。
昔の人の記録よりも、最新の情報の方が
正しいと考えるのも致し方ないかもしれない。
しかし、犬の仲間ではなく、猫に近い種族だ。
ただし、木は登れない。
ハイエナには四つの種類が存在する。
サブサハラに広く生息するブチハイエナは、
一般的にイメージされるハイエナだ。
北アフリカに生息するシマハイエナと、
アフリカ南部に生息するカッショクハイエナは
ブチハイエナよりもおとなしい性格をしている。
アードウルフと呼ばれる種類は他のハイエナとは
異なる点が多いため、今回は説明を省こうと思う。
さて、ハイエナといえば他者の獲物を横取りしたり、
弱った者を狙って食い物にする悪しき存在の
代名詞として知られている。
だが、実際のハイエナの生態は、
こうした一般的なイメージとは異なっている。
シマハイエナとカッショクハイエナは、
他の肉食獣の食べ残しを主な食料としている。
これは横取りをしているわけではなく、
放棄された普通の肉食獣が食べられない
残骸を食べているに過ぎない。
強力なあごと特殊な消化器を持つハイエナは、
骨を食べることができる。
骨は一見するとカルシウムの塊で、
食べられる部分は無いが、中心部には髄があり、
栄養が豊富だ。ハイエナはこれを食べる。
巣穴には非常食として骨が蓄えられている。
また、時間が経過し腐敗が始まった死体も、
多くの肉食獣は腹を壊さぬよう食べるのを避ける。
ハイエナはそれを問題なくたいらげる。
つまり、ハイエナはサバンナのゴミを
きれいに片付ける役割を担っているのだ。
奪い取るなどとんでもない誤解である。
それだけではない。
大型のブチハイエナは自分たちで狩りを行うのだが、
しばしばライオンに横取りされてしまう。
ハイエナは横取りされる側なのだ。
なぜ、こうした誤解が生まれたかというと、
キリスト教的価値観において、
骨や腐肉を貪欲に食らうハイエナが、
悪しき存在と見做された点が大きい。
死肉を漁ることから、
墓を荒らすとも信じられた。
人間の笑い声のような不気味な鳴き声も
マイナスイメージの元だろう。
そして、もうひとつ、キリスト教徒が
ハイエナを嫌った理由がある。
雄のハイエナには大きな肛門腺があるのだが、
これがしばしば雌の性器と見間違えられる。
そして、雌のハイエナは外性器が発達しており、
まるで雄の性器があるように見える。
簡単に言えば、両性具有に見える生き物なのだ。
これをキリスト教徒は悪魔的だと考えた。
天使も両性具有のはずだが、
いかんせん、悪印象が多すぎて
神聖な存在とは思ってもらえなかった。
もちろん、キリスト教が広まる以前も
性のはっきりしない動物として
特異な存在と考えられていた。
残念ながら我らが大プリニウスも
交尾をせずに子を産むことができる動物として
ハイエナを紹介してしまっている。
しかも、他の生き物の動きを止める
妖術のような能力があるとまで書いている。
まるで神話の怪物だ。
なお、アリストテレスは
ハイエナは両性具有ではないと
はっきり著書に記している。
プリニウスは古いアリストテレスの著書よりも、
自分と同時代の人々の語った話を信じたようだ。
昔の人の記録よりも、最新の情報の方が
正しいと考えるのも致し方ないかもしれない。
2019年8月7日水曜日
ガガンボモドキ
ガガンボによく似ているが
ガガンボとは全く異なる昆虫である。
まずは比較のためにガガンボを紹介しよう。
ガガンボは夜、明かりの周辺によくいる
蚊を大きくしたような虫である。
ほとんどの人がその大きさに
ぎょっとしたことがあるだろう。
だが、ガガンボは花の蜜を吸い、
十日ほどで死ぬ、か弱い生き物だ。
身体も脆く、簡単にバラバラになってしまう。
無害で脆弱な生き物であるが、
土中で過ごす幼虫時代には植物の根をかじるため、
種類によっては農業害虫である。
さて、本題のガガンボモドキに移ろう。
一見ガガンボに似ているが、
シリアゲムシという昆虫の仲間で、
よく見ればガガンボとは羽や脚の付き方が違う。
何より違うのが食べ物である。
ガガンボモドキは肉食性だ。
獲物を抱え込む鎌も持っている。
幼虫もいわゆる芋虫型で、
多くは雑食である。
面白いのが、このガガンボモドキ、
求愛の際には雄が雌に獲物をプレゼントする。
雌が獲物を食べている間に交尾するのだ。
だが、獲物の大きさが十分でない場合、
雌は食い逃げをしてしまったり、
より大きな獲物を持つ雄と再度交尾を行う。
昆虫の交尾は基本的に、
後から行った雄の子孫が残るという。
雄の方も雌の我儘に振り回されているだけではない。
雌が獲物を食べ終わる前に交尾が終われば、
プレゼントした獲物を奪い返し、
次の雌を探しに行く。
食べかけのプレゼントを別の雌に贈るのだ。
また、中には雌のふりをする雄もいる。
プレゼントを受け取ると、
さっさとそれを持ち逃げし、雌を探す。
色恋沙汰は化かしあいというわけだ。
なかなかシビアな恋愛事情である。
ところで、ガガンボモドキはシリアゲムシの
仲間だと書いたが、シリアゲムシとは何だ、
と思った向きも多いだろう。
触覚、口吻、脚、腹、羽といった各パーツを
長くした蜂のような見た目をしているのだが、
なんと、腹の先、つまり尻尾が
上方にくるりと上がっている。
ちょうど、サソリの尾のような形状だ。
このため英語ではスコーピオンフライと呼ばれるが、
本邦では尻上げ虫である。
生態は前述のガガンボモドキとよく似ている。
なんでも、天敵の蜘蛛の巣から
獲物を横取りする芸当を身に着けているらしい。
シリアゲムシ界隈では食べ物とは
贈ったり奪ったりするものなのだろう。
ガガンボとは全く異なる昆虫である。
まずは比較のためにガガンボを紹介しよう。
ガガンボは夜、明かりの周辺によくいる
蚊を大きくしたような虫である。
ほとんどの人がその大きさに
ぎょっとしたことがあるだろう。
だが、ガガンボは花の蜜を吸い、
十日ほどで死ぬ、か弱い生き物だ。
身体も脆く、簡単にバラバラになってしまう。
無害で脆弱な生き物であるが、
土中で過ごす幼虫時代には植物の根をかじるため、
種類によっては農業害虫である。
さて、本題のガガンボモドキに移ろう。
一見ガガンボに似ているが、
シリアゲムシという昆虫の仲間で、
よく見ればガガンボとは羽や脚の付き方が違う。
何より違うのが食べ物である。
ガガンボモドキは肉食性だ。
獲物を抱え込む鎌も持っている。
幼虫もいわゆる芋虫型で、
多くは雑食である。
面白いのが、このガガンボモドキ、
求愛の際には雄が雌に獲物をプレゼントする。
雌が獲物を食べている間に交尾するのだ。
だが、獲物の大きさが十分でない場合、
雌は食い逃げをしてしまったり、
より大きな獲物を持つ雄と再度交尾を行う。
昆虫の交尾は基本的に、
後から行った雄の子孫が残るという。
雄の方も雌の我儘に振り回されているだけではない。
雌が獲物を食べ終わる前に交尾が終われば、
プレゼントした獲物を奪い返し、
次の雌を探しに行く。
食べかけのプレゼントを別の雌に贈るのだ。
また、中には雌のふりをする雄もいる。
プレゼントを受け取ると、
さっさとそれを持ち逃げし、雌を探す。
色恋沙汰は化かしあいというわけだ。
なかなかシビアな恋愛事情である。
ところで、ガガンボモドキはシリアゲムシの
仲間だと書いたが、シリアゲムシとは何だ、
と思った向きも多いだろう。
触覚、口吻、脚、腹、羽といった各パーツを
長くした蜂のような見た目をしているのだが、
なんと、腹の先、つまり尻尾が
上方にくるりと上がっている。
ちょうど、サソリの尾のような形状だ。
このため英語ではスコーピオンフライと呼ばれるが、
本邦では尻上げ虫である。
生態は前述のガガンボモドキとよく似ている。
なんでも、天敵の蜘蛛の巣から
獲物を横取りする芸当を身に着けているらしい。
シリアゲムシ界隈では食べ物とは
贈ったり奪ったりするものなのだろう。
2019年8月6日火曜日
コエンドロ
セリの仲間の植物である。
英語ではコリアンダー、タイではパクチー、
チャイナではシャンツァイ(香菜)と呼ぶ。
本邦での呼び方コエンドロはポルトガル語に由来するが、
今ではパクチーの名が一般的だろう。
古くはコスイやコニシと呼び、
生魚を食べる際の薬味とされていた。
ヨーロッパでは特に果実が香辛料として重視され、
柑橘系の香りがするため、
紅茶や酒に使われる。
インドでも調合香辛料で使われ、
爽やかな香りが付与される。
だが、やはりコエンドロの利用で特徴的なのは葉だろう。
いわゆるパクチーである。
パクチーは本来、料理に添える薬味に過ぎない。
本邦のワサビのような使い方だ。
それが本邦では大流行してしまい、
パクチーサラダなどが席巻。
タイやベトナムの人々から仰天されている。
パクチーだけをむしゃむしゃ食べることは、
ワサビをぼりぼり食べるようなものなのだ。
ただ、華北のある地域には、
老虎菜というサラダ系の料理があり、
胡瓜、青唐辛子、香菜を生食にするので、
間違っているというわけでもないと思う。
パクチーといえば好き嫌いが分かれることで知られている。
ダメな人は徹底的にダメなのだ。
なんせ、カメムシ草という名前があるほどで、
独特の匂いの強さは嫌われても仕方がない。
私は大好きだが。
なお、古くは薬草として重宝されていた。
エジプトの医学書にも記されており、
大プリニウスもエジプト産コリアンダーが
最高だと述べている。
ヒポクラテスも炎症に効く薬草として
利用を推奨していたし、漢方の生薬でもある。
ただ、現代医学ではあまり
効能が高いとは考えられていない。
とりあえず、パクチーが嫌いな人が
無理に克服する必要はないと思う。
私は大好きだが。
英語ではコリアンダー、タイではパクチー、
チャイナではシャンツァイ(香菜)と呼ぶ。
本邦での呼び方コエンドロはポルトガル語に由来するが、
今ではパクチーの名が一般的だろう。
古くはコスイやコニシと呼び、
生魚を食べる際の薬味とされていた。
ヨーロッパでは特に果実が香辛料として重視され、
柑橘系の香りがするため、
紅茶や酒に使われる。
インドでも調合香辛料で使われ、
爽やかな香りが付与される。
だが、やはりコエンドロの利用で特徴的なのは葉だろう。
いわゆるパクチーである。
パクチーは本来、料理に添える薬味に過ぎない。
本邦のワサビのような使い方だ。
それが本邦では大流行してしまい、
パクチーサラダなどが席巻。
タイやベトナムの人々から仰天されている。
パクチーだけをむしゃむしゃ食べることは、
ワサビをぼりぼり食べるようなものなのだ。
ただ、華北のある地域には、
老虎菜というサラダ系の料理があり、
胡瓜、青唐辛子、香菜を生食にするので、
間違っているというわけでもないと思う。
パクチーといえば好き嫌いが分かれることで知られている。
ダメな人は徹底的にダメなのだ。
なんせ、カメムシ草という名前があるほどで、
独特の匂いの強さは嫌われても仕方がない。
私は大好きだが。
なお、古くは薬草として重宝されていた。
エジプトの医学書にも記されており、
大プリニウスもエジプト産コリアンダーが
最高だと述べている。
ヒポクラテスも炎症に効く薬草として
利用を推奨していたし、漢方の生薬でもある。
ただ、現代医学ではあまり
効能が高いとは考えられていない。
とりあえず、パクチーが嫌いな人が
無理に克服する必要はないと思う。
私は大好きだが。
2019年8月5日月曜日
クミン
西アジアから南アジアにかけて原産の
香辛料として盛んに利用される植物である。
キャラウェイによく似た植物で、
果実にいたっては見分けるのが困難である。
しかし、香りはまったく異なる。
若干の苦みは共通だが、こちらには辛みも少々ある。
西アジア、中央アジア、南アジアの食卓には
欠かせない香辛料であり、その香りを嗅げば
エキゾチックな印象を受けるだろう。
アラビアの料理や中央アジアの料理を
食べたことがあれば、その特有の香りを
知っていると思う。あれは主にクミンの香りだ。
逆に言えば、料理にクミンパウダーを入れれば、
お手軽にエキゾチックな一皿が出来上がる。
私のお勧めは羊肉とチンゲン菜やズッキーニを
花椒とクミンで香り付けしながら炒め、
オイスターソースで味付けする食べ方である。
他にも、セロリとタマネギと冬瓜と羊肉を
クミンと塩で炒め、
米を混ぜて炒飯のようにしても美味い。
ちなみに、カレーの主なスパイスのひとつである。
インドではクミンパウダーとしてだけではなく、
油にクミンの香りを付けたクミンオイルを多用する。
カレーのおかげで本邦でも馴染みのあるクミンだが、
クミン単体では独特の香りなので好みは
分かれるかもしれない。
そんな場合は先に紹介した花椒と混ぜるといった
他の香辛料との調合がお勧めである。
色々と調合していくうちに
カレーができてしまったりもする。
様々なスパイスの特色を理解し、
調合もできるようになれば、
料理を作るのが楽しくなる。
あとは出汁への理解を深めれば、
美味しい料理を作れるようになるだろう。
ただし、包丁の扱いや焼きの技術は
訓練あるのみである。
香辛料として盛んに利用される植物である。
キャラウェイによく似た植物で、
果実にいたっては見分けるのが困難である。
しかし、香りはまったく異なる。
若干の苦みは共通だが、こちらには辛みも少々ある。
西アジア、中央アジア、南アジアの食卓には
欠かせない香辛料であり、その香りを嗅げば
エキゾチックな印象を受けるだろう。
アラビアの料理や中央アジアの料理を
食べたことがあれば、その特有の香りを
知っていると思う。あれは主にクミンの香りだ。
逆に言えば、料理にクミンパウダーを入れれば、
お手軽にエキゾチックな一皿が出来上がる。
私のお勧めは羊肉とチンゲン菜やズッキーニを
花椒とクミンで香り付けしながら炒め、
オイスターソースで味付けする食べ方である。
他にも、セロリとタマネギと冬瓜と羊肉を
クミンと塩で炒め、
米を混ぜて炒飯のようにしても美味い。
ちなみに、カレーの主なスパイスのひとつである。
インドではクミンパウダーとしてだけではなく、
油にクミンの香りを付けたクミンオイルを多用する。
カレーのおかげで本邦でも馴染みのあるクミンだが、
クミン単体では独特の香りなので好みは
分かれるかもしれない。
そんな場合は先に紹介した花椒と混ぜるといった
他の香辛料との調合がお勧めである。
色々と調合していくうちに
カレーができてしまったりもする。
様々なスパイスの特色を理解し、
調合もできるようになれば、
料理を作るのが楽しくなる。
あとは出汁への理解を深めれば、
美味しい料理を作れるようになるだろう。
ただし、包丁の扱いや焼きの技術は
訓練あるのみである。
2019年8月4日日曜日
キャラウェイ
西アジア原産のフェンネルによく似た植物である。
花の色はフェンネルが黄色いのに対して、
キャラウェイは白いが、
果実はとてもよく似ている。
香辛料としては果実が甘い香りと苦みを持ち、
菓子類や卵料理によく用いられる。
また、葉も香草としてパセリと似た使い方をされ、
根をスープ類の具とする。
有名な苦みを楽しむ酒、カンパリの香り付けにも
利用されているが、苦み成分はキャラウェイよりも
オレンジピールなどがメインだと思われる。
カンパリ社が製法を明かしていないので
具体的にはわからない。
カンパリといえば赤い酒だが、
あれは素材の色ではなく染料によって着色されている。
古くは臙脂虫からとれるコチニール色素だったようだが、
現在は合成染料を使っているそうだ。
他にもアクアヴィットやキュンメルの
香り付けに使われており、
お酒とも相性が良いことがわかる。
西アジアの植物がヨーロッパで普及した背景には、
フェニキア人の交易はもちろん、
ローマ軍の兵糧という要素が大きい。
キャラウェイの根を潰し、牛乳で練ったものが
カラと呼ばれ、ローマ軍兵士に食べられていた。
ローマの軍団はヨーロッパ各地で戦い、
そこに軍営都市を築いたため、
キャラウェイの栽培がヨーロッパ中に広まったのだ。
なお、現在のキャラウェイの名産地は
ネーデルラントである。
花の色はフェンネルが黄色いのに対して、
キャラウェイは白いが、
果実はとてもよく似ている。
香辛料としては果実が甘い香りと苦みを持ち、
菓子類や卵料理によく用いられる。
また、葉も香草としてパセリと似た使い方をされ、
根をスープ類の具とする。
有名な苦みを楽しむ酒、カンパリの香り付けにも
利用されているが、苦み成分はキャラウェイよりも
オレンジピールなどがメインだと思われる。
カンパリ社が製法を明かしていないので
具体的にはわからない。
カンパリといえば赤い酒だが、
あれは素材の色ではなく染料によって着色されている。
古くは臙脂虫からとれるコチニール色素だったようだが、
現在は合成染料を使っているそうだ。
他にもアクアヴィットやキュンメルの
香り付けに使われており、
お酒とも相性が良いことがわかる。
西アジアの植物がヨーロッパで普及した背景には、
フェニキア人の交易はもちろん、
ローマ軍の兵糧という要素が大きい。
キャラウェイの根を潰し、牛乳で練ったものが
カラと呼ばれ、ローマ軍兵士に食べられていた。
ローマの軍団はヨーロッパ各地で戦い、
そこに軍営都市を築いたため、
キャラウェイの栽培がヨーロッパ中に広まったのだ。
なお、現在のキャラウェイの名産地は
ネーデルラントである。
2019年7月31日水曜日
茴香
ウイキョウと読む。
ヨーロッパではフェンネルと呼ばれ、
原産地も地中海沿岸である。
非常に古い時代から栽培されている植物で、
胃薬として使われる。
安中散の主要な生薬であり、
太田胃散にも含まれている。
また、咳や痰にも効き、
現在でも特にヨーロッパでは
紅茶やスープに入れられる。
薬草としての作用もさることながら、
香辛料としても重要である。
ディル同様に魚介類の臭みを消すために使われ、
ピクルスに清涼感を出す使用法もある。
パスティスというフランスの酒の
香り付けに利用されているのだが、
このパスティス、偽物という意味合いがある。
どういうことかというと、
ニガヨモギを使用したアブサンが、
その幻覚作用により禁止された後、
代用品として流通したことに由来する。
緑の魔酒と異なり、琥珀色の酒なのだが、
水を加えると白く濁る。
アブサンとはかなり異なるため、
何故これが代用となったのか、
少々疑問が残る。
なお、パスティスの香りはフェンネルだけでなく、
アニスやリコリスも使用されており、
特にアニスの香りがかなり自己主張してくる。
度数の高い甘い酒で、
水割りやカクテルの材料として飲む。
しかし、一部では更にシロップを加えて
より甘くして飲むようだ。
私は甘い酒は好かない。
ちなみにパスティスの名産地はマルセイユだ。
フランスの酒なのである。
さて、フェンネルに話を戻そう。
この植物はディルと非常によく似ている。
花も実も似ているため、
一部地域では混同されている。
香りと味にはかなりの違いがあるため、
レシピを間違えると料理が別物になってしまう。
分かりやすい判別としては、
フェンネルは甘い香りが強く、
ディルは後味が辛い。
ついでに言うと、果実に関して言えば、
キャラウェイとクミンも似ている。
すべて芹の仲間であるためだ。
アニスやコリアンダーもセリの仲間である。
セリの類はほとんどが香りが強く、
薬効を持っている。
興味深い植物だ。
ヨーロッパではフェンネルと呼ばれ、
原産地も地中海沿岸である。
非常に古い時代から栽培されている植物で、
胃薬として使われる。
安中散の主要な生薬であり、
太田胃散にも含まれている。
また、咳や痰にも効き、
現在でも特にヨーロッパでは
紅茶やスープに入れられる。
薬草としての作用もさることながら、
香辛料としても重要である。
ディル同様に魚介類の臭みを消すために使われ、
ピクルスに清涼感を出す使用法もある。
パスティスというフランスの酒の
香り付けに利用されているのだが、
このパスティス、偽物という意味合いがある。
どういうことかというと、
ニガヨモギを使用したアブサンが、
その幻覚作用により禁止された後、
代用品として流通したことに由来する。
緑の魔酒と異なり、琥珀色の酒なのだが、
水を加えると白く濁る。
アブサンとはかなり異なるため、
何故これが代用となったのか、
少々疑問が残る。
なお、パスティスの香りはフェンネルだけでなく、
アニスやリコリスも使用されており、
特にアニスの香りがかなり自己主張してくる。
度数の高い甘い酒で、
水割りやカクテルの材料として飲む。
しかし、一部では更にシロップを加えて
より甘くして飲むようだ。
私は甘い酒は好かない。
ちなみにパスティスの名産地はマルセイユだ。
フランスの酒なのである。
さて、フェンネルに話を戻そう。
この植物はディルと非常によく似ている。
花も実も似ているため、
一部地域では混同されている。
香りと味にはかなりの違いがあるため、
レシピを間違えると料理が別物になってしまう。
分かりやすい判別としては、
フェンネルは甘い香りが強く、
ディルは後味が辛い。
ついでに言うと、果実に関して言えば、
キャラウェイとクミンも似ている。
すべて芹の仲間であるためだ。
アニスやコリアンダーもセリの仲間である。
セリの類はほとんどが香りが強く、
薬効を持っている。
興味深い植物だ。
2019年7月29日月曜日
ディル
黄色く小さな花を咲かせる植物である。
原産地はよくわかっておらず、
中央アジアからヨーロッパまで、
幅広く生育している。
スペイン語ではイネルドと呼ばれ、
本邦へ伝わった際にイノンドと訛ったものの、
現在では英語名のディルが一般的である。
薬草としての歴史が古く、
胃薬や整腸剤として重宝されてきた他、
魔術を防ぐ力もあると考えられた。
漢方では果実が蒔蘿子、じらいしと呼ばれ、
香辛料としてもこの果実が用いられる。
なお、果実は一見すると種子のようである。
葉にも芳香があり、香草として利用され、
スープやピクルスの風味付けに使われる。
ディルはキャラウェイやフェンネルと似ており、
混同されたり代用品とされたりということも多い。
ただし、果実には辛みがある。
ディルが特に合う食材は川魚だろう。
川魚特有の臭みを消し、
爽やかな香りを付け加える。
ヨーロッパ全般でよく使われる香草であるが、
特によく使われるのはポーランド料理と
ロシア料理そしてドイツのザワークラウトだ。
ロシアではウクロープと呼ばれており、
鮭のマリネやふかしたジャガイモ、
ボルシシにも使われる。
香りには鎮静作用があるとされており、
夜泣きをする赤ん坊に
煎じ汁を与えていたという記録もある。
本邦ではあまり多用される香辛料ではないが、
マリネやポテトサラダに入れてみると、
普段とは違う味わいが楽しめるだろう。
原産地はよくわかっておらず、
中央アジアからヨーロッパまで、
幅広く生育している。
スペイン語ではイネルドと呼ばれ、
本邦へ伝わった際にイノンドと訛ったものの、
現在では英語名のディルが一般的である。
薬草としての歴史が古く、
胃薬や整腸剤として重宝されてきた他、
魔術を防ぐ力もあると考えられた。
漢方では果実が蒔蘿子、じらいしと呼ばれ、
香辛料としてもこの果実が用いられる。
なお、果実は一見すると種子のようである。
葉にも芳香があり、香草として利用され、
スープやピクルスの風味付けに使われる。
ディルはキャラウェイやフェンネルと似ており、
混同されたり代用品とされたりということも多い。
ただし、果実には辛みがある。
ディルが特に合う食材は川魚だろう。
川魚特有の臭みを消し、
爽やかな香りを付け加える。
ヨーロッパ全般でよく使われる香草であるが、
特によく使われるのはポーランド料理と
ロシア料理そしてドイツのザワークラウトだ。
ロシアではウクロープと呼ばれており、
鮭のマリネやふかしたジャガイモ、
ボルシシにも使われる。
香りには鎮静作用があるとされており、
夜泣きをする赤ん坊に
煎じ汁を与えていたという記録もある。
本邦ではあまり多用される香辛料ではないが、
マリネやポテトサラダに入れてみると、
普段とは違う味わいが楽しめるだろう。
2019年7月28日日曜日
キャベツ
本邦において非常にメジャーな葉物野菜である。
しかし、原産地はイベリア半島であり、
本邦では明治期になってようやく栽培され、
普及したのは大戦後のことである。
当初は英語名そのままにキャベッジやキャベイジと
呼ばれていたが、中国語での甘藍、カンランと
呼ばれるようになり、その後キャベツとなった。
キャベツの葉は外側ほど成長が早い。
その結果、内側の葉は内へと巻き込まれ、
外側の葉に包まれて球状となる。
古代から品種改良が繰り返されてきた植物で、
ケールやブロッコリーなど、
かなり様子の違うものも生み出された。
本邦では緯度や標高によって収穫時期を
ずらすことができるため、
一年中流通している。
このため、いつでも一定の価格で購入でき、
しかも、本当に多くの調理法があるため、
最も一般的な野菜のひとつとなっている。
栄養素も豊富で、キャベツさえ食べていれば
健康に過ごせると主張する者すらいる。
昔は航海中に新鮮な野菜類を食べることができず、
ビタミン欠乏による病が恐れられていたが、
ドイツ人はキャベツの漬物によってそれを防いでいた。
酸っぱいキャベツ、ザワークラウトと呼ばれる漬物は、
そのまま食べても良いし、汁物の具材としても
よく使われ、冬の風物詩となっている。
イギリス人はそうしたドイツ人の食文化を揶揄し、
彼らへの蔑称としてクラウツと呼ぶ。
一方、イギリス人はライムをビタミン源としたため、
ライミーと呼ばれている。
ついでに言うとフランス人は蛙食いという意味で
フロッギーと呼ばれる。ビタミンは関係ない。
こうした、代表的な食べ物で他国を揶揄するという
差別的なステレオタイプは世界各地に存在し、
本邦の場合は寿司が該当するようだ。
それはそうと、私はザワークラウトが好きだ。
色々な食べ方があるが、一番はニューヨークの
名物料理ルーベンサンドだ。
ライ麦のパンでコンビーフ、ザワークラウト、
スイスチーズ、ロシアンドレッシングを
挟んで焼いたサンドイッチである。
ロシアンドレッシングはアメリカで考案された
ドレッシングで、マヨネーズとケチャップを混ぜ、
色々と香辛料を加えたピリ辛なもののことだ。
本邦ではお手軽にサウザンアイランドドレッシングで
代用するのがいいだろう。
ところで、私は時々ザワークラウトを自作するのだが、
酸みや塩を好みで加減できるため、
瓶詰を買うより美味しく出来上がる。
ただし、失敗すると腐ったキャベツになるので、
はじめはレシピ通りに作り、
慣れてきたらアレンジを加えていくのがいいだろう。
しかし、原産地はイベリア半島であり、
本邦では明治期になってようやく栽培され、
普及したのは大戦後のことである。
当初は英語名そのままにキャベッジやキャベイジと
呼ばれていたが、中国語での甘藍、カンランと
呼ばれるようになり、その後キャベツとなった。
キャベツの葉は外側ほど成長が早い。
その結果、内側の葉は内へと巻き込まれ、
外側の葉に包まれて球状となる。
古代から品種改良が繰り返されてきた植物で、
ケールやブロッコリーなど、
かなり様子の違うものも生み出された。
本邦では緯度や標高によって収穫時期を
ずらすことができるため、
一年中流通している。
このため、いつでも一定の価格で購入でき、
しかも、本当に多くの調理法があるため、
最も一般的な野菜のひとつとなっている。
栄養素も豊富で、キャベツさえ食べていれば
健康に過ごせると主張する者すらいる。
昔は航海中に新鮮な野菜類を食べることができず、
ビタミン欠乏による病が恐れられていたが、
ドイツ人はキャベツの漬物によってそれを防いでいた。
酸っぱいキャベツ、ザワークラウトと呼ばれる漬物は、
そのまま食べても良いし、汁物の具材としても
よく使われ、冬の風物詩となっている。
イギリス人はそうしたドイツ人の食文化を揶揄し、
彼らへの蔑称としてクラウツと呼ぶ。
一方、イギリス人はライムをビタミン源としたため、
ライミーと呼ばれている。
ついでに言うとフランス人は蛙食いという意味で
フロッギーと呼ばれる。ビタミンは関係ない。
こうした、代表的な食べ物で他国を揶揄するという
差別的なステレオタイプは世界各地に存在し、
本邦の場合は寿司が該当するようだ。
それはそうと、私はザワークラウトが好きだ。
色々な食べ方があるが、一番はニューヨークの
名物料理ルーベンサンドだ。
ライ麦のパンでコンビーフ、ザワークラウト、
スイスチーズ、ロシアンドレッシングを
挟んで焼いたサンドイッチである。
ロシアンドレッシングはアメリカで考案された
ドレッシングで、マヨネーズとケチャップを混ぜ、
色々と香辛料を加えたピリ辛なもののことだ。
本邦ではお手軽にサウザンアイランドドレッシングで
代用するのがいいだろう。
ところで、私は時々ザワークラウトを自作するのだが、
酸みや塩を好みで加減できるため、
瓶詰を買うより美味しく出来上がる。
ただし、失敗すると腐ったキャベツになるので、
はじめはレシピ通りに作り、
慣れてきたらアレンジを加えていくのがいいだろう。
2019年7月20日土曜日
モグラ
地中で生活する小型の哺乳類である。
ヒミズやデスマンなど変わった種類もいるが、
今回は一般的なモグラについて紹介しよう。
モグラといえば、地中に自在に穴を掘り、
縦横無尽に移動するイメージが持たれているが、
実際には穴掘りは限定的だ。
彼らの巣穴は一代で築き上げるものではなく、
一族で共有し、子孫に継承される。
つまり、モグラが穴を掘るのは巣穴の拡張と、
破損した箇所を修繕する時である。
モグラの体は小さく、体力もそれほどないため、
穴掘りという重労働を継続するのは難しいのだ。
それでいて、燃費は非常に悪い。
モグラは大食漢で、一日の食事量が多く、
なおかつ、飢餓に弱い。
半日も食べずにいれば死んでしまうだろう。
畑を荒らすことで農業を営む人々から嫌われ、
害獣として駆除されるモグラだが、
作物自体を食べるわけではない。
巣穴の拡張の際に作物の根を破損してしまう、
巣穴に入り込んだネズミなどが
作物の根を齧る、というようなことが真相である。
彼らは肉食動物であり、
ミミズや昆虫を食べて生きている。
地中を掘り進むミミズや昆虫がモグラの巣穴に
行き当たると、巣の中に落下することになるのだが、
それがモグラのメインディッシュとなる。
巣穴は獲物を捕るための罠でもあるのだ。
なお、モグラは巣穴の中に排泄専用の部屋を作る。
つまりトイレがある。
面白いことに、このトイレのある部分の地上には、
アンモニアがあることで有利となる
特定の種類のキノコが生える。
ナガエノスギタケなどのそうしたキノコが
生えている場所を掘ると、
モグラの巣穴を見つけることができるのだ。
さて、モグラという名前だが、
本邦では古くはウコロモチと呼ばれていた。
それが時代と共にムクラモチ、
モグラモチと変わり、今の形となった。
土龍と書いてモグラと読むが、
実はこれは江戸期に誤用されたのが定着したもので、
本来はモグラの主食であるミミズのことだ。
龍は細長いものである。
モグラよりミミズに相応しい名前だ。
前述したとおり畑を荒らすことで害獣とされる
モグラだが、もっと深刻な理由から駆除される。
堤防の強度を低下させてしまうのだ。
これはもう治水という人類文明への敵対行動である。
その一方で、モグラの毛皮はその柔らかさから
古くより重宝されてきた。
現代では手間がかかるため
わざわざ小さなモグラを狩り集めたりはしないが、
ビンテージコートなどでは
モグラ毛皮のものが残っているだろう。
最後にモグラに関する誤解をもうひとつ改めておこう。
日光を浴びるとショック死するというものだ。
目の退化したモグラだが、
実は光を感じ取ることのできる器官を持たない。
地上に出たとしても、彼らにとっては
土が無いだけで巣穴の中とそう変わらない。
日光にさらされても気付きすらしないのだ。
ではなぜ、地上で死んでいるモグラがいるかというと、
それは巣穴から追い出され野垂れ死んだ個体だ。
巣穴は一族の宝であるわけだが、
そこから追い出されれば待っているのは餓死である。
一体、どんな悪さをしたら
地上へ追放されるのかは分からないが、
モグラの世界にもルールがあるのだろう。
ヒミズやデスマンなど変わった種類もいるが、
今回は一般的なモグラについて紹介しよう。
モグラといえば、地中に自在に穴を掘り、
縦横無尽に移動するイメージが持たれているが、
実際には穴掘りは限定的だ。
彼らの巣穴は一代で築き上げるものではなく、
一族で共有し、子孫に継承される。
つまり、モグラが穴を掘るのは巣穴の拡張と、
破損した箇所を修繕する時である。
モグラの体は小さく、体力もそれほどないため、
穴掘りという重労働を継続するのは難しいのだ。
それでいて、燃費は非常に悪い。
モグラは大食漢で、一日の食事量が多く、
なおかつ、飢餓に弱い。
半日も食べずにいれば死んでしまうだろう。
畑を荒らすことで農業を営む人々から嫌われ、
害獣として駆除されるモグラだが、
作物自体を食べるわけではない。
巣穴の拡張の際に作物の根を破損してしまう、
巣穴に入り込んだネズミなどが
作物の根を齧る、というようなことが真相である。
彼らは肉食動物であり、
ミミズや昆虫を食べて生きている。
地中を掘り進むミミズや昆虫がモグラの巣穴に
行き当たると、巣の中に落下することになるのだが、
それがモグラのメインディッシュとなる。
巣穴は獲物を捕るための罠でもあるのだ。
なお、モグラは巣穴の中に排泄専用の部屋を作る。
つまりトイレがある。
面白いことに、このトイレのある部分の地上には、
アンモニアがあることで有利となる
特定の種類のキノコが生える。
ナガエノスギタケなどのそうしたキノコが
生えている場所を掘ると、
モグラの巣穴を見つけることができるのだ。
さて、モグラという名前だが、
本邦では古くはウコロモチと呼ばれていた。
それが時代と共にムクラモチ、
モグラモチと変わり、今の形となった。
土龍と書いてモグラと読むが、
実はこれは江戸期に誤用されたのが定着したもので、
本来はモグラの主食であるミミズのことだ。
龍は細長いものである。
モグラよりミミズに相応しい名前だ。
前述したとおり畑を荒らすことで害獣とされる
モグラだが、もっと深刻な理由から駆除される。
堤防の強度を低下させてしまうのだ。
これはもう治水という人類文明への敵対行動である。
その一方で、モグラの毛皮はその柔らかさから
古くより重宝されてきた。
現代では手間がかかるため
わざわざ小さなモグラを狩り集めたりはしないが、
ビンテージコートなどでは
モグラ毛皮のものが残っているだろう。
最後にモグラに関する誤解をもうひとつ改めておこう。
日光を浴びるとショック死するというものだ。
目の退化したモグラだが、
実は光を感じ取ることのできる器官を持たない。
地上に出たとしても、彼らにとっては
土が無いだけで巣穴の中とそう変わらない。
日光にさらされても気付きすらしないのだ。
ではなぜ、地上で死んでいるモグラがいるかというと、
それは巣穴から追い出され野垂れ死んだ個体だ。
巣穴は一族の宝であるわけだが、
そこから追い出されれば待っているのは餓死である。
一体、どんな悪さをしたら
地上へ追放されるのかは分からないが、
モグラの世界にもルールがあるのだろう。
2019年7月19日金曜日
ミミズ
環形動物という種類の生き物がいる。
ケヤリムシやウミケムシ、ゴカイなどがそれだ。
そのうち環帯類と呼ばれるものには
ミミズとヒルがいる。
ミミズの名の由来は、目見えずで、それが訛り、
メメズとなり、それが更に訛ってミミズとなった。
現代でもメメズと呼ぶ地域がある。
都心部でも見られるため外形をわざわざ説明する
必要はないかもしれないが、手足も頭も
触覚も目も耳も無い口だけの存在である。
一見すると非常に原始的な生き物のように感じられるが、
ゴカイのような複雑な動物が土中の生活に適応した結果、
不要な器官が退化したものである。
目は無いと前述したが、
よく見れば退化した目の痕跡があり、
種類によっては水中呼吸用のエラがある。
また、体表はつるりとしているように見えるが、
頑丈な毛が生えており、この毛をうまくひっかけ、
蠕動によって前進する。
骨もない柔らかな体をしているが、
体内の水圧を変える能力を持っているため、
一時的に一部を固くすることが可能だ。
これにより、土を掘り進むことができる。
ミミズは体全体で光を感じることができ、
土中にあってもある程度自分の位置を把握できるという。
呼吸も皮膚呼吸である。
ミミズといえば頭の近くに
特徴的な帯があるのを知っていると思う。
実はあれは生殖器官の納められた部位だ。
ちなみに雌雄同体である。
さて、ミミズといえば土を食らうイメージが
強いのではないだろうか。
彼らは微生物の死骸や枯れ葉を主食としており、
そのために土ごと食らう。
種類によっては地上に顔を出し、枯れ葉を食う。
土を食い、微生物や有機物片を消化して糞として出すと、
この糞は上質な土となる。
ここでいう上質な土とは農業に適した土のことだ。
したがって、古来ミミズは益虫として有難がられてきた。
実は一部例外もあるのだが、まあいいだろう。
ところでミミズを食べることができることは
知っているだろうか。
実は栄養価が豊富で、世界の様々な地域で食べられている。
どうやら寄生虫の問題もほとんど無いようだ。
土を消化管から抜く手間が掛かるぐらいか。
味は癖も風味もほとんど無い。
なのでさっと茹で、薬味や調味料を使い、
食感を楽しむ料理となる。
ただ、強い味を持つ個体がいるらしく、
三日間は後味が消えないという噂もある。
漢方薬では赤竜や地竜と呼ばれ、
皮を乾燥させたものが解熱剤として使われてきた。
喘息の発作にも効くらしい。
こんなところだろうか。
そうそう、雨の日によくミミズが地上を這い回っているが、
あれは土中に水が入り込み、酸欠になることが原因だ。
だが、都会では運悪くコンクリート上へ進出してしまい、
その後、土の中に戻れぬまま干からびてしまう。
ちなみに、干からびたミミズの匂いは
犬の大好きな香りらしい。
ケヤリムシやウミケムシ、ゴカイなどがそれだ。
そのうち環帯類と呼ばれるものには
ミミズとヒルがいる。
ミミズの名の由来は、目見えずで、それが訛り、
メメズとなり、それが更に訛ってミミズとなった。
現代でもメメズと呼ぶ地域がある。
都心部でも見られるため外形をわざわざ説明する
必要はないかもしれないが、手足も頭も
触覚も目も耳も無い口だけの存在である。
一見すると非常に原始的な生き物のように感じられるが、
ゴカイのような複雑な動物が土中の生活に適応した結果、
不要な器官が退化したものである。
目は無いと前述したが、
よく見れば退化した目の痕跡があり、
種類によっては水中呼吸用のエラがある。
また、体表はつるりとしているように見えるが、
頑丈な毛が生えており、この毛をうまくひっかけ、
蠕動によって前進する。
骨もない柔らかな体をしているが、
体内の水圧を変える能力を持っているため、
一時的に一部を固くすることが可能だ。
これにより、土を掘り進むことができる。
ミミズは体全体で光を感じることができ、
土中にあってもある程度自分の位置を把握できるという。
呼吸も皮膚呼吸である。
ミミズといえば頭の近くに
特徴的な帯があるのを知っていると思う。
実はあれは生殖器官の納められた部位だ。
ちなみに雌雄同体である。
さて、ミミズといえば土を食らうイメージが
強いのではないだろうか。
彼らは微生物の死骸や枯れ葉を主食としており、
そのために土ごと食らう。
種類によっては地上に顔を出し、枯れ葉を食う。
土を食い、微生物や有機物片を消化して糞として出すと、
この糞は上質な土となる。
ここでいう上質な土とは農業に適した土のことだ。
したがって、古来ミミズは益虫として有難がられてきた。
実は一部例外もあるのだが、まあいいだろう。
ところでミミズを食べることができることは
知っているだろうか。
実は栄養価が豊富で、世界の様々な地域で食べられている。
どうやら寄生虫の問題もほとんど無いようだ。
土を消化管から抜く手間が掛かるぐらいか。
味は癖も風味もほとんど無い。
なのでさっと茹で、薬味や調味料を使い、
食感を楽しむ料理となる。
ただ、強い味を持つ個体がいるらしく、
三日間は後味が消えないという噂もある。
漢方薬では赤竜や地竜と呼ばれ、
皮を乾燥させたものが解熱剤として使われてきた。
喘息の発作にも効くらしい。
こんなところだろうか。
そうそう、雨の日によくミミズが地上を這い回っているが、
あれは土中に水が入り込み、酸欠になることが原因だ。
だが、都会では運悪くコンクリート上へ進出してしまい、
その後、土の中に戻れぬまま干からびてしまう。
ちなみに、干からびたミミズの匂いは
犬の大好きな香りらしい。
2019年7月18日木曜日
コーリャン
高粱と書く熱帯アフリカ原産の穀物である。
モロコシやタカキビ、ソルガムとも呼ばれる。
エチオピアやエジプトで栽培されていたこの植物は
古い時代に世界各地へと広まっていった。
中華文明における五穀のひとつ、稷は具体的に
何であったのかがはっきりしていないが、
この穀物であった可能性が高い。
大抵は粥かフラットブレッドに加工される。
食味としては蕎麦に似ているが、
独特のえぐみがあり、少々食べにくい。
しかし、乾燥地帯でも育つことから、
稲や麦が育たぬ地域では
この穀物が頼みの綱である。
特にチャイナ北東部や朝鮮半島では
長きにわたってこの穀物が
人々の命を繋いできた。
なお、品種によっては茎に糖分が多いため、
サトウキビのように糖蜜を採ることができる。
品種改良も進み、糖蜜採取専用のスウィートソルガムと
呼ばれるものはアメリカ合衆国において
シロップの原材料として栽培されている。
現代ではコーリャンに依存した生活をする地域は少なく、
チャイナでも白酒などの高粱酒の材料として
使われるのが主な消費となっている。
白酒はまるでプラモデル用の接着剤のような香りのする
非常に強い酒で、熟成年数を経る毎に
口当たりが穏やかになっていく。
味や癖の濃い料理とよく合い、
ピータンなどと一緒に食べていると
気付けば結構な量を飲んでしまう。
アルコール度数がとても高いため、
飲みすぎには注意されたし。
モロコシやタカキビ、ソルガムとも呼ばれる。
エチオピアやエジプトで栽培されていたこの植物は
古い時代に世界各地へと広まっていった。
中華文明における五穀のひとつ、稷は具体的に
何であったのかがはっきりしていないが、
この穀物であった可能性が高い。
大抵は粥かフラットブレッドに加工される。
食味としては蕎麦に似ているが、
独特のえぐみがあり、少々食べにくい。
しかし、乾燥地帯でも育つことから、
稲や麦が育たぬ地域では
この穀物が頼みの綱である。
特にチャイナ北東部や朝鮮半島では
長きにわたってこの穀物が
人々の命を繋いできた。
なお、品種によっては茎に糖分が多いため、
サトウキビのように糖蜜を採ることができる。
品種改良も進み、糖蜜採取専用のスウィートソルガムと
呼ばれるものはアメリカ合衆国において
シロップの原材料として栽培されている。
現代ではコーリャンに依存した生活をする地域は少なく、
チャイナでも白酒などの高粱酒の材料として
使われるのが主な消費となっている。
白酒はまるでプラモデル用の接着剤のような香りのする
非常に強い酒で、熟成年数を経る毎に
口当たりが穏やかになっていく。
味や癖の濃い料理とよく合い、
ピータンなどと一緒に食べていると
気付けば結構な量を飲んでしまう。
アルコール度数がとても高いため、
飲みすぎには注意されたし。
2019年7月17日水曜日
黍
キビはアワより少し大きい穀物である。
中華文明では五穀のひとつに挙げられており、
広い範囲で栽培されてきた。
味はやや甘く、少しだけえぐみがある。
このえぐみのせいで好みが分かれるのだが、
調理法によって除去することが可能だ。
例えば、黍だけの粥はほのかに甘いが、
しつこさを感じさせる味わいがあり、
沢山食べるのに向かない。
しかし、豆と共に炊くと、豆の味を引き立て、
えぐみが抑えられる。
つまり、黍は主食穀物でありながら、
それだけでは食べにくいものなのだ。
米に取って代わられたのも仕方がないかもしれない。
本邦へは他の穀物より遅くやってきたためか、
五穀に数えられてはおらず、
主食よりも菓子の材料という認識が強い。
桃太郎が家来に与えた きびだんご が有名だが、
吉備団子は黍ではなく米で作る。
そして、桃太郎の話の由来となった時代には
米で作る吉備団子はまだ無かった。
ということは きびだんご は黍団子なのかというと、
実はそう簡単にはいかない。
もちろん、黍の餅は昔からよく作られており、
黍団子というものはある。
だが、より原型に近い古い桃太郎の話では、
団子の材料を黍に限定しておらず、
十団子という糸で繋いだものであったらしい。
その十団子が黍でできていた可能性は
十分にあるが、桃太郎が きびだんご を
家来に与えるという話は後世にできあがったものだ。
吉備国のお話であることから、
吉備と黍をかけたものである。
その後、明治期に桃太郎の話にあやかり、
吉備の名産品として求肥の吉備団子が
作られるようになった。
元々吉備津神社で黍団子が名物であったという
話もあるが、キビ繋がりの後付けの可能性もある。
吉備津彦が温羅を退治したという伝承と、
桃太郎の鬼退治を抱き合わせ、
吉備団子のアピールが行われているが、
結局のところ宣伝文句に過ぎないようだ。
それでも子供は皆一度は思うだろう。
きびだんご を食べてみたいと。
岡山土産の吉備団子を食べさせるか、
黍餅をこさえて食べさせるか、
団子を糸で繋いで十団子を食べさせるか、
好きなものを選ぶといいだろう。
団子でありさえすれば何でもいいのではないだろうか。
中華文明では五穀のひとつに挙げられており、
広い範囲で栽培されてきた。
味はやや甘く、少しだけえぐみがある。
このえぐみのせいで好みが分かれるのだが、
調理法によって除去することが可能だ。
例えば、黍だけの粥はほのかに甘いが、
しつこさを感じさせる味わいがあり、
沢山食べるのに向かない。
しかし、豆と共に炊くと、豆の味を引き立て、
えぐみが抑えられる。
つまり、黍は主食穀物でありながら、
それだけでは食べにくいものなのだ。
米に取って代わられたのも仕方がないかもしれない。
本邦へは他の穀物より遅くやってきたためか、
五穀に数えられてはおらず、
主食よりも菓子の材料という認識が強い。
桃太郎が家来に与えた きびだんご が有名だが、
吉備団子は黍ではなく米で作る。
そして、桃太郎の話の由来となった時代には
米で作る吉備団子はまだ無かった。
ということは きびだんご は黍団子なのかというと、
実はそう簡単にはいかない。
もちろん、黍の餅は昔からよく作られており、
黍団子というものはある。
だが、より原型に近い古い桃太郎の話では、
団子の材料を黍に限定しておらず、
十団子という糸で繋いだものであったらしい。
その十団子が黍でできていた可能性は
十分にあるが、桃太郎が きびだんご を
家来に与えるという話は後世にできあがったものだ。
吉備国のお話であることから、
吉備と黍をかけたものである。
その後、明治期に桃太郎の話にあやかり、
吉備の名産品として求肥の吉備団子が
作られるようになった。
元々吉備津神社で黍団子が名物であったという
話もあるが、キビ繋がりの後付けの可能性もある。
吉備津彦が温羅を退治したという伝承と、
桃太郎の鬼退治を抱き合わせ、
吉備団子のアピールが行われているが、
結局のところ宣伝文句に過ぎないようだ。
それでも子供は皆一度は思うだろう。
きびだんご を食べてみたいと。
岡山土産の吉備団子を食べさせるか、
黍餅をこさえて食べさせるか、
団子を糸で繋いで十団子を食べさせるか、
好きなものを選ぶといいだろう。
団子でありさえすれば何でもいいのではないだろうか。
2019年7月16日火曜日
粟
アワは荒地でも育ちやすい穀物である。
米と比べるとカロリーが少なく、
腹持ちも悪いという欠点があるが、乾燥に強い。
華北では元々、粟こそが主食であり、
米の字は本来はこの穀物を指すものだった。
そのまま炊いたり粥にして食べるほか、
粉に挽いて麺類を作ることもできる。
むしろ最初の麺は粟だったと言われている。
西方から麦が伝わると廃れてしまったが、
唐代までは租税の納付物であった。
本邦でも最も古い栽培穀物だと考えられており、
古事記でも日本書紀でも五穀に数えられ、
現在でも新嘗祭で奉納される。
連作障害を起こす点や、腹持ちの悪さから、
やはり本邦でも米と比べると一段下の存在と
見做されてきたが、味は悪くないため、
稗のように嫌われてはいない。
大正期までは地域によっては主食であり続けたが、
稲の品種改良や農業技術の発達により
どこでも米が食べられるようになり廃れた。
カロリーが低いというのは欠点であったが、
飽食の時代である現在、
それは長所として見直されている。
菓子類を低カロリーにするために利用されるほか、
ダイエット食として好む層がいるのだ。
栄養そのものは蛋白質や脂質が米より多いため、
雑穀米として米と共に炊かれることも多くなった。
なお、粟はエノコログサの変種である。
あの猫じゃらしとして知られるエノコログサだ。
駆除されないよう似ていった結果、
雑草が穀物化した例はいくつかあるが、
この粟に関しては少し事情が異なる。
そもそも粟こそが、東アジアの穀物の祖なのだ。
畑の中の雑草であるエノコログサが
人間に有用なものに転じたわけではない。
たまたま穂のでかいエノコログサを見つけた人間が
これを栽培するようになったのだ。
気が向いたら粟粥でも作って
古代に思いを馳せてみるのもいいだろう。
米と比べるとカロリーが少なく、
腹持ちも悪いという欠点があるが、乾燥に強い。
華北では元々、粟こそが主食であり、
米の字は本来はこの穀物を指すものだった。
そのまま炊いたり粥にして食べるほか、
粉に挽いて麺類を作ることもできる。
むしろ最初の麺は粟だったと言われている。
西方から麦が伝わると廃れてしまったが、
唐代までは租税の納付物であった。
本邦でも最も古い栽培穀物だと考えられており、
古事記でも日本書紀でも五穀に数えられ、
現在でも新嘗祭で奉納される。
連作障害を起こす点や、腹持ちの悪さから、
やはり本邦でも米と比べると一段下の存在と
見做されてきたが、味は悪くないため、
稗のように嫌われてはいない。
大正期までは地域によっては主食であり続けたが、
稲の品種改良や農業技術の発達により
どこでも米が食べられるようになり廃れた。
カロリーが低いというのは欠点であったが、
飽食の時代である現在、
それは長所として見直されている。
菓子類を低カロリーにするために利用されるほか、
ダイエット食として好む層がいるのだ。
栄養そのものは蛋白質や脂質が米より多いため、
雑穀米として米と共に炊かれることも多くなった。
なお、粟はエノコログサの変種である。
あの猫じゃらしとして知られるエノコログサだ。
駆除されないよう似ていった結果、
雑草が穀物化した例はいくつかあるが、
この粟に関しては少し事情が異なる。
そもそも粟こそが、東アジアの穀物の祖なのだ。
畑の中の雑草であるエノコログサが
人間に有用なものに転じたわけではない。
たまたま穂のでかいエノコログサを見つけた人間が
これを栽培するようになったのだ。
気が向いたら粟粥でも作って
古代に思いを馳せてみるのもいいだろう。
2019年7月15日月曜日
稗
ヒエは冷害に強い穀物である。
米と比べると小粒で、
パサパサなのに粘り気が強い。
寒さに強いものの、収穫量が多いわけではなく、
脱穀などの手間も稲より大きい。
本邦では米のように炊いて食べられることが
多かったが、食味が悪く、嫌われていた。
稗の字も卑しい、つまり身分の低いという
意味合いを持ち合わせており、
蔑まれてきたことがわかる。
だが、日本書紀に記された五穀のひとつであり、
新嘗祭においても奉納される。
これは、飢饉の際に幾度も人々を救い、
寒冷地での重要な食物であったことを
意味している。
ただし、人々の記憶としては、
飢饉の辛い時に食べたものとして残り、
そういった意味でも嫌われていた。
とはいえ、米の品種改良が進み、農耕技術も発達し、
寒冷地でも十分な稲作ができるようになるまでは、
東北地方や北海道の貴重な食料であった。
特に南部や下北、つまり岩手県北部から
青森県東部において、冷害に強い稗は
無くてはならない食べ物であり、
少しでも美味しく食べる工夫が為されてきた。
アイヌでも文化神が天上より密かに持ち出し
人間に与えた重要な作物として扱われ、
酒造りにも稗が使われていた。
華北や朝鮮半島でも稗は人々の命を繋いできたし、
雲南の少数民族は今でも稗を大切にしている。
麦や粟や黍ほど重視されはしないが、
稗もれっきとした穀物なのである。
なお、明治期に米がどこでも作れるようになり
ほぼ姿を消した稗だが、栄養価が高いとして
現代になって再評価されている。
しかし、前述のように収穫量が多いわけではなく、
加工にかかるコストも大きい。
このため、歴史的に冷遇されてきたこの穀物は、
現在では高価な食材と化している。
米と比べると小粒で、
パサパサなのに粘り気が強い。
寒さに強いものの、収穫量が多いわけではなく、
脱穀などの手間も稲より大きい。
本邦では米のように炊いて食べられることが
多かったが、食味が悪く、嫌われていた。
稗の字も卑しい、つまり身分の低いという
意味合いを持ち合わせており、
蔑まれてきたことがわかる。
だが、日本書紀に記された五穀のひとつであり、
新嘗祭においても奉納される。
これは、飢饉の際に幾度も人々を救い、
寒冷地での重要な食物であったことを
意味している。
ただし、人々の記憶としては、
飢饉の辛い時に食べたものとして残り、
そういった意味でも嫌われていた。
とはいえ、米の品種改良が進み、農耕技術も発達し、
寒冷地でも十分な稲作ができるようになるまでは、
東北地方や北海道の貴重な食料であった。
特に南部や下北、つまり岩手県北部から
青森県東部において、冷害に強い稗は
無くてはならない食べ物であり、
少しでも美味しく食べる工夫が為されてきた。
アイヌでも文化神が天上より密かに持ち出し
人間に与えた重要な作物として扱われ、
酒造りにも稗が使われていた。
華北や朝鮮半島でも稗は人々の命を繋いできたし、
雲南の少数民族は今でも稗を大切にしている。
麦や粟や黍ほど重視されはしないが、
稗もれっきとした穀物なのである。
なお、明治期に米がどこでも作れるようになり
ほぼ姿を消した稗だが、栄養価が高いとして
現代になって再評価されている。
しかし、前述のように収穫量が多いわけではなく、
加工にかかるコストも大きい。
このため、歴史的に冷遇されてきたこの穀物は、
現在では高価な食材と化している。
2019年7月11日木曜日
フッ化水素
たまには時事ネタに乗ってみようと思う。
フッ化水素とは、その名の通り
フッ素と水素の化合物である。
フッ素は毒性の強い物質だが、
精密な電子回路の形成に利用される。
半導体の上に薄い膜を作った後に、
フォトレジストによって必要な回路を描き、
フッ化水素により不要な膜を除去する。
この時、フッ化水素に不純物が混じっていると、
電子回路が正しく形成されない。
高純度のフッ化水素を精製するには
高い技術が必要であり、現在のところ
本邦が世界的なシェアを占めている。
さて、フッ素には強い毒性があると前述したが、
なんと、ガラスを溶かす。
保存にはポリエチレンやフッ素樹脂の容器が必要だ。
ただし、それらの容器も徐々に侵蝕するため、
長期間の保存は難しい。
また、カルシウムも溶かすため、
人体への影響としては骨の溶解が挙げられる。
体からカルシウムが失われ、
心臓の働きが正常でなくなり死亡する。
猛毒だが、化学兵器として使うには前述のように
扱いが極めて難しい性質があるため向いていない。
だが、燐を利用して扱いやすさを向上させると、
殺傷能力も高まった毒ガスとなる。
サリンガスだ。
フッ化水素は化学兵器だけに使われるものではない。
酸化ウランにフッ化水素を化合させると
六フッ化ウランが出来上がる。
六フッ化ウランを遠心分離機にかけると、
ウランの同位体を分別することができる。
つまり、ただのウランから、
核分裂性の放射性ウランだけを
取り出すことができるのだ。
言わずもがなであるが、これは原子爆弾の材料である。
要するに、高純度フッ化水素は
核兵器を作るために必要な物質なのだ。
そんな危険な物質を誰にでも売ってしまっては
問題があるため、国際的に取引が制限されている。
半導体を作るために使う場合でも、
いつ、誰が、どこの工場で、どれだけの数量の製品を
作るために必要なのか、事細かに申請し、
審査されたうえでようやく売買することが可能だ。
半導体は我々が使う電子機器の中に
当たり前のように納まっている。
現代の日常とは切っても切れない関係にあるが、
その製造の過程には極めて慎重に扱わなければならない
危険な物質が使われていたのである。
フッ化水素とは、その名の通り
フッ素と水素の化合物である。
フッ素は毒性の強い物質だが、
精密な電子回路の形成に利用される。
半導体の上に薄い膜を作った後に、
フォトレジストによって必要な回路を描き、
フッ化水素により不要な膜を除去する。
この時、フッ化水素に不純物が混じっていると、
電子回路が正しく形成されない。
高純度のフッ化水素を精製するには
高い技術が必要であり、現在のところ
本邦が世界的なシェアを占めている。
さて、フッ素には強い毒性があると前述したが、
なんと、ガラスを溶かす。
保存にはポリエチレンやフッ素樹脂の容器が必要だ。
ただし、それらの容器も徐々に侵蝕するため、
長期間の保存は難しい。
また、カルシウムも溶かすため、
人体への影響としては骨の溶解が挙げられる。
体からカルシウムが失われ、
心臓の働きが正常でなくなり死亡する。
猛毒だが、化学兵器として使うには前述のように
扱いが極めて難しい性質があるため向いていない。
だが、燐を利用して扱いやすさを向上させると、
殺傷能力も高まった毒ガスとなる。
サリンガスだ。
フッ化水素は化学兵器だけに使われるものではない。
酸化ウランにフッ化水素を化合させると
六フッ化ウランが出来上がる。
六フッ化ウランを遠心分離機にかけると、
ウランの同位体を分別することができる。
つまり、ただのウランから、
核分裂性の放射性ウランだけを
取り出すことができるのだ。
言わずもがなであるが、これは原子爆弾の材料である。
要するに、高純度フッ化水素は
核兵器を作るために必要な物質なのだ。
そんな危険な物質を誰にでも売ってしまっては
問題があるため、国際的に取引が制限されている。
半導体を作るために使う場合でも、
いつ、誰が、どこの工場で、どれだけの数量の製品を
作るために必要なのか、事細かに申請し、
審査されたうえでようやく売買することが可能だ。
半導体は我々が使う電子機器の中に
当たり前のように納まっている。
現代の日常とは切っても切れない関係にあるが、
その製造の過程には極めて慎重に扱わなければならない
危険な物質が使われていたのである。
2019年7月10日水曜日
ニベクヴェ
コビトカバやピグミーヒポポタマスと呼ばれる
小型の河馬である。
ニベクヴェという名前は伝説上の生き物、
黒い豚の怪物の名だが、コビトカバのことを
指していると考えられる。
調べても現地語での呼び名が分からなかったため、
便宜上、ニベクヴェの名でコビトカバを紹介する。
コビトカバはその名の通り小さなカバである。
大きさは山羊程度で、一見すると
カバの子供のようにも見える。
しかし、我々のよく知るカバとは異なり、
水中にいる時に目、鼻、耳が水面に出るよう
上部に突出してはいない。
このため、マナティーやジュゴンのような
愛嬌のある顔つきをしている。
体色は黒く、カバ同様に赤い汗によって
毛の無い体が保護される。
一番の違いは、水中にいる時間が短く、
陸上の生活がメインであることだろう。
川の土手に空いた穴を巣穴として暮らし、
シダの葉などを食べる草食性である。
さて、このコビトカバ、ナイジェリアや
シエラレオネの熱帯雨林に生息することから
なかなか発見されなかった。
生物学者は頭蓋骨などを標本として入手しては
いたが、カバの奇形種であると断定していた。
そんな中、ドイツの動物商人が現地の伝説、
ニベクヴェとセンゲの話を聞いて、
未発見の動物がいるはずだと探検を行った。
センゲは角を持つ怪物の名だが、
牙を角と見間違えられたモリイノシシだと
考えられている。
果たして、商人は生きたコビトカバを発見し、
この小さなカバが奇形ではなく
れっきとした種族であることを突き止めた。
世界三大珍獣の一角であるコビトカバの生態は
まだまだ分かっていないことだらけである。
だが、世界各地の動物園で飼育されており、
繁殖にも成功しているため、
実は現物を見るのはそう難しくない。
ナイジェリアでは絶滅が有力視されており、
シエラレオネでもごく少数が発見されているだけで、
野生のコビトカバは極めて危険な状態にある。
というのも、熱帯雨林の開発により住処を奪われ、
ハンターたちの格好の獲物となっていたため、
一気に個体数が減少したのだ。
民話によると、ダイヤモンド鉱床の場所を
知っている生き物であるとされるため、
この噂を聞いて集まったハンターもいたことだろう。
ちなみに、現地では密かに
食用に狩猟されているという。
豚に似て美味いらしい。
それにしても現地語では何と呼ばれているのだろう。
やはり豚に関連する名前なのだろうか。
あの辺りは部族によって言語が違うため、
共通の名前も無いかもしれないが、
ぜひとも知りたいところである。
小型の河馬である。
ニベクヴェという名前は伝説上の生き物、
黒い豚の怪物の名だが、コビトカバのことを
指していると考えられる。
調べても現地語での呼び名が分からなかったため、
便宜上、ニベクヴェの名でコビトカバを紹介する。
コビトカバはその名の通り小さなカバである。
大きさは山羊程度で、一見すると
カバの子供のようにも見える。
しかし、我々のよく知るカバとは異なり、
水中にいる時に目、鼻、耳が水面に出るよう
上部に突出してはいない。
このため、マナティーやジュゴンのような
愛嬌のある顔つきをしている。
体色は黒く、カバ同様に赤い汗によって
毛の無い体が保護される。
一番の違いは、水中にいる時間が短く、
陸上の生活がメインであることだろう。
川の土手に空いた穴を巣穴として暮らし、
シダの葉などを食べる草食性である。
さて、このコビトカバ、ナイジェリアや
シエラレオネの熱帯雨林に生息することから
なかなか発見されなかった。
生物学者は頭蓋骨などを標本として入手しては
いたが、カバの奇形種であると断定していた。
そんな中、ドイツの動物商人が現地の伝説、
ニベクヴェとセンゲの話を聞いて、
未発見の動物がいるはずだと探検を行った。
センゲは角を持つ怪物の名だが、
牙を角と見間違えられたモリイノシシだと
考えられている。
果たして、商人は生きたコビトカバを発見し、
この小さなカバが奇形ではなく
れっきとした種族であることを突き止めた。
世界三大珍獣の一角であるコビトカバの生態は
まだまだ分かっていないことだらけである。
だが、世界各地の動物園で飼育されており、
繁殖にも成功しているため、
実は現物を見るのはそう難しくない。
ナイジェリアでは絶滅が有力視されており、
シエラレオネでもごく少数が発見されているだけで、
野生のコビトカバは極めて危険な状態にある。
というのも、熱帯雨林の開発により住処を奪われ、
ハンターたちの格好の獲物となっていたため、
一気に個体数が減少したのだ。
民話によると、ダイヤモンド鉱床の場所を
知っている生き物であるとされるため、
この噂を聞いて集まったハンターもいたことだろう。
ちなみに、現地では密かに
食用に狩猟されているという。
豚に似て美味いらしい。
それにしても現地語では何と呼ばれているのだろう。
やはり豚に関連する名前なのだろうか。
あの辺りは部族によって言語が違うため、
共通の名前も無いかもしれないが、
ぜひとも知りたいところである。
2019年7月9日火曜日
枯草菌
文字通り枯れた草を分解し、
土へと返す細菌のことである。
非常に身近な細菌で、人体にほとんど害が無い。
それどころかいくつかの種類は
有益な効果をもたらす。
菌類は多くの場合、いくつかの形態を持つ。
枯草菌の場合は芽胞という形態が特徴的だ。
芽胞とは菌が繁殖に不適切な環境に置かれた際に、
身を守るために変化する防御形態だ。
枯草菌の芽胞はそこらの細菌と比べ、
非常に強力な耐久力を持っている。
具体的には熱にも酸にもアルカリにも
アルコールにも強い。
このため、枯れ草を煮沸消毒しても枯草菌だけは
死に絶えず、危機が去った後に繁殖し始める。
枯草菌に限らず、菌類は自分たちのテリトリーを
強固に作り上げると、他の菌の侵入を阻む力を持つ。
枯れ草を煮沸することによって枯草菌だけの
環境を作り出すと、他の菌類の繁殖を
妨げることが可能だ。
この効果を利用して、抗生物質が利用される以前は、
細菌性の腹痛の治療に用いられていた。
赤痢や腸チフスなどにある程度の効能があったのだ。
枯草菌は枯れ草に限らずそこら中に存在するのだが、
我々哺乳類の腸内にもよくいる。
特に反芻を行う牛などの動物は枯草菌による分解を
自身の消化能力の補助としている。
さて、有益な枯草菌であるが、その中でもひときわ
人間の役に立つ菌がある。
納豆菌だ。
納豆がどのようにして生み出されたかは諸説ある。
縄文期には既に存在し得たとも言うし、
弥生期の住環境で偶然作り出されたとも言う。
記録として最古のものは室町期の精進魚類物語に
登場する擬人化された納豆、納豆太郎糸重だと
言われている。
擬人化された食べ物が合戦を行うこのおとぎ話に
糸引き納豆キャラが出てくるということは、
この頃にはすでにメジャーな存在だったと
考えてよいだろう。
よく言われている、戦国期に馬の背に乗せて
運んでいた兵糧のうち、米と大豆が腐ったものを
飢えに任せて食ったところ、米を食った者は
腹を壊し、大豆を食った者は平気だったために
納豆が偶然生み出されたという俗説は誤りである。
また、豆腐と納豆の名前は逆なのではないか
という話も、腐の字は本来白くてどろどろしたものを
指すため、豆腐はトウフのことで間違いない。
なお、インドネシアにテンペという納豆に似た
食品があるが、こちらは紹興酒の麹にも使われる
クモノスカビという細菌を使う。
納豆は匂いと食感が苦手という向きも多いが、
非常に優れた食品である。
消化に良く、栄養が豊富で、コストが安い。
前述のように腸内の悪性菌の繁殖を抑制する力も
あるため、苦手でないのならば積極的に食べるべきだ。
虫歯菌や歯周病菌をも抑制するのだから、
多少苦手でも克服した方がお得である。
西日本では伝統的にあまり食べられてこなかったため、
苦手な人が多いようだ。私も幼い頃は嫌いだった。
だが、食べられるようになって損はないどころか、
とても有益なものだ。納豆は。
頑張れ。食べろ。匂いは薬味でごまかせ。
食感は慣れろ。納豆を食べないと損をするぞ。
ただ、例外がある。
日本酒の麹に枯草菌が混じると
スベリ麹という酒造に使えない代物になってしまう。
杜氏や蔵人にとっては禁忌の食物なのだ。
塩納豆や昔の納豆の食べ方なども書きたいが、
いい加減長くなったのでここまでにしておこう。
土へと返す細菌のことである。
非常に身近な細菌で、人体にほとんど害が無い。
それどころかいくつかの種類は
有益な効果をもたらす。
菌類は多くの場合、いくつかの形態を持つ。
枯草菌の場合は芽胞という形態が特徴的だ。
芽胞とは菌が繁殖に不適切な環境に置かれた際に、
身を守るために変化する防御形態だ。
枯草菌の芽胞はそこらの細菌と比べ、
非常に強力な耐久力を持っている。
具体的には熱にも酸にもアルカリにも
アルコールにも強い。
このため、枯れ草を煮沸消毒しても枯草菌だけは
死に絶えず、危機が去った後に繁殖し始める。
枯草菌に限らず、菌類は自分たちのテリトリーを
強固に作り上げると、他の菌の侵入を阻む力を持つ。
枯れ草を煮沸することによって枯草菌だけの
環境を作り出すと、他の菌類の繁殖を
妨げることが可能だ。
この効果を利用して、抗生物質が利用される以前は、
細菌性の腹痛の治療に用いられていた。
赤痢や腸チフスなどにある程度の効能があったのだ。
枯草菌は枯れ草に限らずそこら中に存在するのだが、
我々哺乳類の腸内にもよくいる。
特に反芻を行う牛などの動物は枯草菌による分解を
自身の消化能力の補助としている。
さて、有益な枯草菌であるが、その中でもひときわ
人間の役に立つ菌がある。
納豆菌だ。
納豆がどのようにして生み出されたかは諸説ある。
縄文期には既に存在し得たとも言うし、
弥生期の住環境で偶然作り出されたとも言う。
記録として最古のものは室町期の精進魚類物語に
登場する擬人化された納豆、納豆太郎糸重だと
言われている。
擬人化された食べ物が合戦を行うこのおとぎ話に
糸引き納豆キャラが出てくるということは、
この頃にはすでにメジャーな存在だったと
考えてよいだろう。
よく言われている、戦国期に馬の背に乗せて
運んでいた兵糧のうち、米と大豆が腐ったものを
飢えに任せて食ったところ、米を食った者は
腹を壊し、大豆を食った者は平気だったために
納豆が偶然生み出されたという俗説は誤りである。
また、豆腐と納豆の名前は逆なのではないか
という話も、腐の字は本来白くてどろどろしたものを
指すため、豆腐はトウフのことで間違いない。
なお、インドネシアにテンペという納豆に似た
食品があるが、こちらは紹興酒の麹にも使われる
クモノスカビという細菌を使う。
納豆は匂いと食感が苦手という向きも多いが、
非常に優れた食品である。
消化に良く、栄養が豊富で、コストが安い。
前述のように腸内の悪性菌の繁殖を抑制する力も
あるため、苦手でないのならば積極的に食べるべきだ。
虫歯菌や歯周病菌をも抑制するのだから、
多少苦手でも克服した方がお得である。
西日本では伝統的にあまり食べられてこなかったため、
苦手な人が多いようだ。私も幼い頃は嫌いだった。
だが、食べられるようになって損はないどころか、
とても有益なものだ。納豆は。
頑張れ。食べろ。匂いは薬味でごまかせ。
食感は慣れろ。納豆を食べないと損をするぞ。
ただ、例外がある。
日本酒の麹に枯草菌が混じると
スベリ麹という酒造に使えない代物になってしまう。
杜氏や蔵人にとっては禁忌の食物なのだ。
塩納豆や昔の納豆の食べ方なども書きたいが、
いい加減長くなったのでここまでにしておこう。
2019年7月8日月曜日
ジェット
黒玉とも呼ばれる物質である。
宝石として扱われるが、
樹木の化石で、褐炭の一種である。
昔は琥珀の一種と考えられていたため、
黒琥珀という呼び名もある。
さて、このジェット、先史時代から
装飾品として利用されてきた。
掘り出したばかりの姿は美しいとは言い難いが、
磨き上げると文字通り漆黒の如き美しさとなる。
彫刻などの加工も容易なため、
様々な工芸品が遺跡から出土する。
琥珀同様にこすると静電気を発生させる
性質を持つため、古の人々はこの物質に
少なからず神秘性を見出していた。
ただ、宝石としては扱いが難しく、
極度に乾燥すればひびが入るし、
石炭なので燃えてしまう。
だが、それほど高価なものではなく、上品な
美しさを持つため、こうしたデメリットが
ありながら大流行した時期もある。
稀にパイライトがインクルージョンした
ジェットが見つかることがある。
インクルージョンとは鉱物の内部に、
別の組成の物質が閉じ込められることを言う。
パイライト入りジェットは暗い真鍮のような
色合いと金属光沢を持ち、
妖しげな魅力を持つ。
金属と化石の融合したものだと思うと
なかなかに興味深い。
ジェットはほぼ炭素でできている。
石炭なので当然だが、炭素でできた
宝石といえばダイヤモンドこそ正統だろう。
脆さを持つ漆黒のジェットと、
金剛石と呼ばれる無色透明のダイヤモンドが、
同じ炭素であるのだから面白い。
ところで、先史時代から利用されてきた
ジェットだが、良質な原石が枯渇気味だという。
安価であったジェットの価格は今後
上がっていく可能性もあるわけだ。
エボナイトというゴムを硫化したものが
よく似ているため類似品、あるいは偽物として
流通しているとも聞く。
真贋を見極めるのは容易ではないが、
購入の際には気を付けた方が良いだろう。
長くなったので今回は
パワーだとか石言葉だとかは
スルーしておこうと思う。
基本的に後付けだということは
念頭に置いておくといい。
宝石として扱われるが、
樹木の化石で、褐炭の一種である。
昔は琥珀の一種と考えられていたため、
黒琥珀という呼び名もある。
さて、このジェット、先史時代から
装飾品として利用されてきた。
掘り出したばかりの姿は美しいとは言い難いが、
磨き上げると文字通り漆黒の如き美しさとなる。
彫刻などの加工も容易なため、
様々な工芸品が遺跡から出土する。
琥珀同様にこすると静電気を発生させる
性質を持つため、古の人々はこの物質に
少なからず神秘性を見出していた。
ただ、宝石としては扱いが難しく、
極度に乾燥すればひびが入るし、
石炭なので燃えてしまう。
だが、それほど高価なものではなく、上品な
美しさを持つため、こうしたデメリットが
ありながら大流行した時期もある。
稀にパイライトがインクルージョンした
ジェットが見つかることがある。
インクルージョンとは鉱物の内部に、
別の組成の物質が閉じ込められることを言う。
パイライト入りジェットは暗い真鍮のような
色合いと金属光沢を持ち、
妖しげな魅力を持つ。
金属と化石の融合したものだと思うと
なかなかに興味深い。
ジェットはほぼ炭素でできている。
石炭なので当然だが、炭素でできた
宝石といえばダイヤモンドこそ正統だろう。
脆さを持つ漆黒のジェットと、
金剛石と呼ばれる無色透明のダイヤモンドが、
同じ炭素であるのだから面白い。
ところで、先史時代から利用されてきた
ジェットだが、良質な原石が枯渇気味だという。
安価であったジェットの価格は今後
上がっていく可能性もあるわけだ。
エボナイトというゴムを硫化したものが
よく似ているため類似品、あるいは偽物として
流通しているとも聞く。
真贋を見極めるのは容易ではないが、
購入の際には気を付けた方が良いだろう。
長くなったので今回は
パワーだとか石言葉だとかは
スルーしておこうと思う。
基本的に後付けだということは
念頭に置いておくといい。
2019年7月7日日曜日
食紅
物を特定の色に染める染料にも色々あるが、
食紅とは食料品に色を加えるための物質である。
本来は紅花から採れる赤色染料のことを指すが、
広い意味で食紅という言葉を使った場合、
食料品に使用可能なすべての染料を指す。
パプリカ色素やクチナシ色素はイメージしやすいが、
コチニール色素という臙脂虫のワックス由来の
ものも存在する。
それどころか、タール色素と呼ばれる
コールタールやナフサが原料の染料も
多く使われている。
タール色素は数十万種類にも及ぶとされているが、
食品や化粧品、医薬品に使うもの、つまり人体に
害が無いと認定されているものは多くない。
本邦ではアマランス、エリスロシン、アルラレッド、
ニューコクシン、フロキシン、ローズベンガル、
アシッドレッド、タートラジン、サンセットイエロー、
ファストグリーン、ブリリアントブルー、
インジゴカルミンの十二種類が該当する。
赤色何号などと呼ばれるこうしたタール色素が
本当に人体に悪影響が無いのか、
今でも懐疑的にとらえる人々は多い。
実際、程度の問題で、多量に摂取すれば
安全性は担保されないと考えられる。
しかし、今や合成染料を使わない加工食品は
わざわざ無添加などと謳う時代である。
特に菓子類や清涼飲料はその彩りのために
多くの合成染料が使われている。
もちろん、石油由来でなく、植物由来なら
安全だなどと考えているのならそれは
大きな間違いである。
古くから使われてきた茜染料は、以前は食紅の
一種であったが、腎臓への負担が強く、
発癌性があることが分かり、除外された。
こうした染料に限らず、植物由来だから安心
などという妙な信仰を持っている人々がいるが、
毒性植物など挙げればきりがない。
なんでもかんでも危険だと恐れをなすのも
ナンセンスであるし、盲目的に植物だから安心
などとのたまうのも滑稽である。
昔から使ってきたから安全なはず、
という例もあれば、最新の技術で作られたから
安心なはず、という考えもできる。
結局のところ、我々は既存の環境の中で
生きていくしかないのだ。
食紅とは食料品に色を加えるための物質である。
本来は紅花から採れる赤色染料のことを指すが、
広い意味で食紅という言葉を使った場合、
食料品に使用可能なすべての染料を指す。
パプリカ色素やクチナシ色素はイメージしやすいが、
コチニール色素という臙脂虫のワックス由来の
ものも存在する。
それどころか、タール色素と呼ばれる
コールタールやナフサが原料の染料も
多く使われている。
タール色素は数十万種類にも及ぶとされているが、
食品や化粧品、医薬品に使うもの、つまり人体に
害が無いと認定されているものは多くない。
本邦ではアマランス、エリスロシン、アルラレッド、
ニューコクシン、フロキシン、ローズベンガル、
アシッドレッド、タートラジン、サンセットイエロー、
ファストグリーン、ブリリアントブルー、
インジゴカルミンの十二種類が該当する。
赤色何号などと呼ばれるこうしたタール色素が
本当に人体に悪影響が無いのか、
今でも懐疑的にとらえる人々は多い。
実際、程度の問題で、多量に摂取すれば
安全性は担保されないと考えられる。
しかし、今や合成染料を使わない加工食品は
わざわざ無添加などと謳う時代である。
特に菓子類や清涼飲料はその彩りのために
多くの合成染料が使われている。
もちろん、石油由来でなく、植物由来なら
安全だなどと考えているのならそれは
大きな間違いである。
古くから使われてきた茜染料は、以前は食紅の
一種であったが、腎臓への負担が強く、
発癌性があることが分かり、除外された。
こうした染料に限らず、植物由来だから安心
などという妙な信仰を持っている人々がいるが、
毒性植物など挙げればきりがない。
なんでもかんでも危険だと恐れをなすのも
ナンセンスであるし、盲目的に植物だから安心
などとのたまうのも滑稽である。
昔から使ってきたから安全なはず、
という例もあれば、最新の技術で作られたから
安心なはず、という考えもできる。
結局のところ、我々は既存の環境の中で
生きていくしかないのだ。
2019年6月30日日曜日
スリカータ
スリカータ、あるいはミーアカットは、
本邦ではミーアキャットの名で知られる哺乳類である。
南アフリカ周辺に住まう。
ミーアカットの名は複雑で、語源には様々な説がある。
とりあえず、本来は猫を意味するキャットではない
可能性がとても高い。
どうも猿、あるいはマングースを意味するマルカタが
ミーアカットの名の本来の形であるらしい。
一方、スリカータは現地語由来のようだ。
マングースと近い種であり、食性も似ていることから、
東南アジアに住むマングースを意味するインド系の名称
マルカタがサラセン人によって持ち込まれ、
それがオランダ語で訛り、アフリカーンス語となったのが
ミーアカットなのではないかと思われる。
オランダ語ではカットは猫のため、
本邦でもそこから誤解が生じ、
ミーアキャットと呼んでいるのかもしれない。
スリカータの耳は非常に小さく、
直立することが多いため、
猿に間違われることも多かった。
マルカタには猿の意味もあるようで、
どうもマングースを猿と混同した名残が
ミーアカットの名前にもありそうである。
さて、スリカータは何でも食べる雑食だ。
様々な毒への耐性も持つことから、
サソリやヘビまで食べてしまう。
そのうえ気性が荒く、群れで行動するため、
サバンナのギャングと呼ばれることもある。
可愛らしい見た目に反して、なかなか獰猛なのだ。
直立する理由だが、第一には天敵である猛禽類の
接近を見張るためである。
次いで、夜間は気温の低い砂漠の地下で暮らすことから、
冷え切った体を朝日で温める意味がある。
群れが皆同じ方向を向いて立っているのは、
体を太陽に向けて日光浴しているためのなのだ。
群れにはオスのリーダーとメスのリーダーがいる。
繁殖を行うのはこの二頭だけであり、
血の繋がった他の個体は群れのサポートに徹する。
具体的には子育てを手伝い、巣を守るというものだ。
子供たちに狩りの仕方を教えていたという
観察報告もある。
ギャングというよりも、ファミリーを守る
マフィアのようだ。
巣穴は広大で、ジリスなど、他の動物と
シェアする度量の広さも見せる。
おそらく何らかの互恵関係にあるのだろう。
ところで、飼育下での繁殖は難しいらしい。
なんでもメスがリーダーの座を巡って
激しく争い、全滅してしまうこともあるという。
仁義なきミーアキャットというわけだ。
本邦ではミーアキャットの名で知られる哺乳類である。
南アフリカ周辺に住まう。
ミーアカットの名は複雑で、語源には様々な説がある。
とりあえず、本来は猫を意味するキャットではない
可能性がとても高い。
どうも猿、あるいはマングースを意味するマルカタが
ミーアカットの名の本来の形であるらしい。
一方、スリカータは現地語由来のようだ。
マングースと近い種であり、食性も似ていることから、
東南アジアに住むマングースを意味するインド系の名称
マルカタがサラセン人によって持ち込まれ、
それがオランダ語で訛り、アフリカーンス語となったのが
ミーアカットなのではないかと思われる。
オランダ語ではカットは猫のため、
本邦でもそこから誤解が生じ、
ミーアキャットと呼んでいるのかもしれない。
スリカータの耳は非常に小さく、
直立することが多いため、
猿に間違われることも多かった。
マルカタには猿の意味もあるようで、
どうもマングースを猿と混同した名残が
ミーアカットの名前にもありそうである。
さて、スリカータは何でも食べる雑食だ。
様々な毒への耐性も持つことから、
サソリやヘビまで食べてしまう。
そのうえ気性が荒く、群れで行動するため、
サバンナのギャングと呼ばれることもある。
可愛らしい見た目に反して、なかなか獰猛なのだ。
直立する理由だが、第一には天敵である猛禽類の
接近を見張るためである。
次いで、夜間は気温の低い砂漠の地下で暮らすことから、
冷え切った体を朝日で温める意味がある。
群れが皆同じ方向を向いて立っているのは、
体を太陽に向けて日光浴しているためのなのだ。
群れにはオスのリーダーとメスのリーダーがいる。
繁殖を行うのはこの二頭だけであり、
血の繋がった他の個体は群れのサポートに徹する。
具体的には子育てを手伝い、巣を守るというものだ。
子供たちに狩りの仕方を教えていたという
観察報告もある。
ギャングというよりも、ファミリーを守る
マフィアのようだ。
巣穴は広大で、ジリスなど、他の動物と
シェアする度量の広さも見せる。
おそらく何らかの互恵関係にあるのだろう。
ところで、飼育下での繁殖は難しいらしい。
なんでもメスがリーダーの座を巡って
激しく争い、全滅してしまうこともあるという。
仁義なきミーアキャットというわけだ。
2019年6月29日土曜日
笹
竹によく似た植物である。
竹との違いは、枯れるまで葉が落ちないこと、
節に葉鞘があること、葉脈が平行であることだ。
近い種ではあるが、完全に別の植物である。
その葉には防腐作用のある成分が含まれているため、
ちまきなど、保存食を包む用途で使われてきた。
独特の香りがあるが、本邦では笹で包まれた
食品を食べる機会がそれなりにあるため、
食欲をそそられると感じる者も多い。
ただ、世界的には珍しい植物であり、
特に西洋圏では笹は本邦を示すアイコンでもある。
多くのヨーロッパ諸国ではこの植物を
独自の言語ではなくササと呼んでいることからも
本邦独自の存在と見做されていることが分かるだろう。
もちろん、東アジアの他の国にも生育しているが、
本邦の笹は群を抜いて種類が豊富だ。
ところで、竹の花が咲くのはとても珍しいことだが、
笹の花もやはり滅多に咲かない。
およそ干支が一回りしないと咲かないという。
笹の実は笹麦と呼ばれ食べることができる。
小麦や蕎麦のように粉に挽いて食べるのだが、
食味はあまり良くなく、笹独特の香りがする。
早い話が美味いものではない。
そのうえ、滅多に収穫できないのだから
人々の話題にはそうそう上らない。
だが、各地に笹麦の伝承が残されている。
なぜかというと、飢饉などの食糧難の際に、
笹麦を食べて生き延びた集落の話が散見されるためだ。
笹は荒れた土地に進出し、爆発的に増える類の植物だ。
大抵の場合、固まって多数生えている。
このため、偶然開花に行き合えば、
相当量の笹麦が収穫できる。
飢えから救われた村は古来数知れない。
葉の防腐作用のことも勘案すれば、
昔の人にとってはありがたい植物である。
家紋に採用される例も多いあたり、
やはり、本邦において特別な存在だったのだろう。
一生の間に目にするかどうかすらわからぬ笹麦。
もしこれを食べる機会があるならば、
貴重な経験となるに違いない。
竹との違いは、枯れるまで葉が落ちないこと、
節に葉鞘があること、葉脈が平行であることだ。
近い種ではあるが、完全に別の植物である。
その葉には防腐作用のある成分が含まれているため、
ちまきなど、保存食を包む用途で使われてきた。
独特の香りがあるが、本邦では笹で包まれた
食品を食べる機会がそれなりにあるため、
食欲をそそられると感じる者も多い。
ただ、世界的には珍しい植物であり、
特に西洋圏では笹は本邦を示すアイコンでもある。
多くのヨーロッパ諸国ではこの植物を
独自の言語ではなくササと呼んでいることからも
本邦独自の存在と見做されていることが分かるだろう。
もちろん、東アジアの他の国にも生育しているが、
本邦の笹は群を抜いて種類が豊富だ。
ところで、竹の花が咲くのはとても珍しいことだが、
笹の花もやはり滅多に咲かない。
およそ干支が一回りしないと咲かないという。
笹の実は笹麦と呼ばれ食べることができる。
小麦や蕎麦のように粉に挽いて食べるのだが、
食味はあまり良くなく、笹独特の香りがする。
早い話が美味いものではない。
そのうえ、滅多に収穫できないのだから
人々の話題にはそうそう上らない。
だが、各地に笹麦の伝承が残されている。
なぜかというと、飢饉などの食糧難の際に、
笹麦を食べて生き延びた集落の話が散見されるためだ。
笹は荒れた土地に進出し、爆発的に増える類の植物だ。
大抵の場合、固まって多数生えている。
このため、偶然開花に行き合えば、
相当量の笹麦が収穫できる。
飢えから救われた村は古来数知れない。
葉の防腐作用のことも勘案すれば、
昔の人にとってはありがたい植物である。
家紋に採用される例も多いあたり、
やはり、本邦において特別な存在だったのだろう。
一生の間に目にするかどうかすらわからぬ笹麦。
もしこれを食べる機会があるならば、
貴重な経験となるに違いない。
2019年6月28日金曜日
ムハンガ
本邦ではツチブタと呼ばれるサブサハラの哺乳類である。
土豚の名はアフリカーンス語のアードバーグの直訳で、
アラビア語でも大地の豚と呼ばれている。
ブタと呼ばれているが、
ムハンガはブタとは無関係な生物だ。
胴体が少しブタに似ているのでこの名が付いたと思われる。
だが、個人的には鎧の無いアルマジロと
言われた方がしっくりくる見た目をしている。
アルマジロを裸に剥いて、口吻を細長くし、
耳をウサギのように長くして、尻尾を太くて
長いものにした姿を思い浮かべてみてほしい。
体毛は短く灰色だ。
そういえば、鼻先を正面から見るとブタに似ている。
この点と、脆弱な肌がブタらしいといえばらしい。
食べているものはシロアリである。
アリ塚を唯一強靭な部位である爪で破壊し、
飛び出してきたアリを細長い舌で舐めとる。
食事の方法とそれに適した口の構造から、
昔はアリクイの仲間だと思われていた。
しかし、後にそれはシロアリを食うのに向いた形へと
進化した結果、似てしまっただけだと判明する。
アリを舐めとる食事方法のため、歯は退化しており、
空洞の六角形という非常に特徴的な形になっている。
これは臼歯で、犬歯など他の歯は無い。
噛み付くことができず、足も速いとは言い難いので、
天敵への抵抗手段が乏しい。
巣穴を掘ったり蟻塚を破壊したりするために、
硬い爪とそこそこの脚力を持っているのだが、
それを活かした戦い方はしない。
襲われた場合は、逃げもせずその場で穴を掘り始める。
穴が掘れない場合には じたばたする。
かなりか弱い生き物なのだ。
嘘か本当かは知らないが、骨も脆いらしい。
頭蓋骨を人間の力で簡単に砕けるとか。
さて、過酷なアフリカの大地で暮らすには
弱すぎる気もするムハンガだが、
その特殊な形状の歯はお守りとして重宝された。
大地を掘り、地上と地下を行き来する
霊的な存在と見做されたためだ。
なお、農耕民族からは嫌われている。
農地を掘り返し荒らしてしまうためだ。
水分補給のためにウリを食うこともある。
おそらくこうした性質に由来するのだろう、
農耕民族の国であるエジプトでは、
悪神がムハンガの頭を持つとしている。
なお、彼らの掘る穴は他の生物の巣穴として
再利用されるため、実は生態系に少なからぬ
影響を与えている。
農耕の邪魔になるとして駆除されることもあるが、
今のところ絶滅の危険はないようだ。
ただし、生態のよくわかっていない動物のため、
知らぬ間に数を減らしている可能性も
あるかもしれない。
土豚の名はアフリカーンス語のアードバーグの直訳で、
アラビア語でも大地の豚と呼ばれている。
ブタと呼ばれているが、
ムハンガはブタとは無関係な生物だ。
胴体が少しブタに似ているのでこの名が付いたと思われる。
だが、個人的には鎧の無いアルマジロと
言われた方がしっくりくる見た目をしている。
アルマジロを裸に剥いて、口吻を細長くし、
耳をウサギのように長くして、尻尾を太くて
長いものにした姿を思い浮かべてみてほしい。
体毛は短く灰色だ。
そういえば、鼻先を正面から見るとブタに似ている。
この点と、脆弱な肌がブタらしいといえばらしい。
食べているものはシロアリである。
アリ塚を唯一強靭な部位である爪で破壊し、
飛び出してきたアリを細長い舌で舐めとる。
食事の方法とそれに適した口の構造から、
昔はアリクイの仲間だと思われていた。
しかし、後にそれはシロアリを食うのに向いた形へと
進化した結果、似てしまっただけだと判明する。
アリを舐めとる食事方法のため、歯は退化しており、
空洞の六角形という非常に特徴的な形になっている。
これは臼歯で、犬歯など他の歯は無い。
噛み付くことができず、足も速いとは言い難いので、
天敵への抵抗手段が乏しい。
巣穴を掘ったり蟻塚を破壊したりするために、
硬い爪とそこそこの脚力を持っているのだが、
それを活かした戦い方はしない。
襲われた場合は、逃げもせずその場で穴を掘り始める。
穴が掘れない場合には じたばたする。
かなりか弱い生き物なのだ。
嘘か本当かは知らないが、骨も脆いらしい。
頭蓋骨を人間の力で簡単に砕けるとか。
さて、過酷なアフリカの大地で暮らすには
弱すぎる気もするムハンガだが、
その特殊な形状の歯はお守りとして重宝された。
大地を掘り、地上と地下を行き来する
霊的な存在と見做されたためだ。
なお、農耕民族からは嫌われている。
農地を掘り返し荒らしてしまうためだ。
水分補給のためにウリを食うこともある。
おそらくこうした性質に由来するのだろう、
農耕民族の国であるエジプトでは、
悪神がムハンガの頭を持つとしている。
なお、彼らの掘る穴は他の生物の巣穴として
再利用されるため、実は生態系に少なからぬ
影響を与えている。
農耕の邪魔になるとして駆除されることもあるが、
今のところ絶滅の危険はないようだ。
ただし、生態のよくわかっていない動物のため、
知らぬ間に数を減らしている可能性も
あるかもしれない。
2019年6月27日木曜日
ツチノコ
胴体がやけに短く、そして太いヘビである。
本邦固有種であるが、現代では確度の高い目撃例が
ほとんど無いため、絶滅、もしくはそれに
近い状態にあるものと思われる。
槌子と書かれ、槌、つまりハンマーに似た
姿だとされているが、槌の字は当て字だろう。
実際のツチノコは顎のエラこそ張っているものの、
いわゆるハンマー状の姿ではない。
なにより、ツチとは古語において
ヘビ、あるいは龍を意味する言葉である。
単にチだけでもヘビや龍を指すこともある。
オロチのチだ。
なお、ミも干支でヘビがミと呼ばれている
ことから分かるように、ヘビや龍の性質を持つ。
チもミも神霊のことを指す言葉であり、
ヘビの神性と龍神のイメージが
繋がっていることがわかる。
神話に登場するツチやツミで終わる名を持つ神々は
龍神の特性を備えていると見て良いだろう。
ツチノコの名の由来を考える上で外せないのは
山の神であるオオヤマツミだ。
その子はアメノサヅチ、クニノサヅチという。
神々だけではない、妖怪にもノヅチというものがいる。
ヘビに似ているが胴が太く、目鼻が無いという妖怪だ。
野槌と書かれ、槌、つまりハンマーに似た
姿だとされているが、こちらもやはり当て字だろう。
神として信仰されていたモノが忘れられ、
妖怪へと零落する例はかなり多い。
おそらくノヅチも山神だったのだろう。
目鼻が無いなどの特徴は、もしかしたら道教の
渾沌との関連があるためかもしれない。
なお、ノヅチノカミという神名があるが、
その母はカヤノヒメであるとされる。
カヤノヒメは前述のオオヤマツミの妻である。
前置きが長くなったが、縄文期にはまだ
ツチノコが多数生息していたことは、
ツチノコ紋の縄文式土器があることからも明らかだ。
特に珍しい形態のこのヘビに古代人が神性を
見出さぬわけはない。
その信仰が前述のノヅチへと繋がったのだろう。
ではいつ頃からツチノコは数を減らしてしまったのか。
鎌倉期の仏教説話、沙石集には言葉だけで
行動に移さぬ者が目も手足も無く口だけがある
ノヅチになってしまうという話が書かれている。
つまり、この頃にはまだ、あの生き物のことか、
と思い起こせる程度には見かけられていたのだ。
江戸期の博物学書である和漢三才図絵には
木の穴に住み人を噛むと書かれている。
だが、槌の形をしているとあるため、
実物を目にする機会は少なかったのだろう。
同じく江戸期の妖怪画集、今昔画図続百鬼や
黄表紙本、妖怪仕内評判記には、
毛むくじゃらであったり、人型であったり、
明らかに化け物として記されている。
実態と乖離していることがわかる。
迷信を排除しようという強い動きのあった
明治期には多くの妖怪の存在が否定された。
しかし、ツチノコの目撃証言は後を絶たず、
少ないながらも存在していたことがうかがえる。
特に、大戦期には軍の研究所で飼育され、
研究が行われていた記録がある。
どうやらマムシに近い種で
あったことが分かったようだ。
だが、戦後しばらくは食糧難で山に入ることも
多かったはずにも関わらず、
目撃談がほとんど無い。
現代に入ってからにわかに目撃例が出てくるものの、
外来の見慣れぬヘビが野生化したものを
見間違えたケースが非常に多い。
こうして見てみると、大きく数を減らしたのは
戦国期であり、決定的に絶滅に向かい始めたのが
大戦期であるという推測ができる。
果たして現在もツチノコは絶滅せずに
命脈を保っているのだろうか。
なお、目撃談の多い地方では、
発見者に懸賞金を与えるとしている
自治体がいくつかある。
ツチノコハンターと呼ばれるツチノコを探すことに
執念を燃やす人々もいるが、彼らが生きた
ツチノコを目にする日が来ることを祈ろう。
知らないうちに絶滅していたのでは
あまりにも悲しい。
本邦固有種であるが、現代では確度の高い目撃例が
ほとんど無いため、絶滅、もしくはそれに
近い状態にあるものと思われる。
槌子と書かれ、槌、つまりハンマーに似た
姿だとされているが、槌の字は当て字だろう。
実際のツチノコは顎のエラこそ張っているものの、
いわゆるハンマー状の姿ではない。
なにより、ツチとは古語において
ヘビ、あるいは龍を意味する言葉である。
単にチだけでもヘビや龍を指すこともある。
オロチのチだ。
なお、ミも干支でヘビがミと呼ばれている
ことから分かるように、ヘビや龍の性質を持つ。
チもミも神霊のことを指す言葉であり、
ヘビの神性と龍神のイメージが
繋がっていることがわかる。
神話に登場するツチやツミで終わる名を持つ神々は
龍神の特性を備えていると見て良いだろう。
ツチノコの名の由来を考える上で外せないのは
山の神であるオオヤマツミだ。
その子はアメノサヅチ、クニノサヅチという。
神々だけではない、妖怪にもノヅチというものがいる。
ヘビに似ているが胴が太く、目鼻が無いという妖怪だ。
野槌と書かれ、槌、つまりハンマーに似た
姿だとされているが、こちらもやはり当て字だろう。
神として信仰されていたモノが忘れられ、
妖怪へと零落する例はかなり多い。
おそらくノヅチも山神だったのだろう。
目鼻が無いなどの特徴は、もしかしたら道教の
渾沌との関連があるためかもしれない。
なお、ノヅチノカミという神名があるが、
その母はカヤノヒメであるとされる。
カヤノヒメは前述のオオヤマツミの妻である。
前置きが長くなったが、縄文期にはまだ
ツチノコが多数生息していたことは、
ツチノコ紋の縄文式土器があることからも明らかだ。
特に珍しい形態のこのヘビに古代人が神性を
見出さぬわけはない。
その信仰が前述のノヅチへと繋がったのだろう。
ではいつ頃からツチノコは数を減らしてしまったのか。
鎌倉期の仏教説話、沙石集には言葉だけで
行動に移さぬ者が目も手足も無く口だけがある
ノヅチになってしまうという話が書かれている。
つまり、この頃にはまだ、あの生き物のことか、
と思い起こせる程度には見かけられていたのだ。
江戸期の博物学書である和漢三才図絵には
木の穴に住み人を噛むと書かれている。
だが、槌の形をしているとあるため、
実物を目にする機会は少なかったのだろう。
同じく江戸期の妖怪画集、今昔画図続百鬼や
黄表紙本、妖怪仕内評判記には、
毛むくじゃらであったり、人型であったり、
明らかに化け物として記されている。
実態と乖離していることがわかる。
迷信を排除しようという強い動きのあった
明治期には多くの妖怪の存在が否定された。
しかし、ツチノコの目撃証言は後を絶たず、
少ないながらも存在していたことがうかがえる。
特に、大戦期には軍の研究所で飼育され、
研究が行われていた記録がある。
どうやらマムシに近い種で
あったことが分かったようだ。
だが、戦後しばらくは食糧難で山に入ることも
多かったはずにも関わらず、
目撃談がほとんど無い。
現代に入ってからにわかに目撃例が出てくるものの、
外来の見慣れぬヘビが野生化したものを
見間違えたケースが非常に多い。
こうして見てみると、大きく数を減らしたのは
戦国期であり、決定的に絶滅に向かい始めたのが
大戦期であるという推測ができる。
果たして現在もツチノコは絶滅せずに
命脈を保っているのだろうか。
なお、目撃談の多い地方では、
発見者に懸賞金を与えるとしている
自治体がいくつかある。
ツチノコハンターと呼ばれるツチノコを探すことに
執念を燃やす人々もいるが、彼らが生きた
ツチノコを目にする日が来ることを祈ろう。
知らないうちに絶滅していたのでは
あまりにも悲しい。
2019年6月25日火曜日
キクラデス諸島
ギリシア領の島々である。
南エーゲと呼ばれる領域のうち、
イオニア側がキクラデス諸島、
アナトリア側がドデカネス諸島だ。
キクラデスとは囲んでいるという意味で、
神聖なるデロス島を取り巻くように
多くの島々が存在することに因む。
二百を超える大小の島からなる諸島であるが、
これだけの数の島がありながら、
火山島はミロス島とサントリーニ島のみだ。
地質学者は、これらの島々が元はひとつの
大きな島であったことを証明している。
ただし、それは人の歴史が紡がれる以前の話で、
地中海の変貌の中で変化していった。
だが、この諸島は、一夜にして海底へと沈んだ
アトランティス大陸の伝説の元になっている。
クレタ島でミノア文明が栄えていた頃に起きた
サントリーニ島の大噴火が人々の心に
与えた影響が大きいのだろう。
この噴火は降灰や津波によって
ミノア文明を滅亡へと導いたと言われている。
火山の噴火がひとつの文明を滅ぼしたのだ。
プラトンはアトランティスは大西洋にあったと
書いているが、クレタ島のミノア文明こそが
アトランティスであると考える学者もいる。
さて、サントリーニ島への恐怖は古代人だけの
ものではない。中世の人々にも噴火の記憶は
語り継がれ、不死の魔物の住まう火山島として
恐怖と共に知られていた。
しかし、そうした恐れも次第に薄れ、
十字軍によってギリシア周辺地域に
西ヨーロッパ諸国の影響力が及ぶと、
ヴェネツィア人によって入植が行われた。
噴火によって形作られたカルデラ湾は
東地中海交易の中継点として有益だったのだ。
帆船の時代が終わると、その優位性は失われたが、
エーゲ海リゾートの中心地として
観光業が栄えることになる。
サントリーニ島が恐怖の島であったのに対し、
デロス島は神聖な島として崇められていた。
ギリシア神話の太陽神と月女神が誕生した
場所だとされており、神殿が築かれている。
ミノア文明より古くに栄えたキクラデス文明の
中心地であり、神殿への巡礼者を相手にした
商売が盛んになったことから、
商港としても発展していた。
キクラデス文明の特徴である人面像は、
目や口が省略され、鼻だけが彫られた
特徴的なもので、見た者に強い印象を与える。
まるでモダニズム芸術のような佇まいは、
多くの現代アーティストに
霊感を与えたことだろう。
文明が断絶しているせいで用途不明の
キクラデスのフライパンと呼ばれる
造形物も、想像力を掻き立ててくれる。
なお、キクラデス文明の遺物は
高値で取引されたため、盗掘品や
贋作が出回っているので注意されたし。
南エーゲと呼ばれる領域のうち、
イオニア側がキクラデス諸島、
アナトリア側がドデカネス諸島だ。
キクラデスとは囲んでいるという意味で、
神聖なるデロス島を取り巻くように
多くの島々が存在することに因む。
二百を超える大小の島からなる諸島であるが、
これだけの数の島がありながら、
火山島はミロス島とサントリーニ島のみだ。
地質学者は、これらの島々が元はひとつの
大きな島であったことを証明している。
ただし、それは人の歴史が紡がれる以前の話で、
地中海の変貌の中で変化していった。
だが、この諸島は、一夜にして海底へと沈んだ
アトランティス大陸の伝説の元になっている。
クレタ島でミノア文明が栄えていた頃に起きた
サントリーニ島の大噴火が人々の心に
与えた影響が大きいのだろう。
この噴火は降灰や津波によって
ミノア文明を滅亡へと導いたと言われている。
火山の噴火がひとつの文明を滅ぼしたのだ。
プラトンはアトランティスは大西洋にあったと
書いているが、クレタ島のミノア文明こそが
アトランティスであると考える学者もいる。
さて、サントリーニ島への恐怖は古代人だけの
ものではない。中世の人々にも噴火の記憶は
語り継がれ、不死の魔物の住まう火山島として
恐怖と共に知られていた。
しかし、そうした恐れも次第に薄れ、
十字軍によってギリシア周辺地域に
西ヨーロッパ諸国の影響力が及ぶと、
ヴェネツィア人によって入植が行われた。
噴火によって形作られたカルデラ湾は
東地中海交易の中継点として有益だったのだ。
帆船の時代が終わると、その優位性は失われたが、
エーゲ海リゾートの中心地として
観光業が栄えることになる。
サントリーニ島が恐怖の島であったのに対し、
デロス島は神聖な島として崇められていた。
ギリシア神話の太陽神と月女神が誕生した
場所だとされており、神殿が築かれている。
ミノア文明より古くに栄えたキクラデス文明の
中心地であり、神殿への巡礼者を相手にした
商売が盛んになったことから、
商港としても発展していた。
キクラデス文明の特徴である人面像は、
目や口が省略され、鼻だけが彫られた
特徴的なもので、見た者に強い印象を与える。
まるでモダニズム芸術のような佇まいは、
多くの現代アーティストに
霊感を与えたことだろう。
文明が断絶しているせいで用途不明の
キクラデスのフライパンと呼ばれる
造形物も、想像力を掻き立ててくれる。
なお、キクラデス文明の遺物は
高値で取引されたため、盗掘品や
贋作が出回っているので注意されたし。
2019年6月24日月曜日
タマリンド
樹高の非常に高くなる豆である。
軽くて丈夫な木材としても利用され、
木目も美しく、楽器や家具の
素材として人気がある。
だが、やはりタマリンドといえば
豆、正確には豆の周囲の
果肉の利用が第一であろう。
さやに包まれた黒い豆は食用には向かないが、
これを加工することでタマリンドガムと
呼ばれる物質を作り出すことができる。
タマリンドガムは増粘安定剤という、
様々な製品に粘り気を加える用途で使われる。
シチューやカレーのとろみに始まり、
ジェル状石鹸など、実に様々な品物に
タマリンドガムが使われている。
さて、赤みがかった茶色い果肉は、
主に食品として扱われるが、
染料として使われる場合もある。
味は酸みが強く、甘みもある。
甘めの梅干しをイメージすれば
近いかもしれない。
元々アフリカ原産の植物であったが、
各地に移植され、インドやタイでも
ごく身近な植物である。
当然、それぞれの地域で様々な調理法があり、
インド洋周辺と東南アジアでは
とてもメジャーな存在だ。
アメリカ大陸にも持ち込まれており、
いわゆるラテンアメリカで
広く用いられている。
本邦では知名度が低いが、
世界的に見ればなかなかの存在感である。
酸み調味料としての使い方が最も多いものの、
品種改良によって甘みを強くしたものは
生食が可能で、ジュースに加工されたりもする。
なお、タマリンドの名はアラビア語である。
タマルとはナツメヤシを意味する言葉で、
ヒンディ、つまりインドのタマルとなる。
酸みが強いものの、確かに食感などは
ナツメヤシに似ており、インド商人が
サラセン商人との貿易に使っていた。
インドではイムリーと呼ばれており、
チャツネという調味料の重要な材料だ。
タイのトムソム、ベトナムのカインチュア、
フィリピンのシニガンなどにも
タマリンドは欠かせない。
栄養も豊富で、いくつかの薬効もあるが、
落花生アレルギーを持っている場合は
食べることができない。
実はタマリンドはピーナッツの仲間で、
同じアレルギーの原因物質を持つ。
また、本邦では生の果実は輸入されていない。
検疫を通過することができないためだ。
よって、タマリンドブロックと呼ばれる
果肉を集めて固めたものが売買されている。
インドやタイなどの輸入食品を扱う店で
購入可能なため、試してみるのもいいだろう。
ただし、酸みの強い品種のものと
甘みの強い品種のものが存在するため、
用途に合わせて使い分ける必要がある。
どちらであるか、しっかりと確認するように。
軽くて丈夫な木材としても利用され、
木目も美しく、楽器や家具の
素材として人気がある。
だが、やはりタマリンドといえば
豆、正確には豆の周囲の
果肉の利用が第一であろう。
さやに包まれた黒い豆は食用には向かないが、
これを加工することでタマリンドガムと
呼ばれる物質を作り出すことができる。
タマリンドガムは増粘安定剤という、
様々な製品に粘り気を加える用途で使われる。
シチューやカレーのとろみに始まり、
ジェル状石鹸など、実に様々な品物に
タマリンドガムが使われている。
さて、赤みがかった茶色い果肉は、
主に食品として扱われるが、
染料として使われる場合もある。
味は酸みが強く、甘みもある。
甘めの梅干しをイメージすれば
近いかもしれない。
元々アフリカ原産の植物であったが、
各地に移植され、インドやタイでも
ごく身近な植物である。
当然、それぞれの地域で様々な調理法があり、
インド洋周辺と東南アジアでは
とてもメジャーな存在だ。
アメリカ大陸にも持ち込まれており、
いわゆるラテンアメリカで
広く用いられている。
本邦では知名度が低いが、
世界的に見ればなかなかの存在感である。
酸み調味料としての使い方が最も多いものの、
品種改良によって甘みを強くしたものは
生食が可能で、ジュースに加工されたりもする。
なお、タマリンドの名はアラビア語である。
タマルとはナツメヤシを意味する言葉で、
ヒンディ、つまりインドのタマルとなる。
酸みが強いものの、確かに食感などは
ナツメヤシに似ており、インド商人が
サラセン商人との貿易に使っていた。
インドではイムリーと呼ばれており、
チャツネという調味料の重要な材料だ。
タイのトムソム、ベトナムのカインチュア、
フィリピンのシニガンなどにも
タマリンドは欠かせない。
栄養も豊富で、いくつかの薬効もあるが、
落花生アレルギーを持っている場合は
食べることができない。
実はタマリンドはピーナッツの仲間で、
同じアレルギーの原因物質を持つ。
また、本邦では生の果実は輸入されていない。
検疫を通過することができないためだ。
よって、タマリンドブロックと呼ばれる
果肉を集めて固めたものが売買されている。
インドやタイなどの輸入食品を扱う店で
購入可能なため、試してみるのもいいだろう。
ただし、酸みの強い品種のものと
甘みの強い品種のものが存在するため、
用途に合わせて使い分ける必要がある。
どちらであるか、しっかりと確認するように。
2019年6月22日土曜日
スローロリス
まん丸で大きな目を持つ
小さな猿ロリスの一種である。
可愛らしいと評判で、人気のペットとして
乱獲されたため絶滅が危惧されている。
だが、実は猿の仲間で唯一、毒を持つ。
この毒猿、肘の辺りから体液を分泌させることが
できるのだが、この体液に少し毒性がある。
強い毒ではないのだが、スローロリスの唾液と
混ざると、たちまち猛毒と化す。
彼らは自分たちの赤子の体にこの猛毒を
塗り付け、天敵に食われないようにするのだ。
ただし、この毒、口から摂取した場合は
ほとんど毒性を発揮しない。
普通に消化できてしまう。
傷口から直接体内に入った場合に限り、
猛毒となるのだ。
スローロリスに噛まれたり、引っ掛かれたり
した場合、その傷口から毒が入れば
人間のような大型の動物でも死に至る。
故に、多くの肉食動物はスローロリスを
狙う危険を冒さない。
大型のヘビなどは気にせず丸飲みにしてしまうが。
さて、スローロリスは名前の通り、
非常に鈍い動きをする動物だ。
昔はナマケモノの仲間だと思われていたほどだ。
ナマケモノのように身体の代謝を少なくし、
省エネルギー化もしてはいるのだが、
彼らがゆっくり動くのには別の理由がある。
スローロリスは樹上からほとんど下りない
生き物なのだが、彼らが歩く時、
枝が揺れることはない。
また、巧みに避けるため、体が葉に当たり、
揺らしたり音を立てたりすることもない。
ゆっくりと、しかし確実に、無音で近寄る捕食者。
臆病な小鳥や敏感な昆虫ですら、
スローロリスの接近には気付けない。
そう、彼らが鈍いのは、獲物に気付かれない
ようにするためなのだ。
その一方で、彼らの可愛らしい顔は、
自然界においては
非常に目立つデザインになっている。
視覚に頼り獲物、あるいは敵を識別する動物は、
スローロリスを容易に判別できる。
猛毒を持つ生き物特有の警戒色と同等の
効果があると考えられている。
また、嗅覚に頼り周囲を識別している動物は、
スローロリスの持つ毒の刺激臭に
敏感に反応するだろう。
目立つ要素と気配を消す要素を
同時に併せ持っているのがスローロリスだ。
音や振動によって敵の接近を察知する
小鳥や昆虫にとっては姿の見えない暗殺者、
目や鼻の発達した動物にとっては
厄介な食えない奴なのである。
小さな猿ロリスの一種である。
可愛らしいと評判で、人気のペットとして
乱獲されたため絶滅が危惧されている。
だが、実は猿の仲間で唯一、毒を持つ。
この毒猿、肘の辺りから体液を分泌させることが
できるのだが、この体液に少し毒性がある。
強い毒ではないのだが、スローロリスの唾液と
混ざると、たちまち猛毒と化す。
彼らは自分たちの赤子の体にこの猛毒を
塗り付け、天敵に食われないようにするのだ。
ただし、この毒、口から摂取した場合は
ほとんど毒性を発揮しない。
普通に消化できてしまう。
傷口から直接体内に入った場合に限り、
猛毒となるのだ。
スローロリスに噛まれたり、引っ掛かれたり
した場合、その傷口から毒が入れば
人間のような大型の動物でも死に至る。
故に、多くの肉食動物はスローロリスを
狙う危険を冒さない。
大型のヘビなどは気にせず丸飲みにしてしまうが。
さて、スローロリスは名前の通り、
非常に鈍い動きをする動物だ。
昔はナマケモノの仲間だと思われていたほどだ。
ナマケモノのように身体の代謝を少なくし、
省エネルギー化もしてはいるのだが、
彼らがゆっくり動くのには別の理由がある。
スローロリスは樹上からほとんど下りない
生き物なのだが、彼らが歩く時、
枝が揺れることはない。
また、巧みに避けるため、体が葉に当たり、
揺らしたり音を立てたりすることもない。
ゆっくりと、しかし確実に、無音で近寄る捕食者。
臆病な小鳥や敏感な昆虫ですら、
スローロリスの接近には気付けない。
そう、彼らが鈍いのは、獲物に気付かれない
ようにするためなのだ。
その一方で、彼らの可愛らしい顔は、
自然界においては
非常に目立つデザインになっている。
視覚に頼り獲物、あるいは敵を識別する動物は、
スローロリスを容易に判別できる。
猛毒を持つ生き物特有の警戒色と同等の
効果があると考えられている。
また、嗅覚に頼り周囲を識別している動物は、
スローロリスの持つ毒の刺激臭に
敏感に反応するだろう。
目立つ要素と気配を消す要素を
同時に併せ持っているのがスローロリスだ。
音や振動によって敵の接近を察知する
小鳥や昆虫にとっては姿の見えない暗殺者、
目や鼻の発達した動物にとっては
厄介な食えない奴なのである。
2019年6月21日金曜日
クランベリー
北アメリカ原産の湿地を好むコケモモである。
いわゆるベリーの一種であり、
低木に赤い小さな果実が成るものだ。
果実は酸みが強く、そのまま食べるのには向かないが、
甘みを加えてジュースやジャムを作ったり、
酸みを活かした調理用ソースに加工される。
アメリカの感謝祭でクランベリーソースは
欠かせない食材とされているが、
これは初期の移住者が原住民からクランベリーを
教えてもらい飢えを凌いだことに由来するという。
酸みの効いたクランベリーソースのかけられた
七面鳥料理はぜひとも味わっておきたい
アメリカ東海岸の郷土料理だ。
さて、このクランベリー、栽培されるに当たって、
非常に独特な農法が用いられる。
クランベリー畑作りはまず、
土を掘るところから始められる。
箱型に土を掘り、垂直の土手を作り、
地面を平らに均す。
クランベリーは湿地帯の植物のため、
この土は湿り気を帯びてなければならない。
果実が成ると、箱型の畑には水が張られることになる。
低木であるクランベリーが完全に
沈むほどの水が張られる。
その状態で木々を揺することで、
クランベリーの果実は水面に浮いてくるため、
その浮かんだ果実を一気に収穫するのだ。
クランベリーの木は霜に弱い。
このため、収穫の際に張った水は
春までそのままにされる。
寒い冬でも水中温であれば、
クランベリーの木がやられることはないのだ。
湿地帯の植物ならではの農法である。
ちなみに、クランベリーのクランは鶴のクレインだ。
鶴の頭部のような花が咲くからとも、
果実を鶴が好むからとも言われている。
本邦ではさほど馴染みのない漿果であるが、
クランベリージュースであれば
口にする機会はそこそこあると思われる。
特に、カクテルでの使用例が多く、
ウォッカと合わせたコスモポリタンは有名だ。
しかし、コスモポリタンはともかく、
他のクランベリージュースを使ったカクテルは、
いずれもビーチのバカンスを思わせる名前だ。
寒冷湿地のクランベリーが、
享楽的でトロピカルな飲み物になることに
なんだか面白みを感じてしまう。
いわゆるベリーの一種であり、
低木に赤い小さな果実が成るものだ。
果実は酸みが強く、そのまま食べるのには向かないが、
甘みを加えてジュースやジャムを作ったり、
酸みを活かした調理用ソースに加工される。
アメリカの感謝祭でクランベリーソースは
欠かせない食材とされているが、
これは初期の移住者が原住民からクランベリーを
教えてもらい飢えを凌いだことに由来するという。
酸みの効いたクランベリーソースのかけられた
七面鳥料理はぜひとも味わっておきたい
アメリカ東海岸の郷土料理だ。
さて、このクランベリー、栽培されるに当たって、
非常に独特な農法が用いられる。
クランベリー畑作りはまず、
土を掘るところから始められる。
箱型に土を掘り、垂直の土手を作り、
地面を平らに均す。
クランベリーは湿地帯の植物のため、
この土は湿り気を帯びてなければならない。
果実が成ると、箱型の畑には水が張られることになる。
低木であるクランベリーが完全に
沈むほどの水が張られる。
その状態で木々を揺することで、
クランベリーの果実は水面に浮いてくるため、
その浮かんだ果実を一気に収穫するのだ。
クランベリーの木は霜に弱い。
このため、収穫の際に張った水は
春までそのままにされる。
寒い冬でも水中温であれば、
クランベリーの木がやられることはないのだ。
湿地帯の植物ならではの農法である。
ちなみに、クランベリーのクランは鶴のクレインだ。
鶴の頭部のような花が咲くからとも、
果実を鶴が好むからとも言われている。
本邦ではさほど馴染みのない漿果であるが、
クランベリージュースであれば
口にする機会はそこそこあると思われる。
特に、カクテルでの使用例が多く、
ウォッカと合わせたコスモポリタンは有名だ。
しかし、コスモポリタンはともかく、
他のクランベリージュースを使ったカクテルは、
いずれもビーチのバカンスを思わせる名前だ。
寒冷湿地のクランベリーが、
享楽的でトロピカルな飲み物になることに
なんだか面白みを感じてしまう。
2019年6月20日木曜日
フルクトース
果糖と呼ばれるものである。
文字通り、果物に多く含まれる糖だ。
蜂蜜の主成分もこれである。
糖には単糖と多糖があり、
主な単糖はブドウ糖と呼ばれるグルコースと
果糖と呼ばれるフルクトースである。
多糖の代表としては、二糖と呼ばれるもののうち、
グルコースとフルクトースで構成される
蔗糖と呼ばれるスクロースがある。
スクロース、蔗糖とはいわゆる砂糖のことだ。
つまり、砂糖はブドウ糖と果糖でできている。
果糖はブドウ糖の異性体で、
構成要素は同じだが、構造が異なるものだ。
ブドウ糖より果糖の方がずっと甘みが強い。
ブドウ糖は我々哺乳類にとってのエネルギー源であり、
食物は消化分解され多くがブドウ糖となる。
エネルギー源ではあるのだが、実はそのままでは
生き物の体にとって毒とも言えるものである。
ゆえに、肝臓は頑張ってブドウ糖を分解する。
糖を摂りすぎると体に悪いというのは
肝臓への負担が主な理由だ。
果糖はブドウ糖と比べて体にとっての毒性が強い。
したがって、肝臓はブドウ糖より先に
果糖の分解を頑張る。
当然、肝臓への負担はブドウ糖より果糖が大きい。
繰り返しになるが、念のためもう一度書くと、
砂糖はブドウ糖と果糖の混合物である。
果糖はブドウ糖の異性体である。
これも大切なことなのでもう一度書いておく。
さて、世間では異性化糖というものに対して、
健康に悪いということで
風当たりが強くなっているのを感じる。
ここで言う異性化糖とは、
ブドウ糖が数多く連なった物質デンプンを、
ブドウ糖へとばらしてから異性化させ
果糖としたものを更にブドウ糖と混ぜたものだ。
食品の成分表にブドウ糖果糖液糖と
書かれているあれだ。
この、デンプンをブドウ糖果糖液糖に変える工程に、
体への悪影響が増える要素は無い。
前述のとおり、糖というやつがそもそも、
エネルギー源でありながら
肝臓に負荷をかける物質だ。
必要不可欠ではあるが、量が多ければ健康に悪い。
過剰摂取は毒ということだ。
ここまでの話で、砂糖とブドウ糖果糖液糖に
大した差がないことは理解できたと思う。
だが、異性化糖は健康志向の人々から
蛇蝎のごとく嫌われている。
実は、ここにある誤解が存在する。
無知ゆえか、あるいは意図した曲解かは
分からないが、異性化糖を悪と見做す人々がいる。
ブドウ糖果糖液糖の材料となるデンプンは、
本邦ではサツマイモかトウモロコシが主である。
サツマイモの自給率は高く、
ありていに言ってしまえば余っている。
その余ったサツマイモのデンプンから
異性化糖が作られる。
一方、アメリカなどから安価なトウモロコシが
輸入されており、これを用いれば
より安くブドウ糖果糖液糖が作れる。
さて、アメリカでは遺伝子組み換え作物が
本邦より多く利用されている。
輸入トウモロコシもおそらくその手のものだろう。
前述の異性化糖を悪と見做す人々は
遺伝子組み換えに極度の拒否感を抱く。
もうわかっただろうか、彼らは短絡的に、
異性化糖と遺伝子組み換えトウモロコシを
イコールで結びつけているのだ。
遺伝子組み換えが気持ち悪いという感覚は分かる。
糖類の過剰摂取が体に悪いのは自明だ。
だが、このふたつは別物である。
遺伝子組み換えの是非についてはここでは論じない。
問題は、我々現代人が
糖類を摂りすぎだということだ。
それを、異性化糖だから体に悪いと
誤って喧伝してしまっている人々がいる。
得てして彼らは天然蜂蜜なら大丈夫などと宣う。
どちらもフルクトースに違いないのにである。
結局、よくわかりもしないのに、
なんとなく、誰かが言っていたからと、
人に踊らされて嫌悪しているに過ぎない。
何度も繰り返しとなるが、糖とは必要不可欠であり、
なおかつ量が多いと毒になる物質である。
そして、現代人は確実に過剰摂取している。
ブドウ糖果糖液糖は怖いから、
純粋な砂糖や蜂蜜を使っています、
などと言うことのナンセンスさを
理解していただけただろうか。
今回はやけに教条的になってしまったが、
当ブログはただの娯楽読み物である。
啓蒙などする気はさらさら無いので
適当に読み流してほしい。
文字通り、果物に多く含まれる糖だ。
蜂蜜の主成分もこれである。
糖には単糖と多糖があり、
主な単糖はブドウ糖と呼ばれるグルコースと
果糖と呼ばれるフルクトースである。
多糖の代表としては、二糖と呼ばれるもののうち、
グルコースとフルクトースで構成される
蔗糖と呼ばれるスクロースがある。
スクロース、蔗糖とはいわゆる砂糖のことだ。
つまり、砂糖はブドウ糖と果糖でできている。
果糖はブドウ糖の異性体で、
構成要素は同じだが、構造が異なるものだ。
ブドウ糖より果糖の方がずっと甘みが強い。
ブドウ糖は我々哺乳類にとってのエネルギー源であり、
食物は消化分解され多くがブドウ糖となる。
エネルギー源ではあるのだが、実はそのままでは
生き物の体にとって毒とも言えるものである。
ゆえに、肝臓は頑張ってブドウ糖を分解する。
糖を摂りすぎると体に悪いというのは
肝臓への負担が主な理由だ。
果糖はブドウ糖と比べて体にとっての毒性が強い。
したがって、肝臓はブドウ糖より先に
果糖の分解を頑張る。
当然、肝臓への負担はブドウ糖より果糖が大きい。
繰り返しになるが、念のためもう一度書くと、
砂糖はブドウ糖と果糖の混合物である。
果糖はブドウ糖の異性体である。
これも大切なことなのでもう一度書いておく。
さて、世間では異性化糖というものに対して、
健康に悪いということで
風当たりが強くなっているのを感じる。
ここで言う異性化糖とは、
ブドウ糖が数多く連なった物質デンプンを、
ブドウ糖へとばらしてから異性化させ
果糖としたものを更にブドウ糖と混ぜたものだ。
食品の成分表にブドウ糖果糖液糖と
書かれているあれだ。
この、デンプンをブドウ糖果糖液糖に変える工程に、
体への悪影響が増える要素は無い。
前述のとおり、糖というやつがそもそも、
エネルギー源でありながら
肝臓に負荷をかける物質だ。
必要不可欠ではあるが、量が多ければ健康に悪い。
過剰摂取は毒ということだ。
ここまでの話で、砂糖とブドウ糖果糖液糖に
大した差がないことは理解できたと思う。
だが、異性化糖は健康志向の人々から
蛇蝎のごとく嫌われている。
実は、ここにある誤解が存在する。
無知ゆえか、あるいは意図した曲解かは
分からないが、異性化糖を悪と見做す人々がいる。
ブドウ糖果糖液糖の材料となるデンプンは、
本邦ではサツマイモかトウモロコシが主である。
サツマイモの自給率は高く、
ありていに言ってしまえば余っている。
その余ったサツマイモのデンプンから
異性化糖が作られる。
一方、アメリカなどから安価なトウモロコシが
輸入されており、これを用いれば
より安くブドウ糖果糖液糖が作れる。
さて、アメリカでは遺伝子組み換え作物が
本邦より多く利用されている。
輸入トウモロコシもおそらくその手のものだろう。
前述の異性化糖を悪と見做す人々は
遺伝子組み換えに極度の拒否感を抱く。
もうわかっただろうか、彼らは短絡的に、
異性化糖と遺伝子組み換えトウモロコシを
イコールで結びつけているのだ。
遺伝子組み換えが気持ち悪いという感覚は分かる。
糖類の過剰摂取が体に悪いのは自明だ。
だが、このふたつは別物である。
遺伝子組み換えの是非についてはここでは論じない。
問題は、我々現代人が
糖類を摂りすぎだということだ。
それを、異性化糖だから体に悪いと
誤って喧伝してしまっている人々がいる。
得てして彼らは天然蜂蜜なら大丈夫などと宣う。
どちらもフルクトースに違いないのにである。
結局、よくわかりもしないのに、
なんとなく、誰かが言っていたからと、
人に踊らされて嫌悪しているに過ぎない。
何度も繰り返しとなるが、糖とは必要不可欠であり、
なおかつ量が多いと毒になる物質である。
そして、現代人は確実に過剰摂取している。
ブドウ糖果糖液糖は怖いから、
純粋な砂糖や蜂蜜を使っています、
などと言うことのナンセンスさを
理解していただけただろうか。
今回はやけに教条的になってしまったが、
当ブログはただの娯楽読み物である。
啓蒙などする気はさらさら無いので
適当に読み流してほしい。
2019年6月19日水曜日
トレハロース
砂糖の代用品として使われる甘い物質である。
自然界においては、昆虫のエネルギー源として、
いわゆるブドウ糖と呼ばれるグルコースの代わりに
体内に蓄積されていることが多い。
単純に言えば、我々人が利用しているのが
グルコースであり、昆虫などが
利用しているのがトレハロースである。
糖であるため当然甘い。
いわゆる砂糖はスクロースと呼ばれるのだが、
トレハロースの甘さはその半分以下だ。
甘みを求め続けてきた我々人類にとって、
砂糖の半分以下の甘さという点は、
あまり興味を引く対象ではない。
ただ、保水力が極めて高いという
化学的性質が注目された。
トレハロースが発見されてからは、
化粧品など、保水力を求める製品の
材料として活用されてきた。
しかし、当初はトレハロースを作り出すのは難しく、
高価で貴重な物質であった。
当然、これを使った化粧品は高級なものだった。
だが、本邦のある企業が、安価なデンプンから
トレハロースを大量生産する技術を生み出した。
廉価であるということは価値である。
トレハロースの利用は一気に広がった。
保水力を活かす製品にトレハロースが
こぞって使われたことは言うまでもない。
甘味料としては、臭みを消す力を持つことが
注目されることになる。
レトルト食品のような保存食は、
使われる保存料独特の匂いを持つことになるのだが、
トレハロースを使うとこれが抑えられる。
また、炭水化物、蛋白質、脂質の劣化を抑える
働きまで持っている。
つまり、砂糖の代わりにトレハロースを使うことで、
食品の寿命を延ばすことができるのだ。
ゆえに、安価となったトレハロースの利用は
爆発的に広がった。
我々が知らないだけで、我々が口にする
加工食品のほとんどに、おそらく
トレハロースが使われている。
こう聞くと、安全性を不安視する向きもあると思う。
だが、トレハロースは体内でグルコース、
つまりブドウ糖に変換され、
スクロース、砂糖を摂取した場合と
ほぼ変わらぬ消化が行われる。
我々が口にするキノコの類もトレハロースを
含有しており、例えばシイタケが干しても水で
戻せるのはトレハロースの保水力によるところが大きい。
身体に害があると信じられている合成甘味料の類だと
トレハロースのことを誤解している者も
少なくないのではないかと思う。
だが、安心してほしい。
トレハロースはそういう怪しげなものではない。
もっとも、トレハロースは砂糖と変わらない。
健康に関して、トレハロースなら大丈夫などという
誤った考えを持っているのなら改めるべきだと思う。
現代人は糖質を摂りすぎなのだ。
自然界においては、昆虫のエネルギー源として、
いわゆるブドウ糖と呼ばれるグルコースの代わりに
体内に蓄積されていることが多い。
単純に言えば、我々人が利用しているのが
グルコースであり、昆虫などが
利用しているのがトレハロースである。
糖であるため当然甘い。
いわゆる砂糖はスクロースと呼ばれるのだが、
トレハロースの甘さはその半分以下だ。
甘みを求め続けてきた我々人類にとって、
砂糖の半分以下の甘さという点は、
あまり興味を引く対象ではない。
ただ、保水力が極めて高いという
化学的性質が注目された。
トレハロースが発見されてからは、
化粧品など、保水力を求める製品の
材料として活用されてきた。
しかし、当初はトレハロースを作り出すのは難しく、
高価で貴重な物質であった。
当然、これを使った化粧品は高級なものだった。
だが、本邦のある企業が、安価なデンプンから
トレハロースを大量生産する技術を生み出した。
廉価であるということは価値である。
トレハロースの利用は一気に広がった。
保水力を活かす製品にトレハロースが
こぞって使われたことは言うまでもない。
甘味料としては、臭みを消す力を持つことが
注目されることになる。
レトルト食品のような保存食は、
使われる保存料独特の匂いを持つことになるのだが、
トレハロースを使うとこれが抑えられる。
また、炭水化物、蛋白質、脂質の劣化を抑える
働きまで持っている。
つまり、砂糖の代わりにトレハロースを使うことで、
食品の寿命を延ばすことができるのだ。
ゆえに、安価となったトレハロースの利用は
爆発的に広がった。
我々が知らないだけで、我々が口にする
加工食品のほとんどに、おそらく
トレハロースが使われている。
こう聞くと、安全性を不安視する向きもあると思う。
だが、トレハロースは体内でグルコース、
つまりブドウ糖に変換され、
スクロース、砂糖を摂取した場合と
ほぼ変わらぬ消化が行われる。
我々が口にするキノコの類もトレハロースを
含有しており、例えばシイタケが干しても水で
戻せるのはトレハロースの保水力によるところが大きい。
身体に害があると信じられている合成甘味料の類だと
トレハロースのことを誤解している者も
少なくないのではないかと思う。
だが、安心してほしい。
トレハロースはそういう怪しげなものではない。
もっとも、トレハロースは砂糖と変わらない。
健康に関して、トレハロースなら大丈夫などという
誤った考えを持っているのなら改めるべきだと思う。
現代人は糖質を摂りすぎなのだ。
2019年6月18日火曜日
余談7
スマートフォンが故障してしまった。
実際にスマートフォンが使えない状況を
体験したことで、現代人がいかに
スマートフォンに依存しているかを痛感した。
現在ではクラウドサービスやデータ連携があるため、
修理中の貸出機を速やかに元の状態に
限りなく近い状態にすることができたのは僥倖である。
仕事柄、ソーシャルゲームを多くプレイしているが、
中にはデータ連携の存在しないものもあった。
データ連携が存在せず、引き継ぎコードを
手動で発行しなければならないのだが、
故障ではお手上げである。
おそらく、同じ憂き目に遭う者は多いだろう。
つまり、サポートセンターには日々、
データ復旧を願うお問い合わせが行っているはずだ。
そう思ってお問い合わせフォームを開いてみると、
案の定と言うべきか、やけに詳細に
ゲームデータの情報を入力する項目が盛沢山だった。
有料コンテンツ購入の際のレシートメールの
スクリーンショットを添付する項目まで
存在したため、おそらく復旧は叶うだろう。
ただ、他のゲームで一件、データ復旧の操作を誤り、
復旧できない状態になってしまったものがある。
こちらもお問い合わせをしたのだが、
果たして自身の誤操作によるデータ喪失を
救済してくれるかどうかは確信が持てない。
少なくとも、復旧が可能かという問い合わせに対して、
なんらかのレスポンスがあるものと思われるが、
その際に前述のようなレシートメールを要求してくれれば
復旧の可能性は高いだろう。
だが、お客様ご自身の操作により云々と、
門前払いを食らってしまう可能性もゼロではない。
カスタマーサポートとしてはレベルが低いことだが、
無いとは言い切れないのが不安である。
なお、今回のスマートフォンの故障、
色々と試してみた結果、おそらくバッテリーに
問題が生じたものと思われる。
何気なく充電していたものが、
手に取ってみたところ異常な熱を持っていた。
そして、起動途中で再起動を
繰り返す状態になってしまった。
ショップのインターネット予約が翌日の分は
間に合わなかったため、朝から出向き、
空いている時間に予約を取り、一旦帰って
再度訪れ、対応を行ってもらった。
修理に一週間ほどかかるのだが、
データは初期化されてしまう。
推測に過ぎないことではあるが、
バッテリー交換で直る可能性が極めて高いにも
関わらず、データは初期化されてしまう。
この辺り、どうにかならないものだろうか。
ちなみに、町の修理屋でバッテリー交換をすると、
データそのままで直ることになるが、
改造を行ったことになり、
公式のサポートが受けられなくなってしまう。
費用もかかるため、痛し痒しである。
とりあえず、クラウドサービスとデータ連携、
バックアップをとることと、アカウント情報のメモ。
不測の事態に備えてこれらを怠らぬようにしたい。
実際にスマートフォンが使えない状況を
体験したことで、現代人がいかに
スマートフォンに依存しているかを痛感した。
現在ではクラウドサービスやデータ連携があるため、
修理中の貸出機を速やかに元の状態に
限りなく近い状態にすることができたのは僥倖である。
仕事柄、ソーシャルゲームを多くプレイしているが、
中にはデータ連携の存在しないものもあった。
データ連携が存在せず、引き継ぎコードを
手動で発行しなければならないのだが、
故障ではお手上げである。
おそらく、同じ憂き目に遭う者は多いだろう。
つまり、サポートセンターには日々、
データ復旧を願うお問い合わせが行っているはずだ。
そう思ってお問い合わせフォームを開いてみると、
案の定と言うべきか、やけに詳細に
ゲームデータの情報を入力する項目が盛沢山だった。
有料コンテンツ購入の際のレシートメールの
スクリーンショットを添付する項目まで
存在したため、おそらく復旧は叶うだろう。
ただ、他のゲームで一件、データ復旧の操作を誤り、
復旧できない状態になってしまったものがある。
こちらもお問い合わせをしたのだが、
果たして自身の誤操作によるデータ喪失を
救済してくれるかどうかは確信が持てない。
少なくとも、復旧が可能かという問い合わせに対して、
なんらかのレスポンスがあるものと思われるが、
その際に前述のようなレシートメールを要求してくれれば
復旧の可能性は高いだろう。
だが、お客様ご自身の操作により云々と、
門前払いを食らってしまう可能性もゼロではない。
カスタマーサポートとしてはレベルが低いことだが、
無いとは言い切れないのが不安である。
なお、今回のスマートフォンの故障、
色々と試してみた結果、おそらくバッテリーに
問題が生じたものと思われる。
何気なく充電していたものが、
手に取ってみたところ異常な熱を持っていた。
そして、起動途中で再起動を
繰り返す状態になってしまった。
ショップのインターネット予約が翌日の分は
間に合わなかったため、朝から出向き、
空いている時間に予約を取り、一旦帰って
再度訪れ、対応を行ってもらった。
修理に一週間ほどかかるのだが、
データは初期化されてしまう。
推測に過ぎないことではあるが、
バッテリー交換で直る可能性が極めて高いにも
関わらず、データは初期化されてしまう。
この辺り、どうにかならないものだろうか。
ちなみに、町の修理屋でバッテリー交換をすると、
データそのままで直ることになるが、
改造を行ったことになり、
公式のサポートが受けられなくなってしまう。
費用もかかるため、痛し痒しである。
とりあえず、クラウドサービスとデータ連携、
バックアップをとることと、アカウント情報のメモ。
不測の事態に備えてこれらを怠らぬようにしたい。
2019年6月16日日曜日
サッカリン
コールタールから生み出された
人工甘味料である。
その甘さは砂糖の数百倍であり、
糖類ではないためカロリーも無い。
甘党大歓喜の物質だが、
量が多いと特有の刺激的な後味、
そして苦みを感じてしまう。
また、水に溶けないことから、
飲料に使うこともできない。
このため、通常の糖類に少量混ぜて
甘さを増す使い方がされる。
なお、このサッカリン、動物実験において、
発癌性があるという結果が出された。
後に、この結果は誤りであったことが
わかるのだが、本邦では現在でも
食品衛生法によって使用が制限されている。
こうした制限のないアメリカ合衆国や
中華人民共和国では日常に
なくてはならない存在となっている。
通常の砂糖はサトウキビから作られるのだが、
サトウキビの生産量は膨大で、
我々人類が消費する砂糖の量は
時代と共に明らかに増加している。
需要が高く、それに応じて
供給量も増えてきた砂糖だが、
代用品を求める動きは昔からあった。
サッカリンに関しては、第一次世界大戦時の
砂糖不足の際にその存在感を示し、
世界中に普及した。
その後、健康志向の高まりによって
カロリーゼロを謳い文句に
更なる需要を喚起した。
そんな状況に水を差したのが
前述の発癌性問題であった。
結果的に発癌性は無かったものの、
我々人類の甘さへの欲望には、
そろそろ歯止めをかけた方が
いいのかもしれない。
人工甘味料である。
その甘さは砂糖の数百倍であり、
糖類ではないためカロリーも無い。
甘党大歓喜の物質だが、
量が多いと特有の刺激的な後味、
そして苦みを感じてしまう。
また、水に溶けないことから、
飲料に使うこともできない。
このため、通常の糖類に少量混ぜて
甘さを増す使い方がされる。
なお、このサッカリン、動物実験において、
発癌性があるという結果が出された。
後に、この結果は誤りであったことが
わかるのだが、本邦では現在でも
食品衛生法によって使用が制限されている。
こうした制限のないアメリカ合衆国や
中華人民共和国では日常に
なくてはならない存在となっている。
通常の砂糖はサトウキビから作られるのだが、
サトウキビの生産量は膨大で、
我々人類が消費する砂糖の量は
時代と共に明らかに増加している。
需要が高く、それに応じて
供給量も増えてきた砂糖だが、
代用品を求める動きは昔からあった。
サッカリンに関しては、第一次世界大戦時の
砂糖不足の際にその存在感を示し、
世界中に普及した。
その後、健康志向の高まりによって
カロリーゼロを謳い文句に
更なる需要を喚起した。
そんな状況に水を差したのが
前述の発癌性問題であった。
結果的に発癌性は無かったものの、
我々人類の甘さへの欲望には、
そろそろ歯止めをかけた方が
いいのかもしれない。
2019年6月15日土曜日
甘茶
タピオカミルクティーではない。
アジサイの仲間の植物で、
見た目もガクアジサイにそっくりである。
若葉は茶として利用されるのだが、
名前の通り甘い。
含まれる成分の甘さはサッカリンの倍だ。
ただ、含有量はそこまででもないので
優しい甘みと言ってよいだろう。
もちろん、濃く煮出せばそれだけ甘くなるが、
微量の毒性があるため、濃い甘茶を
大量に飲むと嘔吐してしまうことになる。
茶と異なりカフェインは含んでいないが、
多量の飲茶は控えるように。
なお、生薬として、アレルギーや
歯周病に効くとされており、
本邦の薬局方に記されている。
ただし、純粋な漢方ではなく、
本邦特有の薬だ。
ところで甘茶は仏教で重要な地位を占めており、
灌仏会という儀式において、
仏像にかける風習がある。
これは、シャカが誕生した際に、
八大竜王が祝いとして産湯に甘露を
注いだという伝説に因む。
この灌仏会で使われた甘茶には
虫除けの効能があると昔は信じられていた。
そのような成分は無いのだが、
一種のおまじないとして
病をもたらす虫の退散に使われたのだ。
さて、甘茶はよく甜茶と混同される。
甜茶は特定の植物を指す言葉ではなく、
茶以外の茶のように飲める甘い飲料とできる
植物の総称である。
つまり、甘茶も甜茶の指し示す範囲内の存在だ。
甘茶は甜茶だが、甜茶の中のひとつ
であることを覚えておくといいだろう。
追記
大事なことを書き忘れていた。
本邦のアジサイの変種である甘茶は
本邦原産の固有の植物である。
当然、仏像にかける風習も本邦独自のものだ。
アジサイの仲間の植物で、
見た目もガクアジサイにそっくりである。
若葉は茶として利用されるのだが、
名前の通り甘い。
含まれる成分の甘さはサッカリンの倍だ。
ただ、含有量はそこまででもないので
優しい甘みと言ってよいだろう。
もちろん、濃く煮出せばそれだけ甘くなるが、
微量の毒性があるため、濃い甘茶を
大量に飲むと嘔吐してしまうことになる。
茶と異なりカフェインは含んでいないが、
多量の飲茶は控えるように。
なお、生薬として、アレルギーや
歯周病に効くとされており、
本邦の薬局方に記されている。
ただし、純粋な漢方ではなく、
本邦特有の薬だ。
ところで甘茶は仏教で重要な地位を占めており、
灌仏会という儀式において、
仏像にかける風習がある。
これは、シャカが誕生した際に、
八大竜王が祝いとして産湯に甘露を
注いだという伝説に因む。
この灌仏会で使われた甘茶には
虫除けの効能があると昔は信じられていた。
そのような成分は無いのだが、
一種のおまじないとして
病をもたらす虫の退散に使われたのだ。
さて、甘茶はよく甜茶と混同される。
甜茶は特定の植物を指す言葉ではなく、
茶以外の茶のように飲める甘い飲料とできる
植物の総称である。
つまり、甘茶も甜茶の指し示す範囲内の存在だ。
甘茶は甜茶だが、甜茶の中のひとつ
であることを覚えておくといいだろう。
追記
大事なことを書き忘れていた。
本邦のアジサイの変種である甘茶は
本邦原産の固有の植物である。
当然、仏像にかける風習も本邦独自のものだ。
2019年6月14日金曜日
モモンガ
被膜により滑空飛行が可能な夜行性の
リスのような哺乳類である。
ムササビとは被膜の付き方、体の大きさが違うのだが、
昔の人々はこれを区別することがなかった。
というのも、真っ暗な夜の森で素早く飛び交う存在を
人間の目で見て判別することなどできず、
妖怪の類だと思われていたためだ。
妖怪としての呼称は野衾であるが、
モモンガもまた化け物という意味で使われる言葉だ。
悪いことをする子供に、モモンガァが来るぞと
脅していたのだろう。
人の視界を塞ぐヌリカベ型やヒダル型の
妖怪として知られるが、
年を経たものはより危険度が増す。
山地乳と書いてヤマチチと読む妖怪がそれで、
蝙蝠あるいは野衾が変化する。
夜、人の寝静まった頃に音もなく民家に入り込み、
眠っている人間の呼吸を吸い取る。
息を吸われた人間は寿命を奪われ、
ほどなくして死んでしまうという。
別の説ではもっとダイレクトに
生き血をすするとされる。
さて、そんな恐ろしい妖怪であったモモンガだが、
実際の食物は木の実や昆虫などで雑食である。
雑食故に人の出した生ごみなども食うため、
人里近くにもよく生息していた。
だが、人の生活は変化し、森や林は減少、
樹上から滅多に下りることのない
モモンガは生息可能な場所が減少していった。
なお、天敵はテンなどの肉食獣や
ヘビなどである。
これらの敵から逃れるために地上に
下りなくてもよい能力を獲得したわけだが、
もうひとつ重大な天敵が存在する。
フクロウだ。
非常に素早く飛ぶことのできるモモンガだが、
夜行性で無音のハンターと呼ばれる
フクロウには敵わない。
しゅっと格好良く木々を飛び回っている最中、
さっとフクロウにさらわれてしまうのだ。
日中の木の洞などで寝ている時も危険である。
ヘビなどもそうだが、人間に狩猟されてしまう。
上質で扱いやすい毛皮は人間に珍重されたのだが、
昔の人々はこの妙に皮の余ったネズミのような
生き物と、夜に怪しく飛び回る野衾が
同じ生き物だと知っていたのだろうか。
リスのような哺乳類である。
ムササビとは被膜の付き方、体の大きさが違うのだが、
昔の人々はこれを区別することがなかった。
というのも、真っ暗な夜の森で素早く飛び交う存在を
人間の目で見て判別することなどできず、
妖怪の類だと思われていたためだ。
妖怪としての呼称は野衾であるが、
モモンガもまた化け物という意味で使われる言葉だ。
悪いことをする子供に、モモンガァが来るぞと
脅していたのだろう。
人の視界を塞ぐヌリカベ型やヒダル型の
妖怪として知られるが、
年を経たものはより危険度が増す。
山地乳と書いてヤマチチと読む妖怪がそれで、
蝙蝠あるいは野衾が変化する。
夜、人の寝静まった頃に音もなく民家に入り込み、
眠っている人間の呼吸を吸い取る。
息を吸われた人間は寿命を奪われ、
ほどなくして死んでしまうという。
別の説ではもっとダイレクトに
生き血をすするとされる。
さて、そんな恐ろしい妖怪であったモモンガだが、
実際の食物は木の実や昆虫などで雑食である。
雑食故に人の出した生ごみなども食うため、
人里近くにもよく生息していた。
だが、人の生活は変化し、森や林は減少、
樹上から滅多に下りることのない
モモンガは生息可能な場所が減少していった。
なお、天敵はテンなどの肉食獣や
ヘビなどである。
これらの敵から逃れるために地上に
下りなくてもよい能力を獲得したわけだが、
もうひとつ重大な天敵が存在する。
フクロウだ。
非常に素早く飛ぶことのできるモモンガだが、
夜行性で無音のハンターと呼ばれる
フクロウには敵わない。
しゅっと格好良く木々を飛び回っている最中、
さっとフクロウにさらわれてしまうのだ。
日中の木の洞などで寝ている時も危険である。
ヘビなどもそうだが、人間に狩猟されてしまう。
上質で扱いやすい毛皮は人間に珍重されたのだが、
昔の人々はこの妙に皮の余ったネズミのような
生き物と、夜に怪しく飛び回る野衾が
同じ生き物だと知っていたのだろうか。
2019年6月13日木曜日
ムササビ
被膜により滑空飛行が可能な夜行性の
リスのような哺乳類である。
名前の由来は、宙を舞うために
非常に痩せていることから、
身細びと書いてむささびと読まれたことによる。
古語では身体を意味する身はムと読まれたのだ。
モモンガとは被膜の付き方、体の大きさが違うのだが、
昔の人々はこれを区別することがなかった。
というのも、電灯もない時代、山奥の森の中で
頭上を飛び交う存在を目視で見分けることなどできず、
得体のしれないものと認識されていたためだ。
野衾の名で呼ばれる際には明確に妖怪であり、
地方によっては大変恐れられた。
急に人の視界を塞ぎ、歩くことができなくなる
類の妖怪であり、ヌリカベ型、ヒダル型の
性質を持つと言える。
特にムササビやモモンガが由来と思われる野衾の場合、
飛んできて顔に張り付くことで視界を奪う。
野鉄砲という妖怪にいたっては、
狸型の妖怪が口から鉄砲のように野衾を飛ばし、
人の顔に張り付けてしまう。
なお、衾とはいわゆる布団の一種で、
これに突然覆われることで目の前が
真っ暗になるという意味合いの妖怪である。
他にも山地乳という妖怪も
野衾が長い年月を経て変化するものだと
考えられていた。
さて、そんな恐ろしい妖怪であったムササビだが、
日中は木の洞などで寝ている。
それを人間は捕え、食糧や毛皮として利用してきた。
縄文時代の遺跡からもムササビの骨が出てくる。
毛皮は上質で、寝ているところを狙えるため
捕獲が容易なこともあり、乱獲されていた。
このため、かなり古い時代ですらも、
資源枯渇を避けるためにムササビを
狩猟することを禁ずる令が出ているほどだ。
近代では物資の乏しかった大戦中、
上等なムササビの毛皮は非常に高価となる。
戦後は鳥獣保護法において、
狩猟が禁じられた。
ムササビの仲間は世界中に生息しており、
同じように滑空飛行ができる別種としては、
ウロコオリス、フクロモモンガ、
ヒヨケザルが存在する。
特にフクロモモンガはモモンガと
名付けられているが、
有袋類であることが興味深い。
ちなみに、開発によって森の減ってきている
本邦ではムササビの絶滅が危惧されている。
リスのような哺乳類である。
名前の由来は、宙を舞うために
非常に痩せていることから、
身細びと書いてむささびと読まれたことによる。
古語では身体を意味する身はムと読まれたのだ。
モモンガとは被膜の付き方、体の大きさが違うのだが、
昔の人々はこれを区別することがなかった。
というのも、電灯もない時代、山奥の森の中で
頭上を飛び交う存在を目視で見分けることなどできず、
得体のしれないものと認識されていたためだ。
野衾の名で呼ばれる際には明確に妖怪であり、
地方によっては大変恐れられた。
急に人の視界を塞ぎ、歩くことができなくなる
類の妖怪であり、ヌリカベ型、ヒダル型の
性質を持つと言える。
特にムササビやモモンガが由来と思われる野衾の場合、
飛んできて顔に張り付くことで視界を奪う。
野鉄砲という妖怪にいたっては、
狸型の妖怪が口から鉄砲のように野衾を飛ばし、
人の顔に張り付けてしまう。
なお、衾とはいわゆる布団の一種で、
これに突然覆われることで目の前が
真っ暗になるという意味合いの妖怪である。
他にも山地乳という妖怪も
野衾が長い年月を経て変化するものだと
考えられていた。
さて、そんな恐ろしい妖怪であったムササビだが、
日中は木の洞などで寝ている。
それを人間は捕え、食糧や毛皮として利用してきた。
縄文時代の遺跡からもムササビの骨が出てくる。
毛皮は上質で、寝ているところを狙えるため
捕獲が容易なこともあり、乱獲されていた。
このため、かなり古い時代ですらも、
資源枯渇を避けるためにムササビを
狩猟することを禁ずる令が出ているほどだ。
近代では物資の乏しかった大戦中、
上等なムササビの毛皮は非常に高価となる。
戦後は鳥獣保護法において、
狩猟が禁じられた。
ムササビの仲間は世界中に生息しており、
同じように滑空飛行ができる別種としては、
ウロコオリス、フクロモモンガ、
ヒヨケザルが存在する。
特にフクロモモンガはモモンガと
名付けられているが、
有袋類であることが興味深い。
ちなみに、開発によって森の減ってきている
本邦ではムササビの絶滅が危惧されている。
2019年6月12日水曜日
オレタチ
カラタチという植物がある。
ミカンの仲間で、
唐橘 からたちばな と呼ばれていた。
ミカンに似た果実が成るのだが、
苦すぎ、酸っぱすぎるため、
食用には向かない。
鋭いトゲが生えるため、昔は塀代わりの
生垣としてよく植えられていたが、
ブロック塀の登場で姿を消した。
アクの強い味のカラタチだが、
強い酒に漬け、香りを付けた果実酒が
大陸の方ではよく作られるらしい。
また、未成熟な果実は乾燥させ、
健胃、利尿、去痰作用のある
生薬として使われたともいう。
現在はこのカラタチにミカンを接ぎ木すると、
病気に強くなり、果実が成るのが早くなるため、
果樹園などで活躍している。
さて、接ぎ木によってミカンが
有益な性質を獲得するのであれば、
ミカンとカラタチを交配させれば
より良い品種が作れるのではないだろうか。
だが、残念ながらミカンとカラタチでは
雑種が生まれることはない。
そこで生命科学研究の成果である
細胞融合を行うことが考えられた。
細胞融合とは文字通りふたつの細胞を合体させ、
ひとつの細胞にしてしまう技術である。
なんでもかんでも融合できるわけではなく、
異種の細胞であれば近縁である必要がある。
オレンジとカラタチであれば可能な範囲だ。
世間ではスーパーマリオブラザーズが
人気を博した頃、農林水産省果樹研究所と
キッコーマンの共同研究により、
オレンジとカラタチの細胞融合が成功した。
オレンジとカラタチの雑種なので
オレタチと名付けられた果樹の誕生である。
うまくいけばカラタチを台木にすることなく、
病気に強く結実の早い柑橘類が出来上がる
はずだったのだが、そうは問屋が卸さない。
オレタチはオレンジのように甘い
などということはなく、
カラタチ譲りの酸みが強かった。
そして、苦みが強く、何より匂いが悪い。
とても食べられたものではなかったのだ。
無念、オレタチの戦いはここまでだ。
もちろん、まったくの無駄だったわけではない。
オレタチを作る過程で獲得されたノウハウは、
その後の細胞融合植物研究に役立てられた。
ヒネ、メロチャ、ネギタマ、トマピーノ。
とりあえずネーミングセンスを疑う。
ミカンの仲間で、
唐橘 からたちばな と呼ばれていた。
ミカンに似た果実が成るのだが、
苦すぎ、酸っぱすぎるため、
食用には向かない。
鋭いトゲが生えるため、昔は塀代わりの
生垣としてよく植えられていたが、
ブロック塀の登場で姿を消した。
アクの強い味のカラタチだが、
強い酒に漬け、香りを付けた果実酒が
大陸の方ではよく作られるらしい。
また、未成熟な果実は乾燥させ、
健胃、利尿、去痰作用のある
生薬として使われたともいう。
現在はこのカラタチにミカンを接ぎ木すると、
病気に強くなり、果実が成るのが早くなるため、
果樹園などで活躍している。
さて、接ぎ木によってミカンが
有益な性質を獲得するのであれば、
ミカンとカラタチを交配させれば
より良い品種が作れるのではないだろうか。
だが、残念ながらミカンとカラタチでは
雑種が生まれることはない。
そこで生命科学研究の成果である
細胞融合を行うことが考えられた。
細胞融合とは文字通りふたつの細胞を合体させ、
ひとつの細胞にしてしまう技術である。
なんでもかんでも融合できるわけではなく、
異種の細胞であれば近縁である必要がある。
オレンジとカラタチであれば可能な範囲だ。
世間ではスーパーマリオブラザーズが
人気を博した頃、農林水産省果樹研究所と
キッコーマンの共同研究により、
オレンジとカラタチの細胞融合が成功した。
オレンジとカラタチの雑種なので
オレタチと名付けられた果樹の誕生である。
うまくいけばカラタチを台木にすることなく、
病気に強く結実の早い柑橘類が出来上がる
はずだったのだが、そうは問屋が卸さない。
オレタチはオレンジのように甘い
などということはなく、
カラタチ譲りの酸みが強かった。
そして、苦みが強く、何より匂いが悪い。
とても食べられたものではなかったのだ。
無念、オレタチの戦いはここまでだ。
もちろん、まったくの無駄だったわけではない。
オレタチを作る過程で獲得されたノウハウは、
その後の細胞融合植物研究に役立てられた。
ヒネ、メロチャ、ネギタマ、トマピーノ。
とりあえずネーミングセンスを疑う。
2019年6月11日火曜日
ポマト
植物の中には意外なものが
近縁の種であることが多いが、
ジャガイモとトマトも近い種である。
しかし、近いとは言っても知っての通り
まったくのベツモノであり、
当然、雑種が生まれることもない。
だが、生物化学研究は細胞融合という
驚異の技術を誕生させた。
これは二つ以上の細胞を文字通り融合させ、
雑種細胞と呼ばれる新たな細胞を
生み出すというものだ。
なんでもかんでも合体できるわけではないが、
ジャガイモとトマトの細胞融合は成功した。
ジャガイモにトマトを接ぎ木した
ジャガトマと呼ばれるものもあるが、
これとはわけが違う。
完全にジャガイモとトマトの雑種、
ポマトの誕生である。
ジャガトマのようにトマトとジャガイモの
両方を同時に得られる植物を
作ろうとしたわけではない。
トマトは寒さに弱いがジャガイモは強い。
このジャガイモの耐寒性をトマトへと
継承できないかと実験的に作られたのだ。
ポマトはトマトのような果実が成り、
ジャガイモのような地下茎を形成するが、
目論見通りの耐寒トマトとはならなかった。
しかも、ポマトから得られる果実も
地下茎も味は原種よりはるかに劣り、
良いとこ取りというわけにはいかなかった。
さて、いかにも最新の科学によって
生み出されたかのように書いたが、
ポマトを作り出したのは西ドイツの研究所である。
つまり、かなり昔の話だ。
当時は未来の植物として大いに期待されたが、
結果は前述の通り残念なものだった。
なお、近年少しだけ話題になったトムテトは
ポマトではなくジャガトマである。
近縁の種であることが多いが、
ジャガイモとトマトも近い種である。
しかし、近いとは言っても知っての通り
まったくのベツモノであり、
当然、雑種が生まれることもない。
だが、生物化学研究は細胞融合という
驚異の技術を誕生させた。
これは二つ以上の細胞を文字通り融合させ、
雑種細胞と呼ばれる新たな細胞を
生み出すというものだ。
なんでもかんでも合体できるわけではないが、
ジャガイモとトマトの細胞融合は成功した。
ジャガイモにトマトを接ぎ木した
ジャガトマと呼ばれるものもあるが、
これとはわけが違う。
完全にジャガイモとトマトの雑種、
ポマトの誕生である。
ジャガトマのようにトマトとジャガイモの
両方を同時に得られる植物を
作ろうとしたわけではない。
トマトは寒さに弱いがジャガイモは強い。
このジャガイモの耐寒性をトマトへと
継承できないかと実験的に作られたのだ。
ポマトはトマトのような果実が成り、
ジャガイモのような地下茎を形成するが、
目論見通りの耐寒トマトとはならなかった。
しかも、ポマトから得られる果実も
地下茎も味は原種よりはるかに劣り、
良いとこ取りというわけにはいかなかった。
さて、いかにも最新の科学によって
生み出されたかのように書いたが、
ポマトを作り出したのは西ドイツの研究所である。
つまり、かなり昔の話だ。
当時は未来の植物として大いに期待されたが、
結果は前述の通り残念なものだった。
なお、近年少しだけ話題になったトムテトは
ポマトではなくジャガトマである。
2019年6月10日月曜日
アテネ
知恵の女神に捧げられた都市であり、
哲学の殿堂として知られている
現在のギリシャ共和国の首都だ。
古代のギリシア世界の中心であり、
エーゲ海を支配した強大な都市国家であった。
芸術と学問の都であり、
西洋およびアラビアの科学の泉源でもある。
だが、ローマの興隆以来、ビザンツ、オスマンの
属国として歴史の表舞台から姿を消し、
現在はかつての栄光は遺跡に残されるのみだ。
もちろん、今でも考古学者の集う地であり、
舞台芸術も盛んであるが、様々な問題を
抱えた都市および国家に成り下がった。
ところで、ギリシャやギリシアと我々は
かの地を呼んでいるが、
これは例外的な呼称である。
ローマ人はあの地域をグラエキアと呼び、
この名が英語のグリークやポルトガル語の
ゲレシアへと変化する。
本邦へはポルトガル人によって紹介されたため、
ゲレシアの名で伝わったが、
これが訛りギリシヤとなった。
本邦の言語ではギリシヤは言いにくいため、
やがてギリシャとなったが、学問の世界では
ラテン語読みでギリシアと書かれることが多い。
サラセン人はこの地方をアルユーナーンと
呼んでいたが、これはイオニアから訛ったもので、
前述のグラエキアと共に、ギリシアの地方名由来だ。
では、当のギリシア人たちは自分たちの
国をなんと呼んでいるかというと、
エラダの形容詞系エリニキである。
エラダは古代ギリシア語ではヘラスであったが、
これも本来は地方名のひとつに過ぎない。
ヘラスからエラダへと変化していることから
想像がつくと思うが、現在のギリシア語は
古代から比べると大きく変貌を遂げた。
ローマ帝国、ビザンツ帝国、オスマン帝国、
三つの帝国の支配下の中で、
文化が大きく変わっていった結果だ。
さて、アテネの街に話を戻そう。
しかし、世界最大級の観光都市アテネの
名所をここで紹介する意義はあるだろうか。
大聖堂とマスジットぐらいは紹介しておこう。
カテドラルは生神女福音大聖堂、
通称ミトロポリス大聖堂だ。
正教会関連用語は本邦でさかんに訳され、
カトリックとは異なる趣を持っている。
生神女とはキリスト教の聖母マリアのことだ。
オスマントルコ支配下では
イスラーム勢力の一端であったため、
キリスト教の勢いは弱かった。
したがって、この大聖堂が建てられたのは
近代に入ってからである。
オスマン時代に築かれたツィスタラキスの
マスジットは現在は郷土芸術博物館となっている。
このマスジット、ハドリアヌスの図書館の
大理石の柱が使われたとされているが、
建築を行った知事ツィスタラキスはスルタンから
古代の遺物を棄損した罪で裁かれている。
このぐらいでアテネの紹介は終えよう。
歴史の重すぎる街の紹介はやはり難しい。
哲学の殿堂として知られている
現在のギリシャ共和国の首都だ。
古代のギリシア世界の中心であり、
エーゲ海を支配した強大な都市国家であった。
芸術と学問の都であり、
西洋およびアラビアの科学の泉源でもある。
だが、ローマの興隆以来、ビザンツ、オスマンの
属国として歴史の表舞台から姿を消し、
現在はかつての栄光は遺跡に残されるのみだ。
もちろん、今でも考古学者の集う地であり、
舞台芸術も盛んであるが、様々な問題を
抱えた都市および国家に成り下がった。
ところで、ギリシャやギリシアと我々は
かの地を呼んでいるが、
これは例外的な呼称である。
ローマ人はあの地域をグラエキアと呼び、
この名が英語のグリークやポルトガル語の
ゲレシアへと変化する。
本邦へはポルトガル人によって紹介されたため、
ゲレシアの名で伝わったが、
これが訛りギリシヤとなった。
本邦の言語ではギリシヤは言いにくいため、
やがてギリシャとなったが、学問の世界では
ラテン語読みでギリシアと書かれることが多い。
サラセン人はこの地方をアルユーナーンと
呼んでいたが、これはイオニアから訛ったもので、
前述のグラエキアと共に、ギリシアの地方名由来だ。
では、当のギリシア人たちは自分たちの
国をなんと呼んでいるかというと、
エラダの形容詞系エリニキである。
エラダは古代ギリシア語ではヘラスであったが、
これも本来は地方名のひとつに過ぎない。
ヘラスからエラダへと変化していることから
想像がつくと思うが、現在のギリシア語は
古代から比べると大きく変貌を遂げた。
ローマ帝国、ビザンツ帝国、オスマン帝国、
三つの帝国の支配下の中で、
文化が大きく変わっていった結果だ。
さて、アテネの街に話を戻そう。
しかし、世界最大級の観光都市アテネの
名所をここで紹介する意義はあるだろうか。
大聖堂とマスジットぐらいは紹介しておこう。
カテドラルは生神女福音大聖堂、
通称ミトロポリス大聖堂だ。
正教会関連用語は本邦でさかんに訳され、
カトリックとは異なる趣を持っている。
生神女とはキリスト教の聖母マリアのことだ。
オスマントルコ支配下では
イスラーム勢力の一端であったため、
キリスト教の勢いは弱かった。
したがって、この大聖堂が建てられたのは
近代に入ってからである。
オスマン時代に築かれたツィスタラキスの
マスジットは現在は郷土芸術博物館となっている。
このマスジット、ハドリアヌスの図書館の
大理石の柱が使われたとされているが、
建築を行った知事ツィスタラキスはスルタンから
古代の遺物を棄損した罪で裁かれている。
このぐらいでアテネの紹介は終えよう。
歴史の重すぎる街の紹介はやはり難しい。
2019年6月9日日曜日
白亜
炭酸カルシムの鱗片をもつ藻類などが堆積して
できた石灰岩の一種である。
固結していないため、脆く柔らかい。
チョークと呼ばれ、黒板に文字を書くチョークは
元々はこの岩石が用いられていた。
本来は白堊と書き、堊の字はアクと読むものの、
いつしかハクアと読まれるようになり、
字体の簡単な同音の亜の字に置き換えられた。
時代区分の白亜紀の名は、この白亜を形成する
生物たちが生きた時代である。
六千年にも及ぶ白亜紀は温暖湿潤な気候で
安定しており、多くの動植物が栄えた期間だ。
特に裸子植物から被子植物へと植物の主流が
変化した時期であり、この時代から
ほとんど進化していないものも少なくない。
動物に関しては爬虫類の全盛期であり、
ジュラ紀から続く恐竜の時代と言える。
脆弱な哺乳類は胎盤、あるいは育児嚢を発達させ、
現在の姿へと進化した。
また、鳥の類も恐竜から分岐進化したが、
この時代に主流であった鳥たちは
ほとんど絶滅してしまっている。
鳥だけではない、白亜紀の終わりには
非常に多くの生物が絶滅した。
長らく大量絶滅の原因は憶測されるだけであったが、
現在ではユカタン半島への隕石の衝突が
気候変動をもたらしたためだと考えられている。
気候の変化に耐えられなかった植物は死に絶え、
食料の減少と寒さが爬虫類たちを死に追いやった。
そんな中、恒温動物であり小型の哺乳類たちが
生き延び、後の世の繁栄へと繋がっていく。
ただ、炭酸カルシウムを持つ生物の大量死が
白亜を生み出したわけではない。
長い長い安定した時間の中で溜まりに溜まった
死骸が沈殿して凝塊したのが白亜である。
なお、白亜が露出した有名な地形として、
ヨーロッパからブリテン島を見たときに
目につくドーバー海峡の白い壁がある。
ローマ人はこの白い絶壁を見て、
ブリテン島をアルビオンと呼んだ。
イギリスの雅名として古くから使われている。
ちなみに本邦で白亜と言った場合、
チョークのことではなく、
白く塗られた壁を指すことが多い。
白亜の城や白亜の神殿といった表現である。
こうした用法が人口に膾炙した結果、
白亜というと美しく荘厳なものという
イメージが強くなっている。
できた石灰岩の一種である。
固結していないため、脆く柔らかい。
チョークと呼ばれ、黒板に文字を書くチョークは
元々はこの岩石が用いられていた。
本来は白堊と書き、堊の字はアクと読むものの、
いつしかハクアと読まれるようになり、
字体の簡単な同音の亜の字に置き換えられた。
時代区分の白亜紀の名は、この白亜を形成する
生物たちが生きた時代である。
六千年にも及ぶ白亜紀は温暖湿潤な気候で
安定しており、多くの動植物が栄えた期間だ。
特に裸子植物から被子植物へと植物の主流が
変化した時期であり、この時代から
ほとんど進化していないものも少なくない。
動物に関しては爬虫類の全盛期であり、
ジュラ紀から続く恐竜の時代と言える。
脆弱な哺乳類は胎盤、あるいは育児嚢を発達させ、
現在の姿へと進化した。
また、鳥の類も恐竜から分岐進化したが、
この時代に主流であった鳥たちは
ほとんど絶滅してしまっている。
鳥だけではない、白亜紀の終わりには
非常に多くの生物が絶滅した。
長らく大量絶滅の原因は憶測されるだけであったが、
現在ではユカタン半島への隕石の衝突が
気候変動をもたらしたためだと考えられている。
気候の変化に耐えられなかった植物は死に絶え、
食料の減少と寒さが爬虫類たちを死に追いやった。
そんな中、恒温動物であり小型の哺乳類たちが
生き延び、後の世の繁栄へと繋がっていく。
ただ、炭酸カルシウムを持つ生物の大量死が
白亜を生み出したわけではない。
長い長い安定した時間の中で溜まりに溜まった
死骸が沈殿して凝塊したのが白亜である。
なお、白亜が露出した有名な地形として、
ヨーロッパからブリテン島を見たときに
目につくドーバー海峡の白い壁がある。
ローマ人はこの白い絶壁を見て、
ブリテン島をアルビオンと呼んだ。
イギリスの雅名として古くから使われている。
ちなみに本邦で白亜と言った場合、
チョークのことではなく、
白く塗られた壁を指すことが多い。
白亜の城や白亜の神殿といった表現である。
こうした用法が人口に膾炙した結果、
白亜というと美しく荘厳なものという
イメージが強くなっている。
2019年6月8日土曜日
大理石
方解石と呼ばれる炭酸カルシウム結晶の岩石である。
特に、方解石同士が再結晶化して
大きな結晶となったものである。
輝く石を意味する言葉が語源のマーブルの名を持ち、
美しいことから古くより石材として重宝されてきた。
大理石の名は、現在の雲南省付近に存在した
大理国で産出したことから付けられた。
石灰岩の一種であるため古代生物の甲殻由来の
ものが存在し、中には化石が内部に
残されているものもある。
ただし、結晶質の石灰岩が大理石であるため、
化石が多く残っているようなものは
本来大理石とは呼べない。
しかし、本邦では建材に使われる石灰岩は
概ね大理石と呼ばれており、
その定義にずれが生じている。
さて、大理石で作られたものといえば
何を思い浮かべるだろうか。
古代ギリシアの神殿の数々や
インドのタージ・マハルなどの建造物、
ミケランジェロの彫刻などなど
数え上げればきりがない。
イタリアのカッラーラ、ギリシアのペンテリコなど、
有名な産地のものが高級石材として取引されるが、
比較的一般的な鉱物であるため、
世界中に産地が存在する。
本邦でも もちろん産出するのだが、
彫刻や建材にはあまりされない。
というのも、本邦の大理石は建材としてみた場合、
少々見劣りがする品質であるため、
工業用の石灰岩として消費されるのだ。
中には十分な美しさのものもあるため、
国産大理石を使った製品も無いわけではない。
山口県は特に良質な大理石の産地として知られる。
白鷹や薄雲、銀波や淡雪など、
雅な名前が付けられているのが印象的だ。
さて、大理石と言えば白く、マーブル柄と呼ばれる
紋様の入ったものを想像すると思う。
だが、中にはピンク色やオレンジ色、緑のものもあり、
トルコのアクシェヒルなどは黒く、
千差万別の大理石が存在することがわかる。
ヨーロッパ各国はこうした大理石をふんだんに
使った大理石宮殿を競って建造したため、
巨大な宝石細工とでも言うべき建築物が散在する。
高級石材の代名詞にもなっている大理石。
建築マニアにも地質マニアにも石材マニアにも
愛されるこの岩石は、今後も人気であり続けるだろう。
特に、方解石同士が再結晶化して
大きな結晶となったものである。
輝く石を意味する言葉が語源のマーブルの名を持ち、
美しいことから古くより石材として重宝されてきた。
大理石の名は、現在の雲南省付近に存在した
大理国で産出したことから付けられた。
石灰岩の一種であるため古代生物の甲殻由来の
ものが存在し、中には化石が内部に
残されているものもある。
ただし、結晶質の石灰岩が大理石であるため、
化石が多く残っているようなものは
本来大理石とは呼べない。
しかし、本邦では建材に使われる石灰岩は
概ね大理石と呼ばれており、
その定義にずれが生じている。
さて、大理石で作られたものといえば
何を思い浮かべるだろうか。
古代ギリシアの神殿の数々や
インドのタージ・マハルなどの建造物、
ミケランジェロの彫刻などなど
数え上げればきりがない。
イタリアのカッラーラ、ギリシアのペンテリコなど、
有名な産地のものが高級石材として取引されるが、
比較的一般的な鉱物であるため、
世界中に産地が存在する。
本邦でも もちろん産出するのだが、
彫刻や建材にはあまりされない。
というのも、本邦の大理石は建材としてみた場合、
少々見劣りがする品質であるため、
工業用の石灰岩として消費されるのだ。
中には十分な美しさのものもあるため、
国産大理石を使った製品も無いわけではない。
山口県は特に良質な大理石の産地として知られる。
白鷹や薄雲、銀波や淡雪など、
雅な名前が付けられているのが印象的だ。
さて、大理石と言えば白く、マーブル柄と呼ばれる
紋様の入ったものを想像すると思う。
だが、中にはピンク色やオレンジ色、緑のものもあり、
トルコのアクシェヒルなどは黒く、
千差万別の大理石が存在することがわかる。
ヨーロッパ各国はこうした大理石をふんだんに
使った大理石宮殿を競って建造したため、
巨大な宝石細工とでも言うべき建築物が散在する。
高級石材の代名詞にもなっている大理石。
建築マニアにも地質マニアにも石材マニアにも
愛されるこの岩石は、今後も人気であり続けるだろう。
2019年6月7日金曜日
石灰岩
含まれる成分のうち半分以上が
炭酸カルシウムの岩石である。
白いイメージがあるが、
炭酸カルシウムの含有量で色が変わるため、
茶色や黒のものも存在する。
石灰質の甲殻を持つ生物の死骸が堆積して
できたものと、炭酸カルシウム含有量の多い
水質の沈殿物が凝塊してできたものがある。
全く異なる成因を持つふたつの石灰岩だが、
性質は同じであるものの、用途は微妙に異なる。
石灰岩は建材として使用される岩石であり、
石材として用いられる場合には
英語でライムストーンと呼ばれることが多い。
特に白いものは彫刻の材料や化粧石として、
建築物の装飾に用いられ、
頑強なものは建材に使われてきた。
生物由来の石灰岩の場合、化石の形状が
残されているものもあり、こうしたものは
建物の内装として好まれる。
本邦の国会議事堂の内装にこうした化石の
見られる石灰岩が使われていることは
有名で、悠久の歴史に由来する重厚感がある。
石灰岩には他にもその化学的性質を
活かす利用法が存在する。
代表的なものはセメントだろう。
いわゆるコンクリートの材料である。
漆喰の原料もこれだ。
また、製鉄の際の融剤として、
不純物を取り除くために用いられる。
炭酸カルシウムがアルカリ性であるため、
酸性土壌を中和させるためにも使われるなど、
人類の歴史において非常に役立ってきた。
カルストと呼ばれる地形を
生み出すことでも知られ、
世界中に石灰岩由来の絶景が存在する。
大理石やチョークも石灰岩の一種
であることを考えると、
人とのかかわりの深い岩石だと言えるだろう。
炭酸カルシウムの岩石である。
白いイメージがあるが、
炭酸カルシウムの含有量で色が変わるため、
茶色や黒のものも存在する。
石灰質の甲殻を持つ生物の死骸が堆積して
できたものと、炭酸カルシウム含有量の多い
水質の沈殿物が凝塊してできたものがある。
全く異なる成因を持つふたつの石灰岩だが、
性質は同じであるものの、用途は微妙に異なる。
石灰岩は建材として使用される岩石であり、
石材として用いられる場合には
英語でライムストーンと呼ばれることが多い。
特に白いものは彫刻の材料や化粧石として、
建築物の装飾に用いられ、
頑強なものは建材に使われてきた。
生物由来の石灰岩の場合、化石の形状が
残されているものもあり、こうしたものは
建物の内装として好まれる。
本邦の国会議事堂の内装にこうした化石の
見られる石灰岩が使われていることは
有名で、悠久の歴史に由来する重厚感がある。
石灰岩には他にもその化学的性質を
活かす利用法が存在する。
代表的なものはセメントだろう。
いわゆるコンクリートの材料である。
漆喰の原料もこれだ。
また、製鉄の際の融剤として、
不純物を取り除くために用いられる。
炭酸カルシウムがアルカリ性であるため、
酸性土壌を中和させるためにも使われるなど、
人類の歴史において非常に役立ってきた。
カルストと呼ばれる地形を
生み出すことでも知られ、
世界中に石灰岩由来の絶景が存在する。
大理石やチョークも石灰岩の一種
であることを考えると、
人とのかかわりの深い岩石だと言えるだろう。
2019年6月6日木曜日
ストレリチア
極楽鳥という華美な鳥がいる。
その鳥のような形の花を咲かせるため
極楽鳥花と呼ばれる植物である。
花は特徴的な大きな水平のがくを持ち、
翼を上方へ広げたような花弁が乗っている。
大きながくは蜜を吸いに来る太陽鳥という
鳥が止まれるように発達したものだ。
太陽鳥の足には花粉がたっぷりと付けられ、
よそのストレリチアに止まった際に受粉する。
原産地はアフリカ南部であり、
代表的な種、レギナエは極楽鳥の名の通り
非常に派手な色彩を持つ。
アルバとニコライは黒いがくに
白い花弁がつくため、地味な印象だ。
ノンリーフと呼ばれるユンケアは
花は滅多に咲かず、葉も小さいが、
観葉植物として人気である。
なお、オーガスタと呼ばれるものもあり、
これは本来アルバの別名なのだが、
ニコライがこの名で流通している。
おそらく流行に際して販売業者が
名前を間違え、それが一般化したのだろう。
よくある話だ。
ストレリチアという名はメクレンブルクの
シュトレーリッツ公爵の令嬢に由来する。
イングランド王ジョージ三世に
嫁いだシャルロッテは有名なキューガーデンの
設立を後援したほどの植物愛好家として知られる。
おそらく植物学者を支援したのだろう、
その家名がストレリチアの名の由来となっている。
話は逸れるが、シャーロット王妃は
モーツァルトのパトロンであった。
バッハの息子も支援している。
また、ウェッジウッドを愛好し、
この陶磁器がクイーンズウェア、
女王の愛用品の称号を名乗ることを許している。
ストレリチア・レギナエのレギナエとは
女王を意味する言葉である。
一方、ストレリチア・ニコライのニコライは
ロシア皇帝ニコライ一世に由来すると
されているが、その孫であるニコライ大公が
本当の由来だという文献も見受けられる。
いずれにせよ、この南国の花に
ロシアの皇族の名が付けられた経緯が
書かれた文献は、不勉強にして知らない。
アルバは白いという意味で、
オーガスタについては、いつの時代の
どのオーガスタさんが由来か
調べられなかった。
ユンケアはおそらく葦のようなという意味であろう。
羅和辞典がどこかへいってしまった。
ところでこのストレリチア、
本邦では生け花に使われることが多い。
少しお高いようだが、
特に正月に松と共に生けられるのが
トレンドのようだ。
松の葉が鳥の翼のようになり、
ストレリチアの花が冠羽を持つ鳥の
クチバシのように見える生け方が主流だ。
もっとも、生け花のことはよく知らないので
見た限りでの感想であり、
実際の意義などは私には分からないのだが。
その鳥のような形の花を咲かせるため
極楽鳥花と呼ばれる植物である。
花は特徴的な大きな水平のがくを持ち、
翼を上方へ広げたような花弁が乗っている。
大きながくは蜜を吸いに来る太陽鳥という
鳥が止まれるように発達したものだ。
太陽鳥の足には花粉がたっぷりと付けられ、
よそのストレリチアに止まった際に受粉する。
原産地はアフリカ南部であり、
代表的な種、レギナエは極楽鳥の名の通り
非常に派手な色彩を持つ。
アルバとニコライは黒いがくに
白い花弁がつくため、地味な印象だ。
ノンリーフと呼ばれるユンケアは
花は滅多に咲かず、葉も小さいが、
観葉植物として人気である。
なお、オーガスタと呼ばれるものもあり、
これは本来アルバの別名なのだが、
ニコライがこの名で流通している。
おそらく流行に際して販売業者が
名前を間違え、それが一般化したのだろう。
よくある話だ。
ストレリチアという名はメクレンブルクの
シュトレーリッツ公爵の令嬢に由来する。
イングランド王ジョージ三世に
嫁いだシャルロッテは有名なキューガーデンの
設立を後援したほどの植物愛好家として知られる。
おそらく植物学者を支援したのだろう、
その家名がストレリチアの名の由来となっている。
話は逸れるが、シャーロット王妃は
モーツァルトのパトロンであった。
バッハの息子も支援している。
また、ウェッジウッドを愛好し、
この陶磁器がクイーンズウェア、
女王の愛用品の称号を名乗ることを許している。
ストレリチア・レギナエのレギナエとは
女王を意味する言葉である。
一方、ストレリチア・ニコライのニコライは
ロシア皇帝ニコライ一世に由来すると
されているが、その孫であるニコライ大公が
本当の由来だという文献も見受けられる。
いずれにせよ、この南国の花に
ロシアの皇族の名が付けられた経緯が
書かれた文献は、不勉強にして知らない。
アルバは白いという意味で、
オーガスタについては、いつの時代の
どのオーガスタさんが由来か
調べられなかった。
ユンケアはおそらく葦のようなという意味であろう。
羅和辞典がどこかへいってしまった。
ところでこのストレリチア、
本邦では生け花に使われることが多い。
少しお高いようだが、
特に正月に松と共に生けられるのが
トレンドのようだ。
松の葉が鳥の翼のようになり、
ストレリチアの花が冠羽を持つ鳥の
クチバシのように見える生け方が主流だ。
もっとも、生け花のことはよく知らないので
見た限りでの感想であり、
実際の意義などは私には分からないのだが。
2019年6月5日水曜日
蒟蒻
サトイモの仲間の植物であり、芋である。
ただし、シュウ酸カリウムを多く含むため、
そのままでは食べることができない。
口や喉や消化管の粘膜がやられてしまうのだ。
本来はまともに食べることのできない植物
なのだが、人間はそんなものでも
料理という文明の力で食物としてしまった。
コンニャクというと本邦独自の食品という
錯覚を覚えるが、原産地は南アジアであり、
雲南省や四川省ではよく食べられている。
ただ、魔芋という名で呼ばれているあたり、
やはり生で食べてはいけない
イメージが強いのだろう。
本邦で輸入物のコンニャクを見かけないのは
蒟蒻農家を保護するために設けられた
こんにゃく芋への高い関税のためだ。
過去には最大で十七倍もの関税率に
引き上げられたことすらある。
さて、食品としてのコンニャクだが、
カロリーがほとんど無いうえに、
ヒトの消化管ではほぼ消化できない。
なぜそんなものを食べるのかというと、
ふたつの理由が存在する。
ひとつめは空腹を紛らわすためである。
栄養は乏しいが腹は膨れる。
現代では減量用食品としてよく知られている。
ふたつめはその豊富な食物繊維により、
消化管を清掃する目的である。
つまりはお通じを良くするのだ。
本邦においては鎌倉期までは
コンニャクは薬という認識であった。
整腸剤である。
それが、お寺の精進料理の発達によって
食材としての地位を確立するようになり、
江戸期には庶民の食べ物として広まった。
中島藤右衛門という人物が
現在のコンニャクの製法を考案したという。
面白いことに、樹脂のゴムが手に入り難かった
大戦期の本邦において、コンニャクは
樹脂代わりに使われた。
ゴムほどの耐久性があるわけではないが、
防水性と気密性があるため、
コンニャク糊というものを防水加工に使用した。
江戸期に和傘を作るために使われたこの技術は
風船爆弾という珍兵器を生み出すことになる。
気球に爆弾を仕掛け、偏西風に乗せて飛ばすことで、
アメリカ領に無差別攻撃を仕掛けるというものだ。
実は人類史上初の大陸間攻撃兵器である。
なお、戦果は民間人六名の死亡と、
小規模の山火事であったという。
これが心理面に与えた打撃は大きかった。
恐怖を煽るテロルであり、アメリカの厭戦気分を
助長させるための作戦であったと思われる。
焼夷弾ではなく生物兵器が搭載されている
可能性を考え、風船爆弾の届いた地域では
厳重な警戒態勢がとられたようだ。
アメリカ政府は事態を重く見て徹底的な
報道管制を敷き、戦意維持に努めたという。
本土が攻撃されないという安心が破られたのだ。
風船爆弾。コンニャクを塗った気球と聞くと、
冗談のような兵器であるが、
製造コストに対する効果は大きかったように思う。
和紙とヘチマとコンニャクで、
大海渡るテロリズム。
話題を変えよう。
落語の演目に蒟蒻問答というものがある。
私はこれが大好きだ。
禅問答の難解さを茶化したものなのだが、
オチのネタばらしが秀逸で、
あらすじを読んだだけで笑ってしまう。
無言で仕草を見せる部分がある仕方噺のため、
音声だけで楽しめる落語ではないが、
動画のある現代ではいつでも楽しめる。
騙されたと思って視聴してみてほしい。
できれば事前にあらすじなどを読まず、
ネタばらしのところで爆笑してもらいたい。
ただし、シュウ酸カリウムを多く含むため、
そのままでは食べることができない。
口や喉や消化管の粘膜がやられてしまうのだ。
本来はまともに食べることのできない植物
なのだが、人間はそんなものでも
料理という文明の力で食物としてしまった。
コンニャクというと本邦独自の食品という
錯覚を覚えるが、原産地は南アジアであり、
雲南省や四川省ではよく食べられている。
ただ、魔芋という名で呼ばれているあたり、
やはり生で食べてはいけない
イメージが強いのだろう。
本邦で輸入物のコンニャクを見かけないのは
蒟蒻農家を保護するために設けられた
こんにゃく芋への高い関税のためだ。
過去には最大で十七倍もの関税率に
引き上げられたことすらある。
さて、食品としてのコンニャクだが、
カロリーがほとんど無いうえに、
ヒトの消化管ではほぼ消化できない。
なぜそんなものを食べるのかというと、
ふたつの理由が存在する。
ひとつめは空腹を紛らわすためである。
栄養は乏しいが腹は膨れる。
現代では減量用食品としてよく知られている。
ふたつめはその豊富な食物繊維により、
消化管を清掃する目的である。
つまりはお通じを良くするのだ。
本邦においては鎌倉期までは
コンニャクは薬という認識であった。
整腸剤である。
それが、お寺の精進料理の発達によって
食材としての地位を確立するようになり、
江戸期には庶民の食べ物として広まった。
中島藤右衛門という人物が
現在のコンニャクの製法を考案したという。
面白いことに、樹脂のゴムが手に入り難かった
大戦期の本邦において、コンニャクは
樹脂代わりに使われた。
ゴムほどの耐久性があるわけではないが、
防水性と気密性があるため、
コンニャク糊というものを防水加工に使用した。
江戸期に和傘を作るために使われたこの技術は
風船爆弾という珍兵器を生み出すことになる。
気球に爆弾を仕掛け、偏西風に乗せて飛ばすことで、
アメリカ領に無差別攻撃を仕掛けるというものだ。
実は人類史上初の大陸間攻撃兵器である。
なお、戦果は民間人六名の死亡と、
小規模の山火事であったという。
これが心理面に与えた打撃は大きかった。
恐怖を煽るテロルであり、アメリカの厭戦気分を
助長させるための作戦であったと思われる。
焼夷弾ではなく生物兵器が搭載されている
可能性を考え、風船爆弾の届いた地域では
厳重な警戒態勢がとられたようだ。
アメリカ政府は事態を重く見て徹底的な
報道管制を敷き、戦意維持に努めたという。
本土が攻撃されないという安心が破られたのだ。
風船爆弾。コンニャクを塗った気球と聞くと、
冗談のような兵器であるが、
製造コストに対する効果は大きかったように思う。
和紙とヘチマとコンニャクで、
大海渡るテロリズム。
話題を変えよう。
落語の演目に蒟蒻問答というものがある。
私はこれが大好きだ。
禅問答の難解さを茶化したものなのだが、
オチのネタばらしが秀逸で、
あらすじを読んだだけで笑ってしまう。
無言で仕草を見せる部分がある仕方噺のため、
音声だけで楽しめる落語ではないが、
動画のある現代ではいつでも楽しめる。
騙されたと思って視聴してみてほしい。
できれば事前にあらすじなどを読まず、
ネタばらしのところで爆笑してもらいたい。
2019年6月4日火曜日
風鳥
極楽鳥とも呼ばれる華美な鳥である。
英語ではバードオブパラダイスと呼ばれる。
極楽鳥の名はこの和訳だが、
和名はフウチョウで統一されている。
オーストラリアからニューギニアにかけての
熱帯地域に生息するこの鳥の足は
現地では薬になると考えられていた。
このため、ヨーロッパには足の無い個体が
持ち込まれることになり、
元々足の無い鳥として紹介されることになる。
そして、常に空を飛び、地上や木の枝に
止まらない鳥だと勘違いされてしまう。
決して地面に降り立つことのない鳥、
すなわち天国に住まう鳥ということで、
極楽鳥の名が与えられた。
風を食って生きているという
荒唐無稽な説まで飛び出した。
一方、学名では足が無いことに着目され、
足の無いという意味の名が付けられている。
こうした誤った情報が遠回りをして
漢字圏に伝わり、風鳥の名が与えられた。
約百年後、生物学者がきちんと足のある
風鳥を現地で発見し、ようやく図鑑に
足のある姿で描かれるようになる。
さて、極楽鳥といえば、非常に目立つ姿で
独特の求愛ダンスを踊ることで知られている。
これらは雄の特徴であり、
雌はとても地味な姿をしている。
風鳥の仲間は種類によって
実に様々な見た目をしており、
求愛ダンスもそれぞれ異なる。
よって、具体的なことは、
各風鳥の紹介の際に書くことにしよう。
英語ではバードオブパラダイスと呼ばれる。
極楽鳥の名はこの和訳だが、
和名はフウチョウで統一されている。
オーストラリアからニューギニアにかけての
熱帯地域に生息するこの鳥の足は
現地では薬になると考えられていた。
このため、ヨーロッパには足の無い個体が
持ち込まれることになり、
元々足の無い鳥として紹介されることになる。
そして、常に空を飛び、地上や木の枝に
止まらない鳥だと勘違いされてしまう。
決して地面に降り立つことのない鳥、
すなわち天国に住まう鳥ということで、
極楽鳥の名が与えられた。
風を食って生きているという
荒唐無稽な説まで飛び出した。
一方、学名では足が無いことに着目され、
足の無いという意味の名が付けられている。
こうした誤った情報が遠回りをして
漢字圏に伝わり、風鳥の名が与えられた。
約百年後、生物学者がきちんと足のある
風鳥を現地で発見し、ようやく図鑑に
足のある姿で描かれるようになる。
さて、極楽鳥といえば、非常に目立つ姿で
独特の求愛ダンスを踊ることで知られている。
これらは雄の特徴であり、
雌はとても地味な姿をしている。
風鳥の仲間は種類によって
実に様々な見た目をしており、
求愛ダンスもそれぞれ異なる。
よって、具体的なことは、
各風鳥の紹介の際に書くことにしよう。
2019年6月3日月曜日
ヤカツ
小さな黄色い花が五つばかり
かたまって咲く植物である。
冶葛と書く。
漢方の生薬では鉤吻と呼ばれており、
本邦には奈良期に渡来した。
正倉院には薬品を納める部屋もあるのだが、
鉤吻壺、あるいは冶葛の壺というものが現存する。
解熱鎮痛剤として使われていた薬草だが、
この植物の持つ効能はいささか激しすぎる。
早い話が、どちらかというと毒である。
毒と薬は表裏一体の存在で、
人体に何らかの影響を与える物質
という意味では同じものだ。
それが良い効果であれば薬であり、
悪い効果であれば毒である。
このヤカツも正しい使い方をすれば
効果の高い薬となるのだろう。
だが、はっきり言ってヤカツを薬として
使うのは難易度が高すぎる。
世界最強の毒草とまで言われる植物だからだ。
毒と一口に言っても様々な物質があり、
人体のどの部位にどのように作用するのか、
その物質によって異なってくる。
複数の毒性物質を持つ動植物も珍しくないが、
ヤカツはいわば毒のスーパーマケットである。
含まれる毒性物質の種類がとても多いのだ。
ある毒性物質はある生き物には耐性があるなど、
効かないケースが多々ある。
だが、これだけ豊富に取り揃えられていると
どれかは効き目があるということになるだろう。
つまり、ヤカツの毒で倒れぬ動物を
探す方が難しい。
もし人間が食べてしまったらどうなるか。
様々な異常が起こるが、
最終的には呼吸器の麻痺で死ぬ。
ヤカツのどの部位を食べたかによっても
症状は違ってくるのだが、
根、芽、茎、葉、花、種子、すべて毒だ。
前述の鉤吻、薬として使う場合には
乾燥させた根を粉末にする。
ほとんどの医学書に内服は厳禁と書かれており、
どうやら飲み薬ではなく、
塗り薬として使われていたようだ。
誤飲はもとより、塗り薬が手についたまま
舐めてしまえば事故が起こる。
極めて慎重に扱わなければならぬ
薬だったことは想像に難くない。
どの程度効果があるかは知らないが、
喘息の治療薬にもなると言われている。
喘息は現在でも解明されていない部分の多い
病で、治療が難しい。
医療の発達していない昔であれば
それはもう、治すためならば
毒にも頼りたくなったことだろう。
かたまって咲く植物である。
冶葛と書く。
漢方の生薬では鉤吻と呼ばれており、
本邦には奈良期に渡来した。
正倉院には薬品を納める部屋もあるのだが、
鉤吻壺、あるいは冶葛の壺というものが現存する。
解熱鎮痛剤として使われていた薬草だが、
この植物の持つ効能はいささか激しすぎる。
早い話が、どちらかというと毒である。
毒と薬は表裏一体の存在で、
人体に何らかの影響を与える物質
という意味では同じものだ。
それが良い効果であれば薬であり、
悪い効果であれば毒である。
このヤカツも正しい使い方をすれば
効果の高い薬となるのだろう。
だが、はっきり言ってヤカツを薬として
使うのは難易度が高すぎる。
世界最強の毒草とまで言われる植物だからだ。
毒と一口に言っても様々な物質があり、
人体のどの部位にどのように作用するのか、
その物質によって異なってくる。
複数の毒性物質を持つ動植物も珍しくないが、
ヤカツはいわば毒のスーパーマケットである。
含まれる毒性物質の種類がとても多いのだ。
ある毒性物質はある生き物には耐性があるなど、
効かないケースが多々ある。
だが、これだけ豊富に取り揃えられていると
どれかは効き目があるということになるだろう。
つまり、ヤカツの毒で倒れぬ動物を
探す方が難しい。
もし人間が食べてしまったらどうなるか。
様々な異常が起こるが、
最終的には呼吸器の麻痺で死ぬ。
ヤカツのどの部位を食べたかによっても
症状は違ってくるのだが、
根、芽、茎、葉、花、種子、すべて毒だ。
前述の鉤吻、薬として使う場合には
乾燥させた根を粉末にする。
ほとんどの医学書に内服は厳禁と書かれており、
どうやら飲み薬ではなく、
塗り薬として使われていたようだ。
誤飲はもとより、塗り薬が手についたまま
舐めてしまえば事故が起こる。
極めて慎重に扱わなければならぬ
薬だったことは想像に難くない。
どの程度効果があるかは知らないが、
喘息の治療薬にもなると言われている。
喘息は現在でも解明されていない部分の多い
病で、治療が難しい。
医療の発達していない昔であれば
それはもう、治すためならば
毒にも頼りたくなったことだろう。
2019年6月2日日曜日
月下美人
クジャクサボテンの仲間で
大変美しい花を咲かせる。
まず、名前が美しい。
月夜にたたずむ麗人である。
英語ではクイーンオブザナイト、
夜の女王である。
オランダ人のパイプという呼び方もあるが、
蕾の状態は確かにパイプのようでもある。
花は夜に咲き、朝にしぼむ。
一晩しか開花しないのだ。
白い大輪の花は甘い芳香を強く漂わせ、
コウモリを呼び寄せる。
虫ではなくコウモリに花粉を媒介させるのだ。
果実はいわゆるドラゴンフルーツの類で甘い。
花も食べることができ、
台湾ではスープの具にされている。
さて、月下美人だが、私は昔、祖母と共に
この植物を育てたことがある。
蕾が大きくなり、そろそろ咲くぞという日の晩、
祖母と大叔母と共に夜更かしをして
開花を待ったのは良い思い出だ。
掌に余るほどの大きさの花が開いていく様子は、
本で読み、写真を見て想像していたよりも
はるかに感動的なものだった。
しばらく祖母たちと花を愛で、
翌朝、しぼんでいるのを確認した。
なお、月下美人という名ではあるが、
月光は特に生育にも開花にも関係がない。
原産地はメキシコの熱帯雨林であり、
絶滅の恐れがあるとして取引が制限されている。
この関係から、本邦では長らく単一株の
挿し木や株分けで増やしたものが
園芸品種として育てられてきた。
同一個体同士では受粉しても結実しないため、
かつては果実を得ることはできなかった。
今では他の株から分けられたものが
取引されているため、
本邦においても果実を得ることができる。
フルーツとしての月下美人は、
食用月下美人という雅さに欠ける名で流通する。
見た目、味共にドラゴンフルーツである。
花のスープに関しては、自宅で咲かせた当時は
食用になることを知らなかったため
試したことがないが、美味いらしい。
花を分解して具にするのだが、とろみ成分を持つ。
軽く蒸してからスープに入れるのが
美味しく調理するコツらしい。
ちなみに台湾では曇花と呼ばれているらしく、
おそらく太陽の下で咲かないことに
由来するのだろうと勝手に思っている。
曇花スープは咳や淡を改善し、
肺を清浄にして胃痛を和らげる
薬膳として飲まれるようだ。
ところで、年に一回満月の晩にのみ咲く
という俗説があるが、前述のとおり月光は
関係がなく、環境次第で何度も花をつける。
それほど育てにくい植物というわけでもないので、
一夜の感動を味わうために
栽培してみるのもいいのではないだろうか。
大変美しい花を咲かせる。
まず、名前が美しい。
月夜にたたずむ麗人である。
英語ではクイーンオブザナイト、
夜の女王である。
オランダ人のパイプという呼び方もあるが、
蕾の状態は確かにパイプのようでもある。
花は夜に咲き、朝にしぼむ。
一晩しか開花しないのだ。
白い大輪の花は甘い芳香を強く漂わせ、
コウモリを呼び寄せる。
虫ではなくコウモリに花粉を媒介させるのだ。
果実はいわゆるドラゴンフルーツの類で甘い。
花も食べることができ、
台湾ではスープの具にされている。
さて、月下美人だが、私は昔、祖母と共に
この植物を育てたことがある。
蕾が大きくなり、そろそろ咲くぞという日の晩、
祖母と大叔母と共に夜更かしをして
開花を待ったのは良い思い出だ。
掌に余るほどの大きさの花が開いていく様子は、
本で読み、写真を見て想像していたよりも
はるかに感動的なものだった。
しばらく祖母たちと花を愛で、
翌朝、しぼんでいるのを確認した。
なお、月下美人という名ではあるが、
月光は特に生育にも開花にも関係がない。
原産地はメキシコの熱帯雨林であり、
絶滅の恐れがあるとして取引が制限されている。
この関係から、本邦では長らく単一株の
挿し木や株分けで増やしたものが
園芸品種として育てられてきた。
同一個体同士では受粉しても結実しないため、
かつては果実を得ることはできなかった。
今では他の株から分けられたものが
取引されているため、
本邦においても果実を得ることができる。
フルーツとしての月下美人は、
食用月下美人という雅さに欠ける名で流通する。
見た目、味共にドラゴンフルーツである。
花のスープに関しては、自宅で咲かせた当時は
食用になることを知らなかったため
試したことがないが、美味いらしい。
花を分解して具にするのだが、とろみ成分を持つ。
軽く蒸してからスープに入れるのが
美味しく調理するコツらしい。
ちなみに台湾では曇花と呼ばれているらしく、
おそらく太陽の下で咲かないことに
由来するのだろうと勝手に思っている。
曇花スープは咳や淡を改善し、
肺を清浄にして胃痛を和らげる
薬膳として飲まれるようだ。
ところで、年に一回満月の晩にのみ咲く
という俗説があるが、前述のとおり月光は
関係がなく、環境次第で何度も花をつける。
それほど育てにくい植物というわけでもないので、
一夜の感動を味わうために
栽培してみるのもいいのではないだろうか。
2019年6月1日土曜日
レウコクロコディウム
気持ちが悪すぎるため、
この生物について改めて調べたくない。
なので、今回はうろ覚えで
記事を書かせてもらう。
ちなみに私がこの生物のことを知ったのは
高校の図書室においてだ。
寄生虫の本だった。
そう、レウコクロコディウムは寄生虫だ。
宿主はカタツムリである。
中間宿主は鳥だ。
カタツムリを補食した鳥の体内では
悪さをすることなく、糞と共に排出される。
糞から出た幼生は植物の葉と共に
カタツムリに食べられ、その体内に入る。
成長したレウコクロコディウムはやがて
カタツムリの頭部へと移動する。
通常であれば、カタツムリは
天敵である鳥に見つからぬよう
なるべく葉陰で過ごす。
しかし、この寄生虫に冒された個体は
これ見よがしに鳥の目につく場所を
うろつくようになってしまう。
脳をやられて行動を
コントロールされてしまうのだ。
この程度のことであれば、
例えばハリガネムシは宿主の昆虫を
水に飛び込ませるなどもっと酷い。
だが、レウコクロコディウムが
おぞましいのはここからだ。
カタツムリにはご存じ、触覚がある。
これが彼らの目なのだが、
レウコクロコディウムはこの中で急成長する。
目立つ縞模様を持つ大きな体に育った
レウコクロコディウムは、
カタツムリの触覚をぱんぱんに膨らませる。
そして、ぐるぐると動き出すのだ。
カタツムリは、天敵に見つかりやすい場所で、
目立つ縞模様の膨らんだ目玉を
振り回すようになる。
鳥は簡単に栄養豊富な餌、
カタツムリを補食できる。
レウコクロコディウムは鳥に運ばれ、
新天地で子孫に命を繋ぐ。
今の時代、様々な事象がインターネットにより
簡単に検索でき、画像や動画を
見ることができる。
この気味の悪い生き物の晴れ舞台を
高解像度で見ることができる。
お薦めはしないぞ。
この生物について改めて調べたくない。
なので、今回はうろ覚えで
記事を書かせてもらう。
ちなみに私がこの生物のことを知ったのは
高校の図書室においてだ。
寄生虫の本だった。
そう、レウコクロコディウムは寄生虫だ。
宿主はカタツムリである。
中間宿主は鳥だ。
カタツムリを補食した鳥の体内では
悪さをすることなく、糞と共に排出される。
糞から出た幼生は植物の葉と共に
カタツムリに食べられ、その体内に入る。
成長したレウコクロコディウムはやがて
カタツムリの頭部へと移動する。
通常であれば、カタツムリは
天敵である鳥に見つからぬよう
なるべく葉陰で過ごす。
しかし、この寄生虫に冒された個体は
これ見よがしに鳥の目につく場所を
うろつくようになってしまう。
脳をやられて行動を
コントロールされてしまうのだ。
この程度のことであれば、
例えばハリガネムシは宿主の昆虫を
水に飛び込ませるなどもっと酷い。
だが、レウコクロコディウムが
おぞましいのはここからだ。
カタツムリにはご存じ、触覚がある。
これが彼らの目なのだが、
レウコクロコディウムはこの中で急成長する。
目立つ縞模様を持つ大きな体に育った
レウコクロコディウムは、
カタツムリの触覚をぱんぱんに膨らませる。
そして、ぐるぐると動き出すのだ。
カタツムリは、天敵に見つかりやすい場所で、
目立つ縞模様の膨らんだ目玉を
振り回すようになる。
鳥は簡単に栄養豊富な餌、
カタツムリを補食できる。
レウコクロコディウムは鳥に運ばれ、
新天地で子孫に命を繋ぐ。
今の時代、様々な事象がインターネットにより
簡単に検索でき、画像や動画を
見ることができる。
この気味の悪い生き物の晴れ舞台を
高解像度で見ることができる。
お薦めはしないぞ。
2019年5月31日金曜日
珊瑚
サンゴ虫とも呼ばれる海の動物である。
イソギンチャクと近い生き物だがとても小さく、
プランクトンを捕食している。
藻類と共生しているものも多く、
そういった種類の珊瑚は浅い海に生息し、
光合成によってエネルギーを得ることができる。
珊瑚の最も特徴的な点は、
非常に硬い外殻を形成することだろう。
カルシウムを多く含むこの外殻は、
甲殻類の殻よりも哺乳類の骨に近い。
外殻を発達させた珊瑚はサンゴ礁と呼ばれる
群れを作り出し、浅い海底に
地形ともいうべき構造を生み出す。
サンゴ礁は隠れる場所が豊富なため、
様々な生物が住み着き、
豊かな生態系が形成される。
珊瑚には様々な色のものがあるが、
美しい赤色のものは人間によって
貴重な宝物として扱われてきた。
世界中の温かい浅い海で採取できる珊瑚だが、
乱獲により数を減らしてきている。
昔は採取が困難であったが、
現在では技術発展により容易であり、
また需要も増しているためだ。
本邦では高知県沖のものと沖縄周辺のものが
宝石的価値を持つが、高知県沖のものは
明治期までは存在を知られていなかった。
それまでは国外からの輸入品が流通していたのだが、
最も古いものはシルクロードを通って
地中海からやってきたと見られている。
明治期以降、ヨーロッパ人の指摘により
高知県沖の珊瑚が採取されるようになり、
これはトサと呼ばれて世界的に人気がある。
高知の旧国名、土佐が名前の由来だ。
また、沖縄のものは琉球方言でウルといい、
サンゴ礁のある島(マ)はウルマと呼ばれた。
近年では本邦近海の珊瑚を狙い、
大陸から多くの密漁船団がやってきたことが
問題視された。
サンゴ礁の形成には非常に時間がかかる。
また、酷く破壊されたサンゴ礁は
回復することができず、失われてしまう。
サンゴ礁が失われると、その地域の
生態系もまた失われ、海の砂漠となる。
魚も減るため漁業への影響も大きい。
ところで、珊瑚は古来、
血液に関係すると言われてきた。
ギリシア神話では首を刎ねられたメドゥサの
血液から生まれたとされているし、
所有者の健康状態、特に血液の状態により
色が変わると信じられていた。
月経中の女性が所有している珊瑚は
色が薄くなるとも言われており、
珊瑚が月と関係しているとする神話は多い。
血液、月経、月、とくれば妊娠、出産と続き、
多産、豊穣、愛情とも関連付けられていく。
金星神と月神がこうした性質と
結びついていることが多く、
中には混同や変遷があるため、
珊瑚も金星と月の両方と縁深い。
中世イベリアでまとめられた宝石誌にも、
金星と月の力が結びついたものが
珊瑚であると書かれている。
金星と月にまつわる信仰について
長々と書きたくなってきたが、
海の生物サンゴから離れてきた。
ここらで今日は筆を置くことにしよう。
イソギンチャクと近い生き物だがとても小さく、
プランクトンを捕食している。
藻類と共生しているものも多く、
そういった種類の珊瑚は浅い海に生息し、
光合成によってエネルギーを得ることができる。
珊瑚の最も特徴的な点は、
非常に硬い外殻を形成することだろう。
カルシウムを多く含むこの外殻は、
甲殻類の殻よりも哺乳類の骨に近い。
外殻を発達させた珊瑚はサンゴ礁と呼ばれる
群れを作り出し、浅い海底に
地形ともいうべき構造を生み出す。
サンゴ礁は隠れる場所が豊富なため、
様々な生物が住み着き、
豊かな生態系が形成される。
珊瑚には様々な色のものがあるが、
美しい赤色のものは人間によって
貴重な宝物として扱われてきた。
世界中の温かい浅い海で採取できる珊瑚だが、
乱獲により数を減らしてきている。
昔は採取が困難であったが、
現在では技術発展により容易であり、
また需要も増しているためだ。
本邦では高知県沖のものと沖縄周辺のものが
宝石的価値を持つが、高知県沖のものは
明治期までは存在を知られていなかった。
それまでは国外からの輸入品が流通していたのだが、
最も古いものはシルクロードを通って
地中海からやってきたと見られている。
明治期以降、ヨーロッパ人の指摘により
高知県沖の珊瑚が採取されるようになり、
これはトサと呼ばれて世界的に人気がある。
高知の旧国名、土佐が名前の由来だ。
また、沖縄のものは琉球方言でウルといい、
サンゴ礁のある島(マ)はウルマと呼ばれた。
近年では本邦近海の珊瑚を狙い、
大陸から多くの密漁船団がやってきたことが
問題視された。
サンゴ礁の形成には非常に時間がかかる。
また、酷く破壊されたサンゴ礁は
回復することができず、失われてしまう。
サンゴ礁が失われると、その地域の
生態系もまた失われ、海の砂漠となる。
魚も減るため漁業への影響も大きい。
ところで、珊瑚は古来、
血液に関係すると言われてきた。
ギリシア神話では首を刎ねられたメドゥサの
血液から生まれたとされているし、
所有者の健康状態、特に血液の状態により
色が変わると信じられていた。
月経中の女性が所有している珊瑚は
色が薄くなるとも言われており、
珊瑚が月と関係しているとする神話は多い。
血液、月経、月、とくれば妊娠、出産と続き、
多産、豊穣、愛情とも関連付けられていく。
金星神と月神がこうした性質と
結びついていることが多く、
中には混同や変遷があるため、
珊瑚も金星と月の両方と縁深い。
中世イベリアでまとめられた宝石誌にも、
金星と月の力が結びついたものが
珊瑚であると書かれている。
金星と月にまつわる信仰について
長々と書きたくなってきたが、
海の生物サンゴから離れてきた。
ここらで今日は筆を置くことにしよう。
2019年5月30日木曜日
ベニテングタケ
赤い傘に白い水玉という、もしかしたら
最も知名度が高いかもしれないキノコである。
スーパーマリオのキノコはこれがモデルだと
言われており、漫画やゲームでキノコといえば、
あの見た目が定着している。
ヨーロッパでも古くから幸運のキノコとして
見た目が愛されており、やはりそのデザインは
よく使われているため知名度が高い。
毒キノコであり、本邦においては
ベニテングタケという名前は
毒キノコの代名詞ともなっている。
だが、実は毒性は弱い。
赤くないただのテングタケは猛毒なのだが、
ベニテングタケは重篤な被害をもたらさない。
具体的な症状は、瞳孔が開いて眩しさを感じ、
吐き気と眠気を催し、その後頭痛に悩まされる。
確かに毒キノコだが、死に至るようなことはなく、
一応、後遺症も確認されてはいない。
だが、ある意味では中毒性があると言える。
実はこのキノコの毒の主成分のイボテン酸は、
かなり強い旨み成分である。
端的に言って、とても美味いのだ。
そのせいか、毒だというのに食べたがる者が
後を絶たず、人によってはベニテングタケを
求めてキノコ狩りに繰り出すほどだ。
昔から食用にする文化はあり、
毒性を弱める調理法などもある。
しかし、イボテン酸以外の毒も含まれているため、
肝臓に強い負担がかかってしまう。
悪いことは言わない、食べない方がいい。
癖になってしまってはいけない。
蠅の好む香りを放ち、蠅にとって猛毒なため、
糊と共に設置し、蠅の駆除に使われた歴史もある。
別名のアカハエトリの由来だ。
なお、本邦のベニテングタケはその効果が低いが、
幻覚作用もあるとされている。
時代と地域によっては宗教的儀式に使われ、
この名残が前述の幸運のキノコと呼ばれる由縁である。
色々と面白い話もあるのだが、
興味を持って食べてみたいと思われてもいけない。
今回の記事は自重することにしよう。
最も知名度が高いかもしれないキノコである。
スーパーマリオのキノコはこれがモデルだと
言われており、漫画やゲームでキノコといえば、
あの見た目が定着している。
ヨーロッパでも古くから幸運のキノコとして
見た目が愛されており、やはりそのデザインは
よく使われているため知名度が高い。
毒キノコであり、本邦においては
ベニテングタケという名前は
毒キノコの代名詞ともなっている。
だが、実は毒性は弱い。
赤くないただのテングタケは猛毒なのだが、
ベニテングタケは重篤な被害をもたらさない。
具体的な症状は、瞳孔が開いて眩しさを感じ、
吐き気と眠気を催し、その後頭痛に悩まされる。
確かに毒キノコだが、死に至るようなことはなく、
一応、後遺症も確認されてはいない。
だが、ある意味では中毒性があると言える。
実はこのキノコの毒の主成分のイボテン酸は、
かなり強い旨み成分である。
端的に言って、とても美味いのだ。
そのせいか、毒だというのに食べたがる者が
後を絶たず、人によってはベニテングタケを
求めてキノコ狩りに繰り出すほどだ。
昔から食用にする文化はあり、
毒性を弱める調理法などもある。
しかし、イボテン酸以外の毒も含まれているため、
肝臓に強い負担がかかってしまう。
悪いことは言わない、食べない方がいい。
癖になってしまってはいけない。
蠅の好む香りを放ち、蠅にとって猛毒なため、
糊と共に設置し、蠅の駆除に使われた歴史もある。
別名のアカハエトリの由来だ。
なお、本邦のベニテングタケはその効果が低いが、
幻覚作用もあるとされている。
時代と地域によっては宗教的儀式に使われ、
この名残が前述の幸運のキノコと呼ばれる由縁である。
色々と面白い話もあるのだが、
興味を持って食べてみたいと思われてもいけない。
今回の記事は自重することにしよう。
2019年5月29日水曜日
ヒトヨタケ
食べられる毒キノコである。
何を言っているのだお前はと思うかもしれないが、
これは毒とは何かという問題である。
ヒトヨタケにはコプリンという物質が含まれる。
これ自体は毒ではない。
少々、体内の一部の酵素の効果を阻害するだけだ。
普段普通に生活している分にはその酵素が
働かなくとも特に問題は無い。
ネギには発汗作用があるし、
タンポポの根には利尿作用がある。
この人体への影響をもって
ネギやタンポポに毒があると言うだろうか。
普通は言わないと思う。
ここで一旦、ヒトヨタケの生態について
解説したいと思う。
こげ茶色で閉じ気味の傘を持つヒトヨタケには
面白い特性がある。
成熟後、自分自身の持つ酵素によって、
自分自身を溶かしてしまうのだ。
キノコは菌類の子実体と呼ばれる形態である。
胞子を飛ばし、繁殖するための
一時的な姿というわけだ。
ヒトヨタケは役目を終えた子実体を
自ら分解し、有終の美を飾る。
溶けたヒトヨタケは黒い液体となり、
その様子から英語ではインクキャップスと呼ぶ。
インクの蓋という意味だ。
一晩で溶けてなくなってしまうことから、
一夜茸という名が付けられているのである。
一晩苦しむ毒キノコだからヒトヨタケだと
思っただろうか。一晩でぽっくりと
死んでしまうからヒトヨタケだと思っただろうか。
一晩でおなくなりになるのは
ヒトヨタケの方なのだ。
溶け始める前のヒトヨタケは食用にできる。
味は薄く、それほど美味というわけではないが、
キノコらしい香りが料理に花を添える。
また、油をよく吸い、食感も合うことから、
バターなどと共に炒めると美味しくいただける。
バター炒めなどは酒の肴にもってこいの味だが、
残念ながらヒトヨタケは酒呑みを殺すのだ。
冒頭で書いたヒトヨタケが働きを阻害する酵素、
それはアセトアルデヒド脱水酵素である。
アルコールは本来、動物にとって毒であるが、
人間はアルコールのもたらす酩酊を楽しむ。
体内に入ったアルコールは、肝臓の頑張りによって、
アセトアルデヒドという物質に分解される。
アセトアルデヒドは更なる肝臓の頑張りによって、
無害な酢酸へと分解されることになる。
肝臓では酵素が働き、これらの分解が
進められるのだが、アセトアルデヒドは
アルコールとはまた違った毒である。
アセトアルデヒドが分解されずに体内を巡ると、
悪酔いや、いわゆる二日酔いが発生する。
自分のアセトアルデヒド脱水酵素の能力を
超えた飲酒が二日酔いへと繋がるわけだ。
アジア人が酒に弱いと言われているのは
この酵素の生成能力が
ヨーロッパ人より弱いためだ。
ちなみに私は本邦の平均よりも
この酵素の生成能力が強いようで、
一度も二日酔いになったことがない。
お陰でお酒を翌日に持ち越すことなく
楽しむことができている。
話をヒトヨタケに戻そう。
アルコールが体内にある状態でヒトヨタケを
食べると、アルコールの分解は
アセトアルデヒドの段階で止まってしまう。
いきなり悪酔いである。
そして、そこからずっと二日酔いが続く。
具体的には一週間ほどだ。
私は二日酔いの経験が無いが、
聞く限りでは絶対になりたくはない。
それが一週間続く。
酒呑みを殺すキノコというわけだ。
殺すといっても、致死性は無い。
もしかしたら一週間も二日酔いが続いたら
死にたくなるかもしれないが。
さて、ヒトヨタケは毒キノコなのだろうか。
毒はアルコールの方ではないだろうか。
判断は各々に任せるとしよう。
何を言っているのだお前はと思うかもしれないが、
これは毒とは何かという問題である。
ヒトヨタケにはコプリンという物質が含まれる。
これ自体は毒ではない。
少々、体内の一部の酵素の効果を阻害するだけだ。
普段普通に生活している分にはその酵素が
働かなくとも特に問題は無い。
ネギには発汗作用があるし、
タンポポの根には利尿作用がある。
この人体への影響をもって
ネギやタンポポに毒があると言うだろうか。
普通は言わないと思う。
ここで一旦、ヒトヨタケの生態について
解説したいと思う。
こげ茶色で閉じ気味の傘を持つヒトヨタケには
面白い特性がある。
成熟後、自分自身の持つ酵素によって、
自分自身を溶かしてしまうのだ。
キノコは菌類の子実体と呼ばれる形態である。
胞子を飛ばし、繁殖するための
一時的な姿というわけだ。
ヒトヨタケは役目を終えた子実体を
自ら分解し、有終の美を飾る。
溶けたヒトヨタケは黒い液体となり、
その様子から英語ではインクキャップスと呼ぶ。
インクの蓋という意味だ。
一晩で溶けてなくなってしまうことから、
一夜茸という名が付けられているのである。
一晩苦しむ毒キノコだからヒトヨタケだと
思っただろうか。一晩でぽっくりと
死んでしまうからヒトヨタケだと思っただろうか。
一晩でおなくなりになるのは
ヒトヨタケの方なのだ。
溶け始める前のヒトヨタケは食用にできる。
味は薄く、それほど美味というわけではないが、
キノコらしい香りが料理に花を添える。
また、油をよく吸い、食感も合うことから、
バターなどと共に炒めると美味しくいただける。
バター炒めなどは酒の肴にもってこいの味だが、
残念ながらヒトヨタケは酒呑みを殺すのだ。
冒頭で書いたヒトヨタケが働きを阻害する酵素、
それはアセトアルデヒド脱水酵素である。
アルコールは本来、動物にとって毒であるが、
人間はアルコールのもたらす酩酊を楽しむ。
体内に入ったアルコールは、肝臓の頑張りによって、
アセトアルデヒドという物質に分解される。
アセトアルデヒドは更なる肝臓の頑張りによって、
無害な酢酸へと分解されることになる。
肝臓では酵素が働き、これらの分解が
進められるのだが、アセトアルデヒドは
アルコールとはまた違った毒である。
アセトアルデヒドが分解されずに体内を巡ると、
悪酔いや、いわゆる二日酔いが発生する。
自分のアセトアルデヒド脱水酵素の能力を
超えた飲酒が二日酔いへと繋がるわけだ。
アジア人が酒に弱いと言われているのは
この酵素の生成能力が
ヨーロッパ人より弱いためだ。
ちなみに私は本邦の平均よりも
この酵素の生成能力が強いようで、
一度も二日酔いになったことがない。
お陰でお酒を翌日に持ち越すことなく
楽しむことができている。
話をヒトヨタケに戻そう。
アルコールが体内にある状態でヒトヨタケを
食べると、アルコールの分解は
アセトアルデヒドの段階で止まってしまう。
いきなり悪酔いである。
そして、そこからずっと二日酔いが続く。
具体的には一週間ほどだ。
私は二日酔いの経験が無いが、
聞く限りでは絶対になりたくはない。
それが一週間続く。
酒呑みを殺すキノコというわけだ。
殺すといっても、致死性は無い。
もしかしたら一週間も二日酔いが続いたら
死にたくなるかもしれないが。
さて、ヒトヨタケは毒キノコなのだろうか。
毒はアルコールの方ではないだろうか。
判断は各々に任せるとしよう。
2019年5月28日火曜日
ニセクロハツ
偽黒初と書く。
クロハツというキノコの偽物という名だ。
傘の上部は灰色から黒で、中心部が窪んでおり、
裏側の襞は荒い。
偽物などと言われるのは心外かもしれないが、
クロハツは美味なキノコとして親しまれており、
古くから食用にされてきた。
クロハツはとても良い出汁が出る。
ただ、いささか繊細な味のため、
キノコ鍋などで他のキノコと共に煮ると、
せっかくの味がぼやけてしまう。
さて、一説によるとニセクロハツの生息域は
昔より広がっており、クロハツしか
生えなかった場所に後から生えるようになったという。
この説が正しいのであれば、
後発のものが偽物呼ばわりされても
仕方がないかもしれない。
なにより、クロハツが美味であるのに対して
ニセクロハツは猛毒を持つのだから、
偽物として忌み嫌われるのも当然か。
なんでも、食べると毒により筋肉が溶かされ、
溶けた物質が更に深刻な毒と化すという。
嘔吐や下痢を繰り返し、意識が朦朧とし、
呂律が回らなくなり血尿が出るらしい。
痙攣が起こり、心臓が止まって死ぬこともあるという。
致死量がそれほど少ないわけではないが、
後遺症が残るため絶対に食べてはいけない
類のキノコである。
腹を下して終わりというわけにはいかない。
ニセクロハツの危険性が知られるようになると、
見分けるのが難しいクロハツを食べること自体を
やめた方が良いという風潮になる。
一応、見分け方はあるのだが、
近くに生えていることも多いので、
誤って混獲してしまう可能性は高い。
なので、クロハツを諦めていただきたい
ということになった。
その影響か、キノコの図鑑などでも近頃は
クロハツのページに毒キノコなので
食べてはいけないと書かれている。
君子危うきに近寄らずという態度は正しいとは
思うが、図鑑に事実と異なることが
書かれているというのはいささか思うところがある。
天然キノコの美味さは筆舌に尽くしがたいが、
美味なキノコとよく似た毒キノコの存在が
キノコ狩りを死と隣り合わせのレジャーたらしめている。
毒キノコの見分けは本当に難しい。
場合によっては新種と遭遇するかもしれない。
命を張って美食を追い求めるのでなければ、
安定供給される栽培キノコで満足しておこう。
クロハツというキノコの偽物という名だ。
傘の上部は灰色から黒で、中心部が窪んでおり、
裏側の襞は荒い。
偽物などと言われるのは心外かもしれないが、
クロハツは美味なキノコとして親しまれており、
古くから食用にされてきた。
クロハツはとても良い出汁が出る。
ただ、いささか繊細な味のため、
キノコ鍋などで他のキノコと共に煮ると、
せっかくの味がぼやけてしまう。
さて、一説によるとニセクロハツの生息域は
昔より広がっており、クロハツしか
生えなかった場所に後から生えるようになったという。
この説が正しいのであれば、
後発のものが偽物呼ばわりされても
仕方がないかもしれない。
なにより、クロハツが美味であるのに対して
ニセクロハツは猛毒を持つのだから、
偽物として忌み嫌われるのも当然か。
なんでも、食べると毒により筋肉が溶かされ、
溶けた物質が更に深刻な毒と化すという。
嘔吐や下痢を繰り返し、意識が朦朧とし、
呂律が回らなくなり血尿が出るらしい。
痙攣が起こり、心臓が止まって死ぬこともあるという。
致死量がそれほど少ないわけではないが、
後遺症が残るため絶対に食べてはいけない
類のキノコである。
腹を下して終わりというわけにはいかない。
ニセクロハツの危険性が知られるようになると、
見分けるのが難しいクロハツを食べること自体を
やめた方が良いという風潮になる。
一応、見分け方はあるのだが、
近くに生えていることも多いので、
誤って混獲してしまう可能性は高い。
なので、クロハツを諦めていただきたい
ということになった。
その影響か、キノコの図鑑などでも近頃は
クロハツのページに毒キノコなので
食べてはいけないと書かれている。
君子危うきに近寄らずという態度は正しいとは
思うが、図鑑に事実と異なることが
書かれているというのはいささか思うところがある。
天然キノコの美味さは筆舌に尽くしがたいが、
美味なキノコとよく似た毒キノコの存在が
キノコ狩りを死と隣り合わせのレジャーたらしめている。
毒キノコの見分けは本当に難しい。
場合によっては新種と遭遇するかもしれない。
命を張って美食を追い求めるのでなければ、
安定供給される栽培キノコで満足しておこう。
2019年5月27日月曜日
余談6
このブログのカテゴリ分けについて、
すこし補足しておきたいと思う。
というのも、生物については
「どうぶつ」と「しょくぶつ」に分けており、
菌類も「しょくぶつ」としているためだ。
現在の生物学の分類上、菌類が植物でないことは
もちろん知っている。
しかし、プリニウスの博物誌は生き物を
動物、植物、鉱物の三つに分類しているため、
なるべくこれに倣いたいと思った次第である。
昔は鉱物にも雌雄があり、
生きていると考えられていたのだ。
はじめは当ブログでもこの三つのカテゴリで
記事を書いていこうと思っていた。
だが、昔と違い、動植物に比べ、鉱物の数は
相対的に少なくなっている。
また、鉱物由来かもしれないが、鉱物とは
言えない物質も数多い。
なので、「ぶっしつ」というカテゴリで
非生物を紹介することにした。
「~ぶつ」で揃えなくてもよいということで、
欲が出て「ちけい」も扱うことにした。
地球上には面白い地形が数多い。
そんなわけで四つのカテゴリで運用していたわけだが、
地形では紹介できない「まち」を書きたくなった。
実際、書いてみるととても楽しく、
世界中を旅行している気分になれたので
正解だったと思っている。
ただ、更なる欲が出る。
ランドマークの類も記事にしたい。
そう思っている。
たとえば、エジプトのピラミッドや、
アメリカの自由の女神像などがそれだ。
もしかしたらいずれ「たてもの」という
カテゴリを増やしてしまうかもしれない。
他にも自重しているが追加したいカテゴリは多い。
人類の技術の進歩とともに無数に生み出されてきた
道具の数々や、物体として存在しない概念の類、
また、祭りや儀式のような文化そのものも捨てがたい。
書きたいことは尽きないのだ。
森羅万象を書き記すと大風呂敷を広げているので
カテゴリを増やすこと自体に問題はない。
ただ、例えば街の記事に関して、
首都だけを紹介していったとしても
一日一記事では200日以上かかる。
カテゴリを増やすのは何らかの理由で
テコ入れしたい時にしておいた方がいいだろう。
たとえば私のモチベーションが低すぎる時などだ。
ところで、序説に書いてある通り、
当ブログは嘘、大げさ、紛らわしいことを
気にすることなく書いている。
むしろ、時々わざと嘘を書いている。
ということを読者諸兄は理解してくれて
いるはずだと信じている。
今のところ苦情もないのでたぶん大丈夫だろう。
嘘を真に受けた結果、危険に晒されるような
嘘の書き方はしていないので大丈夫だと思うが、
どうか情報の真偽は自分で確かめてほしい。
というのも、簡単に多くの情報が得られる
インターネット時代である昨今、
それが本当に正しい情報なのか
見極めることが大切だと思う。
私は嘘、大げさ、紛らわしいことを書きますと
宣言しているが、インターネットという大海には
真実の顔をした嘘が溢れ返っている。
もっとも、インターネットなど無い時代には
本や新聞に書かれた情報は無条件に正しく、
比較することもままならかったことを考えると
もしかしたら幾分マシなのかもしれない。
いずれにせよ、自分で考え、調べ、判断する、
という大切なことを怠らないようにしたい。
すこし補足しておきたいと思う。
というのも、生物については
「どうぶつ」と「しょくぶつ」に分けており、
菌類も「しょくぶつ」としているためだ。
現在の生物学の分類上、菌類が植物でないことは
もちろん知っている。
しかし、プリニウスの博物誌は生き物を
動物、植物、鉱物の三つに分類しているため、
なるべくこれに倣いたいと思った次第である。
昔は鉱物にも雌雄があり、
生きていると考えられていたのだ。
はじめは当ブログでもこの三つのカテゴリで
記事を書いていこうと思っていた。
だが、昔と違い、動植物に比べ、鉱物の数は
相対的に少なくなっている。
また、鉱物由来かもしれないが、鉱物とは
言えない物質も数多い。
なので、「ぶっしつ」というカテゴリで
非生物を紹介することにした。
「~ぶつ」で揃えなくてもよいということで、
欲が出て「ちけい」も扱うことにした。
地球上には面白い地形が数多い。
そんなわけで四つのカテゴリで運用していたわけだが、
地形では紹介できない「まち」を書きたくなった。
実際、書いてみるととても楽しく、
世界中を旅行している気分になれたので
正解だったと思っている。
ただ、更なる欲が出る。
ランドマークの類も記事にしたい。
そう思っている。
たとえば、エジプトのピラミッドや、
アメリカの自由の女神像などがそれだ。
もしかしたらいずれ「たてもの」という
カテゴリを増やしてしまうかもしれない。
他にも自重しているが追加したいカテゴリは多い。
人類の技術の進歩とともに無数に生み出されてきた
道具の数々や、物体として存在しない概念の類、
また、祭りや儀式のような文化そのものも捨てがたい。
書きたいことは尽きないのだ。
森羅万象を書き記すと大風呂敷を広げているので
カテゴリを増やすこと自体に問題はない。
ただ、例えば街の記事に関して、
首都だけを紹介していったとしても
一日一記事では200日以上かかる。
カテゴリを増やすのは何らかの理由で
テコ入れしたい時にしておいた方がいいだろう。
たとえば私のモチベーションが低すぎる時などだ。
ところで、序説に書いてある通り、
当ブログは嘘、大げさ、紛らわしいことを
気にすることなく書いている。
むしろ、時々わざと嘘を書いている。
ということを読者諸兄は理解してくれて
いるはずだと信じている。
今のところ苦情もないのでたぶん大丈夫だろう。
嘘を真に受けた結果、危険に晒されるような
嘘の書き方はしていないので大丈夫だと思うが、
どうか情報の真偽は自分で確かめてほしい。
というのも、簡単に多くの情報が得られる
インターネット時代である昨今、
それが本当に正しい情報なのか
見極めることが大切だと思う。
私は嘘、大げさ、紛らわしいことを書きますと
宣言しているが、インターネットという大海には
真実の顔をした嘘が溢れ返っている。
もっとも、インターネットなど無い時代には
本や新聞に書かれた情報は無条件に正しく、
比較することもままならかったことを考えると
もしかしたら幾分マシなのかもしれない。
いずれにせよ、自分で考え、調べ、判断する、
という大切なことを怠らないようにしたい。
オニキス
縞瑪瑙のことであるが、一筋縄ではいかない。
石英結晶やオパールなどが層状になった鉱物が
瑪瑙と呼ばれるカルセドニーである。
縞瑪瑙とは鉱物の層が平行なものである。
これは後述するカメオ作りに重要な特性で、
オニキスが瑪瑙の中でも特別な理由である。
平行な縞を持つ瑪瑙がオニキスであり、
様々な色のものがあるのだが、
何故か現在では黒一色のものだけを
オニキスと呼ぶ傾向がある。
黒一色、つまり、縞模様の無い
黒いカルセドニーである。
ブラックオニキスと呼称される。
縞が平行どころか縞が無い以上、
それは瑪瑙ですらないのだが、
どういうわけか、これがオニキスと呼ばれる。
そして、カルセドニーは人工的に
染色することが可能な鉱物なのだが、
わざわざ黒一色に染めて
オニキスにしてしまったりもする。
ややこしいが、現在のよくわからない風潮は
無視して、縞瑪瑙がオニキスということで
話を進めようと思う。
カメオと呼ばれる工芸品がある。
石や貝殻に浮彫の彫刻を施したものだ。
異なった色の層が存在する素材を使う。
例えば黒い層と白い層を持つオニキスを彫ると、
黒い背景に白い彫刻が浮かび上がることになる。
濃い色の方を背景にするのが普通だ。
何故なら石の層が半透明なため、
薄い部分は背景色が透けて見えるためだ。
貝殻のカメオが比較的安価で多く存在するが、
財産として貴重なものが求められるのは必然である。
このため、宝石である瑪瑙が素材として重視される。
だが、瑪瑙の多くは同心円状に層が形成されるため、
カメオを作る際に均一に彫ることができない。
だが、平行な層を持つ縞瑪瑙であれば、
カメオの素材として完璧である。
これがオニキスの価値を高める最大の理由だ。
カメオに加工されることが前提で、
オニキスという宝石は取引されてきたのだ。
なお、浮彫ではなく沈め彫りで加工された
カメオもあるが、これは厳密には
カメオではなくインタリオと呼ぶ。
インタリオの多くは彫った反対側の面を表とし、
石の中に映る像を鑑賞することになる。
カメオにせよ、インタリオにせよ、
職人の技術と審美眼が必要であり、
出来の良いものには大変な価値が付与される。
この出来の良し悪しを左右する要素のひとつが、
素材の層の状態であることは言うまでもない。
つまり、良いオニキスというものは、
カメオにした際により美しくすることが
できる石なのである。
ちなみに、オニキスのうち層が赤と白のものは
特別にサードニクスと呼ばれる。
紅縞瑪瑙だ。
前述のとおり、瑪瑙は着色が可能な鉱物だ。
そもそも自然状態で様々な色の縞があるのだが、
染色技術によってその幅が広がることになる。
それにしても、だからといってせっかくの縞を
黒一色にしてブラックオニキスと呼ぶのは
やはり理解し難い。
パワーストーンショップではオニキスといえば、
ブラックオニキスが当然のように売られている。
おそらく着色されたものだろう。
色が落ちる恐れがあるとして、
手入れの仕方に注意書きがあるあたり
間違いないと思われる。
そんなある意味まがい物とでも言うべきものに、
意志をブレさせないだの、出会いと別れを
ああだこうだとパワーを語られても
眉に唾を付けるしかない。
難癖付けても仕方がないが、このような
理由により、ブラックオニキスばかりは
お勧めすることができない石だ。
オニキスが欲しいのであれば、
素晴らしいカメオを探すといいだろう。
もちろん、見合った額は必要である。
石英結晶やオパールなどが層状になった鉱物が
瑪瑙と呼ばれるカルセドニーである。
縞瑪瑙とは鉱物の層が平行なものである。
これは後述するカメオ作りに重要な特性で、
オニキスが瑪瑙の中でも特別な理由である。
平行な縞を持つ瑪瑙がオニキスであり、
様々な色のものがあるのだが、
何故か現在では黒一色のものだけを
オニキスと呼ぶ傾向がある。
黒一色、つまり、縞模様の無い
黒いカルセドニーである。
ブラックオニキスと呼称される。
縞が平行どころか縞が無い以上、
それは瑪瑙ですらないのだが、
どういうわけか、これがオニキスと呼ばれる。
そして、カルセドニーは人工的に
染色することが可能な鉱物なのだが、
わざわざ黒一色に染めて
オニキスにしてしまったりもする。
ややこしいが、現在のよくわからない風潮は
無視して、縞瑪瑙がオニキスということで
話を進めようと思う。
カメオと呼ばれる工芸品がある。
石や貝殻に浮彫の彫刻を施したものだ。
異なった色の層が存在する素材を使う。
例えば黒い層と白い層を持つオニキスを彫ると、
黒い背景に白い彫刻が浮かび上がることになる。
濃い色の方を背景にするのが普通だ。
何故なら石の層が半透明なため、
薄い部分は背景色が透けて見えるためだ。
貝殻のカメオが比較的安価で多く存在するが、
財産として貴重なものが求められるのは必然である。
このため、宝石である瑪瑙が素材として重視される。
だが、瑪瑙の多くは同心円状に層が形成されるため、
カメオを作る際に均一に彫ることができない。
だが、平行な層を持つ縞瑪瑙であれば、
カメオの素材として完璧である。
これがオニキスの価値を高める最大の理由だ。
カメオに加工されることが前提で、
オニキスという宝石は取引されてきたのだ。
なお、浮彫ではなく沈め彫りで加工された
カメオもあるが、これは厳密には
カメオではなくインタリオと呼ぶ。
インタリオの多くは彫った反対側の面を表とし、
石の中に映る像を鑑賞することになる。
カメオにせよ、インタリオにせよ、
職人の技術と審美眼が必要であり、
出来の良いものには大変な価値が付与される。
この出来の良し悪しを左右する要素のひとつが、
素材の層の状態であることは言うまでもない。
つまり、良いオニキスというものは、
カメオにした際により美しくすることが
できる石なのである。
ちなみに、オニキスのうち層が赤と白のものは
特別にサードニクスと呼ばれる。
紅縞瑪瑙だ。
前述のとおり、瑪瑙は着色が可能な鉱物だ。
そもそも自然状態で様々な色の縞があるのだが、
染色技術によってその幅が広がることになる。
それにしても、だからといってせっかくの縞を
黒一色にしてブラックオニキスと呼ぶのは
やはり理解し難い。
パワーストーンショップではオニキスといえば、
ブラックオニキスが当然のように売られている。
おそらく着色されたものだろう。
色が落ちる恐れがあるとして、
手入れの仕方に注意書きがあるあたり
間違いないと思われる。
そんなある意味まがい物とでも言うべきものに、
意志をブレさせないだの、出会いと別れを
ああだこうだとパワーを語られても
眉に唾を付けるしかない。
難癖付けても仕方がないが、このような
理由により、ブラックオニキスばかりは
お勧めすることができない石だ。
オニキスが欲しいのであれば、
素晴らしいカメオを探すといいだろう。
もちろん、見合った額は必要である。
2019年5月26日日曜日
瑪瑙
ジャスパー、オパール、石英などが層状になった
カルセドニーのことをアゲートという。
アゲート、つまりメノウはとても複雑な宝石だ。
瑪瑙の字は馬の脳に似ているためと言われているが、
なぜ他の動物でなく馬なのか、詳しいことはわからない。
アゲートの名はシキリアのアケイテス川に由来し、
この川は現在はディリッロ川と名を変えている。
さて、カルセドニーは複雑な鉱物であり、
その構造によって名前が変わるわけだが、
その一種であるメノウも更に細かく分類される。
メノウを構成する層が平行なものはオニキスと呼ばれ、
とても有名な宝石だ。
虹瑪瑙に苔瑪瑙、樹枝瑪瑙に羽毛瑪瑙、
錦石に雨花石、複雑な構造だからこそ、
様々な形態があり、それぞれに名前が付けられている。
それらの総称であるメノウとして見た場合、
世界中で産出するため希少性は高くない。
そのため、手に入れやすく、蒐集する愛好家は多い。
工芸品の材料とされることも多く、
アゲートの食器の数々は
ルーヴル宮にも多数展示されている。
仏教で言うところの貴重な七種の宝、
七宝のひとつにも数えられており、
文化的背景が豊かである。
なお、他の七宝は金、銀、瑠璃、玻璃、硨磲、珊瑚だ。
硨磲はシャコ貝のシャコである。
ところで、加工の容易なメノウだが、
多孔質のため人工的に着色することが可能だ。
着色によって更に魅力的なものへと
作り変えることができるわけだが、
見方を変えれば欺瞞がまかり通るということでもある。
例によってパワーストーンの紹介サイトを
いくつか見てみたが、着色について好意的に
書かれている傾向にある。
より安価に魅力的に見せる、
つまり売値を高くするために
着色の意義を説いているわけだ。
無知に付け込み非加工を装うより
よほど良心的ではあるが、
売り手の魂胆が透けて見えるのは興覚めだ。
もっとも、オーラを回復するだとか、
心のヒーリングになるだとか、
よく分からないことを言っているので
今更ではあるのだが。
以前にも書いたが、パワーストーンの
売り文句の変遷を研究するのも
面白いかもしれない。
私はやらないが、文化史的に意義があると思うので、
どなたか研究対象としてくれないだろうか。
カルセドニーのことをアゲートという。
アゲート、つまりメノウはとても複雑な宝石だ。
瑪瑙の字は馬の脳に似ているためと言われているが、
なぜ他の動物でなく馬なのか、詳しいことはわからない。
アゲートの名はシキリアのアケイテス川に由来し、
この川は現在はディリッロ川と名を変えている。
さて、カルセドニーは複雑な鉱物であり、
その構造によって名前が変わるわけだが、
その一種であるメノウも更に細かく分類される。
メノウを構成する層が平行なものはオニキスと呼ばれ、
とても有名な宝石だ。
虹瑪瑙に苔瑪瑙、樹枝瑪瑙に羽毛瑪瑙、
錦石に雨花石、複雑な構造だからこそ、
様々な形態があり、それぞれに名前が付けられている。
それらの総称であるメノウとして見た場合、
世界中で産出するため希少性は高くない。
そのため、手に入れやすく、蒐集する愛好家は多い。
工芸品の材料とされることも多く、
アゲートの食器の数々は
ルーヴル宮にも多数展示されている。
仏教で言うところの貴重な七種の宝、
七宝のひとつにも数えられており、
文化的背景が豊かである。
なお、他の七宝は金、銀、瑠璃、玻璃、硨磲、珊瑚だ。
硨磲はシャコ貝のシャコである。
ところで、加工の容易なメノウだが、
多孔質のため人工的に着色することが可能だ。
着色によって更に魅力的なものへと
作り変えることができるわけだが、
見方を変えれば欺瞞がまかり通るということでもある。
例によってパワーストーンの紹介サイトを
いくつか見てみたが、着色について好意的に
書かれている傾向にある。
より安価に魅力的に見せる、
つまり売値を高くするために
着色の意義を説いているわけだ。
無知に付け込み非加工を装うより
よほど良心的ではあるが、
売り手の魂胆が透けて見えるのは興覚めだ。
もっとも、オーラを回復するだとか、
心のヒーリングになるだとか、
よく分からないことを言っているので
今更ではあるのだが。
以前にも書いたが、パワーストーンの
売り文句の変遷を研究するのも
面白いかもしれない。
私はやらないが、文化史的に意義があると思うので、
どなたか研究対象としてくれないだろうか。
2019年5月25日土曜日
カルセドニー
玉髄と呼ばれる鉱物である。
非常に小さな石英結晶の集まりで、
細かな煌めきが無数に折り重なっているため、
古今東西美しい石として愛されてきた。
その構造上、強度はいまひとつであり、
宝石として加工、使用できるものは少ない。
だが、切削が容易なため、
細かな彫刻が施されるなど、
工芸品の素材として珍重されてきた。
なお、世界中に産出地が存在するため、
いずれの文化圏でも愛されるとともに、
希少性は若干低めであるとも言える。
古くはその美しさよりも鋭さに着目され、
石器の刃として利用された。
また、火打石として使うことも可能なため、
美しさで劣るものは消耗品とされた。
カルセドニーと一口に言っても、
含まれる不純物によって様々な見た目のものが
存在し、特別なものは別の名が付いている。
赤いカーネリアン、これは紅玉髄と呼ばれる。
緑のクリソプレーズは緑玉髄だ。
そして、オパール混じりの縞模様を持つものは
アゲート、瑪瑙と呼ばれ多くの人々を魅了してきた。
不純物が多く、透明度のほとんどないものは
ジャスパーと呼ばれ、いわゆる玉(ぎょく)である。
碧玉に赤い斑点が混じったものは血石、
ブラッドストーンと呼ばれ特別視される。
さて、産出が多いということは比較的安価ということで、
そうなってくると、いわゆるパワーストーンショップに
お手ごろな値段で多数陳列されることになる。
つまり、若年層が手に取りやすく、
また、店側も多く売りたいため、
人気の石として喧伝されている。
例によって例のごとく寝言のような石のパワーが
売り文句として使われるのだが、
初心者に最適などと謳っているのが面白い。
多孔質なため、人工的な着色が可能なのも
売る側としては色々と都合が良いのだろう。
なんだか、くさしてしまったが、
カルセドニーは魅力的な石である。
安く手に入るので
パワーストーン初心者として
購入してみるのもいいかもしれない。
非常に小さな石英結晶の集まりで、
細かな煌めきが無数に折り重なっているため、
古今東西美しい石として愛されてきた。
その構造上、強度はいまひとつであり、
宝石として加工、使用できるものは少ない。
だが、切削が容易なため、
細かな彫刻が施されるなど、
工芸品の素材として珍重されてきた。
なお、世界中に産出地が存在するため、
いずれの文化圏でも愛されるとともに、
希少性は若干低めであるとも言える。
古くはその美しさよりも鋭さに着目され、
石器の刃として利用された。
また、火打石として使うことも可能なため、
美しさで劣るものは消耗品とされた。
カルセドニーと一口に言っても、
含まれる不純物によって様々な見た目のものが
存在し、特別なものは別の名が付いている。
赤いカーネリアン、これは紅玉髄と呼ばれる。
緑のクリソプレーズは緑玉髄だ。
そして、オパール混じりの縞模様を持つものは
アゲート、瑪瑙と呼ばれ多くの人々を魅了してきた。
不純物が多く、透明度のほとんどないものは
ジャスパーと呼ばれ、いわゆる玉(ぎょく)である。
碧玉に赤い斑点が混じったものは血石、
ブラッドストーンと呼ばれ特別視される。
さて、産出が多いということは比較的安価ということで、
そうなってくると、いわゆるパワーストーンショップに
お手ごろな値段で多数陳列されることになる。
つまり、若年層が手に取りやすく、
また、店側も多く売りたいため、
人気の石として喧伝されている。
例によって例のごとく寝言のような石のパワーが
売り文句として使われるのだが、
初心者に最適などと謳っているのが面白い。
多孔質なため、人工的な着色が可能なのも
売る側としては色々と都合が良いのだろう。
なんだか、くさしてしまったが、
カルセドニーは魅力的な石である。
安く手に入るので
パワーストーン初心者として
購入してみるのもいいかもしれない。
2019年5月24日金曜日
ヘチマ
糸瓜と書く。
本来はイトウリという名前であったが、
トウリと呼ばれるようになり、
洒落によりヘチマとなった。
どういうことかというと、
いろはにほへ と ちりぬるを、
ヘとチの間がトである。
つまり、ト瓜はヘチ間瓜なのだ。
こんな冗談のような名前の物品は
他にも色々とある。
ヘチマと関係ないので省くが、
イマドキの若者が使っている謎の言葉が定着し、
後世まで伝えられることをイメージすれば
理解しやすいのではないだろうか。
さて、このヘチマ、原産地はインドである。
非常に有益な植物のため世界中に広まった。
本邦では室町期にやってきたという。
食材としては未熟な果実をいただくのだが、
ほのかな甘味があり、つるんとした食感が
様々な料理に活用されている。
有名なところでは沖縄料理のナーベラーンブシ、
台湾の小籠包の具などがある。
ただし、まれに毒性の強い成分を含む果実が
成ってしまうことがある。
少量であれば害はないが、苦みのあるヘチマは
嘔吐や下痢を引き起こすので注意が必要だ。
ヘチマは薬用にもなる。
特に熟した果実から得られるヘチマ水と呼ばれる
果汁は民間薬として様々な効能がある。
具体的には咳止め、利尿作用、ひびやあかぎれ、
日焼けによる炎症止めである。
そして何よりヘチマを有益なものとしているのが、
完熟した果実内に形成される強い繊維である。
糸瓜の名はこの繊維に由来し、
簡単な加工で質の良いタワシが出来上がる。
古来、繊維の束がものを洗う際に活用されてきたが、
ヘチマたわしは適度に柔らかく、
人の肌を洗うのに向いていた。
現代でもヘチマたわしを好む人が
少なくないことからも、
その有用性が明らかであろう。
なお、完熟後、乾燥したヘチマは、
風によって振り回された果実から
種子が飛び出し周囲にばらまかれる。
不思議な繊維構造はこうした機能のために
形作られているのだ。
蔓性のため、近頃では緑のカーテンと称して
都市部の日差しを和らげ、コンクリートジャングルを
涼やかにする目的で栽培されることも多い。
病害虫にも強く、育てやすいため、
小学校の理科の教材としても使われる。
このように、いろいろと有益な植物なのだ。
本来はイトウリという名前であったが、
トウリと呼ばれるようになり、
洒落によりヘチマとなった。
どういうことかというと、
いろはにほへ と ちりぬるを、
ヘとチの間がトである。
つまり、ト瓜はヘチ間瓜なのだ。
こんな冗談のような名前の物品は
他にも色々とある。
ヘチマと関係ないので省くが、
イマドキの若者が使っている謎の言葉が定着し、
後世まで伝えられることをイメージすれば
理解しやすいのではないだろうか。
さて、このヘチマ、原産地はインドである。
非常に有益な植物のため世界中に広まった。
本邦では室町期にやってきたという。
食材としては未熟な果実をいただくのだが、
ほのかな甘味があり、つるんとした食感が
様々な料理に活用されている。
有名なところでは沖縄料理のナーベラーンブシ、
台湾の小籠包の具などがある。
ただし、まれに毒性の強い成分を含む果実が
成ってしまうことがある。
少量であれば害はないが、苦みのあるヘチマは
嘔吐や下痢を引き起こすので注意が必要だ。
ヘチマは薬用にもなる。
特に熟した果実から得られるヘチマ水と呼ばれる
果汁は民間薬として様々な効能がある。
具体的には咳止め、利尿作用、ひびやあかぎれ、
日焼けによる炎症止めである。
そして何よりヘチマを有益なものとしているのが、
完熟した果実内に形成される強い繊維である。
糸瓜の名はこの繊維に由来し、
簡単な加工で質の良いタワシが出来上がる。
古来、繊維の束がものを洗う際に活用されてきたが、
ヘチマたわしは適度に柔らかく、
人の肌を洗うのに向いていた。
現代でもヘチマたわしを好む人が
少なくないことからも、
その有用性が明らかであろう。
なお、完熟後、乾燥したヘチマは、
風によって振り回された果実から
種子が飛び出し周囲にばらまかれる。
不思議な繊維構造はこうした機能のために
形作られているのだ。
蔓性のため、近頃では緑のカーテンと称して
都市部の日差しを和らげ、コンクリートジャングルを
涼やかにする目的で栽培されることも多い。
病害虫にも強く、育てやすいため、
小学校の理科の教材としても使われる。
このように、いろいろと有益な植物なのだ。
2019年5月23日木曜日
トビ
鳶と書き、とんび とも呼ばれる。
タカの仲間で、一般的な鷹よりも大きい。
しかし、滅多に狩りを行わず、
動物の死骸を主食とすることから、
古来あまり良いイメージを持たれていない。
鳶が鷹を生むという諺も、
タカよりトビが格下の存在と
見做されてきた証左だろう。
特徴的なのはその飛び方で、
上昇気流と風を巧みにとらえ、
殆ど羽ばたくことなく空を舞う。
ピーヒョロロと鳴く様は詩情に溢れており、
夕日に染まった空を旋回する姿は
ノスタルジーを喚起する。
生息域は広く、アメリカ大陸以外には大概存在する。
特に寒い地域では渡り鳥として冬にはいなくなるが、
本邦では北海道のものも渡らない。
現代社会の人里においては動物の死骸はそう多くなく、
生ごみを食べることが多いのだが、
これはカラスと競合する食料だ。
このため、カラスはトビを見かけると
仲間を集めて威嚇し、縄張りから追い払おうとする。
トビは群れる性質が弱いため、
多くの場合、多勢に無勢でカラスに軍配が上がる。
ところで、鳶に油揚げをさらわれるという諺があるが、
本来であれば警戒心の強いトビが
人間に近付くことはない。
しかし、いつの時代にも野生動物に餌付けをしたがる
者は後を絶たず、人を恐れなくなったトビもいる。
そうしたトビが、人の持つ食べ物を狙うようになるのだ。
今時油揚げを持ち歩く者などいないが、
行楽地で弁当を広げていたり、
食べ歩きをしていると、トビに狙われる。
おそらく、行楽地のトビは前述のように
餌付けをされ、人が自分たちに脅威となる
存在ではないと学習してしまったのだろう。
つまり、トビに弁当をさらわれるのは
間接的な人災なのだ。
野生動物に餌をやる行為は、
このように他者に迷惑をかけるだけでなく、
与えられた動物にとっても様々な悪影響がある。
鳶に話を戻そう。
とび職という職業がある。
主に建築現場で高所作業を行う人々のことだが、
高空を華麗に舞うトビになぞらえこの名でよばれている。
この呼び名が定着したのは江戸期であり、
江戸の街のとび職は火消しとして活躍する
人気の職業であった。
当時の火消しは専業ではなく、
民間の有志が作業を行っていた。
現代のようにポンプで水を掛けられるわけではないため、
破壊消防と呼ばれる、燃えている建物に隣接する
建物を破壊することで延焼を防ぐのが火消しの役割だった。
高所作業に慣れた大工であるとび職は、
屋根の上を軽やかに移動し、
速やかに建物を解体する。
火事と喧嘩は江戸の華などと言われていたが、
とび職はそんな江戸で最高に格好いい存在だったのだ。
現在でも消防署の出初式ではとび職が梯子の上で
演技を行うなど、文化として大事にされている。
こうした伝統が今後も続いていくことを切に願いたい。
タカの仲間で、一般的な鷹よりも大きい。
しかし、滅多に狩りを行わず、
動物の死骸を主食とすることから、
古来あまり良いイメージを持たれていない。
鳶が鷹を生むという諺も、
タカよりトビが格下の存在と
見做されてきた証左だろう。
特徴的なのはその飛び方で、
上昇気流と風を巧みにとらえ、
殆ど羽ばたくことなく空を舞う。
ピーヒョロロと鳴く様は詩情に溢れており、
夕日に染まった空を旋回する姿は
ノスタルジーを喚起する。
生息域は広く、アメリカ大陸以外には大概存在する。
特に寒い地域では渡り鳥として冬にはいなくなるが、
本邦では北海道のものも渡らない。
現代社会の人里においては動物の死骸はそう多くなく、
生ごみを食べることが多いのだが、
これはカラスと競合する食料だ。
このため、カラスはトビを見かけると
仲間を集めて威嚇し、縄張りから追い払おうとする。
トビは群れる性質が弱いため、
多くの場合、多勢に無勢でカラスに軍配が上がる。
ところで、鳶に油揚げをさらわれるという諺があるが、
本来であれば警戒心の強いトビが
人間に近付くことはない。
しかし、いつの時代にも野生動物に餌付けをしたがる
者は後を絶たず、人を恐れなくなったトビもいる。
そうしたトビが、人の持つ食べ物を狙うようになるのだ。
今時油揚げを持ち歩く者などいないが、
行楽地で弁当を広げていたり、
食べ歩きをしていると、トビに狙われる。
おそらく、行楽地のトビは前述のように
餌付けをされ、人が自分たちに脅威となる
存在ではないと学習してしまったのだろう。
つまり、トビに弁当をさらわれるのは
間接的な人災なのだ。
野生動物に餌をやる行為は、
このように他者に迷惑をかけるだけでなく、
与えられた動物にとっても様々な悪影響がある。
鳶に話を戻そう。
とび職という職業がある。
主に建築現場で高所作業を行う人々のことだが、
高空を華麗に舞うトビになぞらえこの名でよばれている。
この呼び名が定着したのは江戸期であり、
江戸の街のとび職は火消しとして活躍する
人気の職業であった。
当時の火消しは専業ではなく、
民間の有志が作業を行っていた。
現代のようにポンプで水を掛けられるわけではないため、
破壊消防と呼ばれる、燃えている建物に隣接する
建物を破壊することで延焼を防ぐのが火消しの役割だった。
高所作業に慣れた大工であるとび職は、
屋根の上を軽やかに移動し、
速やかに建物を解体する。
火事と喧嘩は江戸の華などと言われていたが、
とび職はそんな江戸で最高に格好いい存在だったのだ。
現在でも消防署の出初式ではとび職が梯子の上で
演技を行うなど、文化として大事にされている。
こうした伝統が今後も続いていくことを切に願いたい。
2019年5月22日水曜日
ワームウッド
ヘビの木という意味だが、和名をニガヨモギという。
ニガヨモギの名であれば一度は聞いたことがあるだろう。
本邦のヨモギよりも背が高く、癖の強い香りがあり、
非常に鋭い苦みを持つ。
ヨーロッパ原産だがユーラシア大陸各地に伝播しており、
苦艾、くがい の名で漢方の生薬にもなっている。
ヨーロッパでは道端に生えている雑草だが、
古くから様々な病に効く薬だと考えられてきた。
その強い苦みに胃薬としての効き目があるとは思うが、
伝承にある様々な薬効は民間療法の域を出ない。
本邦へは江戸後期に伝えられたが帰化せず、
栽培されているもの以外を見ることは難しい。
さて、このニガヨモギだが、チンザノに代表される
ベルモットという酒の香り付けに使われる。
ベルモットの名はワームウッドのドイツ語読みに由来する。
キレのある苦みが強い酒によく合い、
ベルモットを使ったカクテルは
マティーニやマンハッタンなど有名なものが多い。
知名度が高いため、バーに不慣れな者が
名前を知っているカクテルを注文し、
マティーニに顔をしかめるのは日常茶飯事である。
酒とニガヨモギといえば、現在では一般的ではないが
アブサンを置いては語れない。
美しい緑色の酒アブサンは、ニガヨモギに含まれる
ツジョンという成分の過剰摂取により、
幻覚を見ることで知られている。
緑の魔酒などと呼ばれるアブサンは
この幻覚作用のために禁止されたが、現在はツジョンの
含有量を制限した上で製造が認められている。
アブサンの幻覚から霊感を得ていた芸術家は多く、
フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホは
アブサン中毒であったと語られている。
ところで、アブサンはアブサンスプーンという
特徴的な形のスプーンがセットになっている。
このスプーンに角砂糖を載せ、アブサンを垂らし、
火をつけると明るい場所では目に見えない
青白い火が灯る。
この火によって溶けた砂糖をアブサンに混ぜて
飲むことがフランスで大流行した。
アブサンは退廃的で幻想的な嗜好品なのだ。
最後にひとつ、ニガヨモギに対する世間の誤解を
訂正しておきたいと思う。
ウクライナ語でニガヨモギは
チョルノーブィリであるとされている。
ロシア語読みをすればチェルノブイリだ。
原子力発電所事故のあった
あのチェルノブイリである。
しかし、チェルノブイリは黒い草という意味で、
黒くないニガヨモギには
ポルィーニという名がきちんとある。
つまり、チェルノブイリはニガヨモギではないのだが、
この誤解がある誤った解釈に繋がり、
人口に膾炙してしまっている。
キリスト教の聖書のひとつ、ヨハネの黙示録において、
アプシンシオンという名の星、あるいは天使が
水を苦くし、多くの人が死ぬと語られている。
このアプシンシオンはニガヨモギ
あるいはオウシュウヨモギのことで、
苦く受け入れがたいものの比喩である。
だが、前述のようにニガヨモギがチェルノブイリだと
誤って認識されているため、チェルノブイリ事故は
聖書で預言されていたという解釈が広まった。
ちなみにオウシュウヨモギは葉に細かい毛があるため、
白く見える。決して黒い草ではない。
私はオカルトが大好きな宗教学者くずれだが、
だからこそ、明らかな誤りは
正しておきたいと思う次第である。
ニガヨモギの名であれば一度は聞いたことがあるだろう。
本邦のヨモギよりも背が高く、癖の強い香りがあり、
非常に鋭い苦みを持つ。
ヨーロッパ原産だがユーラシア大陸各地に伝播しており、
苦艾、くがい の名で漢方の生薬にもなっている。
ヨーロッパでは道端に生えている雑草だが、
古くから様々な病に効く薬だと考えられてきた。
その強い苦みに胃薬としての効き目があるとは思うが、
伝承にある様々な薬効は民間療法の域を出ない。
本邦へは江戸後期に伝えられたが帰化せず、
栽培されているもの以外を見ることは難しい。
さて、このニガヨモギだが、チンザノに代表される
ベルモットという酒の香り付けに使われる。
ベルモットの名はワームウッドのドイツ語読みに由来する。
キレのある苦みが強い酒によく合い、
ベルモットを使ったカクテルは
マティーニやマンハッタンなど有名なものが多い。
知名度が高いため、バーに不慣れな者が
名前を知っているカクテルを注文し、
マティーニに顔をしかめるのは日常茶飯事である。
酒とニガヨモギといえば、現在では一般的ではないが
アブサンを置いては語れない。
美しい緑色の酒アブサンは、ニガヨモギに含まれる
ツジョンという成分の過剰摂取により、
幻覚を見ることで知られている。
緑の魔酒などと呼ばれるアブサンは
この幻覚作用のために禁止されたが、現在はツジョンの
含有量を制限した上で製造が認められている。
アブサンの幻覚から霊感を得ていた芸術家は多く、
フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホは
アブサン中毒であったと語られている。
ところで、アブサンはアブサンスプーンという
特徴的な形のスプーンがセットになっている。
このスプーンに角砂糖を載せ、アブサンを垂らし、
火をつけると明るい場所では目に見えない
青白い火が灯る。
この火によって溶けた砂糖をアブサンに混ぜて
飲むことがフランスで大流行した。
アブサンは退廃的で幻想的な嗜好品なのだ。
最後にひとつ、ニガヨモギに対する世間の誤解を
訂正しておきたいと思う。
ウクライナ語でニガヨモギは
チョルノーブィリであるとされている。
ロシア語読みをすればチェルノブイリだ。
原子力発電所事故のあった
あのチェルノブイリである。
しかし、チェルノブイリは黒い草という意味で、
黒くないニガヨモギには
ポルィーニという名がきちんとある。
つまり、チェルノブイリはニガヨモギではないのだが、
この誤解がある誤った解釈に繋がり、
人口に膾炙してしまっている。
キリスト教の聖書のひとつ、ヨハネの黙示録において、
アプシンシオンという名の星、あるいは天使が
水を苦くし、多くの人が死ぬと語られている。
このアプシンシオンはニガヨモギ
あるいはオウシュウヨモギのことで、
苦く受け入れがたいものの比喩である。
だが、前述のようにニガヨモギがチェルノブイリだと
誤って認識されているため、チェルノブイリ事故は
聖書で預言されていたという解釈が広まった。
ちなみにオウシュウヨモギは葉に細かい毛があるため、
白く見える。決して黒い草ではない。
私はオカルトが大好きな宗教学者くずれだが、
だからこそ、明らかな誤りは
正しておきたいと思う次第である。
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