鉛に似ていたからこの名前が付けられているが、
英語ではジンであり、西洋では錫、
すなわちティンとの混同が見られる。
様々な用途のある亜鉛だが、一番の利用法は
銅との合金、真鍮としてであろう。
真鍮以外にも洋白など多くの合金精製に使われており、
他の金属の性質を変える力が
亜鉛の真価なのかもしれない。
亜鉛単体でも、表面だけが錆びた状態になると、
非常に高い耐水性を示すため、
メッキとして活用される。
鉄などに亜鉛メッキを施したものをトタンと呼び、
雨に晒される屋根に多く使われていることは
知っていると思う。
なお、トタンの語源はポルトガル語の
ツタンナガであるという。
さて、亜鉛の利用の歴史は少々複雑だ。
真鍮の材料として使用されていたのだが、
真鍮がいつから使われているのか、
という問題にぶち当たることになる。
時代と地域によって真鍮の利用が異なり、
使われていたはずの地域でも、
その存在が忘れられた空白期間があったりする。
古代の真鍮が製造されるに当たり、
亜鉛が精錬されていたことは間違いないのだが、
地中海世界では暗黒時代に技術がおそらく失われた。
その後中世インドにおいて大量の亜鉛が製造され、
その製法はチャイナにも伝播した。
インド洋で取引されていた亜鉛は、
ポルトガル人によって発見されるが、
大航海時代初期のポルトガル人にとって、
亜鉛はあまり利用法を見出せない金属だった。
その後、ネーデルラント人がポルトガル船を襲い、
拿捕して亜鉛を手に入れたのだが、
彼らはその耐水性に気が付いた。
インド交易の輸入品の中に
亜鉛が加わるようになったのである。
ヨーロッパ人が自前で亜鉛を精錬できるように
なったのは近代に入ってからのことである。
イギリス人がチャイナからその技術を得たのだ。
こうして、ヨーロッパに真鍮が復活する。
ところで、おしろい に亜鉛が使われていたのは
知っているだろうか。化粧品のおしろいである。
おしろいは元々鉛や水銀から作られていたが、
当然、その毒性が様々な問題を生み出していた。
亜鉛が精錬されるようになると、
おしろいの原料は亜鉛へと置き換えられる。
もっとも、亜鉛とて無毒ではなく、
現在のファンデーションでは使用量が減らされ、
タルクや雲母などが基剤となっているようだ。
なお、亜鉛は人体に必要なミネラルでもある。