蓬と書く。
菊の仲間の植物で、独特な香りを持つことで知られる。
この香り自体に特別な力は無いが、葉に含まれる成分には
薬効があるため、薬草として用いられてきた。
艾葉と呼ばれる生薬で、止血や鎮痛、抗炎症や整腸などに
様々な効能があるほか、皮膚の炎症やかぶれを治す
湿布薬としても使われていた。
血行を良くする効果もあるなど、
薬草としての利用方法は本当に幅広い。
お灸に使う もぐさ もヨモギの葉の
綿毛を乾燥させたものだ。
この部位には蝋が含まれているため、
火をつけるとゆっくり長く燃える。
これがお灸の肝である。
現在はあまり薬草として扱われていないが、
若芽は食材として利用され続けている。
と言っても、おおむね草団子や草餅にされるため、
おひたしや天ぷらにされることは少なくなった。
もぐさや草餅ということで本邦固有のもののような
錯覚に陥るが、原産地はおそらく中央アジアで、
ヨーロッパでも薬草として利用されてきた。
マグワートと呼ばれるこの草は、
学名をアルテミシアという。
月経痛、生理不順、不妊に効果があるとされてきた
ことから、ギリシア神話の女神の名が付けられたのだ。
ハーブの女王の異名もあるあたり、
やはり薬草として重宝されていたことがうかがえる。
さて、ヨモギが薬だという話を続けたが、
実は火薬の原料であったと言ったら驚くだろうか。
ヨモギの根に共生している細菌はアンモニアを
硝酸に変える力を持っている。
ヨモギの根を集め、そこに馬の尿を掛けて
保管することで、黒色火薬に不可欠な硝石を
作り出すことができたのだ。
硝石は採掘可能な地域に偏りがある。
手に入らない所では本当に手に入らない。
銃が大々的に使われ始めた頃には
硝石の入手経路を持つことが銃の大規模利用に繋がり、
ひいては軍事力に直結したわけだ。
それが、ヨモギと尿で作れるのである。
製法が秘密にされたのは当然だろう。
本邦の戦国期においては、南蛮貿易によって
硝石を手に入れていた大名たちに対し、
僧兵やそれに連なる者たちは独自の火薬を用いていた。
そのひとつが、ヨモギを使って精製した硝石を
使ったものだったのである。
映画、もののけ姫に登場する火器も、
おそらく大陸から輸入した火薬か、
こうした独自製法の火薬を使っていたのだろう。
ヨーロッパ人から手に入れる以外にも
方法があったのだ。