ダムを造ることで知られる動物である。
ダムとは川などの水をせき止め、
人工的に池や湖などを作る構造物だ。
そう、人工物なのだが、ビーバーは
ヒトではないにも関わらずこれを作ってのける。
本当に唯一かどうかは分からないが、
自分の生活のために環境を作り変える
ヒト以外の唯一の動物と呼ばれている。
これだけでも相当に特別な動物だということがわかる。
だが、ビーバーの特異性はそれだけではない。
ダムでせき止め出来上がった貯水池内に、
家を造る。
木の枝などの端材を集め、水中から頭を出した
かまくら状の巣を作り上げるのだが、
これがまた多機能なのである。
出入口は二か所、水中にある。
これは片方が何らかの理由で塞がっても、
もう一方から脱出できることを意味する。
そして、天井には空気を通す穴があり、
快適な空間を生み出している。
巣には草が敷き詰められており、
柔らかい寝床となっているのだ。
さて、ダムの造り方だが、
それはもうダイナミックなものだ。
水辺の木の下部を齧って削り、木こりのようにこれを倒す。
きちんと水の側に倒れるように削っているのがポイントだ。
こうして集めた木材を積み上げ、
川の流れをせき止めダムを造る。
ビーバーは普段から水中を泳いで生活している。
体毛を持つ哺乳類だが、基本的には陸に上がらない。
浮力の働く水中に慣れすぎ、
陸上では動きが鈍いほどだ。
そんなビーバーの毛皮はラッコのように高機能だ。
皮膚が水で濡れて体温を奪われぬよう、
非常に密度が濃く毛が生えている。
耐水性の高いこの毛は柔らかいのだが、
これがビーバーにとって災いとなった。
いわゆるシルクハットと呼ばれる特徴的な帽子は、
元々はビーバーの毛皮で作られていたのだ。
絵画で描かれ有名なナポレオン・ボナパルトの
バイコルヌもビーバーの毛皮で作られていた。
つまり、ヨーロッパ人のお洒落のために
乱獲されてしまったのだ。
なお、シルクハットは本来トップハットと呼ばれていたが、
ビーバーの毛皮が手に入りにくくなると絹で
作られるようになりシルクハットとなった。
最後に、ビーバーの食用についても触れよう。
キリスト教徒の中には一定期間
限定的な断食を行う人々もいる。
限定的、というのは動物の肉を食べない、
といったものだ。
その際、魚は食べても良かったりする。
そこでビーバーの出番だ。
ビーバーは水中で生活する。
尻尾は魚のヒレのようになっている。
つまり、ビーバーは尻尾だけ魚だと認識されていた。
欺瞞でしかないが、修道士たちはビーバーの尻尾を、
魚だということにして、肉禁止の時期に食べていた。
食感はモチモチとしており、
はっきり言ってかなり美味い類いの肉である。
これはもう、妙な理屈を付けずとも食べたいものだ。
毛皮が役に立ち、肉が美味い。
そして、天敵がいないとダムの造りすぎで
生態系を破壊してしまう。
減りすぎても大問題だが、
適度に狩猟して食べてやるのがいいのではないだろうか。