インパラ同様に羚羊やアンテロープと呼ばれる
鹿のような見た目の牛の仲間である。
雌雄共に角を持つ点もインパラと同じで、
姿かたちもよく似ている。
見分け方としては、インパラは尻尾に黒い筋があり、
尻の両脇にもそれぞれ黒い筋があるため、
黒い縦線が三本あるが、ガゼルは尻尾には筋が無い。
また、インパラと違い砂漠地帯にも暮らしており、
ガゼルの仲間はアフリカ以外の
チベットなどにも生息している。
あとはインパラ特有の雄同士の熾烈な争いは無く、
直接傷つけ合うようなことはしない。
おそらく、環境が過酷なため死闘を避けているのだろう。
ライオンやハイエナに食われている印象の強いガゼルだが、
かなり足が速く、持久力にも優れているため、
肉食獣は基本的に彼らに追いつけない。
弱っている個体や子供が主な狩りの対象になる。
なので、ガゼル側も子供が襲われないよう
群れの中に注意深く隠して行動する。
さて、足の速いガゼルだが、さすがにチーターには負ける。
しかし、チーターは短距離型のスプリンターのため、
持久走で敗れ逃げられてしまう。
肉食動物の主食のようなイメージを持たれているガゼルだが、
このように狩るのは簡単ではないのだ。
逆に、どうすればガゼルを狩れるか、
と考えてみるのも面白い。
ライオンやハイエナはチームの連携によって、
ガゼルを追い込み逃げる先から回り込んで挟撃する。
チーターは隠れて近寄り、奇襲からの短期決戦を仕掛ける。
投石や投げ槍、投擲棍棒、弓矢に銃といった飛び道具を使い、
更にはチームによる連携まで行う人間という生き物が、
どれだけアドバンテージを持っているかも分かるというものだ。
序説
序説
かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...
2019年8月25日日曜日
2019年8月24日土曜日
バルシオック
ナミブ砂漠に生息する小型の牛である。
牛よりも水牛に近い種類なのだが、
その大きさは山羊ていどしかない。
水牛の仲間の中で最小だ。
見た目もミニチュアの牛といった風情で、
水牛の仲間だが角は無い。
砂海を歩くのに適した毛の生えた足裏を持ち、
胃の中に飲んだ水を貯めておくことができる。
一般に、牛の仲間は複数の胃を持つが、
バルシオックの場合、そのうちのひとつが
貯水専門となっているのが興味深い。
必然的に腹が重くなるため、あまり機敏には動けないが、
天敵の少ない砂漠に生きるため、
ゆったりとした生活を営んでいる。
暑さを避けるため、日の沈む頃から夜中にかけてが
最も活発に動き回る時間帯で、
日中は砂をかぶって眠っている。
本来は草食であったが、食料が乏しい砂漠に適応した結果、
蟻などの昆虫も食べられる草食寄りの雑食である。
そのため、蟻を効率的に食べられるよう
舌が長くなっており、口も牛と比べると突き出している。
体内の熱を発散させるために耳は大きく、
これらの特徴のせいでなんとも間抜けな面構えだ。
群れは作らず、縄張りも持たずに放浪しているため、
恋の季節には同族の異性と出会うために
かなり大きな声で歌うように鳴く。
夕日の沈む砂漠に響き渡る長い鳴き声は、
ノスタルジックな想いを抱かせ、
旅人の心の奥底に深く記憶されることだろう。
牛よりも水牛に近い種類なのだが、
その大きさは山羊ていどしかない。
水牛の仲間の中で最小だ。
見た目もミニチュアの牛といった風情で、
水牛の仲間だが角は無い。
砂海を歩くのに適した毛の生えた足裏を持ち、
胃の中に飲んだ水を貯めておくことができる。
一般に、牛の仲間は複数の胃を持つが、
バルシオックの場合、そのうちのひとつが
貯水専門となっているのが興味深い。
必然的に腹が重くなるため、あまり機敏には動けないが、
天敵の少ない砂漠に生きるため、
ゆったりとした生活を営んでいる。
暑さを避けるため、日の沈む頃から夜中にかけてが
最も活発に動き回る時間帯で、
日中は砂をかぶって眠っている。
本来は草食であったが、食料が乏しい砂漠に適応した結果、
蟻などの昆虫も食べられる草食寄りの雑食である。
そのため、蟻を効率的に食べられるよう
舌が長くなっており、口も牛と比べると突き出している。
体内の熱を発散させるために耳は大きく、
これらの特徴のせいでなんとも間抜けな面構えだ。
群れは作らず、縄張りも持たずに放浪しているため、
恋の季節には同族の異性と出会うために
かなり大きな声で歌うように鳴く。
夕日の沈む砂漠に響き渡る長い鳴き声は、
ノスタルジックな想いを抱かせ、
旅人の心の奥底に深く記憶されることだろう。
2019年8月16日金曜日
錫
スズは柔らかい金属である。
よく延び、比較的低い温度で融解する。
潰すのではなく曲げるように力を加えると、
簡単に折れ、その際にスズ鳴きと呼ばれる
独特の金属音を発する。
さて、スズの利用方法だが、錆びにくく、
軽いため、食器としての利用が盛んだった。
若干ではあるが毒性があるため、より軽く、
無毒のアルミニウムに取って代わられたが、
現在でも使われることがある。
錫単体の食器よりも、アンチモンとの合金、
ピューターあるいは白鑞(しろめ)として
加工性を高めたものが好まれた。
錫は合金素材としての有用性が非常に高い。
特に銅との合金、青銅は人類史にとって
無くてはならない存在であった。
ただし、錫は銅や鉄と違い、
どこでも手に入る金属ではない。
産出地が非常に偏っており、
手に入らない地域では青銅器の発達が遅れた。
錫の入手が容易であった地域で
古代文明が発達したと言っても
過言ではないほどだ。
アルミニウムが大々的に使われるようになってからは
需要が減少した錫だが、鉛との合金である
はんだ は、金属同士を溶接する際に重要である。
また、錆びにくい性質を利用するために、
メッキ材としても広く使われている。
なお、銅に錫メッキを施したものは
ブリキと呼ばれている。
ところで、元素記号はスタンナムの略なのだが、
これは元々は銀と鉛の合金のことで、
時代と共に意味の変わった言葉である。
よく延び、比較的低い温度で融解する。
潰すのではなく曲げるように力を加えると、
簡単に折れ、その際にスズ鳴きと呼ばれる
独特の金属音を発する。
さて、スズの利用方法だが、錆びにくく、
軽いため、食器としての利用が盛んだった。
若干ではあるが毒性があるため、より軽く、
無毒のアルミニウムに取って代わられたが、
現在でも使われることがある。
錫単体の食器よりも、アンチモンとの合金、
ピューターあるいは白鑞(しろめ)として
加工性を高めたものが好まれた。
錫は合金素材としての有用性が非常に高い。
特に銅との合金、青銅は人類史にとって
無くてはならない存在であった。
ただし、錫は銅や鉄と違い、
どこでも手に入る金属ではない。
産出地が非常に偏っており、
手に入らない地域では青銅器の発達が遅れた。
錫の入手が容易であった地域で
古代文明が発達したと言っても
過言ではないほどだ。
アルミニウムが大々的に使われるようになってからは
需要が減少した錫だが、鉛との合金である
はんだ は、金属同士を溶接する際に重要である。
また、錆びにくい性質を利用するために、
メッキ材としても広く使われている。
なお、銅に錫メッキを施したものは
ブリキと呼ばれている。
ところで、元素記号はスタンナムの略なのだが、
これは元々は銀と鉛の合金のことで、
時代と共に意味の変わった言葉である。
2019年8月15日木曜日
亜鉛
鉛に似ていたからこの名前が付けられているが、
英語ではジンであり、西洋では錫、
すなわちティンとの混同が見られる。
様々な用途のある亜鉛だが、一番の利用法は
銅との合金、真鍮としてであろう。
真鍮以外にも洋白など多くの合金精製に使われており、
他の金属の性質を変える力が
亜鉛の真価なのかもしれない。
亜鉛単体でも、表面だけが錆びた状態になると、
非常に高い耐水性を示すため、
メッキとして活用される。
鉄などに亜鉛メッキを施したものをトタンと呼び、
雨に晒される屋根に多く使われていることは
知っていると思う。
なお、トタンの語源はポルトガル語の
ツタンナガであるという。
さて、亜鉛の利用の歴史は少々複雑だ。
真鍮の材料として使用されていたのだが、
真鍮がいつから使われているのか、
という問題にぶち当たることになる。
時代と地域によって真鍮の利用が異なり、
使われていたはずの地域でも、
その存在が忘れられた空白期間があったりする。
古代の真鍮が製造されるに当たり、
亜鉛が精錬されていたことは間違いないのだが、
地中海世界では暗黒時代に技術がおそらく失われた。
その後中世インドにおいて大量の亜鉛が製造され、
その製法はチャイナにも伝播した。
インド洋で取引されていた亜鉛は、
ポルトガル人によって発見されるが、
大航海時代初期のポルトガル人にとって、
亜鉛はあまり利用法を見出せない金属だった。
その後、ネーデルラント人がポルトガル船を襲い、
拿捕して亜鉛を手に入れたのだが、
彼らはその耐水性に気が付いた。
インド交易の輸入品の中に
亜鉛が加わるようになったのである。
ヨーロッパ人が自前で亜鉛を精錬できるように
なったのは近代に入ってからのことである。
イギリス人がチャイナからその技術を得たのだ。
こうして、ヨーロッパに真鍮が復活する。
ところで、おしろい に亜鉛が使われていたのは
知っているだろうか。化粧品のおしろいである。
おしろいは元々鉛や水銀から作られていたが、
当然、その毒性が様々な問題を生み出していた。
亜鉛が精錬されるようになると、
おしろいの原料は亜鉛へと置き換えられる。
もっとも、亜鉛とて無毒ではなく、
現在のファンデーションでは使用量が減らされ、
タルクや雲母などが基剤となっているようだ。
なお、亜鉛は人体に必要なミネラルでもある。
英語ではジンであり、西洋では錫、
すなわちティンとの混同が見られる。
様々な用途のある亜鉛だが、一番の利用法は
銅との合金、真鍮としてであろう。
真鍮以外にも洋白など多くの合金精製に使われており、
他の金属の性質を変える力が
亜鉛の真価なのかもしれない。
亜鉛単体でも、表面だけが錆びた状態になると、
非常に高い耐水性を示すため、
メッキとして活用される。
鉄などに亜鉛メッキを施したものをトタンと呼び、
雨に晒される屋根に多く使われていることは
知っていると思う。
なお、トタンの語源はポルトガル語の
ツタンナガであるという。
さて、亜鉛の利用の歴史は少々複雑だ。
真鍮の材料として使用されていたのだが、
真鍮がいつから使われているのか、
という問題にぶち当たることになる。
時代と地域によって真鍮の利用が異なり、
使われていたはずの地域でも、
その存在が忘れられた空白期間があったりする。
古代の真鍮が製造されるに当たり、
亜鉛が精錬されていたことは間違いないのだが、
地中海世界では暗黒時代に技術がおそらく失われた。
その後中世インドにおいて大量の亜鉛が製造され、
その製法はチャイナにも伝播した。
インド洋で取引されていた亜鉛は、
ポルトガル人によって発見されるが、
大航海時代初期のポルトガル人にとって、
亜鉛はあまり利用法を見出せない金属だった。
その後、ネーデルラント人がポルトガル船を襲い、
拿捕して亜鉛を手に入れたのだが、
彼らはその耐水性に気が付いた。
インド交易の輸入品の中に
亜鉛が加わるようになったのである。
ヨーロッパ人が自前で亜鉛を精錬できるように
なったのは近代に入ってからのことである。
イギリス人がチャイナからその技術を得たのだ。
こうして、ヨーロッパに真鍮が復活する。
ところで、おしろい に亜鉛が使われていたのは
知っているだろうか。化粧品のおしろいである。
おしろいは元々鉛や水銀から作られていたが、
当然、その毒性が様々な問題を生み出していた。
亜鉛が精錬されるようになると、
おしろいの原料は亜鉛へと置き換えられる。
もっとも、亜鉛とて無毒ではなく、
現在のファンデーションでは使用量が減らされ、
タルクや雲母などが基剤となっているようだ。
なお、亜鉛は人体に必要なミネラルでもある。
2019年8月14日水曜日
オリックス
アフリカやアラビアに住む牛の仲間である。
牛の仲間の中でも羚羊、レイヨウと呼ばれる種類の
ひとつだが、羚羊は一見すると鹿の仲間に見える。
例えば、本邦のカモシカも羚羊である。
オリックスはとても長い二本の角を持っている。
同じ羚羊のインパラと違い、
雄だけでなく雌にも角があるのが特徴だ。
単にオリックス、あるいはゲムズボックと呼ばれる種は
アフリカ南部に生息しており、
その角は槍の穂先として利用されていた。
シロオリックスはアフリカ北部に生息していたが絶滅。
現在は動物園などで飼育されていた個体を
チュニジアで繁殖させているそうだ。
アラビア半島に生息していたアラビアオリックスも
同じく絶滅しており、シロオリックス同様、
オマーンで繁殖が進められているらしい。
さて、オリックスは砂漠の生き物である。
砂漠に適応した哺乳類というとラクダが思い浮かぶが、
オリックスも負けてはいない。
オリックスは非常に多くの水を飲むが、
これを蓄える力が強い。
尿は非常に濃く、水分の排出が極力抑えられており、
糞は乾燥したものをひり出す。
水場が無くとも食べた植物から得られる水分だけで
長期間生き延びることができ、
体温が非常に高くなっても耐えることができる。
砂漠のプロフェッショナルなのだ。
ところで、オリックスといえば企業名、
もしくはその企業が所有する球団を思い浮かべるだろう。
調べてみたところ、オリックス社の名前の由来は
オリジナルのエックスらしい。
羚羊のオリックスとはあまり関係が無かった。
球団名はオリックス・バファローズだ。
オリックスもバッファローも牛の仲間であり、
なんだか妙な感じがしていたわけだが、
問題なかったようだ。
牛の仲間の中でも羚羊、レイヨウと呼ばれる種類の
ひとつだが、羚羊は一見すると鹿の仲間に見える。
例えば、本邦のカモシカも羚羊である。
オリックスはとても長い二本の角を持っている。
同じ羚羊のインパラと違い、
雄だけでなく雌にも角があるのが特徴だ。
単にオリックス、あるいはゲムズボックと呼ばれる種は
アフリカ南部に生息しており、
その角は槍の穂先として利用されていた。
シロオリックスはアフリカ北部に生息していたが絶滅。
現在は動物園などで飼育されていた個体を
チュニジアで繁殖させているそうだ。
アラビア半島に生息していたアラビアオリックスも
同じく絶滅しており、シロオリックス同様、
オマーンで繁殖が進められているらしい。
さて、オリックスは砂漠の生き物である。
砂漠に適応した哺乳類というとラクダが思い浮かぶが、
オリックスも負けてはいない。
オリックスは非常に多くの水を飲むが、
これを蓄える力が強い。
尿は非常に濃く、水分の排出が極力抑えられており、
糞は乾燥したものをひり出す。
水場が無くとも食べた植物から得られる水分だけで
長期間生き延びることができ、
体温が非常に高くなっても耐えることができる。
砂漠のプロフェッショナルなのだ。
ところで、オリックスといえば企業名、
もしくはその企業が所有する球団を思い浮かべるだろう。
調べてみたところ、オリックス社の名前の由来は
オリジナルのエックスらしい。
羚羊のオリックスとはあまり関係が無かった。
球団名はオリックス・バファローズだ。
オリックスもバッファローも牛の仲間であり、
なんだか妙な感じがしていたわけだが、
問題なかったようだ。
2019年8月13日火曜日
ハイエナ
犬に似た外見を持つアフリカのサバンナの動物である。
しかし、犬の仲間ではなく、猫に近い種族だ。
ただし、木は登れない。
ハイエナには四つの種類が存在する。
サブサハラに広く生息するブチハイエナは、
一般的にイメージされるハイエナだ。
北アフリカに生息するシマハイエナと、
アフリカ南部に生息するカッショクハイエナは
ブチハイエナよりもおとなしい性格をしている。
アードウルフと呼ばれる種類は他のハイエナとは
異なる点が多いため、今回は説明を省こうと思う。
さて、ハイエナといえば他者の獲物を横取りしたり、
弱った者を狙って食い物にする悪しき存在の
代名詞として知られている。
だが、実際のハイエナの生態は、
こうした一般的なイメージとは異なっている。
シマハイエナとカッショクハイエナは、
他の肉食獣の食べ残しを主な食料としている。
これは横取りをしているわけではなく、
放棄された普通の肉食獣が食べられない
残骸を食べているに過ぎない。
強力なあごと特殊な消化器を持つハイエナは、
骨を食べることができる。
骨は一見するとカルシウムの塊で、
食べられる部分は無いが、中心部には髄があり、
栄養が豊富だ。ハイエナはこれを食べる。
巣穴には非常食として骨が蓄えられている。
また、時間が経過し腐敗が始まった死体も、
多くの肉食獣は腹を壊さぬよう食べるのを避ける。
ハイエナはそれを問題なくたいらげる。
つまり、ハイエナはサバンナのゴミを
きれいに片付ける役割を担っているのだ。
奪い取るなどとんでもない誤解である。
それだけではない。
大型のブチハイエナは自分たちで狩りを行うのだが、
しばしばライオンに横取りされてしまう。
ハイエナは横取りされる側なのだ。
なぜ、こうした誤解が生まれたかというと、
キリスト教的価値観において、
骨や腐肉を貪欲に食らうハイエナが、
悪しき存在と見做された点が大きい。
死肉を漁ることから、
墓を荒らすとも信じられた。
人間の笑い声のような不気味な鳴き声も
マイナスイメージの元だろう。
そして、もうひとつ、キリスト教徒が
ハイエナを嫌った理由がある。
雄のハイエナには大きな肛門腺があるのだが、
これがしばしば雌の性器と見間違えられる。
そして、雌のハイエナは外性器が発達しており、
まるで雄の性器があるように見える。
簡単に言えば、両性具有に見える生き物なのだ。
これをキリスト教徒は悪魔的だと考えた。
天使も両性具有のはずだが、
いかんせん、悪印象が多すぎて
神聖な存在とは思ってもらえなかった。
もちろん、キリスト教が広まる以前も
性のはっきりしない動物として
特異な存在と考えられていた。
残念ながら我らが大プリニウスも
交尾をせずに子を産むことができる動物として
ハイエナを紹介してしまっている。
しかも、他の生き物の動きを止める
妖術のような能力があるとまで書いている。
まるで神話の怪物だ。
なお、アリストテレスは
ハイエナは両性具有ではないと
はっきり著書に記している。
プリニウスは古いアリストテレスの著書よりも、
自分と同時代の人々の語った話を信じたようだ。
昔の人の記録よりも、最新の情報の方が
正しいと考えるのも致し方ないかもしれない。
しかし、犬の仲間ではなく、猫に近い種族だ。
ただし、木は登れない。
ハイエナには四つの種類が存在する。
サブサハラに広く生息するブチハイエナは、
一般的にイメージされるハイエナだ。
北アフリカに生息するシマハイエナと、
アフリカ南部に生息するカッショクハイエナは
ブチハイエナよりもおとなしい性格をしている。
アードウルフと呼ばれる種類は他のハイエナとは
異なる点が多いため、今回は説明を省こうと思う。
さて、ハイエナといえば他者の獲物を横取りしたり、
弱った者を狙って食い物にする悪しき存在の
代名詞として知られている。
だが、実際のハイエナの生態は、
こうした一般的なイメージとは異なっている。
シマハイエナとカッショクハイエナは、
他の肉食獣の食べ残しを主な食料としている。
これは横取りをしているわけではなく、
放棄された普通の肉食獣が食べられない
残骸を食べているに過ぎない。
強力なあごと特殊な消化器を持つハイエナは、
骨を食べることができる。
骨は一見するとカルシウムの塊で、
食べられる部分は無いが、中心部には髄があり、
栄養が豊富だ。ハイエナはこれを食べる。
巣穴には非常食として骨が蓄えられている。
また、時間が経過し腐敗が始まった死体も、
多くの肉食獣は腹を壊さぬよう食べるのを避ける。
ハイエナはそれを問題なくたいらげる。
つまり、ハイエナはサバンナのゴミを
きれいに片付ける役割を担っているのだ。
奪い取るなどとんでもない誤解である。
それだけではない。
大型のブチハイエナは自分たちで狩りを行うのだが、
しばしばライオンに横取りされてしまう。
ハイエナは横取りされる側なのだ。
なぜ、こうした誤解が生まれたかというと、
キリスト教的価値観において、
骨や腐肉を貪欲に食らうハイエナが、
悪しき存在と見做された点が大きい。
死肉を漁ることから、
墓を荒らすとも信じられた。
人間の笑い声のような不気味な鳴き声も
マイナスイメージの元だろう。
そして、もうひとつ、キリスト教徒が
ハイエナを嫌った理由がある。
雄のハイエナには大きな肛門腺があるのだが、
これがしばしば雌の性器と見間違えられる。
そして、雌のハイエナは外性器が発達しており、
まるで雄の性器があるように見える。
簡単に言えば、両性具有に見える生き物なのだ。
これをキリスト教徒は悪魔的だと考えた。
天使も両性具有のはずだが、
いかんせん、悪印象が多すぎて
神聖な存在とは思ってもらえなかった。
もちろん、キリスト教が広まる以前も
性のはっきりしない動物として
特異な存在と考えられていた。
残念ながら我らが大プリニウスも
交尾をせずに子を産むことができる動物として
ハイエナを紹介してしまっている。
しかも、他の生き物の動きを止める
妖術のような能力があるとまで書いている。
まるで神話の怪物だ。
なお、アリストテレスは
ハイエナは両性具有ではないと
はっきり著書に記している。
プリニウスは古いアリストテレスの著書よりも、
自分と同時代の人々の語った話を信じたようだ。
昔の人の記録よりも、最新の情報の方が
正しいと考えるのも致し方ないかもしれない。
2019年8月7日水曜日
ガガンボモドキ
ガガンボによく似ているが
ガガンボとは全く異なる昆虫である。
まずは比較のためにガガンボを紹介しよう。
ガガンボは夜、明かりの周辺によくいる
蚊を大きくしたような虫である。
ほとんどの人がその大きさに
ぎょっとしたことがあるだろう。
だが、ガガンボは花の蜜を吸い、
十日ほどで死ぬ、か弱い生き物だ。
身体も脆く、簡単にバラバラになってしまう。
無害で脆弱な生き物であるが、
土中で過ごす幼虫時代には植物の根をかじるため、
種類によっては農業害虫である。
さて、本題のガガンボモドキに移ろう。
一見ガガンボに似ているが、
シリアゲムシという昆虫の仲間で、
よく見ればガガンボとは羽や脚の付き方が違う。
何より違うのが食べ物である。
ガガンボモドキは肉食性だ。
獲物を抱え込む鎌も持っている。
幼虫もいわゆる芋虫型で、
多くは雑食である。
面白いのが、このガガンボモドキ、
求愛の際には雄が雌に獲物をプレゼントする。
雌が獲物を食べている間に交尾するのだ。
だが、獲物の大きさが十分でない場合、
雌は食い逃げをしてしまったり、
より大きな獲物を持つ雄と再度交尾を行う。
昆虫の交尾は基本的に、
後から行った雄の子孫が残るという。
雄の方も雌の我儘に振り回されているだけではない。
雌が獲物を食べ終わる前に交尾が終われば、
プレゼントした獲物を奪い返し、
次の雌を探しに行く。
食べかけのプレゼントを別の雌に贈るのだ。
また、中には雌のふりをする雄もいる。
プレゼントを受け取ると、
さっさとそれを持ち逃げし、雌を探す。
色恋沙汰は化かしあいというわけだ。
なかなかシビアな恋愛事情である。
ところで、ガガンボモドキはシリアゲムシの
仲間だと書いたが、シリアゲムシとは何だ、
と思った向きも多いだろう。
触覚、口吻、脚、腹、羽といった各パーツを
長くした蜂のような見た目をしているのだが、
なんと、腹の先、つまり尻尾が
上方にくるりと上がっている。
ちょうど、サソリの尾のような形状だ。
このため英語ではスコーピオンフライと呼ばれるが、
本邦では尻上げ虫である。
生態は前述のガガンボモドキとよく似ている。
なんでも、天敵の蜘蛛の巣から
獲物を横取りする芸当を身に着けているらしい。
シリアゲムシ界隈では食べ物とは
贈ったり奪ったりするものなのだろう。
ガガンボとは全く異なる昆虫である。
まずは比較のためにガガンボを紹介しよう。
ガガンボは夜、明かりの周辺によくいる
蚊を大きくしたような虫である。
ほとんどの人がその大きさに
ぎょっとしたことがあるだろう。
だが、ガガンボは花の蜜を吸い、
十日ほどで死ぬ、か弱い生き物だ。
身体も脆く、簡単にバラバラになってしまう。
無害で脆弱な生き物であるが、
土中で過ごす幼虫時代には植物の根をかじるため、
種類によっては農業害虫である。
さて、本題のガガンボモドキに移ろう。
一見ガガンボに似ているが、
シリアゲムシという昆虫の仲間で、
よく見ればガガンボとは羽や脚の付き方が違う。
何より違うのが食べ物である。
ガガンボモドキは肉食性だ。
獲物を抱え込む鎌も持っている。
幼虫もいわゆる芋虫型で、
多くは雑食である。
面白いのが、このガガンボモドキ、
求愛の際には雄が雌に獲物をプレゼントする。
雌が獲物を食べている間に交尾するのだ。
だが、獲物の大きさが十分でない場合、
雌は食い逃げをしてしまったり、
より大きな獲物を持つ雄と再度交尾を行う。
昆虫の交尾は基本的に、
後から行った雄の子孫が残るという。
雄の方も雌の我儘に振り回されているだけではない。
雌が獲物を食べ終わる前に交尾が終われば、
プレゼントした獲物を奪い返し、
次の雌を探しに行く。
食べかけのプレゼントを別の雌に贈るのだ。
また、中には雌のふりをする雄もいる。
プレゼントを受け取ると、
さっさとそれを持ち逃げし、雌を探す。
色恋沙汰は化かしあいというわけだ。
なかなかシビアな恋愛事情である。
ところで、ガガンボモドキはシリアゲムシの
仲間だと書いたが、シリアゲムシとは何だ、
と思った向きも多いだろう。
触覚、口吻、脚、腹、羽といった各パーツを
長くした蜂のような見た目をしているのだが、
なんと、腹の先、つまり尻尾が
上方にくるりと上がっている。
ちょうど、サソリの尾のような形状だ。
このため英語ではスコーピオンフライと呼ばれるが、
本邦では尻上げ虫である。
生態は前述のガガンボモドキとよく似ている。
なんでも、天敵の蜘蛛の巣から
獲物を横取りする芸当を身に着けているらしい。
シリアゲムシ界隈では食べ物とは
贈ったり奪ったりするものなのだろう。
2019年8月6日火曜日
コエンドロ
セリの仲間の植物である。
英語ではコリアンダー、タイではパクチー、
チャイナではシャンツァイ(香菜)と呼ぶ。
本邦での呼び方コエンドロはポルトガル語に由来するが、
今ではパクチーの名が一般的だろう。
古くはコスイやコニシと呼び、
生魚を食べる際の薬味とされていた。
ヨーロッパでは特に果実が香辛料として重視され、
柑橘系の香りがするため、
紅茶や酒に使われる。
インドでも調合香辛料で使われ、
爽やかな香りが付与される。
だが、やはりコエンドロの利用で特徴的なのは葉だろう。
いわゆるパクチーである。
パクチーは本来、料理に添える薬味に過ぎない。
本邦のワサビのような使い方だ。
それが本邦では大流行してしまい、
パクチーサラダなどが席巻。
タイやベトナムの人々から仰天されている。
パクチーだけをむしゃむしゃ食べることは、
ワサビをぼりぼり食べるようなものなのだ。
ただ、華北のある地域には、
老虎菜というサラダ系の料理があり、
胡瓜、青唐辛子、香菜を生食にするので、
間違っているというわけでもないと思う。
パクチーといえば好き嫌いが分かれることで知られている。
ダメな人は徹底的にダメなのだ。
なんせ、カメムシ草という名前があるほどで、
独特の匂いの強さは嫌われても仕方がない。
私は大好きだが。
なお、古くは薬草として重宝されていた。
エジプトの医学書にも記されており、
大プリニウスもエジプト産コリアンダーが
最高だと述べている。
ヒポクラテスも炎症に効く薬草として
利用を推奨していたし、漢方の生薬でもある。
ただ、現代医学ではあまり
効能が高いとは考えられていない。
とりあえず、パクチーが嫌いな人が
無理に克服する必要はないと思う。
私は大好きだが。
英語ではコリアンダー、タイではパクチー、
チャイナではシャンツァイ(香菜)と呼ぶ。
本邦での呼び方コエンドロはポルトガル語に由来するが、
今ではパクチーの名が一般的だろう。
古くはコスイやコニシと呼び、
生魚を食べる際の薬味とされていた。
ヨーロッパでは特に果実が香辛料として重視され、
柑橘系の香りがするため、
紅茶や酒に使われる。
インドでも調合香辛料で使われ、
爽やかな香りが付与される。
だが、やはりコエンドロの利用で特徴的なのは葉だろう。
いわゆるパクチーである。
パクチーは本来、料理に添える薬味に過ぎない。
本邦のワサビのような使い方だ。
それが本邦では大流行してしまい、
パクチーサラダなどが席巻。
タイやベトナムの人々から仰天されている。
パクチーだけをむしゃむしゃ食べることは、
ワサビをぼりぼり食べるようなものなのだ。
ただ、華北のある地域には、
老虎菜というサラダ系の料理があり、
胡瓜、青唐辛子、香菜を生食にするので、
間違っているというわけでもないと思う。
パクチーといえば好き嫌いが分かれることで知られている。
ダメな人は徹底的にダメなのだ。
なんせ、カメムシ草という名前があるほどで、
独特の匂いの強さは嫌われても仕方がない。
私は大好きだが。
なお、古くは薬草として重宝されていた。
エジプトの医学書にも記されており、
大プリニウスもエジプト産コリアンダーが
最高だと述べている。
ヒポクラテスも炎症に効く薬草として
利用を推奨していたし、漢方の生薬でもある。
ただ、現代医学ではあまり
効能が高いとは考えられていない。
とりあえず、パクチーが嫌いな人が
無理に克服する必要はないと思う。
私は大好きだが。
2019年8月5日月曜日
クミン
西アジアから南アジアにかけて原産の
香辛料として盛んに利用される植物である。
キャラウェイによく似た植物で、
果実にいたっては見分けるのが困難である。
しかし、香りはまったく異なる。
若干の苦みは共通だが、こちらには辛みも少々ある。
西アジア、中央アジア、南アジアの食卓には
欠かせない香辛料であり、その香りを嗅げば
エキゾチックな印象を受けるだろう。
アラビアの料理や中央アジアの料理を
食べたことがあれば、その特有の香りを
知っていると思う。あれは主にクミンの香りだ。
逆に言えば、料理にクミンパウダーを入れれば、
お手軽にエキゾチックな一皿が出来上がる。
私のお勧めは羊肉とチンゲン菜やズッキーニを
花椒とクミンで香り付けしながら炒め、
オイスターソースで味付けする食べ方である。
他にも、セロリとタマネギと冬瓜と羊肉を
クミンと塩で炒め、
米を混ぜて炒飯のようにしても美味い。
ちなみに、カレーの主なスパイスのひとつである。
インドではクミンパウダーとしてだけではなく、
油にクミンの香りを付けたクミンオイルを多用する。
カレーのおかげで本邦でも馴染みのあるクミンだが、
クミン単体では独特の香りなので好みは
分かれるかもしれない。
そんな場合は先に紹介した花椒と混ぜるといった
他の香辛料との調合がお勧めである。
色々と調合していくうちに
カレーができてしまったりもする。
様々なスパイスの特色を理解し、
調合もできるようになれば、
料理を作るのが楽しくなる。
あとは出汁への理解を深めれば、
美味しい料理を作れるようになるだろう。
ただし、包丁の扱いや焼きの技術は
訓練あるのみである。
香辛料として盛んに利用される植物である。
キャラウェイによく似た植物で、
果実にいたっては見分けるのが困難である。
しかし、香りはまったく異なる。
若干の苦みは共通だが、こちらには辛みも少々ある。
西アジア、中央アジア、南アジアの食卓には
欠かせない香辛料であり、その香りを嗅げば
エキゾチックな印象を受けるだろう。
アラビアの料理や中央アジアの料理を
食べたことがあれば、その特有の香りを
知っていると思う。あれは主にクミンの香りだ。
逆に言えば、料理にクミンパウダーを入れれば、
お手軽にエキゾチックな一皿が出来上がる。
私のお勧めは羊肉とチンゲン菜やズッキーニを
花椒とクミンで香り付けしながら炒め、
オイスターソースで味付けする食べ方である。
他にも、セロリとタマネギと冬瓜と羊肉を
クミンと塩で炒め、
米を混ぜて炒飯のようにしても美味い。
ちなみに、カレーの主なスパイスのひとつである。
インドではクミンパウダーとしてだけではなく、
油にクミンの香りを付けたクミンオイルを多用する。
カレーのおかげで本邦でも馴染みのあるクミンだが、
クミン単体では独特の香りなので好みは
分かれるかもしれない。
そんな場合は先に紹介した花椒と混ぜるといった
他の香辛料との調合がお勧めである。
色々と調合していくうちに
カレーができてしまったりもする。
様々なスパイスの特色を理解し、
調合もできるようになれば、
料理を作るのが楽しくなる。
あとは出汁への理解を深めれば、
美味しい料理を作れるようになるだろう。
ただし、包丁の扱いや焼きの技術は
訓練あるのみである。
2019年8月4日日曜日
キャラウェイ
西アジア原産のフェンネルによく似た植物である。
花の色はフェンネルが黄色いのに対して、
キャラウェイは白いが、
果実はとてもよく似ている。
香辛料としては果実が甘い香りと苦みを持ち、
菓子類や卵料理によく用いられる。
また、葉も香草としてパセリと似た使い方をされ、
根をスープ類の具とする。
有名な苦みを楽しむ酒、カンパリの香り付けにも
利用されているが、苦み成分はキャラウェイよりも
オレンジピールなどがメインだと思われる。
カンパリ社が製法を明かしていないので
具体的にはわからない。
カンパリといえば赤い酒だが、
あれは素材の色ではなく染料によって着色されている。
古くは臙脂虫からとれるコチニール色素だったようだが、
現在は合成染料を使っているそうだ。
他にもアクアヴィットやキュンメルの
香り付けに使われており、
お酒とも相性が良いことがわかる。
西アジアの植物がヨーロッパで普及した背景には、
フェニキア人の交易はもちろん、
ローマ軍の兵糧という要素が大きい。
キャラウェイの根を潰し、牛乳で練ったものが
カラと呼ばれ、ローマ軍兵士に食べられていた。
ローマの軍団はヨーロッパ各地で戦い、
そこに軍営都市を築いたため、
キャラウェイの栽培がヨーロッパ中に広まったのだ。
なお、現在のキャラウェイの名産地は
ネーデルラントである。
花の色はフェンネルが黄色いのに対して、
キャラウェイは白いが、
果実はとてもよく似ている。
香辛料としては果実が甘い香りと苦みを持ち、
菓子類や卵料理によく用いられる。
また、葉も香草としてパセリと似た使い方をされ、
根をスープ類の具とする。
有名な苦みを楽しむ酒、カンパリの香り付けにも
利用されているが、苦み成分はキャラウェイよりも
オレンジピールなどがメインだと思われる。
カンパリ社が製法を明かしていないので
具体的にはわからない。
カンパリといえば赤い酒だが、
あれは素材の色ではなく染料によって着色されている。
古くは臙脂虫からとれるコチニール色素だったようだが、
現在は合成染料を使っているそうだ。
他にもアクアヴィットやキュンメルの
香り付けに使われており、
お酒とも相性が良いことがわかる。
西アジアの植物がヨーロッパで普及した背景には、
フェニキア人の交易はもちろん、
ローマ軍の兵糧という要素が大きい。
キャラウェイの根を潰し、牛乳で練ったものが
カラと呼ばれ、ローマ軍兵士に食べられていた。
ローマの軍団はヨーロッパ各地で戦い、
そこに軍営都市を築いたため、
キャラウェイの栽培がヨーロッパ中に広まったのだ。
なお、現在のキャラウェイの名産地は
ネーデルラントである。
登録:
投稿 (Atom)