序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年8月24日土曜日

バルシオック

ナミブ砂漠に生息する小型の牛である。

牛よりも水牛に近い種類なのだが、
その大きさは山羊ていどしかない。
水牛の仲間の中で最小だ。

見た目もミニチュアの牛といった風情で、
水牛の仲間だが角は無い。

砂海を歩くのに適した毛の生えた足裏を持ち、
胃の中に飲んだ水を貯めておくことができる。

一般に、牛の仲間は複数の胃を持つが、
バルシオックの場合、そのうちのひとつが
貯水専門となっているのが興味深い。

必然的に腹が重くなるため、あまり機敏には動けないが、
天敵の少ない砂漠に生きるため、
ゆったりとした生活を営んでいる。

暑さを避けるため、日の沈む頃から夜中にかけてが
最も活発に動き回る時間帯で、
日中は砂をかぶって眠っている。

本来は草食であったが、食料が乏しい砂漠に適応した結果、
蟻などの昆虫も食べられる草食寄りの雑食である。

そのため、蟻を効率的に食べられるよう
舌が長くなっており、口も牛と比べると突き出している。

体内の熱を発散させるために耳は大きく、
これらの特徴のせいでなんとも間抜けな面構えだ。

群れは作らず、縄張りも持たずに放浪しているため、
恋の季節には同族の異性と出会うために
かなり大きな声で歌うように鳴く。

夕日の沈む砂漠に響き渡る長い鳴き声は、
ノスタルジックな想いを抱かせ、
旅人の心の奥底に深く記憶されることだろう。