ガガンボによく似ているが
ガガンボとは全く異なる昆虫である。
まずは比較のためにガガンボを紹介しよう。
ガガンボは夜、明かりの周辺によくいる
蚊を大きくしたような虫である。
ほとんどの人がその大きさに
ぎょっとしたことがあるだろう。
だが、ガガンボは花の蜜を吸い、
十日ほどで死ぬ、か弱い生き物だ。
身体も脆く、簡単にバラバラになってしまう。
無害で脆弱な生き物であるが、
土中で過ごす幼虫時代には植物の根をかじるため、
種類によっては農業害虫である。
さて、本題のガガンボモドキに移ろう。
一見ガガンボに似ているが、
シリアゲムシという昆虫の仲間で、
よく見ればガガンボとは羽や脚の付き方が違う。
何より違うのが食べ物である。
ガガンボモドキは肉食性だ。
獲物を抱え込む鎌も持っている。
幼虫もいわゆる芋虫型で、
多くは雑食である。
面白いのが、このガガンボモドキ、
求愛の際には雄が雌に獲物をプレゼントする。
雌が獲物を食べている間に交尾するのだ。
だが、獲物の大きさが十分でない場合、
雌は食い逃げをしてしまったり、
より大きな獲物を持つ雄と再度交尾を行う。
昆虫の交尾は基本的に、
後から行った雄の子孫が残るという。
雄の方も雌の我儘に振り回されているだけではない。
雌が獲物を食べ終わる前に交尾が終われば、
プレゼントした獲物を奪い返し、
次の雌を探しに行く。
食べかけのプレゼントを別の雌に贈るのだ。
また、中には雌のふりをする雄もいる。
プレゼントを受け取ると、
さっさとそれを持ち逃げし、雌を探す。
色恋沙汰は化かしあいというわけだ。
なかなかシビアな恋愛事情である。
ところで、ガガンボモドキはシリアゲムシの
仲間だと書いたが、シリアゲムシとは何だ、
と思った向きも多いだろう。
触覚、口吻、脚、腹、羽といった各パーツを
長くした蜂のような見た目をしているのだが、
なんと、腹の先、つまり尻尾が
上方にくるりと上がっている。
ちょうど、サソリの尾のような形状だ。
このため英語ではスコーピオンフライと呼ばれるが、
本邦では尻上げ虫である。
生態は前述のガガンボモドキとよく似ている。
なんでも、天敵の蜘蛛の巣から
獲物を横取りする芸当を身に着けているらしい。
シリアゲムシ界隈では食べ物とは
贈ったり奪ったりするものなのだろう。