序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年3月4日日曜日

臙脂虫

クリムゾンやカーマインと呼ばれる赤色染料の
元となるカイガラムシのことである。
具体的にはケルメス、コチニール、ラックの三種を指す。

雌のカイガラムシを収集して乾燥させ、
熱水やアルコールで色素を抽出するのだが、
米粒程度の小さな虫一匹から得られる量はわずかなため、
古い時代には大変高価なものだった。

雌だけを集めると聞くと難しいように思えるが、
植物に付いているのはすべて雌である。
雄には羽があるため容易に判別可能なのだ。

ケルメスは主に地中海沿岸で見ることのできる種で、
ローマ帝国時代には税として徴収された例もある。

この虫の生み出す鮮やかな赤は富や権力の象徴として、
長く高級毛織物を染めてきた。
特にルネサンス期には需要が増し、
非常な高値が付いたという。

コチニールは南アメリカ大陸でサボテンに寄生する種である。
アステカやインカで染料として養殖されていた。

イスパニア人はこの虫がケルメスと同じく
赤色染料を生み出すものだと知ると、
その出所を明らかにしないままヨーロッパへ持ち帰った。

ケルメスより安く大量に手に入るコチニールの染料は、
そうとは知られぬまま高値で取引されたのだ。

ラックはインドや東南アジアに生息する種で、
この虫から採った染料がチャイナで臙脂と呼ばれた。
別名を紫鉱とも言う。

カイガラムシはカメムシの仲間である。
どちらも植物に針のような口を突き刺し汁を吸って生きている。

カメムシは農作物を荒らす害虫として忌み嫌われている一方で、
カイガラムシのいくつかの種は染料だけではなく
ワックスを得る目的で養殖までされている。
ただし、すべてのカイガラムシが有益なわけではない。