序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年3月25日日曜日

羊の家畜化が始まった時期は相当古い。
人類との付き合いが非常に長い生き物なのだ。

とはいえ、実は山羊の方が家畜としての歴史は古い。
これは、肉、乳、皮の利用において羊よりも
山羊の方が優れていたためである。

羊が重要視されるようになったのは、
品種改良によって毛の利用が容易になったためである。

初期の羊は現在のものとは毛の長さが異なり、
山羊毛の方が重宝されていたのだ。

羊は後ろ足の付け根に脂肪を蓄えているのだが、
家畜化の初期はこの脂肪の利用が主であった。

もっとも、毛の長い羊が生み出された時期は
バビロニア黎明期であると言われている。
つまり、十分古い歴史を持っているのだ。

現在主流のメリノ種は、
イスパニア王国の前身であるカスティージャ王国で生まれた。

イスパニア人はこのメリノ種を門外不出として
毛織産業を発達させ、日の沈まぬ帝国の基礎を築いたのだ。

しかし、その後イスパニアはイングランドに敗れ没落し、
内乱に次ぐ内乱の歴史を歩む。

その間に戦利品として持ち出されたメリノ種は各国に流出。
イングランドの産業革命によって全世界に供給される
毛織生地の原料となった。

ところで本邦は羊とはあまり縁のない歴史を歩んできた。

時折大陸から持ち込まれるため、存在自体は認識されていたが、
大規模な飼育が始まったのは明治のことである。
しかし、国産羊毛はすぐに化学繊維に取って代わられてしまった。

毛の話ばかりしたが、食肉としても非常に優れている。

本邦ではさほど馴染みが無いため、
独特の匂いが苦手という人も多いが、
私は羊が大好物である。

宗教の戒律によって禁忌とされることも少ないため、
宮中行事で外国の貴賓を招く際には
羊肉がよく使われる。

ところで、ソーセージの一種であるウインナーは、
羊の腸を利用したものである。
豚の腸を使えばフランクフルトとなり、
牛の腸を使えばボロニアとなる。

コラーゲンを合成した人工の腸を使ったものも存在する。
この場合には太さによって、ウインナー、フランクフルト、
ボロニアと呼び分けられる。

プラスチックなどの食べられない素材で作られたものもある。
魚肉ソーセージやサラミがこれに当たる。

話を羊肉に戻そう。
食肉としての羊はマトンとラム、二つの呼び方がある。
これは牛のように部位によって名称を分けているわけではない。

若い仔羊の肉をラムと呼び、成長した羊の肉をマトンと呼ぶ。
ラムとマトンの間のホゲットというものもあるが、
本邦では一般的ではない。

ラムは臭みが少なく柔らかい。
マトンはその点では劣るが味が濃い。

つまり、香辛料を利かせて煮込んだマトンは最高である。