本邦でプラスチックを知らない者はいないだろう。
日常生活の中に溢れかえっているからだ。
だが、我々が漠然とプラスチックと呼ぶ物と、
正確なプラスチックの定義には差異がある。
プラスチックについて、私は密かに
苛立たしいと思っていることがある。
それは外来語でしか言い表せないことだ。
あの物質を外来語を使わずに示すならば、
可塑性合成樹脂だろうか。
却って長くなってしまっている。
可塑性とは粘土のように、
変形させると形が変わり、
元に戻らない性質のことを言う。
だが、我々がプラスチックと聞いて
思い浮かべるものは固く、
曲がったりへこんだりするよりも
折れたり砕けたりする。
可塑性を発揮するのは
製造工程での熱を加えた時なのだ。
また、同じ樹脂でも弾性を持つものはゴムと呼ばれる。
こちらは変形させても元に戻る性質を持つ。
もうひとつ気に食わないことがある。
プラスチックは英語由来の呼び名だが、
英語話者にプラスチックと言っても通じないことがある。
樹脂を意味するレジンの方が一般的で、
プラスティックとは可塑性を意味する。
つまり、我々が普段プラスチックと呼んでいるもののうち、
例えばプラケースなどに使われているような固いものは、
彼らのイメージとしてはプラスチックではないのだ。
彼らがプラスチックと呼ぶ柔らかい部類のものは、
本邦では大抵ビニールと呼ばれている。
ビニール袋を英語圏ではプラスチックバッグと呼ぶが、
実はビニールの認識もずれている。
プラスチックのうち、ビニル基と呼ばれる
特定の化学式を持つものがビニールである。
ビニール袋のほとんどはポリエステルや
ポリエチレンなので、ビニールではない。
また、ビニール傘も実はビニールではない。
何故か包装フィルムのようなタイプは
きちんとプラスチックと認識されていることが多く、
ビニールとは呼ばれない。
専門家ではないので詳しくはわからないが、
こういった認識が定着していった
なにがしかの歴史があるのだろう。
なお、プラスチックは主に石油から精製される。
だが、最も歴史のあるプラスチック、
セルロイドは植物繊維から作られていた。
このように、プラスチックの世界は複雑で、
一般的な知識だけではその深潭を覗くこともままならない。
大体、化学に明るくなければ石油から作られる
という点からしてイメージしにくいのである。
当たり前のように身の回りに存在する物質だが、
プラスチックとは何なのか、
一度考え直してみるのも面白いのではないだろうか。