本邦に生息する蟻である。
一見ただの蟻なのだが、
非常に珍しい生態を持っている。
蟻の女王は結婚飛行の後、巣を作り、
働き蟻たちを産むのが普通だ。
だが、サムライアリの女王は
クロヤマアリの巣へと侵入し、
女王の部屋を目指す。
何のためかというと、
クロヤマアリの女王を殺すためである。
たった一匹で、クロヤマアリの妨害を
受けながらそれをやってのける。
そして、女王は殺したクロヤマアリの女王から
特有の匂いを奪う。
すると、クロヤマアリの働き蟻たちは、
彼女を自分たちの女王と誤認し、
サムライアリのために働くようになるのだ。
女王はクロヤマアリに世話をされながら卵を産み、
サムライアリが続々と生まれていくのだが、
彼女たちは通常の労働をしない。
別のクロヤマアリの巣へと攻め込み、蛹や幼虫を誘拐する。
それがサムライアリの仕事である。
普通の働き蟻らしい仕事はすべてクロヤマアリが担当する。
最初に巣を乗っ取った際にいたクロヤマアリは
やがて寿命で死ぬが、新たにさらってきた
クロヤマアリが成長し、働き蟻として補充される。
つまり外見の近い異種族を奴隷とし、
恒常的に補充していく。
そんなファンタジーのような光景が
繰り広げられているのである。
なお、面白いことに、サムライアリの顎は
敵の蟻を噛み殺すことに特化しているため、
食事を行うことができない。
クロヤマアリから口移しで食べさせてもらうのだ。
サムライアリは本邦であればさほど珍しくない。
その辺を歩いてる蟻が実はサムライアリの
奴隷であったりするかもしれないのだ。