序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年6月12日火曜日

グンタイアリ

グンタイアリとは巣を作らずに
群れで移動を続ける蟻のことだ。

色は赤黒く、熱帯雨林を行軍する様は、
赤い川が流れているかのようで、
その奔流を止めることはできない。

進軍中に遭遇した動物はことごとく解体され、
食料とされるのだが、どれだけもがこうとも
彼女たちの前では無力である。

逃げることのできない状況であれば、
牛などの大型動物ですら餌食とされてしまう。

その顎は鋭く大きく発達しており、
皮膚や肉を容易く食い千切る。

そんな彼らだが、実は年がら年中
移動を続けているわけではない。

幼虫が育ち切り、次の卵を産む時期になると、
倒木や岩の下に集まり隠れている。

また、日中最も暑い時間帯は
行軍を停止すると言われている。

これは、情報伝達手段である匂い物質が
暑さで蒸発してしまうかららしい。

グンタイアリには隊列を維持する監督蟻、
狩った獲物を群れの中に行きわたらせる分配蟻、
獲物を実際に狩る兵隊蟻、
雑用を行う働き蟻が存在する。

女王蟻は輿のように担がれ、
自ら歩くことはない。

この中でも特に興味深いのが働き蟻で、
大きな溝や段差に遭遇すると、
互いに絡み合って橋を架ける。

蟻の橋を蟻が渡るのである。

また、グンタイアリは川を渡ることもできる。
なんと、働き蟻が組み合い、筏となるのだ。

そこまでして直進する必要もないと思うのだが
彼らの歩みを止めることはできない。

このように向かうところ敵なしのグンタイアリだが、
蟻を食べるある種のメクラヘビにだけはかなわない。

その蛇が体から分泌する液は、
グンタイアリの感覚器官を撹乱し、
その存在を感じ取れなくさせる。

グンタイアリは目が見えず、
振動と匂いで周囲を認識しているため、
彼女たちにとってこの蛇は透明な化け物なのだ。

なお、グンタイアリの仲間にサスライアリという種類がいる。
アフリカやアジアにも生息しており、
実は本邦でも西表島にヒメサスライアリが存在する。

本場のアメリカ大陸のグンタイアリと比べると
そこまで恐ろしい存在ではないが、
不用意に近付くのはやめておこう。