序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年6月11日月曜日

偕老同穴

かいろうどうけつ と読む。

夫婦が共に老い、同じ墓に葬られることを指す
詩経に由来する故事成語である。

突然何を言い出すのかと思ったかもしれないが、
この名を付けられた動物がいるのだ。

種類は海綿である。
スポンジのような生き物の種類だが、
偕老同穴は繊維がガラスでできている。

そう、体内でガラスを生成し、
自身の骨格とするのである。

このガラスの骨格は檻のような円柱となっており、
中心部は胃腔として空間が存在する。

この空間には雌雄のエビが住み着いているのだ。

エビはまだ小さな幼生のうちに偕老同穴の
内部に入り込み、中で雌雄に別れて成長、
体が網目より大きくなり、外に出られなくなる。

つまり、このドウケツエビは、
死ぬまで夫婦二匹だけで
ガラスの家に住み続けるのである。

これが冒頭の「共に老い、穴を同じくする」
に繋がるわけである。

結婚式の祝い品として贈られることもあるのだが、
確かにこれ以上の縁起物もそうそうないだろう。

偕老同穴は死後波に流されて海岸に打ち上げられる。
この間に肉は洗われ、ガラス骨格だけが残される。

海岸にきらめく繊細なガラス細工を見つけたならば、
どこから流れ着いた宝物だろうと
胸がときめくに違いない。