序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年6月30日土曜日

シナモン

肉桂と呼ばれる樹木の樹皮を乾燥させたものを
にっき あるいはシナモンと呼び香辛料として用いる。

甘い香りを放つこの香辛料は、菓子はもちろん、
茶などの嗜好品を楽しむ際にも用いられる。

肉桂にも種類があり、シナモンとして
知られるものはセイロン種とシナ種である。

セイロン種はシナモンと呼ばれ甘く、
シナ種はカシアと呼ばれ
ピリっとした辛みが特徴的だ。

本邦の種は香りが弱いものの、
辛みは強いという。

シナモンとカシアは歴史的に混同されることが多いが、
肉桂の樹皮という点では同じため、
それも致し方ないことかと思う。

薬品として用いられてきた歴史は長く、
例によってミイラの防腐剤に使われていた。

漢代の薬学書にも桂皮として記されており、
正倉院にも桂心の名で納められている。

効能については、体を温め発汗を促進するとともに、
胃の調子を整える作用を持つ。

ただし、肝臓と腎臓に負荷をかける成分を持つため、
大量に摂取することは避けるべきである。

洋の東西を問わずシナモンは古代から高価な
薬品もしくは香辛料として扱われていた。

地中海では莫大な富を生むこの品を扱う商人が
仕入元などの情報を秘匿したため、
その神秘性によって更に価格が吊り上げられた。

シナモンを集める鳥と、狡知を尽くして
それを奪い取るサラセン人の話など、
荒唐無稽な物語も生まれた。

大プリニウスもワインに混ぜる香辛料として
カシアに言及している。

なお、ネロ帝は妻ポッパエアの葬儀に際しては、
大量のシナモンを用いて火葬にしたと伝えられている。

ヨーロッパ人がシナモンの正体を正確に知ったのは
おそらくマガリャネスがフィリピンに
到達してからのことだろう。

セイロン産の元祖シナモンはポルトガルの権益となり、
その後オランダ人が取って代わるが、
最終的にはイングランドの支配下に置かれた。

現在ではアメリカ人が特にシナモンを好む印象だが、
生産量が多いのは圧倒的にカシアの方である。