序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年6月20日水曜日

ナナカマド

南天のような赤い実をつけるが
背の高くなる樹木である。
真っ赤に紅葉する。

東北や北海道でよく見られる樹木で、
街路樹として植えられていることも多い。

冬になっても実が落ちず、
白い雪の中に目立つ赤い色彩は
非常に華やかである。

この小さな果実は非常に渋く、毒がある。
しかし、霜が降りると成分が変わり、
食べられるようになる。

これは恐らく、霜が過ぎ去ってから鳥に実を
食わせ、種を運んでもらおうという目論見だろう。
寒さが過ぎるまで枝に温存しておくのだ。

名前の由来は七回竈で焼いても
灰にならないという説が有名だが、
実際にはよく燃える。

実はこれ、七回ではなく七日であるという説がある。

家庭の竈ではなく、薪炭を作るための炭焼き竈において、
七日間蒸し焼きにすることで上質な炭が得られるという。

だが、燃えにくいという俗説は古くからあり、
火除けのお守りとされることもあった。

また、真冬でも赤い実が残ることは魔術において
重視され、様々なまじないに関わっている。

これはヨーロッパでも同様であり、
スカンジナビアやブリテンにおいて、
魔除けの木として親しまれていた。

面白いのが、ヨーロッパのナナカマドは火除けではなく、
水難除けの呪物として用いられていることである。

同じ性質であっても、異なる伝承に
彩られているところが大変興味深い。

なお、ナナカマドの実はジャムに
加工されることがあるのだが、
特有の苦みを持つ。

ジャムと言っても肉料理に合わせるなどし、
いわゆる大人の味を演出するために使われるのだ。