序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年6月10日日曜日

ハキリアリ

アマゾン周辺の熱帯雨林に生息する蟻である。

赤褐色の体を持つ蟻で、
役割に応じて体の大きさが異なる。

ハキリアリは他の蟻と一線を画す
驚異の能力を持っている。

キノコを栽培して食べるのだ。

昆虫が農業をするのである。
まったく驚くべきことである。

ハキリアリは植物の葉を切り取ると、
列を成して巣へと運び込む。

切り取る際には、自身の足を軸とし、
顎をカッターとしてコンパスのように
円形に切断する。

運ばれる葉の上には小型の警戒蟻が
乗っていることがある。

彼女たちの役割は上空から襲い来る
寄生蠅の見張りである。
蟻の体に卵を産み付ける恐ろしい蠅が存在するのだ。

列の脇には大型の兵隊蟻が闊歩している。
彼らは無防備な行進を外敵から守る役割を持つ。

また、働き蟻にも三段階の体の大きさの違うものがいる。
大型の者は大きな葉を切断し、
中型の者は葉を解体、運搬し、
小型の者は細かな作業を行う。

大型の働きアリは行列の先頭に陣取り
邪魔な障害物を排除するという役割も持つ。

巣の中にも、栽培を主とする蟻、
発生した廃棄物を巣の外に捨ててくる蟻、
女王の世話する蟻と多様だ。

蟻に寄生する恐るべき菌が存在するのだが、
冒された蟻は行動がおかしくなる。

そうした蟻は、他の蟻に運ばれ巣の外へと追放される。
驚くべきことに、追放作業を行った蟻もまた、
巣の中に戻ることは無い。

これは、病原菌の感染を防ぐために、
自らを隔離するという自己犠牲である。

キノコを育てるだけでも奇想天外だというのに、
他にも様々な興味深い点を持つ。
本当に面白い昆虫だ。

高度に分業化の進んだ社会というか、
ロボットめいたシステムにすら見えてくる。

なお、彼女たちが葉を刈る行為は、
新たな日向を作り出し、
森の新陳代謝に一役買っている。

ハキリアリのシステムは、
より大きなシステムの一部でしかないのだ。