サトイモの仲間の植物であり、芋である。
ただし、シュウ酸カリウムを多く含むため、
そのままでは食べることができない。
口や喉や消化管の粘膜がやられてしまうのだ。
本来はまともに食べることのできない植物
なのだが、人間はそんなものでも
料理という文明の力で食物としてしまった。
コンニャクというと本邦独自の食品という
錯覚を覚えるが、原産地は南アジアであり、
雲南省や四川省ではよく食べられている。
ただ、魔芋という名で呼ばれているあたり、
やはり生で食べてはいけない
イメージが強いのだろう。
本邦で輸入物のコンニャクを見かけないのは
蒟蒻農家を保護するために設けられた
こんにゃく芋への高い関税のためだ。
過去には最大で十七倍もの関税率に
引き上げられたことすらある。
さて、食品としてのコンニャクだが、
カロリーがほとんど無いうえに、
ヒトの消化管ではほぼ消化できない。
なぜそんなものを食べるのかというと、
ふたつの理由が存在する。
ひとつめは空腹を紛らわすためである。
栄養は乏しいが腹は膨れる。
現代では減量用食品としてよく知られている。
ふたつめはその豊富な食物繊維により、
消化管を清掃する目的である。
つまりはお通じを良くするのだ。
本邦においては鎌倉期までは
コンニャクは薬という認識であった。
整腸剤である。
それが、お寺の精進料理の発達によって
食材としての地位を確立するようになり、
江戸期には庶民の食べ物として広まった。
中島藤右衛門という人物が
現在のコンニャクの製法を考案したという。
面白いことに、樹脂のゴムが手に入り難かった
大戦期の本邦において、コンニャクは
樹脂代わりに使われた。
ゴムほどの耐久性があるわけではないが、
防水性と気密性があるため、
コンニャク糊というものを防水加工に使用した。
江戸期に和傘を作るために使われたこの技術は
風船爆弾という珍兵器を生み出すことになる。
気球に爆弾を仕掛け、偏西風に乗せて飛ばすことで、
アメリカ領に無差別攻撃を仕掛けるというものだ。
実は人類史上初の大陸間攻撃兵器である。
なお、戦果は民間人六名の死亡と、
小規模の山火事であったという。
これが心理面に与えた打撃は大きかった。
恐怖を煽るテロルであり、アメリカの厭戦気分を
助長させるための作戦であったと思われる。
焼夷弾ではなく生物兵器が搭載されている
可能性を考え、風船爆弾の届いた地域では
厳重な警戒態勢がとられたようだ。
アメリカ政府は事態を重く見て徹底的な
報道管制を敷き、戦意維持に努めたという。
本土が攻撃されないという安心が破られたのだ。
風船爆弾。コンニャクを塗った気球と聞くと、
冗談のような兵器であるが、
製造コストに対する効果は大きかったように思う。
和紙とヘチマとコンニャクで、
大海渡るテロリズム。
話題を変えよう。
落語の演目に蒟蒻問答というものがある。
私はこれが大好きだ。
禅問答の難解さを茶化したものなのだが、
オチのネタばらしが秀逸で、
あらすじを読んだだけで笑ってしまう。
無言で仕草を見せる部分がある仕方噺のため、
音声だけで楽しめる落語ではないが、
動画のある現代ではいつでも楽しめる。
騙されたと思って視聴してみてほしい。
できれば事前にあらすじなどを読まず、
ネタばらしのところで爆笑してもらいたい。