序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年6月13日木曜日

ムササビ

被膜により滑空飛行が可能な夜行性の
リスのような哺乳類である。

名前の由来は、宙を舞うために
非常に痩せていることから、
身細びと書いてむささびと読まれたことによる。
古語では身体を意味する身はムと読まれたのだ。

モモンガとは被膜の付き方、体の大きさが違うのだが、
昔の人々はこれを区別することがなかった。

というのも、電灯もない時代、山奥の森の中で
頭上を飛び交う存在を目視で見分けることなどできず、
得体のしれないものと認識されていたためだ。

野衾の名で呼ばれる際には明確に妖怪であり、
地方によっては大変恐れられた。

急に人の視界を塞ぎ、歩くことができなくなる
類の妖怪であり、ヌリカベ型、ヒダル型の
性質を持つと言える。

特にムササビやモモンガが由来と思われる野衾の場合、
飛んできて顔に張り付くことで視界を奪う。

野鉄砲という妖怪にいたっては、
狸型の妖怪が口から鉄砲のように野衾を飛ばし、
人の顔に張り付けてしまう。

なお、衾とはいわゆる布団の一種で、
これに突然覆われることで目の前が
真っ暗になるという意味合いの妖怪である。

他にも山地乳という妖怪も
野衾が長い年月を経て変化するものだと
考えられていた。

さて、そんな恐ろしい妖怪であったムササビだが、
日中は木の洞などで寝ている。

それを人間は捕え、食糧や毛皮として利用してきた。
縄文時代の遺跡からもムササビの骨が出てくる。

毛皮は上質で、寝ているところを狙えるため
捕獲が容易なこともあり、乱獲されていた。

このため、かなり古い時代ですらも、
資源枯渇を避けるためにムササビを
狩猟することを禁ずる令が出ているほどだ。

近代では物資の乏しかった大戦中、
上等なムササビの毛皮は非常に高価となる。

戦後は鳥獣保護法において、
狩猟が禁じられた。

ムササビの仲間は世界中に生息しており、
同じように滑空飛行ができる別種としては、
ウロコオリス、フクロモモンガ、
ヒヨケザルが存在する。

特にフクロモモンガはモモンガと
名付けられているが、
有袋類であることが興味深い。

ちなみに、開発によって森の減ってきている
本邦ではムササビの絶滅が危惧されている。