クジャクサボテンの仲間で
大変美しい花を咲かせる。
まず、名前が美しい。
月夜にたたずむ麗人である。
英語ではクイーンオブザナイト、
夜の女王である。
オランダ人のパイプという呼び方もあるが、
蕾の状態は確かにパイプのようでもある。
花は夜に咲き、朝にしぼむ。
一晩しか開花しないのだ。
白い大輪の花は甘い芳香を強く漂わせ、
コウモリを呼び寄せる。
虫ではなくコウモリに花粉を媒介させるのだ。
果実はいわゆるドラゴンフルーツの類で甘い。
花も食べることができ、
台湾ではスープの具にされている。
さて、月下美人だが、私は昔、祖母と共に
この植物を育てたことがある。
蕾が大きくなり、そろそろ咲くぞという日の晩、
祖母と大叔母と共に夜更かしをして
開花を待ったのは良い思い出だ。
掌に余るほどの大きさの花が開いていく様子は、
本で読み、写真を見て想像していたよりも
はるかに感動的なものだった。
しばらく祖母たちと花を愛で、
翌朝、しぼんでいるのを確認した。
なお、月下美人という名ではあるが、
月光は特に生育にも開花にも関係がない。
原産地はメキシコの熱帯雨林であり、
絶滅の恐れがあるとして取引が制限されている。
この関係から、本邦では長らく単一株の
挿し木や株分けで増やしたものが
園芸品種として育てられてきた。
同一個体同士では受粉しても結実しないため、
かつては果実を得ることはできなかった。
今では他の株から分けられたものが
取引されているため、
本邦においても果実を得ることができる。
フルーツとしての月下美人は、
食用月下美人という雅さに欠ける名で流通する。
見た目、味共にドラゴンフルーツである。
花のスープに関しては、自宅で咲かせた当時は
食用になることを知らなかったため
試したことがないが、美味いらしい。
花を分解して具にするのだが、とろみ成分を持つ。
軽く蒸してからスープに入れるのが
美味しく調理するコツらしい。
ちなみに台湾では曇花と呼ばれているらしく、
おそらく太陽の下で咲かないことに
由来するのだろうと勝手に思っている。
曇花スープは咳や淡を改善し、
肺を清浄にして胃痛を和らげる
薬膳として飲まれるようだ。
ところで、年に一回満月の晩にのみ咲く
という俗説があるが、前述のとおり月光は
関係がなく、環境次第で何度も花をつける。
それほど育てにくい植物というわけでもないので、
一夜の感動を味わうために
栽培してみるのもいいのではないだろうか。