序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年6月28日金曜日

ムハンガ

本邦ではツチブタと呼ばれるサブサハラの哺乳類である。

土豚の名はアフリカーンス語のアードバーグの直訳で、
アラビア語でも大地の豚と呼ばれている。

ブタと呼ばれているが、
ムハンガはブタとは無関係な生物だ。
胴体が少しブタに似ているのでこの名が付いたと思われる。

だが、個人的には鎧の無いアルマジロ
言われた方がしっくりくる見た目をしている。

アルマジロを裸に剥いて、口吻を細長くし、
耳をウサギのように長くして、尻尾を太くて
長いものにした姿を思い浮かべてみてほしい。
体毛は短く灰色だ。

そういえば、鼻先を正面から見るとブタに似ている。
この点と、脆弱な肌がブタらしいといえばらしい。

食べているものはシロアリである。
アリ塚を唯一強靭な部位である爪で破壊し、
飛び出してきたアリを細長い舌で舐めとる。

食事の方法とそれに適した口の構造から、
昔はアリクイの仲間だと思われていた。

しかし、後にそれはシロアリを食うのに向いた形へと
進化した結果、似てしまっただけだと判明する。

アリを舐めとる食事方法のため、歯は退化しており、
空洞の六角形という非常に特徴的な形になっている。
これは臼歯で、犬歯など他の歯は無い。

噛み付くことができず、足も速いとは言い難いので、
天敵への抵抗手段が乏しい。

巣穴を掘ったり蟻塚を破壊したりするために、
硬い爪とそこそこの脚力を持っているのだが、
それを活かした戦い方はしない。

襲われた場合は、逃げもせずその場で穴を掘り始める。
穴が掘れない場合には じたばたする。
かなりか弱い生き物なのだ。

嘘か本当かは知らないが、骨も脆いらしい。
頭蓋骨を人間の力で簡単に砕けるとか。

さて、過酷なアフリカの大地で暮らすには
弱すぎる気もするムハンガだが、
その特殊な形状の歯はお守りとして重宝された。

大地を掘り、地上と地下を行き来する
霊的な存在と見做されたためだ。

なお、農耕民族からは嫌われている。
農地を掘り返し荒らしてしまうためだ。
水分補給のためにウリを食うこともある。

おそらくこうした性質に由来するのだろう、
農耕民族の国であるエジプトでは、
悪神がムハンガの頭を持つとしている。

なお、彼らの掘る穴は他の生物の巣穴として
再利用されるため、実は生態系に少なからぬ
影響を与えている。

農耕の邪魔になるとして駆除されることもあるが、
今のところ絶滅の危険はないようだ。

ただし、生態のよくわかっていない動物のため、
知らぬ間に数を減らしている可能性も
あるかもしれない。