序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年6月9日日曜日

白亜

炭酸カルシムの鱗片をもつ藻類などが堆積して
できた石灰岩の一種である。
固結していないため、脆く柔らかい。

チョークと呼ばれ、黒板に文字を書くチョークは
元々はこの岩石が用いられていた。

本来は白堊と書き、堊の字はアクと読むものの、
いつしかハクアと読まれるようになり、
字体の簡単な同音の亜の字に置き換えられた。

時代区分の白亜紀の名は、この白亜を形成する
生物たちが生きた時代である。

六千年にも及ぶ白亜紀は温暖湿潤な気候で
安定しており、多くの動植物が栄えた期間だ。

特に裸子植物から被子植物へと植物の主流が
変化した時期であり、この時代から
ほとんど進化していないものも少なくない。

動物に関しては爬虫類の全盛期であり、
ジュラ紀から続く恐竜の時代と言える。

脆弱な哺乳類は胎盤、あるいは育児嚢を発達させ、
現在の姿へと進化した。

また、鳥の類も恐竜から分岐進化したが、
この時代に主流であった鳥たちは
ほとんど絶滅してしまっている。

鳥だけではない、白亜紀の終わりには
非常に多くの生物が絶滅した。

長らく大量絶滅の原因は憶測されるだけであったが、
現在ではユカタン半島への隕石の衝突が
気候変動をもたらしたためだと考えられている。

気候の変化に耐えられなかった植物は死に絶え、
食料の減少と寒さが爬虫類たちを死に追いやった。

そんな中、恒温動物であり小型の哺乳類たちが
生き延び、後の世の繁栄へと繋がっていく。

ただ、炭酸カルシウムを持つ生物の大量死が
白亜を生み出したわけではない。

長い長い安定した時間の中で溜まりに溜まった
死骸が沈殿して凝塊したのが白亜である。

なお、白亜が露出した有名な地形として、
ヨーロッパからブリテン島を見たときに
目につくドーバー海峡の白い壁がある。

ローマ人はこの白い絶壁を見て、
ブリテン島をアルビオンと呼んだ。
イギリスの雅名として古くから使われている。

ちなみに本邦で白亜と言った場合、
チョークのことではなく、
白く塗られた壁を指すことが多い。

白亜の城や白亜の神殿といった表現である。
こうした用法が人口に膾炙した結果、
白亜というと美しく荘厳なものという
イメージが強くなっている。