カラタチという植物がある。
ミカンの仲間で、
唐橘 からたちばな と呼ばれていた。
ミカンに似た果実が成るのだが、
苦すぎ、酸っぱすぎるため、
食用には向かない。
鋭いトゲが生えるため、昔は塀代わりの
生垣としてよく植えられていたが、
ブロック塀の登場で姿を消した。
アクの強い味のカラタチだが、
強い酒に漬け、香りを付けた果実酒が
大陸の方ではよく作られるらしい。
また、未成熟な果実は乾燥させ、
健胃、利尿、去痰作用のある
生薬として使われたともいう。
現在はこのカラタチにミカンを接ぎ木すると、
病気に強くなり、果実が成るのが早くなるため、
果樹園などで活躍している。
さて、接ぎ木によってミカンが
有益な性質を獲得するのであれば、
ミカンとカラタチを交配させれば
より良い品種が作れるのではないだろうか。
だが、残念ながらミカンとカラタチでは
雑種が生まれることはない。
そこで生命科学研究の成果である
細胞融合を行うことが考えられた。
細胞融合とは文字通りふたつの細胞を合体させ、
ひとつの細胞にしてしまう技術である。
なんでもかんでも融合できるわけではなく、
異種の細胞であれば近縁である必要がある。
オレンジとカラタチであれば可能な範囲だ。
世間ではスーパーマリオブラザーズが
人気を博した頃、農林水産省果樹研究所と
キッコーマンの共同研究により、
オレンジとカラタチの細胞融合が成功した。
オレンジとカラタチの雑種なので
オレタチと名付けられた果樹の誕生である。
うまくいけばカラタチを台木にすることなく、
病気に強く結実の早い柑橘類が出来上がる
はずだったのだが、そうは問屋が卸さない。
オレタチはオレンジのように甘い
などということはなく、
カラタチ譲りの酸みが強かった。
そして、苦みが強く、何より匂いが悪い。
とても食べられたものではなかったのだ。
無念、オレタチの戦いはここまでだ。
もちろん、まったくの無駄だったわけではない。
オレタチを作る過程で獲得されたノウハウは、
その後の細胞融合植物研究に役立てられた。
ヒネ、メロチャ、ネギタマ、トマピーノ。
とりあえずネーミングセンスを疑う。