被膜により滑空飛行が可能な夜行性の
リスのような哺乳類である。
ムササビとは被膜の付き方、体の大きさが違うのだが、
昔の人々はこれを区別することがなかった。
というのも、真っ暗な夜の森で素早く飛び交う存在を
人間の目で見て判別することなどできず、
妖怪の類だと思われていたためだ。
妖怪としての呼称は野衾であるが、
モモンガもまた化け物という意味で使われる言葉だ。
悪いことをする子供に、モモンガァが来るぞと
脅していたのだろう。
人の視界を塞ぐヌリカベ型やヒダル型の
妖怪として知られるが、
年を経たものはより危険度が増す。
山地乳と書いてヤマチチと読む妖怪がそれで、
蝙蝠あるいは野衾が変化する。
夜、人の寝静まった頃に音もなく民家に入り込み、
眠っている人間の呼吸を吸い取る。
息を吸われた人間は寿命を奪われ、
ほどなくして死んでしまうという。
別の説ではもっとダイレクトに
生き血をすするとされる。
さて、そんな恐ろしい妖怪であったモモンガだが、
実際の食物は木の実や昆虫などで雑食である。
雑食故に人の出した生ごみなども食うため、
人里近くにもよく生息していた。
だが、人の生活は変化し、森や林は減少、
樹上から滅多に下りることのない
モモンガは生息可能な場所が減少していった。
なお、天敵はテンなどの肉食獣や
ヘビなどである。
これらの敵から逃れるために地上に
下りなくてもよい能力を獲得したわけだが、
もうひとつ重大な天敵が存在する。
フクロウだ。
非常に素早く飛ぶことのできるモモンガだが、
夜行性で無音のハンターと呼ばれる
フクロウには敵わない。
しゅっと格好良く木々を飛び回っている最中、
さっとフクロウにさらわれてしまうのだ。
日中の木の洞などで寝ている時も危険である。
ヘビなどもそうだが、人間に狩猟されてしまう。
上質で扱いやすい毛皮は人間に珍重されたのだが、
昔の人々はこの妙に皮の余ったネズミのような
生き物と、夜に怪しく飛び回る野衾が
同じ生き物だと知っていたのだろうか。