竹によく似た植物である。
竹との違いは、枯れるまで葉が落ちないこと、
節に葉鞘があること、葉脈が平行であることだ。
近い種ではあるが、完全に別の植物である。
その葉には防腐作用のある成分が含まれているため、
ちまきなど、保存食を包む用途で使われてきた。
独特の香りがあるが、本邦では笹で包まれた
食品を食べる機会がそれなりにあるため、
食欲をそそられると感じる者も多い。
ただ、世界的には珍しい植物であり、
特に西洋圏では笹は本邦を示すアイコンでもある。
多くのヨーロッパ諸国ではこの植物を
独自の言語ではなくササと呼んでいることからも
本邦独自の存在と見做されていることが分かるだろう。
もちろん、東アジアの他の国にも生育しているが、
本邦の笹は群を抜いて種類が豊富だ。
ところで、竹の花が咲くのはとても珍しいことだが、
笹の花もやはり滅多に咲かない。
およそ干支が一回りしないと咲かないという。
笹の実は笹麦と呼ばれ食べることができる。
小麦や蕎麦のように粉に挽いて食べるのだが、
食味はあまり良くなく、笹独特の香りがする。
早い話が美味いものではない。
そのうえ、滅多に収穫できないのだから
人々の話題にはそうそう上らない。
だが、各地に笹麦の伝承が残されている。
なぜかというと、飢饉などの食糧難の際に、
笹麦を食べて生き延びた集落の話が散見されるためだ。
笹は荒れた土地に進出し、爆発的に増える類の植物だ。
大抵の場合、固まって多数生えている。
このため、偶然開花に行き合えば、
相当量の笹麦が収穫できる。
飢えから救われた村は古来数知れない。
葉の防腐作用のことも勘案すれば、
昔の人にとってはありがたい植物である。
家紋に採用される例も多いあたり、
やはり、本邦において特別な存在だったのだろう。
一生の間に目にするかどうかすらわからぬ笹麦。
もしこれを食べる機会があるならば、
貴重な経験となるに違いない。