序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年8月23日木曜日

蕎麦

稲やの仲間ではない穀物である。

白から赤にかけての小さな花は悪臭を放つ。
具体的には鶏の糞を発酵させたような匂いだ。

しかし、その実は美味く、栄養が豊富で、
冷涼かつ乾燥した土地でもよく育つ。

原産地は華南とされており、
ヨーロッパから本邦にかけて
一部地域で食されている。

ただし、食べる文化の無い地域では
そもそも知名度が無く、
食べ物として認識されていない。

我々のように蕎麦を食べる文化を持つ場合、
独特の風味が好まれるが、
非蕎麦食文化圏では
不味くて臭いと考えられている。

フランスでは製粉し、クレープ生地のように
焼いて食べるのが一般的で、イタリアでは
パスタに加工される。

ロシアでは粥状にして食べることが多く、
東アジアでは麺に加工される。

本邦においては、縄文期より利用されていたが、
蕎麦がきや そばもちとして食べられ、
我々がイメージする麺の蕎麦は江戸期に登場した。
これは製粉技術が乏しかったためである。

非常に消化が良く、胃腸が弱っていても
きちんと栄養が吸収できる反面、
腹持ちはよくない。

蕎麦粉はそのままでは ぶちぶちと切れやすく、
つなぎ として小麦粉を混ぜることが多い。

つなぎを使わない蕎麦のことを十割蕎麦と呼び、
ありがたがる者もいるが、喉越し等を考えると
個人的にはつなぎ があった方が良い。

趣味の延長で店を構えたような脱サラ蕎麦屋
などでは無駄に十割にこだわり、
美味いとは言えない蕎麦を出してくることがある。

ところでロシアではカーシャと呼ばれる蕎麦粥を
食べる機会があったのだが、
恐らく少し搗いた蕎麦の実を煮たものだと思われる。

殻に由来する独特の匂いがあるが、
本邦で蕎麦を食べ慣れていれば
さほど気にならないだろう。

収穫量は少ないものの、蕎麦は痩せた土地で
育つ栄養豊富な穀物である。

製粉の手間をかけずに食べることができるというのは
貧者にとって非常に有益だ。

暑さと湿気に負けるという弱点を補強できれば、
食料問題を抱く地域の救世主となれる
ポテンシャルを持っている。

ところで蕎麦を茹でた汁、いわゆる蕎麦湯には、
かなりの栄養素が溶け出している。
飲まないのはもったいない。

私は子供の頃ざるそばの後に
蕎麦湯を飲むのがとても楽しみだった。

あの赤い湯桶が運ばれてくると、
今でも少しわくわくしてしまう。