細菌の細胞壁を作る力を
奪う効果を持つ物質である。
いわゆる抗生物質の元祖だ。
アオカビが精製するもので、
この物質の発見によって
人類の平均寿命は延びた。
感染症による死は、近世以前においては
現代よりもずっと深刻なもので、
ちょっとした傷が元で死ぬことも多かった。
傷口から入る以外の細菌に由来する病も
簡単に治すことができるようになり、
人の世界に劇的な変化をもたらしたと言える。
例えば梅毒という病気を治すためには、
水銀剤や砒素剤など、副作用で死にかねない
薬が用いられていた。
また、最後の手段として、わざと
マラリアに感染し、高熱で梅毒の菌を
殺すという方法すらあった。
それが、抗生物質を使えば、
安全に治療できるようになったのだ。
だが、便利な抗生物質は濫用され、
抗生物質に対し耐性を持つ菌が登場する。
前述の梅毒などは、もはやいくつもの
抗生物質に耐性を持っており、
有効な薬は限られているという。
アメリカ合衆国での濫用は特に酷いそうで、
抗生物質が処方される診察のうち、
半分は不要なケースだと言われている。
本邦でも古臭い個人診療所に風邪でかかると、
老医師がちょっと見ただけで
抗生物質を出してくることがある。
やぶ医者である。
なお、抗生物質は細菌の増殖を止める薬であり、
ウイルスには効果がない。
風邪には細菌によるものと
ウイルスによるものがあり、
当然ウイルス性の場合、抗生物質は無意味だ。
優れた医者は匂いで風邪を察知するらしいが、
まさか細菌かウイルスかまで判るのだろうか。