序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年8月11日土曜日

ガンガゼ

やたらと棘の長いウニである。
棘は人の肘から手首ほどの長さがある。

ウニの棘は実はあまり鋭くなく、
刺そうと思っても刺さらないぐらいなのだが、
ガンガゼの棘は違う。

先端が非常に細くなっており、
容易に皮膚を突き破る。

それだけではない、毒がある。

ガンガゼの毒はさほど強いものではないが、
長時間にわたってジンジンと痛み続ける。

激痛というほどではないが、
しつこく執拗に責めてくる。

ガンガゼは昼間は岩陰に潜んでいるため、
よく確認せずに手を差し入れると
そこにガンガゼがいたという羽目になるだろう。

あらゆる敵を寄せ付けない針の要塞に見える
ガンガゼだが、実際には
あまり防衛能力は高くない。

というのも、天敵のイシダイなどは、
棘の先をくわえ、ガンガゼをくるっと
ひっくり返す芸当を身に付けている。
棘の無い無防備な腹部にかじりつくのだ。

イシダイを釣る際にはガンガゼを餌にすると
他の魚が食いつかないので
とても釣りやすいという。

ちなみに、ガンガゼは大きな生き物が近付くと、
光の具合からそれを察知し、
棘を蠢かせて抵抗しようとする。
棘をくわえにくくするためだろう。

地域によっては集団で海底に並び、
槍衾を作って防衛するらしい。

だが、ガンガゼにはもうひとつ弱点がある。
棘も殻もあまりにも脆いのだ。

棘の長さと毒を獲得した代償なのか、
本当に簡単に折れるし割れる。
普通のウニとは比べ物にならない。

ただし、棘の脆さには注意してほしい。
肌に刺さって折れた場合、
皮膚の下に折れた棘が残され
取り除くことができなくなる。

単純に刺されるよりも
はるかに痛い思いをすることになるだろう。

さて、このガンガゼ。美味い。
ウニの味がする。
もちろんウニだからだ。

棘の毒が厄介なので食用とする地域は少ないが、
ムラサキウニを淡白にしたような味だ。
バフンウニと比べると明らかに味が薄いが、
さっぱりとしていると言えなくもない。

釣り具屋に行けば生餌として
安く買うことができる。

棘の毒にさえ注意すれば
普通のウニより殻は剥きやすい。
普通の文房具鋏があれば十分だ。

つまり、手間を掛ければ
安く大量のウニを食べられるということだ。

旬は冬である。