序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年6月19日水曜日

トレハロース

砂糖の代用品として使われる甘い物質である。

自然界においては、昆虫のエネルギー源として、
いわゆるブドウ糖と呼ばれるグルコースの代わりに
体内に蓄積されていることが多い。

単純に言えば、我々人が利用しているのが
グルコースであり、昆虫などが
利用しているのがトレハロースである。

糖であるため当然甘い。
いわゆる砂糖はスクロースと呼ばれるのだが、
トレハロースの甘さはその半分以下だ。

甘みを求め続けてきた我々人類にとって、
砂糖の半分以下の甘さという点は、
あまり興味を引く対象ではない。

ただ、保水力が極めて高いという
化学的性質が注目された。

トレハロースが発見されてからは、
化粧品など、保水力を求める製品の
材料として活用されてきた。

しかし、当初はトレハロースを作り出すのは難しく、
高価で貴重な物質であった。
当然、これを使った化粧品は高級なものだった。

だが、本邦のある企業が、安価なデンプンから
トレハロースを大量生産する技術を生み出した。

廉価であるということは価値である。
トレハロースの利用は一気に広がった。

保水力を活かす製品にトレハロースが
こぞって使われたことは言うまでもない。

甘味料としては、臭みを消す力を持つことが
注目されることになる。

レトルト食品のような保存食は、
使われる保存料独特の匂いを持つことになるのだが、
トレハロースを使うとこれが抑えられる。

また、炭水化物、蛋白質、脂質の劣化を抑える
働きまで持っている。

つまり、砂糖の代わりにトレハロースを使うことで、
食品の寿命を延ばすことができるのだ。

ゆえに、安価となったトレハロースの利用は
爆発的に広がった。

我々が知らないだけで、我々が口にする
加工食品のほとんどに、おそらく
トレハロースが使われている。

こう聞くと、安全性を不安視する向きもあると思う。
だが、トレハロースは体内でグルコース、
つまりブドウ糖に変換され、
スクロース、砂糖を摂取した場合と
ほぼ変わらぬ消化が行われる。

我々が口にするキノコの類もトレハロースを
含有しており、例えばシイタケが干しても水で
戻せるのはトレハロースの保水力によるところが大きい。

身体に害があると信じられている合成甘味料の類だと
トレハロースのことを誤解している者も
少なくないのではないかと思う。

だが、安心してほしい。
トレハロースはそういう怪しげなものではない。

もっとも、トレハロースは砂糖と変わらない。
健康に関して、トレハロースなら大丈夫などという
誤った考えを持っているのなら改めるべきだと思う。

現代人は糖質を摂りすぎなのだ。