序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年6月22日土曜日

スローロリス

まん丸で大きな目を持つ
小さな猿ロリスの一種である。

可愛らしいと評判で、人気のペットとして
乱獲されたため絶滅が危惧されている。

だが、実は猿の仲間で唯一、毒を持つ。

この毒猿、肘の辺りから体液を分泌させることが
できるのだが、この体液に少し毒性がある。

強い毒ではないのだが、スローロリスの唾液と
混ざると、たちまち猛毒と化す。

彼らは自分たちの赤子の体にこの猛毒を
塗り付け、天敵に食われないようにするのだ。

ただし、この毒、口から摂取した場合は
ほとんど毒性を発揮しない。
普通に消化できてしまう。

傷口から直接体内に入った場合に限り、
猛毒となるのだ。

スローロリスに噛まれたり、引っ掛かれたり
した場合、その傷口から毒が入れば
人間のような大型の動物でも死に至る。

故に、多くの肉食動物はスローロリスを
狙う危険を冒さない。
大型のヘビなどは気にせず丸飲みにしてしまうが。

さて、スローロリスは名前の通り、
非常に鈍い動きをする動物だ。
昔はナマケモノの仲間だと思われていたほどだ。

ナマケモノのように身体の代謝を少なくし、
省エネルギー化もしてはいるのだが、
彼らがゆっくり動くのには別の理由がある。

スローロリスは樹上からほとんど下りない
生き物なのだが、彼らが歩く時、
枝が揺れることはない。

また、巧みに避けるため、体が葉に当たり、
揺らしたり音を立てたりすることもない。

ゆっくりと、しかし確実に、無音で近寄る捕食者。
臆病な小鳥や敏感な昆虫ですら、
スローロリスの接近には気付けない。

そう、彼らが鈍いのは、獲物に気付かれない
ようにするためなのだ。

その一方で、彼らの可愛らしい顔は、
自然界においては
非常に目立つデザインになっている。

視覚に頼り獲物、あるいは敵を識別する動物は、
スローロリスを容易に判別できる。

猛毒を持つ生き物特有の警戒色と同等の
効果があると考えられている。

また、嗅覚に頼り周囲を識別している動物は、
スローロリスの持つ毒の刺激臭に
敏感に反応するだろう。

目立つ要素と気配を消す要素を
同時に併せ持っているのがスローロリスだ。

音や振動によって敵の接近を察知する
小鳥や昆虫にとっては姿の見えない暗殺者、
目や鼻の発達した動物にとっては
厄介な食えない奴なのである。