糸瓜と書く。
本来はイトウリという名前であったが、
トウリと呼ばれるようになり、
洒落によりヘチマとなった。
どういうことかというと、
いろはにほへ と ちりぬるを、
ヘとチの間がトである。
つまり、ト瓜はヘチ間瓜なのだ。
こんな冗談のような名前の物品は
他にも色々とある。
ヘチマと関係ないので省くが、
イマドキの若者が使っている謎の言葉が定着し、
後世まで伝えられることをイメージすれば
理解しやすいのではないだろうか。
さて、このヘチマ、原産地はインドである。
非常に有益な植物のため世界中に広まった。
本邦では室町期にやってきたという。
食材としては未熟な果実をいただくのだが、
ほのかな甘味があり、つるんとした食感が
様々な料理に活用されている。
有名なところでは沖縄料理のナーベラーンブシ、
台湾の小籠包の具などがある。
ただし、まれに毒性の強い成分を含む果実が
成ってしまうことがある。
少量であれば害はないが、苦みのあるヘチマは
嘔吐や下痢を引き起こすので注意が必要だ。
ヘチマは薬用にもなる。
特に熟した果実から得られるヘチマ水と呼ばれる
果汁は民間薬として様々な効能がある。
具体的には咳止め、利尿作用、ひびやあかぎれ、
日焼けによる炎症止めである。
そして何よりヘチマを有益なものとしているのが、
完熟した果実内に形成される強い繊維である。
糸瓜の名はこの繊維に由来し、
簡単な加工で質の良いタワシが出来上がる。
古来、繊維の束がものを洗う際に活用されてきたが、
ヘチマたわしは適度に柔らかく、
人の肌を洗うのに向いていた。
現代でもヘチマたわしを好む人が
少なくないことからも、
その有用性が明らかであろう。
なお、完熟後、乾燥したヘチマは、
風によって振り回された果実から
種子が飛び出し周囲にばらまかれる。
不思議な繊維構造はこうした機能のために
形作られているのだ。
蔓性のため、近頃では緑のカーテンと称して
都市部の日差しを和らげ、コンクリートジャングルを
涼やかにする目的で栽培されることも多い。
病害虫にも強く、育てやすいため、
小学校の理科の教材としても使われる。
このように、いろいろと有益な植物なのだ。