序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年5月31日金曜日

珊瑚

サンゴ虫とも呼ばれる海の動物である。

イソギンチャクと近い生き物だがとても小さく、
プランクトンを捕食している。

藻類と共生しているものも多く、
そういった種類の珊瑚は浅い海に生息し、
光合成によってエネルギーを得ることができる。

珊瑚の最も特徴的な点は、
非常に硬い外殻を形成することだろう。

カルシウムを多く含むこの外殻は、
甲殻類の殻よりも哺乳類の骨に近い。

外殻を発達させた珊瑚はサンゴ礁と呼ばれる
群れを作り出し、浅い海底に
地形ともいうべき構造を生み出す。

サンゴ礁は隠れる場所が豊富なため、
様々な生物が住み着き、
豊かな生態系が形成される。

珊瑚には様々な色のものがあるが、
美しい赤色のものは人間によって
貴重な宝物として扱われてきた。

世界中の温かい浅い海で採取できる珊瑚だが、
乱獲により数を減らしてきている。

昔は採取が困難であったが、
現在では技術発展により容易であり、
また需要も増しているためだ。

本邦では高知県沖のものと沖縄周辺のものが
宝石的価値を持つが、高知県沖のものは
明治期までは存在を知られていなかった。

それまでは国外からの輸入品が流通していたのだが、
最も古いものはシルクロードを通って
地中海からやってきたと見られている。

明治期以降、ヨーロッパ人の指摘により
高知県沖の珊瑚が採取されるようになり、
これはトサと呼ばれて世界的に人気がある。
高知の旧国名、土佐が名前の由来だ。

また、沖縄のものは琉球方言でウルといい、
サンゴ礁のある島(マ)はウルマと呼ばれた。

近年では本邦近海の珊瑚を狙い、
大陸から多くの密漁船団がやってきたことが
問題視された。

サンゴ礁の形成には非常に時間がかかる。
また、酷く破壊されたサンゴ礁は
回復することができず、失われてしまう。

サンゴ礁が失われると、その地域の
生態系もまた失われ、海の砂漠となる。
魚も減るため漁業への影響も大きい。

ところで、珊瑚は古来、
血液に関係すると言われてきた。

ギリシア神話では首を刎ねられたメドゥサの
血液から生まれたとされているし、
所有者の健康状態、特に血液の状態により
色が変わると信じられていた。

月経中の女性が所有している珊瑚は
色が薄くなるとも言われており、
珊瑚が月と関係しているとする神話は多い。

血液、月経、月、とくれば妊娠、出産と続き、
多産、豊穣、愛情とも関連付けられていく。

金星神と月神がこうした性質と
結びついていることが多く、
中には混同や変遷があるため、
珊瑚も金星と月の両方と縁深い。

中世イベリアでまとめられた宝石誌にも、
金星と月の力が結びついたものが
珊瑚であると書かれている。

金星と月にまつわる信仰について
長々と書きたくなってきたが、
海の生物サンゴから離れてきた。
ここらで今日は筆を置くことにしよう。