黄色く小さな花を咲かせる植物である。
原産地はよくわかっておらず、
中央アジアからヨーロッパまで、
幅広く生育している。
スペイン語ではイネルドと呼ばれ、
本邦へ伝わった際にイノンドと訛ったものの、
現在では英語名のディルが一般的である。
薬草としての歴史が古く、
胃薬や整腸剤として重宝されてきた他、
魔術を防ぐ力もあると考えられた。
漢方では果実が蒔蘿子、じらいしと呼ばれ、
香辛料としてもこの果実が用いられる。
なお、果実は一見すると種子のようである。
葉にも芳香があり、香草として利用され、
スープやピクルスの風味付けに使われる。
ディルはキャラウェイやフェンネルと似ており、
混同されたり代用品とされたりということも多い。
ただし、果実には辛みがある。
ディルが特に合う食材は川魚だろう。
川魚特有の臭みを消し、
爽やかな香りを付け加える。
ヨーロッパ全般でよく使われる香草であるが、
特によく使われるのはポーランド料理と
ロシア料理そしてドイツのザワークラウトだ。
ロシアではウクロープと呼ばれており、
鮭のマリネやふかしたジャガイモ、
ボルシシにも使われる。
香りには鎮静作用があるとされており、
夜泣きをする赤ん坊に
煎じ汁を与えていたという記録もある。
本邦ではあまり多用される香辛料ではないが、
マリネやポテトサラダに入れてみると、
普段とは違う味わいが楽しめるだろう。