序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年7月11日木曜日

フッ化水素

たまには時事ネタに乗ってみようと思う。

フッ化水素とは、その名の通り
フッ素と水素の化合物である。

フッ素は毒性の強い物質だが、
精密な電子回路の形成に利用される。

半導体の上に薄い膜を作った後に、
フォトレジストによって必要な回路を描き、
フッ化水素により不要な膜を除去する。

この時、フッ化水素に不純物が混じっていると、
電子回路が正しく形成されない。

高純度のフッ化水素を精製するには
高い技術が必要であり、現在のところ
本邦が世界的なシェアを占めている。

さて、フッ素には強い毒性があると前述したが、
なんと、ガラスを溶かす。

保存にはポリエチレンやフッ素樹脂の容器が必要だ。
ただし、それらの容器も徐々に侵蝕するため、
長期間の保存は難しい。

また、カルシウムも溶かすため、
人体への影響としては骨の溶解が挙げられる。
体からカルシウムが失われ、
心臓の働きが正常でなくなり死亡する。

猛毒だが、化学兵器として使うには前述のように
扱いが極めて難しい性質があるため向いていない。

だが、燐を利用して扱いやすさを向上させると、
殺傷能力も高まった毒ガスとなる。
サリンガスだ。

フッ化水素は化学兵器だけに使われるものではない。
酸化ウランにフッ化水素を化合させると
六フッ化ウランが出来上がる。

六フッ化ウランを遠心分離機にかけると、
ウランの同位体を分別することができる。

つまり、ただのウランから、
核分裂性の放射性ウランだけを
取り出すことができるのだ。

言わずもがなであるが、これは原子爆弾の材料である。

要するに、高純度フッ化水素は
核兵器を作るために必要な物質なのだ。

そんな危険な物質を誰にでも売ってしまっては
問題があるため、国際的に取引が制限されている。

半導体を作るために使う場合でも、
いつ、誰が、どこの工場で、どれだけの数量の製品を
作るために必要なのか、事細かに申請し、
審査されたうえでようやく売買することが可能だ。

半導体は我々が使う電子機器の中に
当たり前のように納まっている。

現代の日常とは切っても切れない関係にあるが、
その製造の過程には極めて慎重に扱わなければならない
危険な物質が使われていたのである。