アワは荒地でも育ちやすい穀物である。
米と比べるとカロリーが少なく、
腹持ちも悪いという欠点があるが、乾燥に強い。
華北では元々、粟こそが主食であり、
米の字は本来はこの穀物を指すものだった。
そのまま炊いたり粥にして食べるほか、
粉に挽いて麺類を作ることもできる。
むしろ最初の麺は粟だったと言われている。
西方から麦が伝わると廃れてしまったが、
唐代までは租税の納付物であった。
本邦でも最も古い栽培穀物だと考えられており、
古事記でも日本書紀でも五穀に数えられ、
現在でも新嘗祭で奉納される。
連作障害を起こす点や、腹持ちの悪さから、
やはり本邦でも米と比べると一段下の存在と
見做されてきたが、味は悪くないため、
稗のように嫌われてはいない。
大正期までは地域によっては主食であり続けたが、
稲の品種改良や農業技術の発達により
どこでも米が食べられるようになり廃れた。
カロリーが低いというのは欠点であったが、
飽食の時代である現在、
それは長所として見直されている。
菓子類を低カロリーにするために利用されるほか、
ダイエット食として好む層がいるのだ。
栄養そのものは蛋白質や脂質が米より多いため、
雑穀米として米と共に炊かれることも多くなった。
なお、粟はエノコログサの変種である。
あの猫じゃらしとして知られるエノコログサだ。
駆除されないよう似ていった結果、
雑草が穀物化した例はいくつかあるが、
この粟に関しては少し事情が異なる。
そもそも粟こそが、東アジアの穀物の祖なのだ。
畑の中の雑草であるエノコログサが
人間に有用なものに転じたわけではない。
たまたま穂のでかいエノコログサを見つけた人間が
これを栽培するようになったのだ。
気が向いたら粟粥でも作って
古代に思いを馳せてみるのもいいだろう。