序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年7月16日火曜日

アワは荒地でも育ちやすい穀物である。

米と比べるとカロリーが少なく、
腹持ちも悪いという欠点があるが、乾燥に強い。

華北では元々、粟こそが主食であり、
米の字は本来はこの穀物を指すものだった。

そのまま炊いたり粥にして食べるほか、
粉に挽いて麺類を作ることもできる。
むしろ最初の麺は粟だったと言われている。

西方から麦が伝わると廃れてしまったが、
唐代までは租税の納付物であった。

本邦でも最も古い栽培穀物だと考えられており、
古事記でも日本書紀でも五穀に数えられ、
現在でも新嘗祭で奉納される。

連作障害を起こす点や、腹持ちの悪さから、
やはり本邦でも米と比べると一段下の存在と
見做されてきたが、味は悪くないため、
のように嫌われてはいない。

大正期までは地域によっては主食であり続けたが、
稲の品種改良や農業技術の発達により
どこでも米が食べられるようになり廃れた。

カロリーが低いというのは欠点であったが、
飽食の時代である現在、
それは長所として見直されている。

菓子類を低カロリーにするために利用されるほか、
ダイエット食として好む層がいるのだ。

栄養そのものは蛋白質や脂質が米より多いため、
雑穀米として米と共に炊かれることも多くなった。

なお、粟はエノコログサの変種である。
あの猫じゃらしとして知られるエノコログサだ。

駆除されないよう似ていった結果、
雑草が穀物化した例はいくつかあるが、
この粟に関しては少し事情が異なる。

そもそも粟こそが、東アジアの穀物の祖なのだ。
畑の中の雑草であるエノコログサが
人間に有用なものに転じたわけではない。

たまたま穂のでかいエノコログサを見つけた人間が
これを栽培するようになったのだ。

気が向いたら粟粥でも作って
古代に思いを馳せてみるのもいいだろう。