キビはアワより少し大きい穀物である。
中華文明では五穀のひとつに挙げられており、
広い範囲で栽培されてきた。
味はやや甘く、少しだけえぐみがある。
このえぐみのせいで好みが分かれるのだが、
調理法によって除去することが可能だ。
例えば、黍だけの粥はほのかに甘いが、
しつこさを感じさせる味わいがあり、
沢山食べるのに向かない。
しかし、豆と共に炊くと、豆の味を引き立て、
えぐみが抑えられる。
つまり、黍は主食穀物でありながら、
それだけでは食べにくいものなのだ。
米に取って代わられたのも仕方がないかもしれない。
本邦へは他の穀物より遅くやってきたためか、
五穀に数えられてはおらず、
主食よりも菓子の材料という認識が強い。
桃太郎が家来に与えた きびだんご が有名だが、
吉備団子は黍ではなく米で作る。
そして、桃太郎の話の由来となった時代には
米で作る吉備団子はまだ無かった。
ということは きびだんご は黍団子なのかというと、
実はそう簡単にはいかない。
もちろん、黍の餅は昔からよく作られており、
黍団子というものはある。
だが、より原型に近い古い桃太郎の話では、
団子の材料を黍に限定しておらず、
十団子という糸で繋いだものであったらしい。
その十団子が黍でできていた可能性は
十分にあるが、桃太郎が きびだんご を
家来に与えるという話は後世にできあがったものだ。
吉備国のお話であることから、
吉備と黍をかけたものである。
その後、明治期に桃太郎の話にあやかり、
吉備の名産品として求肥の吉備団子が
作られるようになった。
元々吉備津神社で黍団子が名物であったという
話もあるが、キビ繋がりの後付けの可能性もある。
吉備津彦が温羅を退治したという伝承と、
桃太郎の鬼退治を抱き合わせ、
吉備団子のアピールが行われているが、
結局のところ宣伝文句に過ぎないようだ。
それでも子供は皆一度は思うだろう。
きびだんご を食べてみたいと。
岡山土産の吉備団子を食べさせるか、
黍餅をこさえて食べさせるか、
団子を糸で繋いで十団子を食べさせるか、
好きなものを選ぶといいだろう。
団子でありさえすれば何でもいいのではないだろうか。