序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年7月17日水曜日

キビはアワより少し大きい穀物である。

中華文明では五穀のひとつに挙げられており、
広い範囲で栽培されてきた。

味はやや甘く、少しだけえぐみがある。
このえぐみのせいで好みが分かれるのだが、
調理法によって除去することが可能だ。

例えば、黍だけの粥はほのかに甘いが、
しつこさを感じさせる味わいがあり、
沢山食べるのに向かない。

しかし、豆と共に炊くと、豆の味を引き立て、
えぐみが抑えられる。

つまり、黍は主食穀物でありながら、
それだけでは食べにくいものなのだ。
米に取って代わられたのも仕方がないかもしれない。

本邦へは他の穀物より遅くやってきたためか、
五穀に数えられてはおらず、
主食よりも菓子の材料という認識が強い。

桃太郎が家来に与えた きびだんご が有名だが、
吉備団子は黍ではなく米で作る。

そして、桃太郎の話の由来となった時代には
米で作る吉備団子はまだ無かった。

ということは きびだんご は黍団子なのかというと、
実はそう簡単にはいかない。

もちろん、黍の餅は昔からよく作られており、
黍団子というものはある。

だが、より原型に近い古い桃太郎の話では、
団子の材料を黍に限定しておらず、
十団子という糸で繋いだものであったらしい。

その十団子が黍でできていた可能性は
十分にあるが、桃太郎が きびだんご を
家来に与えるという話は後世にできあがったものだ。

吉備国のお話であることから、
吉備と黍をかけたものである。

その後、明治期に桃太郎の話にあやかり、
吉備の名産品として求肥の吉備団子が
作られるようになった。

元々吉備津神社で黍団子が名物であったという
話もあるが、キビ繋がりの後付けの可能性もある。

吉備津彦が温羅を退治したという伝承と、
桃太郎の鬼退治を抱き合わせ、
吉備団子のアピールが行われているが、
結局のところ宣伝文句に過ぎないようだ。

それでも子供は皆一度は思うだろう。
きびだんご を食べてみたいと。

岡山土産の吉備団子を食べさせるか、
黍餅をこさえて食べさせるか、
団子を糸で繋いで十団子を食べさせるか、
好きなものを選ぶといいだろう。

団子でありさえすれば何でもいいのではないだろうか。