序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年10月10日水曜日

トウモロコシ

小麦、米と並ぶ世界三大穀物である。

結実した状態の見た目からは思いもよらないが、
イネ科の植物だ。

花を見ればなんとなく納得できるのだが、
そこからあの形になるまでの変化に驚く。

非常に古い時代からアメリカ大陸の人々の
食を支えてきた存在であり、
トウモロコシに関する神話は多い。

人間を生かすための存在だと語られ、
本邦における米のように、
明確に他の食料と差別化されている。

クリストバル・コロンが旧大陸へと持ち帰った
他の作物と比べ明らかに栽培開始が早いのだが、
イベリアにはその時すでにトウモロコシが
あったという説がある。

実はコロンの新大陸到達以前の
明代にすでに玉米や玉麦、玉黍などの
名前でトウモロコシが存在していた。

つまり、太平洋を越えてもたらされたか、
新大陸からアフリカへ、そして東南アジアへ、
どちらかのルートで大航海時代以前に
伝播があったということである。

ヨーロッパでトルコ小麦の名前で
流通したこともあるため、
新大陸からイベリアへ、ではなく、
中東から地中海へ伝播した可能性が高い。

伝播の不思議についてはこのぐらいにして、
通常の食料として以外の利用の話をしたい。

トウモロコシは澱粉の宝庫である。
そこからコーンシロップやアルコール、
糊や生分解性プラスチックが精製される。

特にアルコールはバイオマス燃料として
注目されたため、生産量が増加した。

粒を取った後の軸にも利用価値があり、
合成樹脂や合成甘味料の材料となる。

あの特徴的なひげはトウモロコシ茶として
人気が出ているし、古くは南蛮毛の名で
利尿作用を持つ漢方薬とされていた。

ところでトウモロコシという名前は妙だ。
トウは唐であり、モロコシもまた唐なのだ。

トウキビという穀物がある。
コーリャンと呼ばれるもので、
本邦ではモロコシと呼ばれる。

大陸から本邦に渡ってきたため、
唐黍と呼ばれたのだが、
モロコシの名が定着して歳月が流れて後に、
よく似た植物がポルトガル人の手で伝来した。

当時は舶来品に南蛮や唐の名を付けて
既存のものと区別していたのだが、
南蛮唐黍ではなく唐唐黍となった。
しかし、漢字で書くととても座りが悪い。

このため、大陸での呼び名、
玉蜀黍の字が当てられるようになった。
このように聞いたが他にも説があるようだ。

ちなみに英語のコーンは本来は
穀物全般を指す言葉であるが、
知っての通り合衆国ではトウモロコシを指す。

だが、イギリス英語では
トウモロコシはメイズである。
他の国でもマイスが圧倒的に多い。

これは大航海時代当時に新大陸で
マイズと呼ばれていたことに由来する。

本邦でもコーンという呼び名が定着しているが、
アナナスのパイナップルと同じように、
実は特殊な呼び方であった。

もっとも、アメリカ英語が席捲している現在、
ヨーロッパ人にもコーンで通じるかもしれない。

そして、理解した上で何の穀物だよと
ジョークのネタにされるかもしれない。