フィンランド湾南岸に位置する
エストニアの首都である。
エストニアは本邦で知名度の低い国だと思われる。
バルト三国と聞けば思い出すかもしれないが、
並び順まではなかなか記憶できない。
エストニアは現地語ではエースティというのだが、
これは元々エースティ人と呼ばれる人々が
住んでいたためだといわれている。
民族名のエースティの語源は不明である。
その首都であるタリンは北方十字軍の際に
建造された砦が原型だ。
トームペア砦周辺に徐々に人が住みつき、
街になっていったのだと思われる。
スラヴ人がコリヴァンと呼んでいたため、
サラセン人は世界地図にクルワンの名で
この街を記録していた。
後に砦はデンマーク王によって
トームペア城として築き直され、
街としての格が上がる。
ハンザ同盟に加わり、名をレバルと改め、
デンマークの植民地として発展するのだが、
チュートン騎士団に売り払われてしまった。
この騎士団領であった時代の名残で、
エストニアはドイツ風の気性を持つ。
その後スウェーデン、ロシアと支配者は変わり、
近代に入ってようやく独立を果たすのだが、
すぐにドイツに占領され、ソヴィエトに占領され、
再びドイツに占領され、ソヴィエトに飲み込まれた。
ソヴィエトの凋落によりバルト三国は独立、
エストニアはようやく国家となった。
独立の経緯は「歌による革命」や「バルトの道」
といったキーワードを調べてみてほしい。
なお、レバルからタリンへの改名は
最初の独立の際にトームペア城を指して
デンマーク人の城という意味で行われた。
もっとも、ドイツ人はレーファルと呼び、
ロシア人はレーヴェリと呼んでいたが。
さて、そんなタリンの街には未だロシアの影が残る。
公用語はエストニア語なのだが、
人口の半分はロシア語を話すのだ。
エストニアの民族としてのアイデンティティを
ソヴィエトに押さえつけられていた反動で、
タリンには街中の看板等にロシア語を
使うことを制限する法が存在する。
エストニア人のロシア嫌いはフィンランド人や
トルコ人と並んで特に顕著だ。
街に話を戻そう。
タリンは高度に電子化の進んだ都市である。
インターネットに接続可能な端末と
政府が発行する身分証さえあれば
大抵のことが完結する。
具体的には役所でするような手続きは、
スマートフォンで身分証を読み込めば
どこにいても可能だ。
この身分証は運転免許証や
買い物のポイントカードも兼ねている。
当然電子マネー化も進んでおり、
現金を持ち歩く者は珍しい。
極めつけは本邦で言うところの国会において、
インターネットを介した通信での
出席が許可されている。
さすがはスカイプを生んだ国である。
そんな電子都市にも当然大聖堂はある。
中心的なものは正教会の
アレクサンドル・ネフスキー大聖堂だ。
正教会において列聖されている
ウラジミール大公の名を冠したこの大聖堂は
玉葱状の尖塔を持つネオビザンチン様式だ。
本邦の感覚では非常にエキゾチックである。
続いてカトリックの大聖堂は
聖ペーター聖パウル大聖堂だ。
分かりにくいかもしれないが、
ペテロとパウロの名が並列している。
北方十字軍の際に聖堂として建てられた
ゴシック様式であったが、
新教派のスウェーデンによって廃止された。
その後信教の自由を得た際に
ネオクラッシック様式で大聖堂として
再建された経緯を持つ。
元々バシリカであったため
建物の形としては四角い。
最後にスウェーデン時代に根付いた
ルター派プロテスタントの大聖堂だが、
これは聖マリー大聖堂である。
デンマーク人の造ったカトリックの
大聖堂だったが、ルター派に改宗された。
前述のペテロパウロ大聖堂が
カテドラルとして建築されていないのは、
本来はこちらが大聖堂だったためだ。
ただし、古いゴシック様式のため、
あまり洗練されておらず、
白が眩しい素晴らしい建築だが、
凡庸な教会といった印象を受ける。
ゴシックとは本来野蛮人たる
ゴート人のものを指す言葉である。
話が逸れそうだ、
タリンの観光名所の紹介をしよう。
大聖堂以外にも目ぼしい教会があるのだが、
文字数がすでにえらいことになっているので
お勧めのひとつだけを挙げさせてもらう。
太ましいマルガレータである。
タリン旧市街北端に位置する
要塞砲塔のことなのだが、
兵舎や監獄としても利用された。
マルガレータは監獄時代に
そこで働いていた女性の名前らしい。
随分と豊満な方だったのだろう。
太るといえば料理である。
エストニア料理にはイワシ、豚肉、牛乳、
そしてジャガイモが欠かせない。
豚肉は余すところなく丁寧に食べる。
特に大麦を混ぜた豚のブラッドソーセージは
国民食と言われている。
あとは酒だ。
ビールとウォッカをやたらと飲む。
いや、ビールは酒だと
認識していないかもしれない。
冗談で言っているのではない。
酒飲みだらけの国ではどこも
ビールは水代わりに飲まれている。
飲み水の質が悪い国では特に。
エストニアの水も煮沸せずに
飲むのはお勧めしない。
硬度も高いのでミネラルウォーターを買おう。
炭酸入りの硬水ばかり売っている気もするが。
別の機会に詳しく書くが、海外旅行の際は
とにかく飲み物の確保に気を使った方がいい。
特に甘くなくて冷たいお茶を
常飲しているのなら対策が必要だ。
今回の記事はもしかすると過去最長かもしれない。