序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年10月6日土曜日

法螺貝

本邦近海で見られる貝の中では
ひと際大きな巻貝である。

一抱えもあるその大きな貝殻は、
楽器として非常に有名だ。

楽器の原理としては金管楽器である。
唇の振動音を増幅する。
ラッパと同じ理屈なのだ。

ギリシア神話の海神の息子トリートーンは
法螺貝を吹く役割を担っている。

ちなみに、海から採ってきたものが
そのまま楽器にできるわけではなく、
加工が必要なことは念のため書いておこう。

大きな音を鳴らすことができるため、
広い範囲に音色を響かせることができる。

インドの古い書物にも、
人を集める際の合図に使われたと書かれている。

本邦でも合戦時の合図に使われている
イメージが人口に膾炙している。

山伏の所持品としても知られているだろう。
彼らは山奥を歩き回るため、
やはり合図のために法螺貝を吹き鳴らす。
獣を威嚇する効果も期待できる。

法螺貝の名の法の字は仏法のことである。
古来、法螺貝の音色は魔除けの効果があると
考えられてきたことも山伏が持つ理由のひとつだ。
実際、危険な獣を追い払えるので理に適っている。

ところで、法螺を吹くという慣用表現がある。
これは予想外に大きな音が出ることに由来するが、
山伏という存在が胡散臭いと思われていたことも
多少は理由としてありそうだ。

さて、法螺貝は食べることができる。
通常は刺身か茹でによって
シンプルにいただく。
もちろん網焼きにしたっていい。

甘みがあり、生ならこりこりとした食感で、
貝好きなら気に入るに違いない。
なによりそのボリュームが魅力だ。

ただし、肝には毒がある。

オニヒトデなどの毒を持つ生き物を
食べているためだ。

元はと言えばオニヒトデも
毒を持つ生き物を食べているせいで
毒があるわけだが。

その毒はフグ毒として知られる猛毒
テトロドトキシンなので、
ちょっとぐらいならいいかと思わないように。

貝は意外と力が強い。
二枚貝をこじ開けられないように、
巻貝を引っ張り出すことも難しい。

法螺貝は一般的にふたつの方法で殻から出される。
ひとつめは軽く茹でる方法。
ふたつめは吊り下げて徐々に引き出す方法だ。

吊り下げるやり方は面倒くさく、
時間もかかるのだが、完全な生食が可能となる。

もっとも、殻が不要であれば
ハンマーで割ってしまえばいいのだが。

購入しようと思った場合、法螺貝はお高い。
小さなものなら食べられる身の量を考えれば
まだ分からなくもない値段である。

だが、サイズが大きくなればなるほど、
価格はつり上がっていく。
殻に価値があるためだろう。

ちなみに楽器に加工された法螺貝は
金管楽器らしい値段で売られている。