甘い汁を生み出す背の高い草である。
幹は堅く立派に成長する。
古い書物にはミツバチの力を借りずに
糖蜜を生み出す奇跡の植物と書かれている。
この植物の汁を絞り、乾燥させると砂糖ができる。
人間は甘いものを食べると幸せを感じるため、
砂糖を手に入れるために様々な努力をしてきた。
サトウキビの原産地は東南アジアとも
インドとも言われている。
本邦には鑑真の手によって伝来したが、
多くの陽光と一定以上の気温が必要なため、
栽培できる地域は限られていた。
西方へはアレクサンドロス大王の
インド遠征を契機に伝播したという。
その後、ペルシアをサラセン人が
征服したことで更に西進。
製糖技術もこの頃に発達したものだ。
サラセン人はイベリア半島でも
サトウキビ栽培を行っていたのだが、
ヨーロッパ人によってイベリアが再征服されると、
彼らにも栽培と製糖の技術が伝わった。
ヨーロッパの科学は元はと言えば
サラセン人の科学なのだ。
砂糖はアジアの茶、アラビアのコーヒー、
新大陸のカカオといった嗜好品と共に
需要がぐんぐんと増大していった。
その需要量は現代においても増加し続けている。
始まりの頃、砂糖は薬として扱われており、
薬品商によって流通していたという。
しかし、莫大な利益を生み出す砂糖は
それを専門に売買する商人を誕生させ、
彼らの資金は大航海時代の原動力となった。
マデイラ、カナリアスなどで生産されていた砂糖は、
新大陸の発見によりその栽培規模が拡大していく。
サトウキビの汁は絞ってから時間が経つと、
酵素によって分解され甘みを失ってしまう。
このため、短期間で作業工程を進めなければならない。
そこで活用されたのがアフリカから商品として
入ってきた奴隷たちである。
ヨーロッパ人はアフリカで奴隷を買い付け、
新大陸でそれを売って砂糖を購入、
国へ帰り砂糖を売り捌いたのだ。
砂糖と新大陸の銀によって生み出された資本は、
ヨーロッパの商業を急激に成長させ、
資本主義経済を形成していくことになる。
ところで、サトウキビの利用は砂糖だけに留まらない。
糖分を抜き取った後の汁は廃糖蜜と呼ばれ、
そこからアルコールを作り出している。
このアルコールはラム酒や焼酎という形で作られるが、
純度を高めて燃料とされるケースも多い。
バイオマス燃料などと呼ばれ、
サトウキビの需要を押し上げている原因でもある。
近年は燃料研究が盛んとなり価格の高騰を招いているという。
また、汁の搾りかすにも利用法がある。
紙の素材や、化学製品の溶剤、蝋などが作り出される。
なんと有益な植物だろうか。
なお、産地では幹をそのまま食したり、
汁をそのまま料理に使うこともある。
やや酸味があるのが特徴的だ。
果実、蜂蜜、麦芽糖、サトウキビ、テンサイ、
そして合成甘味料と、甘味の進化は続いている。