序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年5月28日月曜日

タイム

立麝香草とも呼ばれるハーブである。

薬草として歴史があり、
抗菌防腐効果を持つため、
エジプトにおけるミイラ保存にも用いられた。

ギリシアでは浴室や神殿をタイムの煙で燻し、
カビを予防したとも伝えられている。

ゼグレート、消化不良、痙攣に効能があり、
利尿作用や強壮作用も期待できる。

タイムのハーブティーでうがいをすることで、
風邪の菌やウイルスを殺せるともいう。

また、効果は立証されていないが、
自律神経を整える働きを持ち、
その香りは悪夢を払うとされた。

膝丈ぐらいまでの低木で、
紫やピンクの小さな花をいくつもつける。

暑さにも寒さにも乾燥にも強いが、
高い湿度には弱い。

繁殖力が旺盛で、枝から増やすこともできる。
枝を折って地面に置いておくだけで、
そこから根が伸びて繁茂するのだ。

なお、古代バビロニアには既に
この植物の栽培法を記した園芸書が存在した。

香辛料としてはぴりっとした爽やかな香りを活かし、
スープの香り付けや魚の臭み消しとして
ヨーロッパからアラビアにかけて利用されてきた。

最もよく知られた利用法はブーケガルニだろう。
ローズマリーローレルと共に主原料となっている。

新大陸にも持ち込まれており、
カリブ料理やケイジャン料理、
クレオール料理でよく用いられる。
クラムチャウダーには欠かせない。

本邦にも息吹麝香草というタイムの一種が自生しているが、
香辛料としての利用については寡聞にして知らない。

ところでタイムはその清々しい香りから、
人間の力を高めるとされてきた。
勇気のシンボルであり、ローマの兵士たちは
出陣の前にタイムを浸した水を浴びていた。

中世ヨーロッパにもその名残があり、
貴婦人がタイムの小枝を縫い付けたスカーフを
騎士たちに贈ったという。