立麝香草とも呼ばれるハーブである。
薬草として歴史があり、
抗菌防腐効果を持つため、
エジプトにおけるミイラ保存にも用いられた。
ギリシアでは浴室や神殿をタイムの煙で燻し、
カビを予防したとも伝えられている。
ゼグレート、消化不良、痙攣に効能があり、
利尿作用や強壮作用も期待できる。
タイムのハーブティーでうがいをすることで、
風邪の菌やウイルスを殺せるともいう。
また、効果は立証されていないが、
自律神経を整える働きを持ち、
その香りは悪夢を払うとされた。
膝丈ぐらいまでの低木で、
紫やピンクの小さな花をいくつもつける。
暑さにも寒さにも乾燥にも強いが、
高い湿度には弱い。
繁殖力が旺盛で、枝から増やすこともできる。
枝を折って地面に置いておくだけで、
そこから根が伸びて繁茂するのだ。
なお、古代バビロニアには既に
この植物の栽培法を記した園芸書が存在した。
香辛料としてはぴりっとした爽やかな香りを活かし、
スープの香り付けや魚の臭み消しとして
ヨーロッパからアラビアにかけて利用されてきた。
最もよく知られた利用法はブーケガルニだろう。
ローズマリー、ローレルと共に主原料となっている。
新大陸にも持ち込まれており、
カリブ料理やケイジャン料理、
クレオール料理でよく用いられる。
クラムチャウダーには欠かせない。
本邦にも息吹麝香草というタイムの一種が自生しているが、
香辛料としての利用については寡聞にして知らない。
ところでタイムはその清々しい香りから、
人間の力を高めるとされてきた。
勇気のシンボルであり、ローマの兵士たちは
出陣の前にタイムを浸した水を浴びていた。
中世ヨーロッパにもその名残があり、
貴婦人がタイムの小枝を縫い付けたスカーフを
騎士たちに贈ったという。