序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年5月6日日曜日

アデリーペンギン

驚いたような顔をしたペンギンである。

目の周りが白く、その部分が白眼に見るため、
大変ユニークな見た目をしている。

三種類のアデリーペンギン族の一種で、
南極大陸外縁部に生息している。

南極探検家デュモン・デュルヴィル
によって名付けられたのだが、
アデリーとは彼の妻の名前である。

活発に動くペンギンだがあまり騒がしくはなく、
同じアデリー族のジェンツーペンギンとは対照的だ。
氷雪の中を寡黙に生き抜いているのである。

幸いなことに絶滅の危険性は少なく、
人の手の入らない南極で生を謳歌している。
近年も衛星写真により新たなコロニーが発見された。

調査の進んでいなかったデンジャー群島に生息していた
アデリーペンギンの数はこれまでに見積もられていた
個体数に匹敵するほどであったという。

だが、南極での暮らしは楽なものではない。
放っておけば卵は凍り、ヒナも凍え死ぬ。

父親は絶食しながら卵を温め、
母親が餌を獲りに出かける。
帰りを待つ期間はなんと一ヶ月にも及ぶ。

その期間を耐え忍ぶと、
母親が帰り役割を交代することができる。
以降は短いスパンで交互に抱卵と採餌を繰り返す。

ヒナが産まれてからは幾分楽になるが、
まだ体温調節ができないヒナを温めなければならない。

ヒナはある程度育つと、ヒナだけで集まり
クレイシと呼ばれる集団を形成する。
こうなると、両親は共に餌を獲りに行くことが可能だ。

なお、アデリーペンギンは離婚率が高い。
毎年違うパートナーとつがうのが普通で、
育児中に母親が他所へ行ってしまうことも少なくない。

父親の浮気も多く、巣材に使う石を他のメスから
プレゼントされると簡単に誘惑されてしまうのだ。

だが、こうした無節操さが繁栄につながっているのだろう。
もちろん、南極という特殊な環境に
置かれていればこそであるが。

天敵はアザラシである。
攻撃的なイメージの無いアザラシだが、
採餌のために移動中のアデリーペンギンを狙う。

また、トウゾクカモメは卵を掠め取る。
ヒナが襲われることも少なくない。

南極だからといって天敵から逃れることはできないのだ。