序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年5月18日金曜日

ビスマス

古くから鉛やと混同されてきた金属である。
名前はドイツ語の白い塊に由来する。

単体では淡く赤みがかった銀白色の
脆く柔らかい半金属で、
液体時より固体時の方が体積が大きい。

燐や砒素、アンチモンと同じ系列の元素だが、
毒性は無いどころか整腸剤に使われている。

本邦では蒼鉛と呼ばれていたが、
これは輝蒼鉛鉱という青みがかった
鉱物として産出するためである。

昔の人々はこれを鉛鉱石だと考え、
鉛を精錬しようとして果たされず、
首を傾げたことだろう。

本邦では足尾銅山などで副産物として採掘され、
ビスマス単体の鉱山は発見されていない。

融点が低く、毒性が無いことから、
はんだ における鉛の代替品とされる。

超伝導物質として用いられる他、
重さを活かした用途も見出されている。

また、ウッド合金のような低い温度で
融解することに意味を持つ合金にも使われている。

もっとも、コーヒーの温度で溶け、
しかも毒性のあるウッド合金が
何の役に立つのか私は寡聞にして知らない。

さて、ビスマスには鑑賞用という
変わった使い方も存在する。

ビスマス人工結晶と呼ばれるものがそれだが、
衝撃的な美しさを誇る。

骸晶と呼ばれる特徴的な形状は、
古代文明の遺跡かと思わせるような構造物であり、
規則正しく並んだ方形にはうっとりとしてしまう。

だが、なにより特徴的なのはその色である。

ビスマスの表面は酸化により皮膜ができるのだが、
この皮膜はなんと虹色に輝く。

不思議な構造に煌く虹色。
初めて見た時には異世界の物質か何か
だと思うかもしれない。

実はこの人工結晶、ご家庭のコンロと
フライパンで簡単に作ることができる。

ただし、ビスマスは比較的高価な金属である。
飾って満足の出来る大きさの結晶を作ろうと思ったならば、
良い酒が買えるだけの金額が必要になる。