連なった花が剣のようだとして、
ラテン語で剣を意味するグラディウスから
名付けられた植物である。
グラディウスとは剣全般を意味する言葉であったが、
特定の形状の剣の名前でもある。
ローマの名将、大スキピオのイスパニア遠征の際に
現地で使われていた剣が大層切れ味が良いと評判になった。
一般的な剣と比べて幅が広く、刃渡りの短いその剣は、
軟鉄と銑鉄を巧みに組み合わせて造られており、
当時の武器としては恐るべき切れ味を誇っていたという。
このイスパニア式の剣は、やがてローマ軍の制式装備となり、
剣を意味するグラディウスという言葉は、
この形式の剣の名称へと変わっていった。
時期によって変遷はあるが、一般的なローマ兵は、
スクトゥムと呼ばれる大きな楕円形の盾と、
ピルムという名の投げ槍を使用していた。
鎧はロリカと呼ばれ、最も知られているのは
セグメンタータというラメラーである。
投げ槍を放った後はグラディウスで白兵戦に臨んだのだが、
マケドニアでの戦いの際には、この剣の
あまりの切れ味の良さに敵兵は戦慄したという。
武具の話はいい加減この辺りで切り上げて、
本題のはずの花に話を移そう。
本邦ではオランダ菖蒲とも呼ばれていることからもわかるように、
アヤメの仲間の植物である。
花色は様々であり、非常に多彩な品種が流通しているが、
特に赤、白、黄色が人気のようだ。
花には蜜が蓄えられており、それを吸うことも可能なため、
子供たちのおやつとして扱われている地域もある。
栽培の際は春に球根を植え、真夏には早くも開花を迎える。
種で増やすこともできないわけではないが、
園芸では球根から増やすのが普通だ。
本邦へは江戸期に伝来したが、
栽培方法が確立できず、一度は途絶え、
明治になって再び持ち込まれた。
唐菖蒲と呼ばれることもあるのは、
江戸期に外国から伝わったことに因むのだろう。
なお、花言葉は「忘却」である。
もっとも、花言葉というものは時代や地域によって
言っていることがまちまちであり、
誰かが勝手に増やしているのではないかという疑いすらある。
あまり気にする必要はないだろう。