神の食べ物と呼ばれた植物である。
中央アメリカ原産のこの植物は、
オルメカ文明の頃から
人の手によって栽培されてきた。
白い房が垂れ下がるように咲く花のうち、
受粉したものが両手の平ほどの大きさの実をつける。
実は緑か黄色か赤で楕円形をしている。
この楕円形の実はチョコレートのパッケージに
よく描かれているので知名度が高いだろう。
実の中には結構な数の種が塊となって詰まっており、
この種がいわゆるカカオ豆と呼ばれるものだ。
カカオ豆は塊のまま数日発酵させ、
ひとつひとつの豆に分離する。
その後、粉に挽くなどして、
カカオパウダーやカカオバターが精製される。
マヤやアステカでこの食べ物は神聖視されていた。
通貨としても使われていた形跡がある。
カカオをヨーロッパに紹介したのは
クリストバル・コロンだとされているが、
当時はその利用法が知られておらず、
変わった形の植物としか認識されていなかった。
その後、エルナン・コルテスが飲料の製法と共に持ち帰り、
砂糖や香辛料を加えたものが愛されるようになった。
アメリカ大陸では刺激のある香辛料を加えて
飲まれていたが、ヨーロッパ人は砂糖を入れた
ショコラドリンクに夢中となった。
収穫量を増やすため、
人々はカカオをアフリカでも栽培するようになり、
近代には東南アジアでも作られるようになった。
ただし、高温多湿で規則的な降雨、
そして水はけの良い土壌が必要な性質を持つため、
栽培可能な地域は限られている。
また、小さな苗のうちは日陰で育てなければならない。
この性質のせいでプランテーションによる大量栽培は難しい。
バナナと共に育てると、その葉が丁度良い影を作るという。
このため、複数の作物を作る小規模農家の
強い味方とも言われている。
コーヒー、紅茶と並んで砂糖の生産及び流通を
後押しした歴史を持つカカオだが、
現在も先物市場の投機対象とされており、
世界経済に影響を与えている。