真っ赤な粟のような もこもこの花を咲かせる
南アメリカ大陸の植物である。
本邦では観賞用として時折みられるが、
あまり知名度の高い植物ではない。
しかし、かつては南アメリカにおいて
主食の地位を占めていた穀物である。
小さな、粟のような種子が食用となるのだが、
味そのものはほとんどなく、
えぐみと強い香りを持つ。
アステカ人はこれを信仰上の重要な
穀物としていたため、キリスト教の布教を
企図していたイスパニア人は
その栽培を禁じてしまった。
トウモロコシという代替品があったとはいえ、
主食である穀物が禁じられるというのは
侵略されることの恐ろしさを感じさせる。
明日から米を食うことを禁じられたら
どう思うだろうか。
前述のようにアマランサスは癖になる味とはいえ
そう美味いものではない。
だが、土壌の塩分や酸性度の影響をあまり受けず、
気温の変化や旱魃に強い非常に丈夫な植物である。
安定供給という面において優れた穀物だ。
このため、大航海時代以降世界中に広まり、
インドでは大規模な栽培がおこなわれた。
本邦でも東北地方の一部では食用として栽培され、
現在でも秋田や岩手の特産品である。
和名はヒユとなるが、
アマランサスの名で流通している。
チャイナではシェンツァイと呼んで
葉と茎を食用としているのだが、
やはり苦みとえぐみが強い。
華僑の多いオーストラリアでは
広東語での呼び方インチョイの名で流通しており、
英語ではチャイニーズスピナッチとも呼ぶ。
スピナッチはほうれん草のことだ。
花からは赤色染料を採ることができ、
色名はそのままアマランサスである。
合成着色料の赤色二号がこの色のため、
アマランサスと呼ばれるが、
原料というわけではない。
近年では健康的な食べ物として
持て囃すメディアもあり、
一部では価格が高騰しているとも聞く。
キヌアもそうだが、こうしたマイナーな雑穀を
体い良いと称して売るやり方というのは、
どうにもいまひとつ健全に感じられない。
とはいえ、せっかく国産品もあることだし、
興味を持ったのなら一度試してみるといいだろう。
癖が強いので雑穀米として炊くのではなく、
炒って何かに少量かけてみるのをお勧めする。