春一番が吹き、暖かい陽気に誘われて、
外を歩いていると気付くことがある。
コンクリートに赤い小さな点。
よく見ると動いている。虫だ。
小さなあれはダニである。
カベアナタカラダニと名付けられている。
コンクリートという不毛な環境を好む
不思議な生き物だ。
彼らは主に花粉を食べて生きているという。
春になると花粉が飛ぶものである。
飛んだ花粉は色々なものに付着するが、
細かな凹凸の多いコンクリートにも
沢山付着している。
あの赤いダニはそれを食べているのだが、
コンクリートを好む理由は他にもある。
競合する者が少ないという利点がある。
コンクリートを好む動物など
人間とダンゴムシぐらいである。
コンクリートに付着した花粉は
カベアナタカラダニが独占できるのだ。
ちなみにカベアナタカラダニには
メスしか見つかっていない。
彼女たちは梅雨に入る頃に卵産むと、
それを抱えたままコンクリートの
苔の中で息絶える。
そして、その卵は翌年の春先に孵る。
春にしか存在しない生き物なのだ。