序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年12月20日木曜日

黒曜石

オブシダンと書きたくなるが
オブシディアンが正しい。

あれは文字数の都合でオブシダンと
表記されていたのだと思う。

さて、黒曜石は火山から流れ出た溶岩が
急速に冷え固まり、二酸化珪素を中心に、
酸化アルミニウムとその他の物質が
ガラス質となったものである。

二酸化珪素が七割から八割を占めるため、
天然のガラスと呼んで差し支えないだろう。

名前の通り黒いのだが、含まれるその他の
物質によって様々な色や模様を持つことがある。

鑑賞用としてはそうした変わり種が
重宝されるのだが、古代において
実用品の材料とされたものは
混ざり物の少ない方が上質であった。

黒曜石は綺麗に割ることができるのだが、
その断面はなめらかで、ふちは非常に鋭い。

下手な金属製の刃よりも鋭利であり、
人類の手にした刃物の中で
最も鋭いものと言われることもある。

そう考えるとガラスのつるぎ は
オブシダンソードだったのかもしれない。

ゲームのネタは置いておくとして、
実際に黒曜石は武器の素材として重要であった。

もちろん、刃物として武器以外にも用いられる。
金属器の無かった時代、刃物と言えば黒曜石が
最上のものだったのは言うまでもない。

武器としての黒曜石はまず鏃である。
他の石鏃と比べてその殺傷力は段違いである。

次いで槍の穂先である。
脆いのが少々難点かもしれない。

短刀は護身用に使ったかもしれないが、
武器というよりは高級日用品である。

だいたいの石器文明は時代と共に
低温鉄器や青銅器へと移行していく。

だが、貴金属以外の加工技術を持たなかった
中央アメリカの諸部族はイスパニア人が
大西洋を渡って来るまで黒曜石と燧石を
使い続けていた。

マカナと呼ばれる黒曜石の剣は、
木の板に溝を付け、黒曜石を挟んで作られる。
のこぎりのような見た目になるが、
使い方としては殴りつけて切り裂く。

腕や首を切り飛ばすことだってできた。

黒曜石の矢、槍、剣は上等な武器であり、
特に剣は選ばれた戦士のみが扱うことを許された。

アステカ人が他の部族を圧倒できたのは、
黒曜石の産地を押さえ、
優れた兵器を独占したためだと言える。

黒曜石はどこでも採れるわけではない。
火山から溶岩が流れ出し、
急速に冷えて固まることが生成の条件だ。

世界的に見て北アメリカから中央アメリカに
かけての火山帯は黒曜石の産出地が著しく多い。
次いで多いのが本邦である。

本邦は火山列島のため条件を満たす場所は
多いのだが、残念ながら冒頭で書いたように
純粋な黒曜石ほど価値が高い。
本邦では他の物質が混ざることが多いのだ。

それでも優れた黒曜石の産地はいくつもある。
本邦で採取された黒曜石は大陸にも運ばれ、
シベリアの方面でも見つかっている。

黒曜石はその組成のパターンから、
どこで産出したものなのかを鑑定できるのだ。

驚くべきことに、南アメリカ西岸でも
本邦で産出した石器が見つかっている。
主に翡翠であり黒曜石は少ないが、
いったいどうやったのか交易ルートがあったらしい。

なお、黒曜石の語源は不明だが、
読んで字のごとく黒く輝く石なので、
あまり深く考える必要はなさそうだ。

オブシディアンの語源は
大プリニウスによって紹介されている。
オブシウスという人物がエチオピアで発見したそうだ。

確かにエチオピアは黒曜石の産地として
かなりのものだが、大プリニウスは
何かよくわからないものがあると
大体エチオピアのものと言い出すので当てにならない。

おそらくは大プリニウスが悪いのではなく、
エチオピアでこういうものを見た、聞いたと
彼に報告した人物がいたのだろうとは思うが。

ところで、黒曜石はパワーストーンとして
人気のある鉱物である。

例によってパワーストーンの解説書きを
いくつか探してみたが、やはり人気のある石ほど
荒唐無稽なことが書いてある傾向で間違いなさそうだ。

武器や日用品として用いられた黒曜石だが、
呪物としても優れたものであった。

例えば黒曜石の鏡は金属が利用される以前は
最上級のものであったと言える。

長くなってしまったので
このぐらいで終わりにしておこう。