燃素と訳される、ものが燃えるために
必要な物質である。
厳密に言うなら、すべてのものは灰であり、
灰とフロギストンが化合してできていて、
ものが燃える際にフロギストンが
分離することで光と熱を放ち灰が残る。
もちろん、この説は誤りである。
学校の理科で習うはずなので、
みんな知っていることだ。
このフロギストンによる、
ものが燃えることについての説明は
一見よくできている。
よく燃える植物などはフロギストンの
含有量が多いというわけだ。
しかし、金属を燃やすと僅かに重くなる。
フロギストンの分、質量が減り
残された金属灰は軽くなるはずが、
実際には質量が増すのだ。
この謎に対して、フロギストンが抜けた分、
金属が濃縮するので重くなるなど、
様々な説明が成されていた。
そんな中、フロギストンを発見したと
発表した科学者がいた。
実際には水素だったのだが、
このようにフロギストンの探求が
化学を進歩させた歴史がある。
フロギストンで満たされた空気内では
燃えるという現象が起きないことも発見され、
フロギストン研究は更に熱を帯びていく。
ちなみに、この時にフロギストン空気と
呼ばれたものは窒素である。
フロギストンについて決定的な見解を出したのは
アントワーヌ・ラヴォアジエである。
彼は従来の、灰と燃素の化合物が通常の物質である
という見方とは違う、通常の物質と何か特別な空気が
化合したものが灰であるという説を打ち出した。
この何か特別な空気こそ酸素である。
フロギストンという架空の存在のせいで
化学の進展が遅れたと考える者は多い。
しかし、逆にフロギストンの性質を真面目に
考え抜いたからこそ、ラヴォアジエの説が
導き出されたのだとも言える。
私は後者を支持したい。
錬金術が現在の化学になる過程で、
様々な錯誤や遠回りをしてきた。
しかし、失敗から学び取ることと、
遠回りをしたことで得られる副産物は、
どんな分野でも非常に大切なものだ。
失敗を恐れず、失敗した原因を探り、
トライアンドエラーを繰り返してこそ、
新たな段階へと進むことができるのだ。
正解への近道を求めすぎてはいけない。
簡単に答えが得られれば、その次を知ろう
という探求心が失われてしまうだろう。