序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年9月22日土曜日

ミノガ

いわゆる蓑虫である。

幼虫は周囲の繊維を集め、身にまとうようにして
小さな巣を作り、木の枝や幹にとりついて生活する。

雌は成虫となっても変態せず、
いわゆる蓑虫のまま過ごす。

雄はいわゆる蛾となって飛び立つが、
実は口が無く、何も食べない。

雄は雌を探して飛び、交尾を行った後に死ぬ。
雌は卵を産むと、それが孵化する直前に死ぬ。

じっと動かず蓑に隠れて育ち、
成虫になると役割だけを全うして
この世を去るという壮絶な生き方である。

蓑虫が目立つ秋になると、カネタタキという虫が
ちるる ちるる と鳴く。

昔の人はこの鳴き声を蓑虫の鳴き声と誤認したため、
蓑虫鳴くという季語が存在する。

雄が蛾となって飛び立つということもあり、
この鳴き声は、父よ父よと聞こえるとして、
いなくなった父を呼ぶ悲哀として語られる。

高浜虚子の「蓑虫の父よと鳴きて母もなし」という
俳句のもの悲しさは心に刺さる。

さて、蓑虫の蓑は枯れ葉、木の皮、小枝など、
様々な素材が用いられる。

細かく刻んだ色紙の中に、蓑を剥いた状態で入れ、
カラフルな蓑を作らせる遊びがあるが、
今の子供はそうそうやらないだろう。

というのも、外来生物による被害などにより、
ミノガは大きく数を減らしている。
また、都市部ではまず見られない。

本邦で最も大きな蓑虫オオミノガは
外来種のオオミノガヤドリバエという
寄生蠅に脅かされ絶滅危惧種となっている。

なお、オオミノガヤドリバエに寄生する
キアシブトコバチという蜂が存在する。

寄生していたつもりが自身も寄生されていた
という恐るべき大自然の営みである。