序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年9月4日火曜日

クマムシ

苔の森の中をゆっくりと歩き回る
とても小さな生き物である。
緩歩動物に分類される。

八本の足でゆったり歩く丸っこい姿が
熊を想起させたためこの名が付いた。

苔は水分が得られなくなると
乾燥状態となり休眠することが可能な植物だ。
長く乾燥が続いても水分を得れば復活する。

苔と共に生きるクマムシもまた、
同じように休眠するのだが、
生物として破格の能力を持っている。

クマムシは乾燥を察知すると、
自身の体内の水分を徐々に排出し、
乾眠と呼ばれる状態になる。

乾眠状態のクマムシは
高温に耐え、絶対零度でも死なず、
真空に耐え、高圧に晒されても死なず、
放射線の照射にすら耐え抜く。

人工衛星を使った実験では、
乾眠状態のクマムシを十日間
宇宙空間に浮遊させてみたという。

真空、絶対零度、太陽光、宇宙線。
生物が生きていける環境ではない。

だが、宇宙空間から戻されたクマムシは、
水分を得るや見事甦ったという。

ただし、太陽光を直接浴び続けた者は、
半数が死んでしまったらしい。

耐熱性は他の耐性と比べると
弱いということだろう。

しかし、クマムシの乾眠という能力が
凄まじいという事実は変わらない。

残念ながら人間に応用できそうではないが、
未来の新技術の開発に何かしらの
影響を与えてくれるかもしれない。

追記
令和の時代になってから、ある国の実験用人工衛星が
月に墜落したというニュースが報じられた。

人工衛星にはクマムシが搭載されていたため、
月面にクマムシが降り立ったことになる。

果たして、クマムシは月面で乾眠を続けるのだろうか、
それとも、適応し、活動を開始してしまうのだろうか。